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プロダクト開発における新たな役割「PMM」はなぜ必要? PdMとの違いや連携を解説【PRODUCT LEADERS 2021レポ(後編)】
近年、プロダクト開発の分野では欠かせない存在となったPdM(プロダクトマネジャー)というポジションが注目されています。
PdMはプロダクト開発をけん引する重要なポジションです。この記事ではPdMの役割や具体的な仕事内容、必要スキル、混同されがちなPM(プロジェクトマネジャー)との違いや、PdMになる方法などについて詳しく解説します。エンジニアが目指すキャリアとしても非常に人気の職種なので、ぜひ参考にしてください。
PdM(プロダクトマネジャー)とは、企業が提供するプロダクト開発・販売の全体指揮を執る総合責任者です。そもそもプロダクトとは、直訳すると「商品、製品、生産物」といった意味を持ちます。IT企業であれば顧客へ提供するIT機器やサービス、ソフトウエア、アプリケーションなどが該当するでしょう。
PdMはこれらプロダクトの企画・戦略立案から設計・開発、販売まで携わり、プロジェクトを成功に導く役割があります。リリースしたらゴールではなく、プロダクトのライフサイクルを見据えて企業利益と顧客満足度を最大化することも重要な任務です。
PdMと混同されやすいポジションとしてPM(プロジェクトマネジャー)があります。PMとは、プロジェクトをけん引する責任者です。PMはプロジェクトの目的を達成するため、スケジュール管理やコスト管理、マネジメントを行います。
PdMは企業利益やユーザーニーズを満たすためにどのようなプロダクトを作るのか、という目的を考えます。それに対してPMは設定された目的を達成するため、いつまでにどうやって作るのか、という実装に関する責任を負うポジションです。
PMM(プロダクトマーケティングマネジャー)とは、プロダクトの成功に向けてセールス・マーケティング・カスタマーサクセスなどの分野で戦略立案・実行・意思決定の責任を持つポジションです。PdMと同じく比較的最近注目され始めたポジションで、日本ではまだあまり馴染みがないかもしれません。
PMMの担当領域はPdMの仕事からビジネスサイドを分業したようなイメージです。企業規模によっては一人がPdMとPMMを兼任し、企画・開発からビジネスサイドまで担当するケースも少なくありません。しかし規模の大きい企業では負担が大きくなるため、PdMとPMMをそれぞれ設置した方が効率的です。
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プロダクト開発における新たな役割「PMM」はなぜ必要? PdMとの違いや連携を解説【PRODUCT LEADERS 2021レポ(後編)】
なぜ今PdMが注目されているのでしょうか? 理由として以下のような要因が挙げられます。
1つ目は、ITプロダクトを提供する企業が増加し、競争が激化していること。DX推進や働き方改革の潮流もあり、ITプロダクトの需要は年々増加しています。同時に業界を問わずITプロダクトを開発・提供し事業成長を狙う企業が増えているのです。
企業は競合他社に負けないよう、マーケティングに注力する必要が出てきています。さらにプロダクトは継続的に使用してもらうことが重要であるため、カスタマーサクセスにも力を入れなければなりません。
プロダクトの競争力を向上させるには、開発から販売、ニーズを反映した改善などのライフサイクルを一貫して担当する責任者が求められます。そのためこの役割を果たすPdMが注目されているのです。
アジャイル開発とは開発工程を短いサイクルで繰り返し、柔軟な仕様変更に対応できることが特徴の開発手法です。近年主流な開発手法としてあらゆる現場で採用されるようになり、ニーズに応えるスピーディーな開発が可能になりました。
アジャイル開発のメリットを最大限に生かすには、ユーザーニーズをシームレスにプロダクト開発側へ連携することが重要です。そのため、マーケティング分野と開発分野にまたがるPdMの存在が重宝されています。
先にご紹介したとおり、PdMはプロダクトを通して企業利益や顧客満足度を向上させる役割を担います。この目的を達成するには、幅広い領域の業務を担当しなければなりません。ここでは、具体的なPdMの仕事内容について見ていきましょう。
開発する新規プロダクトの企画立案を行います。まずはターゲットを明確化し、ニーズを調査しながら求められるプロダクトのコンセプトを検討していきます。また企業の経営戦略やブランディングなども考慮しなければなりません。
プロトタイピング(試作)を行い、実際にユーザーに使用してもらって使用感をヒアリングする場合もあります。プロダクト開発のスタートである企画がきちんと作り込まれていないと、後工程で大幅な修正が必要になりかねません。検討・改善を繰り返し、より良いものに仕上げます。
PdMは良いプロダクトを制作するだけでなく、ターゲットへ適切にアピールして販売目標を達成し、プロダクトを継続的に成長させる必要があります。目標達成のため戦略を策定することもPdMの重要な仕事です。市場を調査してKPIを設定し、定期的に評価・目標の見直しを行います。
またプロダクトのロードマップを作成することも重要な仕事です。ロードマップとは、プロダクトを時間経過とともにどのように進化させるかを決定する活動計画のことです。リリースまでのタスクや新機能の追加などの短期的な目標と、数年後のビジョンなどの長期的な目標を設定します。
プロジェクト全体で共有し、メンバー全員が方向性をすり合わせながら短期的な取り組みが長期的なビジョンと一致しているか定期的に確認する目的があります。
プロダクトをリリースした後は、機能の効果測定を行い分析します。課題が見つかった場合は解決するための施策を検討・実施し、長く使用してもらえるプロダクトへ成長させます。
プロダクトのライフサイクルは導入期・成長期・成熟期・衰退期に分類されます。段階に応じて実行すべき施策も変わるため、自社のプロダクトが現在どの段階にあるのか正しく認識しなければなりません。
リリースしたら終わりではなく、市場の状況を見極めながら仮説検証を繰り返し継続的にグロースさせていくこともPdMの重要な仕事です。
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仕事内容が多岐にわたるPdMには、具体的にどのようなスキルが求められるでしょうか?ここからは、PdMに必要なスキルについて解説します。
プロダクトの開発から販売までには開発メンバー、経営層、協力企業、ユーザーなど多くの人が関わります。全体をけん引するPdMには、高度なマネジメントスキルが必要です。
最適な計画を立て、メンバーそれぞれが自分のやるべき仕事をスムーズに実行できる環境をマネジメントします。そのためには各関係者と良好な関係を築き、巻き込んでいくためのコミュニケーションスキルも重要です。
またプロジェクト進行中にも予定外のさまざまなトラブルが発生することは少なくありません。PdMにはあらゆる状況でも柔軟に対応し、進捗を管理するスキルや課題解決スキルも求められます。
PdMには単純なプロダクト開発だけでなく経営目標の達成も求められるため、マーケティングスキルも必要です。開発したプロダクトを世間に広く認知してもらうため、市場を調査・分析してニーズを把握し、プロモーションを企画して実行します。
他社よりも効果的なマーケティング施策を行うことで、売上につながり競争力を高めて目標達成を実現することが可能です。
PdMが実際に手を動かしてシステム設計や開発を行うことはほとんどありませんが、プロダクトの企画やユーザーの課題解決を考える上では設計・開発についての知識とスキルが必要です。課題への深い理解やアイデアの発想には、基礎的な知識が前提となります。さらに企画段階での実現可能性やリソース・コストの算出を行う際にも必要です。
また現場のエンジニアやデザイナーと技術的な会話ができれば、コミュニケーションにも役立ち信頼を得られるでしょう。現在エンジニアとして働いている方であれば、経験を存分に生かせます。そのためPdMはエンジニアのネクストキャリアとして狙える職種です。
プロダクトにおいてもっとも重要とも言えるのがユーザー視点です。ユーザーは使いやすく、価値のある体験ができるプロダクトを選びます。
そのためプロダクト全体の最終決定を下すPdMには、UI/UXデザインのスキル・観点が必要です。優れたUI/UXを常に意識することが販売促進にもつながるため、必須のスキルと言えるでしょう。
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では、実際にPdMとして働くにはどのようなキャリアパスを描けばよいのでしょうか?
企業において重要な役割を担うPdMには、経験豊富な人材が求められます。そのため未経験あるいは経験の浅いエンジニアが今すぐに目指すには少しハードルが高いかもしれません。しかし開発知識はPdMにとって必須と言えるため、プロダクトの開発に携わり多くの経験を積むことが大切です。
現場で多くの開発経験を積み、PLやPMのポジションも経験できればPdMへの可能性は大きく広がります。自社で成果を上げ希望を出す、もしくは経験をアピールしてPdMを募集している企業へ転職することが一つの方法です。
PdMには幅広い分野の知識が必要なため、現在の職種でPdMに必要な知識をすべて身につけることは難しいかもしれません。PdMになるために必須の資格などは特にありませんが、不足している知識を補うために資格取得に励みスキルアップすることもおすすめです。PdMを目指すうえで役に立つ資格を三つ紹介します。
・ITストラテジスト試験
経営戦略に基づいてIT戦略を策定し、高度に活用できる戦略家を目指せる
・システムアーキテクト試験
システム開発の上流工程を主導し業務ニーズに適したITグランドデザインを行う、上級エンジニアに必要な知識が身に付く
・プロジェクトマネジャー試験
環境変化に柔軟に対応し、プロジェクトを的確に成功に導くマネジメントスキルが学べる
どれも難易度の高い資格ですが、体系的な知識が身に付くとともに、資格取得によって知識の証明ができます。
PdMの需要は今後ますます高まることが予想されており、将来性は高いと言えます。その主な理由は以下のようなポイントです。
社会情勢は感染症の流行や働き方改革の影響によって大きく変化しました。今後も生活スタイルや消費行動に至るまで継続的な変化が予想されます。そのため変化に対応し続ける新たなプロダクトの開発は企業にとって大きな価値を持ちます。
今後さらにPdMの認知が広がるにつれて、企業にとっての重要性も認識され需要は高まり続けるでしょう。
IT技術の発達によって、あらゆるプロダクトの利便性は飛躍的に向上しました。ほとんどのプロダクトに利便性が保証される中で、自社のプロダクトを一歩リードさせるにはユーザーが価値のある体験をできることが鍵になります。
実現するにはユーザーのニーズを継続的に調査し、変化に対応して課題に向き合い続けられる強いチームを構築することが企業にとって重要です。そのため、これを実現するためのマネジメント力を持つPdMの存在が求められています。
PdMはプロダクトの企画から販売、戦略やロードマップの策定まで携わり、責任者としての役割を担うポジションです。社会の変化やユーザーニーズに柔軟に対応するプロダクトの開発は企業の成長に欠かせないため、非常に将来性が高い職種でもあります。
PdMはプロダクトの成功を左右する重要なポジションであるため、豊富な経験やスキルを持つ人材が求められます。その分大きな決定権が与えられるため、自分の働きが企業の成長に直結するやりがいを感じられるでしょう。エンジニアとしての経験を生かしキャリアアップを目指す方は、選択肢の一つとしてPdMを検討されてみてはいかがでしょうか。
文/江副杏菜
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