type編集長が注目企業の人事にインタビュー
採用の裏側「エンジニアの代わりに聞いてきます!」総合転職サイト『type』編集長が、エンジニアの転職先として人気度・注目度が高い企業の人事に採用の裏側を取材。選考プロセスや「今」欲しいエンジニア像について、転職者が聞きにくいアレコレを代わりに聞いています!
type編集長が注目企業の人事にインタビュー
採用の裏側「エンジニアの代わりに聞いてきます!」総合転職サイト『type』編集長が、エンジニアの転職先として人気度・注目度が高い企業の人事に採用の裏側を取材。選考プロセスや「今」欲しいエンジニア像について、転職者が聞きにくいアレコレを代わりに聞いています!
本連載2回目に登場するのは、楽天グループ株式会社(以降「楽天」)。
インターネットショッピングモール『楽天市場』をはじめ、あらゆる分野で70以上ものサービスを提供している楽天。国内の楽天会員数は1億以上、『Rakuten』は世界30カ国・地域を拠点として、世界中に広がっている。
多様なビジネスを展開する楽天が求めるのはどのようなエンジニアなのか。そして、そのエンジニアを選考過程でどう見極めているのか。
type編集長が、同社で中途採用を担当する和田杏子さんと岡崎満明さんに聞いた。
General Manager, TECH Human Resources & General Affairs Department
和田杏子
2005年、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)に入社。カスタマーサポート、マーケティングを経て、開発部門へ異動。検索機能の開発チームにて、楽天市場の検索精度改善などを担当。2018年より現職。開発部門の人事総務として、開発職社員向けの人事制度の導入や研修プログラムの推進などに従事している
Office Manager, Developer Relations Office
岡崎満明
過去20年以上に渡って、Dell、アマゾン、レッドハット、マイクロソフト、Nutanixと米系IT企業で人事、主に採用チームのリーダー職を歴任後、2022年12月に楽天グループ株式会社に入社。デベロッパー・リレーションズ・オフィスの立ち上げに参画し、エンジニア採用の強化を担っている
【聞き手】
type編集長 三ツ橋りさ
2006年4月、株式会社キャリアデザインセンターに入社。転職情報誌『Womantype』の編集を経て、転職サイト『女の転職@type(現・女の転職type)』のUI/UX改善やサイトリニューアルなどに従事。13年04月~15年12月まで『女の転職@type(現・女の転職type)』の編集長に就任。産育休を経て16年11月より転職サイト『@type(現・type)』の編集長として復職。19年10月より2度目の産育休を取得し、21年5月に復職。21年6月からtype編集長に就任し現在に至る
楽天は非常に幅広い事業を展開されていますよね。全事業部共通で、採用したいエンジニアはどんな人物ですか?
おっしゃるとおり、楽天グループではECをはじめとしたインターネットサービスの他、クレジットカードや銀行といったフィンテックサービス、通信など、多様な分野で70以上ものサービス提供を行っており、独自の「楽天エコシステム(経済圏)」を築いています。
エンジニア採用の時に全事業部共通で重視しているのは、われわれ楽天社員の行動指針をまとめた「楽天主義」(下記画像参照)に一致する方なのかという点です。
中でも、大義を持って成すべきことに取り組み、工夫を重ねながら最後までやり遂げる「信念不抜 -GET THINGS DONE-」の項目と、具体的なアクション・プランをつくって仕事を進める「仮説→実行→検証→仕組化」という項目を体現できる方かどうかは重点的にお伺いしています。
先の読めない時代こそ、自分がやったことを客観的に見て、それが成功なのか、失敗なのかを判断し、次のアクションに向けて必要な分析と改善を図れる「検証力」は重要なスキル。そんな検証力が、自らプランを立て、物事を推進する原動力になるからです。
また、変化が多く、かつそのスピードも速い会社なので、柔軟性がある人かどうかも採用プロセスの中でお伺いしています。
書類選考では、どこを重視して見ているのでしょうか?
技術力と経験を拝見しています。過去にどのような技術を使い、どのような開発を、どの程度の規模感のチームでやってきたのか。そして、その中でどのようなポジションで、どのような役割を担ってきたのかなどを確認します。
開発言語やフレームワークだけが羅列されている書類を見ることがありますが、それだけで判断するのは難しいので、プロジェクトの規模や目的なども記載いただけると助かりますね。
「判断できない書類が多い」という話は人事の方からよく聞きますが、選考を通すか迷った場合はどうしているんですか?
ケース・バイ・ケースです。候補者の方がこれまでに使ってきた開発言語以外の情報が不足していたとしても、その言語を使って開発ができるエンジニアがマーケットに少ない場合、まずはお会いしてみることもあります。
ただ、基本的には「資料の目的を踏まえ、必要な情報をうまくまとめる」ことも楽天のエンジニアに求められるスキルの一つだと考えているので、それができているとより選考の上でプラスにはなりますね。
また、先ほどお話ししたとおり、当社のエンジニア採用では「検証力」を特に重視しているので、書類選考においても過去にどんな成果を出した方なのかということより、望ましい成果を出すためにどんな行動を取ったのかを重点的にお伺いします。
なので、行動した結果をどのように検証し、それを受けてどう仕組化していったのか、そういったプロセスが明確に書類に表現できていると面接でお会いしてみたくなりますね。
書類選考から狭き門になりそうですね……!
ありがたいことに、現在もたくさんのエンジニアの方からご応募いただいています。当社が求める技術力を備えていて、「楽天主義」の行動指針と照らし合わせてもマッチ度の高い方に面接にお越しいただくようにしています。
一次面接では技術面の確認を行うそうですね。具体的にはどのようにスキルをチェックするのでしょうか。
コーディングテストを実施しているので、まずはそこで求める技術力がある方なのかを確認します。
ただ、中にはコーディングテストを実施していない事業部もあり、その場合は現場のエンジニアが面接官を務めて、口頭で確認していますね。
例えば、どのような言語が使えて、開発プロジェクトでどのような役割を担ってきたのかなど、詳しくヒアリングしています。
時には、候補者の方の技術力を確認するためにホワイトボードにソースコードを書いてもらうこともあると、現場のエンジニアから聞いています。コードの書き方から、開発哲学や効率性、他者への配慮などの議論にもつながり、エンジニア同士で盛り上がることも多いようです。
書かれたコードを通して、エンジニアの思考が読み取れるのですね。なお、スキルは足りないけれど「楽天主義」は満たしている場合は、どう判断するのでしょうか。
事業部やポジションによりますが、絶対条件となる技術レベルを下回ってしまう場合はお見送りになるケースが多いです。
とはいえ、楽天主義にマッチする度合いが高い場合に通過となるケースもないわけではありません。
二次面接以降は、「自社にどれだけフィットするか」を確認していくと伺いましたが、技術力以上に見極めるのは難しそうです。どんなポイントから自社にフィットするかを判断するのでしょうか?
候補者の方のこれまでの経験について、「その場でどういう行動をとったのか」を聞き、判断させていただきます。
楽天主義にマッチする度合いをチェックする際は、ご本人の行動特性を知りたいので、「こうすると思います」という考え方ではなく、「実際に過去、どういう行動をしたのか」を確認していくようにしていますね。
例えば、成功パターンを聞く際、「その過程でどのような障害があって、そこをどう乗り越えたのか。その際、具体的にどう解決し、その中で候補者の方はどのような役割を果たし、具体的にどう手を動かしたのか」と、プロセスを詳細に聞いていきます。
職務経歴書でも、どんな成果を出したかより、どんなプロセスで成果を出した人なのかを確認するとおっしゃっていました。課題解決にどうアプローチするのかを重視するところが一貫していますね。
その通りです。楽天が考えるプロフェッショナルとは、物事をやり遂げられる人のこと。だからこそ、エンジニア採用でも遂行力を重視しています。
「最善を尽くしました」「こう考えました」と話す方も多いのですが、実際に「こういうアクションを取りました」と説明できる方のほうが、楽天のカルチャーにマッチすると考えています。
なお、「二次ではこの行動特性を聞いたから、三次では別の行動特性を中心に聞こう」というように、選考が進むに従ってマッチ度合いを深く見極めていく設計にしています。
最終的な合否はどのように決まるのでしょうか。
まず、選考に関わった面接官全員が「応募者の方のどこをどのように評価したのか」「なぜこの方を採用するのか」をテキストに起こします。
その内容を集めて最終レビューを実施。最終的には全面接官で話し合い、内定を出すかどうかを決めています。
たくさんの求職者を見てきた立場から、いい転職をかなえるためにエンジニアが意識的に取り組んだ方がいいと思うことは何ですか?
個人的な意見ですが、目的を持って技術力を高めることが非常に重要だと思います。
例えばPythonを学ぶにしても、その言語の習得だけを目的にするのではなく、「その言語を何に使いたいのか」を意識してみてください。
楽天主義にも「用意周到」という価値観がありますが、きちんと目的意識を持ち、そこにどうひも付けて技術力を高めるのかを考え、実行する。それができる方は、当社に限らずどんな企業からも「欲しい」と言われる人材だと思います。
そういう意味では、企業の銘柄やブランド力だけでなく、自分が本当に成長できる環境を選ぶことも大切です。
ここ数年、コードを書くだけでなく、それをビジネスにつなげる力がエンジニアには求められるようになってきました。また、今後その傾向はますます強まっていくと思います。
ですから、エンジニアであっても事業やサービスづくりにより深く関わり、挑戦できる土壌が整っている会社を選べるといいですよね。
楽天では、学び続けたいというエンジニアの皆さんの欲求に応え、新しいことに挑戦できる環境も整えています。
例えば、当社では楽天のエンジニアが講師となり、エンジニアに向けたトレーニングを提供しています。その際、楽天で使われている技術を、楽天の環境で使うことが可能です。
今の自分の仕事に関係がある技術はもちろん、上長の許可が取れれば、挑戦してみたい技術のトレーニングに参加することもできる。成長意欲のある方には良い環境だと思います。
最後に、入社後のミスマッチを防ぐためにエンジニアが心掛けるべきことがあれば教えてください。
選考は一方通行ではなく、お互いに評価をする場です。転職者側が企業を評価するために必要な質問は、ぜひ採用担当者にしていただければと思います。
口コミサイトなどに書かれた企業の評価は、あくまで書き込んだ人の主観。そうではなく、ご自身の目で企業を見極め、転職するかどうかを判断するためにも、気になることは直接企業に聞いた方が有益です。
また、転職者側がしっかり自分にマッチした会社かどうかを見極めるためには、まずは企業選びをする際に「自分の中でこれだけは絶対に外せない」というポイントを把握していただくことが大切だと思います。
転職活動中にいろいろな会社と話をする中で、どの会社もよく見えてしまうことはあるもの。だからこそ「この会社は自分の軸に対してどうなのか」と、客観的に判断してみることをおすすめします。
文/天野夏海 写真・画像/楽天提供 取材・編集/三ツ橋りさ、玉城智子(ともに編集部)
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