type編集長が注目企業の人事にインタビュー
採用の裏側「エンジニアの代わりに聞いてきます!」総合転職サイト『type』編集長が、エンジニアの転職先として人気度・注目度が高い企業の人事に採用の裏側を取材。選考プロセスや「今」欲しいエンジニア像について、転職者が聞きにくいアレコレを代わりに聞いています!
type編集長が注目企業の人事にインタビュー
採用の裏側「エンジニアの代わりに聞いてきます!」総合転職サイト『type』編集長が、エンジニアの転職先として人気度・注目度が高い企業の人事に採用の裏側を取材。選考プロセスや「今」欲しいエンジニア像について、転職者が聞きにくいアレコレを代わりに聞いています!
本連載の初回にtype編集長が話を聞きに行ったのは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」ことをミッションに掲げるメルカリ。
※2023年2月1日以降、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションを策定
世界基準の技術・組織・カルチャーを持つ真のグローバルテックカンパニーを目指し、ここ数年は多様なバックグラウンドを持つエンジニアを国内外で採用している。
そんなメルカリがいま求めるエンジニアとは、一体どんなスキル・マインドセットを持った人物なのだろうか。
選考プロセスの中で重視するポイントやエンジニアが後悔しない転職をかなえるための秘訣について、同社で中途採用を担当する橋本真帆さんと瀬谷麗花さんに聞いてみた。
株式会社メルカリ
Marketplace Talent Acquisition, Manager
橋本真帆さん
2018年11月にメルカリへ入社。コーポレートやエンジニアの採用担当などを経て、21年4月よりMarketplace Talent Acquisitionチームのマネージャーに就任
採用情報:Engineering/People
株式会社メルペイ
Fintech Talent Acquisition, Recruiter
瀬谷麗花さん
2018年10月にメルペイへ入社。HR・Merchant部門などのオペレーション業務を経て、21年7月よりメルペイのHRBP・リクルーターへジョブチェンジ。現在はエンジニア・コーポレート職を中心に採用を担当
【聞き手】
type編集長 三ツ橋りさ
2006年4月、株式会社キャリアデザインセンターに入社。転職情報誌『Womantype』の編集を経て、転職サイト『女の転職@type(現・女の転職type)』のUI/UX改善やサイトリニューアルなどに従事。13年04月~15年12月まで『女の転職@type(現・女の転職type)』の編集長に就任。産育休を経て16年11月より転職サイト『@type(現・type)』の編集長として復職。19年10月より2度目の産育休を取得し、21年5月に復職。21年6月からtype編集長に就任し現在に至る
「メルカリで働きたい」というエンジニアの方は多いですよね。
この1~2年で採用に変化はありましたか?
円安の影響で、以前と比べて海外国籍を持つエンジニアの採用が特に難しくなりました。
日本円に換算すると報酬が低くなったように見えてしまうので、「だったら違う国で働きます」と辞退されてしまうんですよね。
ここ1~2年に限った話ではないのですが、日本国内でのエンジニア採用も難しいですね。ありがたいことにご応募はたくさんいただきます。
その中から、私たちが求めるスキルやマインドを持った方を採用できるかというと、なかなか難しい。 近年、より難易度が高くなってきていると感じています。
採用に苦戦しているとは意外です。
やはり、高い技術力やミッション・バリューへの共感など「メルカリが求めるエンジニア」がそもそもマーケットに少ないことが原因なのでしょうか?
その通りです。ただ、コロナ禍を機に『YOUR CHOICE』という制度を導入してから、時間や場所を問わず働けるようになったので、採用できるエンジニアの居住地も関東近郊から全国へと広がりました。
そういう意味では、採用のチャンスは以前より広がっているのかなと思いますね。
採用したいエンジニアとは、具体的にどんな人物なのでしょうか?
事業の成長に貢献できる技術力があることや当社のミッション・バリューに共感していることは大前提として、特に重視しているのは多国籍の方が集うようなマルチカルチャーな環境で働いたことがあるかどうか。
あとは、開発のリード経験ですね。より難易度が高い開発を、リーダーシップを持って経験してきたかどうか。そんなところを選考では見させていただいています。
加えて、私が担当しているメルペイ・メルコインでは不確定要素が多く、組織や開発体制の変更が起こりやすいので、変化の多い環境の中で自律的に働けたり、変化自体を楽しめるマインドを持っていたりするような方だとフィットしやすいと思いますね。
サービスや企業の成長フェーズによって、求める人物像も変わってきましたか?
そうですね。創業期や会社が急成長していた頃は、ミッション・バリューに共感していて、即戦力として活躍できるエンジニアの方を多く採用していました。
ですが今は、組織やサービスを中長期的に大きくしていけるようなシニアクラスのエンジニアを特に求めています。
昨年から、メルカリでは技術基盤強化に本腰を入れて取り組んでいますよね。その中で、特に活躍できるエンジニアは?
複雑な技術的課題の解決を楽しめる人ですね。
不確定要素が多い中で言われたことを単にやるのではなく、どうすれば課題を解決できるか自ら考えて実行することができる方を採用したいと考えています。
続いて、選考プロセスのことを詳しく聞かせてください。最初の書類選考では、どこを重視して見ているのでしょうか?
社内で必要とされる技術力があるかどうかという点と、これまで何をご経験されてきたのかという点です。
技術力については、レジュメとあわせてGitHubの内容を人事および現場エンジニアで確認して判断するようにしています。
あとは先ほど橋本からもありましたが、多国籍メンバーと働いたことがあるかどうか、リード経験があるかどうかなど、現在特に重視している条件と合致するかどうかを確認します。
また、メルペイ・メルコインでは、マイクロサービス経験や金融業界経験は必須ではないですが、あれば入社後のキャッチアップやミッションへの共感といった観点でプラスになることが多いです。
もちろん、必ずそれらがなければいけないわけではありませんし、そういった経験がなくても活躍しているメンバーはたくさんいるので、あくまでプラスαではありますが。
どんなレジュメなら「通したい」と思いますか?
通す判断がしやすいのは、応募者の方の実績が分かりやすく記載されている場合ですね。
時々、すばらしい実績があっても、それがチームの実績なのか個人の実績なのかが分からない書き方になってしまっている方がいます。それはすごくもったいないなと思いますね。
そういう場合どうするんですか? 気になりはするけれどレジュメだけだとよく分からない場合、そこで落とすのか、とりあえず会ってみるのかでいうと?
まずは会ってみますね。あるいは、ここをもっと詳細に教えてくださいという感じで、レジュメの再提出をお願いすることがあります。
やはり、レジュメからその人がこれまでに果たしてきた役割だったり、実力値だったり、そういったものが具体的にイメージできると一緒に働くイメージを持ちやすくなります。
もしレジュメに書ききれない場合は、ご自身のブログやGitHubなど、技術力やご実績が分かるような補足情報を添えていただけると助かりますね。
メルカリでは、業務上でドキュメントに情報を起こしてテキストでコミュニケーションするカルチャーがあるので、文章で正しく伝える技術は入社後も問われます。
なので、その観点でもレジュメの精度は重視していますね。
メルカリさんは採用関連の情報をオウンドメディア「メルカン」などでも積極的に発信されていると思うので、しっかり面接対策をしてくる人も多いと思うんです。それについてはどう感じていますか?
そうですね、日本のエンジニアの方は事前に記事などを読んだ上で、対策をされている印象を受けます。
海外国籍の方が何も対策していないというわけではないのですが、日本版のプロダクトしかないですし、英語での情報発信も日本語のものと比べると少ないので、日本人よりも対策しにくいとは思います。
でも、ミッション・バリューへの共感は口だけではなく、本当にそのバリューを体現した仕事ができる方なのか、再現性があるのかというところを面接で見るようにしているので、対策だけが重要というわけではありませんね。
とはいえ、面接の短い時間の中で候補者の本質を見抜くのは難しくないですか?
「STAR」という面接手法を使い、「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」という三つのバリューに沿った質問をしていきます。
それで、過去にどれだけそれらのバリューに沿った行動ができているかというところを、項目ごとに評価していくんです。
要は、言葉だけではなく、過去の行動にそれがあらわれているかどうかを見るので、偽りにくいとは思うんですね。
なるほど、そうやって候補者の本質的な価値観や、行動に再現性があるかどうかを判断するわけですね。
面接する側もスキルを問われそうですが、そこはどうしているんですか?
面接官を務める人には、会社が用意したトレーニングを受けてもらっています。
また、個人の偏見で候補者を判断しないよう、『無意識バイアスワークショップ』なども受講してもらっています。
かなり徹底していますね。
面接は基本的には3回程度ということですが、各面接では何を重点的に見ていますか?
一次面接は、主に技術力などスキルフィットするかどうかを現場のエンジニアが見て判断します。二次は、マネジャーが面接官を務め、ミッション・バリューに共感して働ける方なのかどうかを見ていますね。
最終は役員クラスとの面接。二次で確認しきれなかったことや、ミッション・バリューに沿った事業貢献ができる方なのかを改めて判断します。
ちなみに、ミッション・バリューへの共感度は非常に高いけれど、技術力が足りない場合はどう判断しますか?
「採用して育てよう」なのか、「今回は見送ろう」となるのか。
基本的には「お見送りする」判断になると思います。
ただ、候補者の方とは選考が終わってもつながりを保ち続けるようにしているので、「また応募してくださいね」「またこちらからご連絡しますね」と伝えることがあります。
他の環境で実力をつけてもらい、再度応募してもらえるのは大歓迎です。
メルペイ・メルコインでは、チームの状況によって求める水準も変化するので、あくまでも技術課題を通過している前提ですが、面接でソフトスキルの高さや、ミッション・バリューへのマッチが高いことが確認できれば採用する場合もあります。
例えば、メルペイのバックエンドではGolangで開発をしていますが、選考時にGolangが即戦力レベルではなかったとしても、キャッチアップの素養が確認できれば、採用して育成するということもあります。実際、Golang未経験で入社して活躍しているメンバーはたくさんいますよ。
ここまでのお話を聞いて、メルカリでは採用する候補者をかなり厳選していること、面接官の育成にも注力していることが分かりました。
でも、実際のところ採用のミスマッチは起きていないですか……?
正直にお伝えしますが、ここまで徹底していてもミスマッチ採用は稀にですが起こります。思ったより技術力がなかった、カルチャーフィットしなかった、などいろいろありますね。
なぜそうなってしまうと思います?
先ほど話にあがりましたが、面接対策がしやすいからこそ「メルカリ用の自分」をつくってきてしまう方もいるので。
ミッション・バリューへの共感を示すためのエピソードを用意してきてくれるのはいいのですが、それが実際よりも“盛っている”内容だった場合、入社後に期待値と実力値が合わず双方苦しむことになってしまいます。
後悔しない転職をかなえるためには、自分の気持ちや実力を偽らないことが大事だと。
はい。ほとんどの方は「メルカリのミッション・バリューに共感して」とおっしゃるのですが、本当にそう思っているかどうかはちゃんとご自身に問い掛けてみていただきたいですね。
内定をもらいたいからといって、無理に合わせなくていいと思います。
私たちも、同じような価値観の人ばかり採用したいとは思っていませんし、その方なりのすばらしい価値観があって、「これからのメルカリ」のカルチャーを一緒につくってくれそうな方なら全く問題ない。むしろ歓迎する存在です。
ご自身の次のステージとしてメルカリがふさわしいかどうかを、自分を偽らずに見極めていただきたいですね。
あとは、メルカリで長く働き続けられる方はサービスそのものより、コーポレートミッションに共感してくれている人が多いと思います。
「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションですね。
はい。このミッションは揺るぎないものですが、プロダクトやサービスは増えることもあれば、なくなることもある。実際、メルカリではこれまでに、さまざまな新規事業をつくり、そのうちいくつかは撤退も経験しています。
ですから、「このサービスが好きだから」という理由だけだと、それがもしなくなったときになぜここにいるのかが分からなくなってしまう。
たとえ、サービスがうまくいかない場合だったとしても「じゃあ、次はどういう手段でこのミッションを実現しようか」と前向きに考えられるかどうか。それ次第で、結果的に長く活躍できるのだと思います。
なるほど。新しい事業を始めるのも撤退するのも、いずれも大胆な決断ができるのはメルカリらしさとも言えますね。
はい。何をするかより、「何のためにするか」に共感できる企業に入社するほうが、きっとエンジニアの皆さんにとっても後悔のない転職になるのではないかと思いますね。
確かにその通りですね、お二人とも本日は貴重なお話ありがとうございました!
文/まゆ 写真・画像/メルカリ提供 取材・編集/三ツ橋りさ、栗原千明(ともに編集部)
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