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選考途中での辞退が多発。リーダークラスのエンジニア採用、候補者の志望度はどう上げる?【戸倉彩・あらたま・ばんくし/聴くエンジニアtype Vol.30】
売り手市場と言われているエンジニア採用。特にプロジェクトをリードしていくリーダー候補となれば、各社から引く手あまただろう。
今回は、おそらく多くの採用担当が経験したことがあるであろう「選考辞退」がテーマ。内定を出す前に辞退されてしまう……という悩みに、エムスリーのVPoE・ばんくしさん、戸倉彩さん、Cake.jpの新多真琴(あらたま)さんが回答する。
【MC】
M3, inc. VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
【Speaker】
日本アイ・ビー・エム株式会社 カスタマーサクセス部長
戸倉 彩さん(@ayatokura)
【Speaker】
Cake.jp CTO
新多真琴(あらたま)さん(@ar_tama)
【今回の相談】
即戦力となるリーダー候補のエンジニアを採用したいのですが、内定を出す前に辞退されてしまうことが多いです。面接時にエンジニアの志望度を上げることができればと考えているのですが、アドバイスをいただけますか?
候補者とどれだけ向き合えている? 辞退の理由にも目を向けて
河合:これはむしろ私が聞きたい(笑)
あらたま:私も教えてほしい~!
河合:この相談で深刻だなと思うのは、内定を出す前に辞退されてしまうというところ。面接の途中で違和感があったのかなという感じがします。
みなさんは選考の中で工夫していることはありますか?
あらたま:私は採用プロセス全体を通して、どれだけ相手の視点に立てるかを大切にしています。
例えば自分が求職者だったとして、カジュアル面談を受けて「ちょっと面白い会社かも」と思ったタイミングですかさず「選考どうですか」とゴリ押しされると「あっ、ちょっと待ってください」という気持ちになったりするじゃないですか。相手にとって一番良い選択肢を一緒に考える姿勢を取らないとみんな幸せになりませんよね。
ただ、自分がそれをできているかというと……(笑)
河合:確実に内定辞退率を下げる方法というのはないので、難しい話ですよね。戸倉さんは工夫していることはありますか?
戸倉:大企業や外資系の企業だと、選考はある意味チームワーク。求職者の方は並行して数社の選考を受けている可能性があるので、社内でコミュニケーションを取りながら早く決断をして結果をお伝えできるように調整する、時間が掛かるようであれば、フォローなどの対策が必要なのではないでしょうか。
河合:「相手のことを考える」というのは採用フローにおいてすごく重要ですよね。
私も前職で半年ほどHRのリーダーをやっていたのですが、「相手を知る」ことを始めてから内定が増えてきた実感がありました。
例えば面接ごとにアンケートやヒアリングを入れてみても良いですし、履歴書やポートフォリオをしっかり読み込むのでも良い。事前に「この人はきっとこういう人だろうな」と考えて、面接で答え合わせをするんです。結構重めのプロセスではありますが、ただ面接をするだけだとリーダー候補は採用できないだろうなあと思いますね。
リーダーになる人って、組織やチーム、技術に対してやりたいことが明確にある人だと思うんです。なので、その人の要望と会社がその人に期待することがかみ合うかどうか見極める。そしてかみ合いそうなら上手く提案する、かみ合わないようであればそのことをちゃんと伝える……ということをやらないと、採用するのは難しいと思います。
河合:ところで、この相談者さんはエンジニアなんですかね? マネジャーとしてできることとエンジニアとしてできることは違うので、そこも気になりますよね。
あらたま:あとHRとしてできることも違いますしね。
河合:エンジニアだと、自分が面接した候補者に辞退されて悲しい気持ちになるというのはよくある話だと思います。もちろん辞退率を下げるための工夫を社内に提案するのは重要ですけど、本業がエンジニアであればそこまで強く気にすることでもない気がします。
HRだとこの部分をしっかり考えないといけないので大変だとは思いますが……。
あらたま:辞退理由も気になりますよね。
戸倉:そこが大事ですよね。
あらたま:辞退した人に聞いても本当の理由を教えてくれるとは限らないのが一番しんどい……。
河合:本当にそうなんですよね。アンケートをとっても「待遇」に偏っちゃったり。あと「カルチャー」という答えはもう少し深掘りしないとよく分からない。もし候補者と時間が合えば、おかわり面談ができれば良いんですけどね。
私も直近で転職活動したのですが、面接を受け終わった後は結構ストレートに辞退理由を言っちゃってました。やっぱり言わないと分からないことの方が多いので、候補者側にはできるだけ言って欲しいし、聞く側も聞く姿勢を大事にしないといけないと思います。
辞退の理由は、たいしたことではないケースもありますからね。「この人の言葉遣いが気になったので辞めます」とか。でも、それってその人に伝えないと変わらないじゃないですか。
あらたま:でも、「この人とはそりが合わなそう」と思ったとしてもなかなか言えないですよね。
河合:今後の関係とかもありますもんね。IT業界って狭いから。
あらたま:なので、さきほどばんくしさんが言ってくださっていた「相手のことをしっかり知って、相手とコミュニケーションを取れる土壌を作る」というのは、その後選考を進んでいただくにせよ、辞退されるにせよ、すごく素敵なアプローチだと思いました。
河合:コミュニケーションの量が倍増するので、大変だということを除けば良いアプローチなんですけどね。でも、リーダー候補となるとそれぐらい時間をかけないといけないとも思います。
リーダーってどの会社でも引く手あまたな状況だと思うので、本当に狙うんだったら一人一人に時間をかけるのは基本じゃないかと思います。
お二方とも仰っていますが「相手のことを考える」しかないですよね。
あらたま:内定辞退されてしまうことについてポジティブなものをひねり出すとすれば、面接が盛り上がり過ぎて、自分の「合う」「合わない」がすごく明確に理解できたからと言うケースもあるかも。面接を通じて解像度が上がっていくことによって自分の判断基準がシャープになっていった……みたいな。
河合:確かに。そういうケースもあるので、まさに「聞いてみる」ことが大事ですね。それは喜ばしいことでもありますし。
あらたま:そうですね。ミスマッチが減らせるということですからね。
河合:自社にとっても喜ばしいことだし、その候補者にとっても大きな成果を出すことにつながるだろうし。採用も大切だけど、候補者のことを思って一緒に喜怒哀楽できると良いですよね。
実際、ポジティブな離脱も結構ありますから。私自身、転職活動をする中で考え方が変わっていったんですよ。もともとAIを専門にしていたので、AIの組織長のポストを提案いただくことが多かったんですけど、AIの組織を見ているだけでは本来自分がやりたかった「より多くのエンジニアを幸せにする」ということが達成できないと気付いて。転職活動後半はEMやVPoEにシフトしていきました。
辞退されてしまうことに悩むのも大事ですが、大前提として「候補者が幸せになったら良い」という気持ちを持っておくのも重要なポイントだと思います。
あらたま:「ジャッジ」と「アトラクト」って本来両立させるのがすごく難しいと思うんです。なので、面接とアトラクトを完全に分けてみるのが良いかも。面接が終わったらHRの人に来てもらってアトラクトするとか。フィードバックもそのタイミングで取りやすくなるでしょうし。
河合:ジャッジとアトラクト、どちらも面接官がやるのは酷ですよね。それができたら一人にお任せしちゃえるんですけど、そんな人なかなかいないですし。
難しい相談でしたが、「相手のことを考える」という姿勢の部分と、ジャッジとアトラクトを分けることで「相手の話を聞く時間を作る」、「社内コミュニケーションをしっかりする」というところが大切なのかな、と思います。
次回は6月に実施した公開収録の様子をレポート予定。お楽しみに!
文/赤池沙希
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