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「エンジニアの幸せなキャリアって?」 当事者3人が明かすKaizen PlatformのCTO交代劇の裏側

働き方

    かつてリクルートにおいてWebマーケティング領域などで活躍していた須藤憲司氏、石橋利真氏。彼らによって2013年に米国で設立されたKaizen Platform, Inc.(以下、Kaizen)はWebサイトのA/BテストなどWebマーケティング改善につながるプロダクト群を提供し、わずか4年弱の間に国内外で成果を上げ劇的成長を果たしてきた。

    ところが昨年、そのKaizenの創業メンバーでありCTOを担っていた石橋氏が突然辞任。代わって新CTOとして入社したのが、グリーやスマートニュースでエンジニアとしても、事業開拓リーダーとしても活躍してきた渡部拓也氏だった。

    この突然のCTO交代劇以来、Kaizenは即座に成長を加速させた。いったいCTO交代の何がプラスに働いたのか? そして、エンジニアのキャリアのゴールの1つとさえ思われているCTOの存在価値や意義とは何なのか?

    当事者である前CTO石橋氏、現CTOである渡部氏、そしてCEOの立場からこの交代劇を見守っていた須藤氏の3人に赤裸々な本音を語ってもらった。

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    Kaizen Platform, Inc. Co-founder & CEO
    須藤憲司(すどう・けんじ)氏

    1980年生まれ。2003年に早稲田大学を卒業後、リクルート入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立ち上げ。リクルートマーケティングパートナーズで執行役員として活躍の後、13年にKaizen Platform, Inc.を米国で創業。

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    Kaizen Platform, Inc. Co-founder(前CTO)
    石橋利真(いしばし・としまさ)氏

    1999年リクルートメディアコミュニケーションズに入社、Web 開発エンジニアとしてリクルートの Web サイトおよびバックエンド運用・入稿管理システムの開発に携わる。2006年にリクルートへ転籍し、08年 同社初の iPhone アプリ『ホットペッパー for iOS』を企画開発。13年3月Kaizen Platform, Inc.を CEO 須藤氏と共に立ち上げ、国や会社の境界を越えた適材適所の実現に向かって進みはじめる。

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    Kaizen Platform, Inc. CTO
    渡部拓也(わたべ・たくや)氏

    2004年、一橋大学 商学部卒業。同年NTTコミュニケーションズに入社、その後、グラファイトやニフティなどでエンジニアとして活躍。10年にグリーにてNative Game事業本部で開発と事業の責任者を務める。14年スマートニュースで広告プロダクトマネージャを務め、16年10月にKaizen Platform, Inc.参画、CTOに就任。

    2月21日(火)に開催される『第6回 キャリアごはん』に、渡部氏が登壇決定! さくらインターネットの田中邦裕氏と共に「エンジニアと非エンジニア職のコミュケーション学」について語っていただきます!

    会議室をざわつかせたCTOの「辞めたい」宣言

    (左から)Kaizen Platform, Inc.の現CTO渡部拓也氏、CEO須藤憲司氏、前CTO石橋利真氏

    (左から)Kaizen Platform, Inc.の現CTO渡部拓也氏、CEO須藤憲司氏、前CTO石橋利真氏

    ――夏のある日、会議でなんの前触れもなく石橋さんが宣言したことがCTO交代劇の始まりだと聞きました。本当なんですか?

    石橋 本当ですよ。「みんな、ごめん!俺、CTO辞めたい!!」って。

    須藤 そしたらその場にいた人たちがザワザワしてね。「お父さんご乱心!」みたいな(笑)。

    石橋 別にビックリさせようとしたわけじゃなかったんですけどね。2016年に入った頃から考えていたんですよ。

    ――それはざわつきますよね。一体なぜCTOを辞めることにしたんですか?

    石橋 起業してからとにかく突っ走ってきた結果、Kaizenは会社として一気に成長して、社員は100人を越えました。それで新たな案件も増えてきて、それまでの体制では回らなくなってきた。あっと言う間に「変革」を必要とする段階に来たんです。

    須藤 「変革」が必要だっていう危機感は社内全員が感じていましたよね。

    石橋 そう。でも、社内のみんなが変革を必要とする中で、私はCo-founderとしてその変革が向かうべき場所である「10歩先」のことは語れても、そこに到達するための1歩目、2歩目を示すことができなかったんですよ。「よ~し、今日は事業目標を決めよう!」ってみんなで徹夜の会議をしても、自分はなんにもアイデアを出せない。それがすっごく苦しくて。

    ――そうだったんですね。

    石橋 CTOとしてガムシャラにやってきた一方で、自分はいつの間にか開発の現場から少しずつ遠ざかってたんですよね。気付いたら今自分たちがお客さんから何を求められていて、そこにはどういう課題があって、それをクリアするためにはどういうことをしなければいけないのか全然想像がつかなくなっていったんです。でも、もう一度現場を見ることができたら、1歩目、2歩目を自分の言葉で言える確信はあった。それで「俺、CTO辞める!」に至ったんです。

    ――なるほど。CTOを辞めると決めた時、後任の候補はいたんですか?

    石橋 いや、まったく(笑)。でも、なんとなく外の人がいいだろうなっていう気はしてました。その時社内にいたエンジニアや須藤も含めて、誰もその1歩目を具体的に言えなかったから。「僕らだけでは埋められない、決定的なピースがある」という気持ちがあったんですよ。そのピースを埋めてくれる人がCTOをやるべきだし、そうすれば私は私で、自分が得意とする役割に没頭できる。それによってこの会社の次の変革に貢献できる。

    須藤 次のCTOに何かを受け継ぐことは期待してませんでしたね。むしろ、新しい人が来て、ひっちゃかめっちゃかになることを望んでました。だってそっちのほうが楽しいじゃないですか。会社として、全く新しい風が欲しかったんです。

    エンジニアを憧れの職業に。Kaizenに託した夢

    ――石橋さんがCTOを辞退した頃、渡部さんはどんなことをしてたんですか?

    渡部 スマートニュースでエンジニアをしてましたね。

    ――どうやって新たなCTOへの勧誘を受けたんですか?

    石橋 うちの瀧野(諭吾/プロダクト責任者)と知り合いだったんだよね?

    渡部 そうです。瀧野はグリー時代の同僚で信頼していた仲間なんですが、その後Kaizenに入社していました。その彼に「そろそろ新しいことをやってみたいよね」みたいな話はしていたんです。そうしたら「よかったらKaizenでCTOやらない?」ってチャットが飛んできた。

    ――渡部さんは元々「CTOになりたい!」みたいな志向はあったんですか?

    渡部 いや、全然。むしろ当時はエンジニアを辞めようと思ってましたから。

    一同 !!!!!

    石橋 いいねえ(笑)。そうこなくちゃ。

    渡部 これまでの数年でエンジニアのキャリアに絶望していたんですよね。魂を込めてモノを作ることは好きだったんですけど、今の日本でエンジニアを続けていく以上、もっとビジネスサイドなモノづくりをしないとインパクトを残せないなと。 そんな中でCTOになってしまったら、袋小路じゃないですか。

    ――では、なぜKaizenの人たちと会ってみることにしたんですか?

    渡部 エンジニアを辞めようと思っていることは瀧野にも相談していたんです。それにも関わらずCTOの話をしてきたから、これはなんかあるなって思って。

    ――実際に須藤さんや石橋さんと会ってみてどうでしたか?

    渡部 この人たちバカだなって(笑)。もちろん、良い意味で。Kaizenにいるエンジニアって一匹狼的な動きもできて、いくらでも独力で生きていけそうな優秀な人ばかり。そういう人たちが好きこのんで集団を作って、そこでプロダクトに魂を傾けている姿を目にしたんです。今持っている技術を小出しにしていくだけで楽に生きていける人たちなのに、そういう小さなゴールに満足していなくて、「誰にも作れないモノを俺たちで作る!」って汗をかいてる。そりゃあ心が動きますよね。「ここでならエンジニアをやりたい」と思ったんです。

    ――なるほど。とはいえ、一回エンジニアを辞めようと思ったことへの葛藤はなかったんですか?
    エンジニアの未来に、もう一度期待したいと話す渡部氏

    エンジニアの未来に、もう一度期待したいと話す渡部氏

    渡部 ありましたよ。でも、須藤さんと話して、改めてエンジニアのキャリアに期待してみたくなった。「せっかく日本でエンジニアを続けるなら、エンジニアという職業を若い世代の人たちが目をキラキラさせながら目指してくれるようなものにしたい。その夢のためにこのKaizenという“ハコ”を使わせてほしい」って意を決して伝えたんですよ。

    須藤
     言ってたよね。

    渡部
     そしたらノールックで「ん、いいんじゃない?」って(笑)。Kaizenでそういう会社作りができなかったら、もうエンジニアはやらない。ここがエンジニアとしての最後のチャンスかなって思ってるんです。

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