・CCoEの構造は、組織の変化に応じて進化し、変化します。
・クラウドを自社の製品として扱い、アプリケーションチームのリーダーを自身の顧客として扱います。
・企業文化をCCoEが行うあらゆる活動に組み込みます。
・組織変更管理はビジネス変革の中心です。企業文化・規範を変革するために意図的かつ的を絞った組織変更管理を行います。
・常に変化する考え方を当然とし、アプリケーション、IT システム、ビジネスの方向性の変化を受け入れます。
・オペレーティングモデルの決定により、人々がどのようにビジネスの成果を達成するかが決まります。
CCoEとは? クラウド活用を推進するプロ集団が注目される理由や役割、求められる人材について解説
多くの企業でビジネスにおけるクラウド活用が重要視されるようになりました。しかし、クラウド活用・導入に取り組んでいるものの、思うようにいかない企業も少なくないでしょう。
効果的なクラウド活用には、組織を横断した全社的な取り組みが必要不可欠。そこで注目されているのが、CCoEというクラウド活用を推進するためのガバナンス管理や人材育成などを行う全社横断型の組織です。
この記事では、CCoEが注目される理由やその役割、必要な人材などについて詳しく解説します。
CCoEとは?
CCoEとは「Cloud Center of Excellence」の頭文字を取った言葉で、企業などにおいてクラウド活用を推進するための組織のことです。
そもそもCoE(Center of Excellence)とは、ある専門領域において組織横断的な取り組みを遂行するために、優秀な人材やノウハウを一つの拠点に集約して組織化すること。よってCCoEは、クラウド活用を推進するためのCoEを意味します。
クラウド戦略を立案・実行するために必要な知見や経験を持つ人材や経営資源などを集約。全社を横断してクラウドの導入・移行・活用を中核的に担う部署や拠点です。
CCoEの原則
AWS(Amazon Web Service)では、CCoEを構成するための重要な指針として次の六つの原則を公開しています。
つまりCCoEは設置することが目的ではなく、組織やビジネスの方向性の変化を受け入れて、常に変化・進化していくことが重要であることが分かります。そのため、変化を予測した柔軟な組織設計が求められるのです。
CCoEが注目される理由
なぜ今CCoEが注目されているのでしょうか。考えられる理由を三つ紹介します。
DX推進に伴うクラウドシフト
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用することで製品やサービスだけでなく、業務プロセスや組織文化まで変革することです。市場変化の急速なスピードに対応するために、今やあらゆる業種・業態の企業でDXが求められています。
このDXの実現には、クラウドの活用が欠かせません。なぜなら、現在でも多くの日本企業にはレガシーシステムが残っているからです。
レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築されたシステムのことを指します。レガシーシステムの運用には膨大な手間やコストがかかるため、DXで求められる大規模でスピーディなデジタル変革に対応できません。そのため、運用コストが低く柔軟性に優れたクラウド環境への移行が求められています。
このようなクラウド化の重要性は広く認識され始めているものの、既存のシステムや業務を停止せずに新たな環境へ移行するには高度な設計や技術が必要となるため、実際に実行することは簡単ではありません。
よって、クラウドに関する深い知見を持つ人材やノウハウを集約し、全社的にクラウド活用を推進していくCCoEの存在が求められています。
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全社的なクラウド導入の活性化
同じ企業内であっても、部署によってクラウド活用に対する積極性に温度差があるケースが見られます。
全社で足並みがそろっていないと、スムーズなクラウド導入の弊害になり得ます。このような場合、CCoEがリーダーシップを取って全社的にクラウド推進を働きかけることで、組織全体でのノウハウの蓄積やベストプラクティスの共有を実現することが可能です。優秀な人材の育成や社員のモチベーション向上にもつながります。
セキュリティーリスクの削減
従来のオンプレミス環境では、物理的にアクセスを制限することでセキュリティーを担保していました。
一方でクラウド環境では利便性を高められる反面、対策を講じなければ不正アクセスやシャドーITなどのセキュリティーリスクが懸念されます。
このような課題を解決するためにも、クラウド環境を理解して最適なセキュリティー施策を立案・実行するCCoEが求められています。
CCoEの役割
次に、具体的にCCoEが果たす役割について解説します。
クラウド導入・活用のリード
クラウド導入や活用全般において、組織全体をリード・サポートすることがCCoEの重要な役割です。クラウドの特性や各サービスの特徴・制約を理解したうえで、組織に適したサービスの選定・システム設計を実施します。
導入前に現場における課題を抽出することや、導入後に社員に対してシステムの使い方をサポートすることも重要です。
クラウド活用環境やルールの整備
クラウドを効果的に活用するために、環境やルールを整備することもCCoEの役割です。使用方法を社員個人に任せてしまうような環境では、十分な効果は見込めません。
まずは統一されたクラウド利用のガイドラインを定め、社内に周知して重要性を認識してもらうように働きかけます。また、全社的に必要な機能についてはCCoEがリードして共通サービスを導入・整備することで、部署間の連携にもつながりビジネスの効率化も期待できます。
ガイドラインのバージョンを管理し、定期的に見直してアップデートすることもCCoEの役割です。
セキュリティ施策の定義・強化
クラウド環境でもっとも懸念されるのが情報漏洩などのセキュリティーリスク。これを防ぐために、適切なアクセス権限などのセキュリティー方針を定義して管理することも重要です。
同時にクラウド環境で想定されるセキュリティーリスクを明文化。研修などを通してセキュリティー対策の重要性を組織全体に浸透させる必要があります。
ナレッジの収集・蓄積・共有
クラウド技術の進化のスピードは速いため、CCoEは常に最新の情報をキャッチアップする必要があります。この情報をもとに、社内の課題を解決するための状況に合わせたクラウド戦略を立案していくのです。
また、過去のクラウド導入・活用実績をナレッジとして蓄積することで、社内で同様の取り組みを行う際にスムーズに共有してサポート。さらに社内の活用状況の調査結果や社員からのフィードバックを受けて今後の改善に活用します。
クラウド活用人材の育成
社内でのクラウド活用を活性化させるために、クラウドの知識を持つ人材を多く育成することもCCoEの重要な役割です。研修やOJTの実施や、勉強会やイベントなどの学習機会を提供します。
CCoEに必要な人材
では、CCoEはどのようなスキルを持つ人材でチームを構成するのでしょうか。2018年に開催されたAWS Public Sector Summitでは、少なくとも次の部署の人員を加えるべきだと述べられています。
・リーダーシップ
・オペレーション
・インフラストラクチャ
・セキュリティ
・アプリケーション
事業内容や組織規模に応じて変化することはありますが、基本的に上記の役割を担う人材が参加すべきと考えられます。具体的な職種としては、次のようなポジションが当てはまるでしょう。それぞれ詳しく解説します。
プロジェクトマネジャー
CCoEにおけるリーダーとしての役割を担うポジションです。CCoEの立ち上げから、取り組みすべてをリードします。
ビジネス部門や開発部門とも連携し、目的を遂行するためにプロジェクトを進行します。
リードアーキテクト
クラウドアーキテクチャ全体の責任を持つポジションです。プロジェクトマネージャーと連携して要件を具体的な設計に落とし込み、技術的な方向性を設定します。技術面で組織をリードする存在です。
オペレーションエンジニア
クラウド上にアプリケーションを実装するための支援を行い、オペレーションの健全性に責任を負うポジションです。
ビジネスがどのように機能するかを把握し、アプリケーションの依存関係やクラウド移行による影響なども考慮して支援します。
インフラエンジニア
インフラ環境をクラウドへ移行する際に、IaaS・PaaS・SaaS、またハイブリッド・マルチなどのさまざまな選択肢の中から適切な環境を選択して実施するポジションです。インフラの全体像や依存関係、クラウドモデルへの理解が求められます。
セキュリティーエンジニア
クラウド環境に対応したセキュリティ施策の立案・実施を担当するポジションです。クラウド環境におけるセキュリティリスクや、社内のポリシー・コンプライアンスについて広く把握する必要があります。
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アプリケーションエンジニア
既存のアプリケーションのクラウド移行や、クラウド上での新規開発をリードするポジションです。自社のアプリケーション開発における課題や懸念を把握したうえで、確実にクラウド移行を進めます。
またアプリケーション利用者のフィードバックを開発者へ届ける役割も担います。
CCoEにおける課題
CCoEの必要性を感じている企業は多いものの、思うように構成できない、もしくはなかなか成果を上げられないといった声も多いです。その原因の一つとして、クラウドに関する知見を持つ人材の確保が難しいことが挙げられます。
特にクラウド活用を始めたばかりの企業にとって、人材不足は深刻な問題。そのため、クラウドの知見を持ちクラウド化を推進できるエンジニアの市場価値は非常に高まっています。
たとえばインフラやアプリケーション、セキュリティーなど、現在特定の領域を担当しているエンジニアでも、プラスしてクラウドの知見を深めることでさらなるキャリアアップを目指せる可能性が高くなります。
転職や幅広い案件への参画など、チャンスが広がるでしょう。
CCoEの一員として実力を発揮し、組織をリードできる存在へ
DXの必要性が叫ばれるなか、クラウドシフトやクラウド環境のセキュリティ強化を実現できるCCoEの需要は高まっています。
しかし、クラウドに関する知見を持つ人材は不足しており、十分なリソースでCCoEを構成し成果を上げられている企業は多くありません。そのため、今後さらにクラウドの知見を持つエンジニアの市場価値は高まるでしょう。
現在のスキルにプラスしてクラウドスキルを習得し、CCoEの一員として組織をリードすることもキャリアアップの選択肢の一つです。
文/江副杏菜
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