インヴェンティット 代表取締役社長
鈴木敦仁さん
1968年東京都生まれ。大学卒業後、小売・ゲーム・IT業界にて、営業・管理・経営企画・事業企画業務を経験。2011年にインヴェンティットに参画し、CFO、COOを経て16年に代表取締役社長CEOに就任
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どのようなサービスであっても、シェアを拡大するためには変わり続ける市場やユーザーのニーズを捉えることが必要不可欠。そして、その変化に対応し、サービスを育てていくのはエンジニアの仕事だ。
目まぐるしく変わるニーズへのスピーディーな対応は容易ではない。それを成し遂げている開発組織では、一体どのような工夫をしているのだろうか?
今回注目したのは、MDM(モバイルデバイス管理)サービス『mobiconnect』を提供するインヴェンティット。
同社にとってターニングポイントとなったのは2019年、全国の児童・生徒に対し1人1台のコンピューターの手配と高速ネットワークの整備を行う文部科学省による「GIGAスクール構想」の開始。そして、その後すぐに訪れたコロナ禍によるオンライン学習への急対応だ。
『mobiconnect』へのニーズは急速に増加。爆発的に増えたユーザー数やトランザクション数に対応し、『mobiconnect』は文教市場におけるシェア1位を継続した。
時としてピンチともなり得る時代の変化を追い風に変え、自らを成長させることのできるのはどのような開発組織なのだろうか。代表取締役社長CEOの鈴木敦仁さんに聞いた。
インヴェンティット 代表取締役社長
鈴木敦仁さん
1968年東京都生まれ。大学卒業後、小売・ゲーム・IT業界にて、営業・管理・経営企画・事業企画業務を経験。2011年にインヴェンティットに参画し、CFO、COOを経て16年に代表取締役社長CEOに就任
ーーインヴェンティットの主力プロダクトである『mobiconnect』とはどのようなサービスなのでしょうか?
『mobiconnect』は当社が2011年に提供を開始した法人向けモバイルデバイス管理(MDM)サービスです。企業や教育機関が従業員や生徒などのユーザーに配布したモバイルサービスの管理を容易にし、その安全性を高めるもの。紛失時における遠隔でのロックや初期化のほか、アプリの一括配布や利用環境の設定、フィルタリングなど多様な機能を備えています。
これまでMDMは、デバイス紛失時の保険的なツールとしての意味合いが強かった。しかし、それでは平時におけるユーザーのメリットがありませんよね。そこでわれわれはMDMをもっとユーザーの日常に寄り添う存在にすべく、さまざまな機能を業界に先駆けて開発してきました。
例えば、管理者が指定したアプリだけをアプリストアでダウンロードできる仕様は今でこそMDMサービスの標準となっていますが、これは当社が先陣を切って開発した機能の一つです。今やMDMは、単なる緊急時用のツールとしてではなく、モバイル端末の利便性を高めるユーティリティーツールとして市場で認知されつつあります。
ーー『mobiconnect』は、教育現場での導入実績においてNo.1の実績を持つとか。近年ですと19年に文科省から「GIGAスクール構想」が発表され、1人1台のコンピューターと高速ネットワークの整備が進められたことでニーズが高まったのではと推測しているのですが、実際は?
おっしゃる通りです。加えて、コロナ禍の到来によってGIGAスクール構想の完了までの目標期間が3年から1年に短縮。つまり、全国の初等中等教育を受けている生徒900万人に、極めて短期間のうちにモバイル端末が配布されることになったのです。
巨大な市場が瞬間的に発生した結果、『mobiconnect』の文教市場でのユーザー数は12万人から120万人に、トランザクション数はおよそ15倍に激増しました。
急激な市場の拡大はわれわれにとって大きなチャンスでしたが、同時にピンチでもありました。当時在籍していたエンジニアは20名ほど。膨大なアクセス数を耐え抜いた彼らの頑張りがなければ、今の当社はないと言っても過言ではないでしょう。
ーーそのピンチを、エンジニアたちはどのように乗り越えたのでしょうか?
まずは運用体制の強化に向けて、新たにSRE部を作りました。システムの稼働を常にモニタリングして、何か問題があればすぐに社内全体にアラートを出し、関係者同士で対策する会議を開くようにしたんです。
それまでは、バグなどの修正については3カ月に一度のバージョンアップの際にまとめて行っていたのですが、当時はほぼ毎日会議を行い、ウィークリーでアップデートを実施していましたね。
運用の規模が急激に変わったことにより、それまで何とかしのげていたところがインシデントの原因となるなど、ベースのアーキテクチャーに積み重ねてきたことの見直しをせざるを得なくなって。弾力的にサーバーのスケールアウトやスケールアップを繰り返したり、新たなテスト環境の構築や手法や工程の見直しと、とにかくサービスを止めないことに邁進しました。
ーー目まぐるしい日々だったであろうことが想像できます。その期間を経て、開発組織はどのように変化しましたか?
ユーザーにサービスを提供する上では「実装」と「運用」の両方が大切であり、片方のみでは継続的な価値提供ができないことを、エンジニアたちは身をもって実感したようです。
多くのスタートアップがそうであるように、当社もこのときまでは明らかに「実装」に重きを置いており、「運用」については「何かトラブルがあればその都度対応する」状態でした。しかし本件を通じて、そもそもトラブルが起きないようなものづくりをすることの重要性を肌で感じられたのは、思わぬ収穫でしたね。
当社として先行してエンドユーザー様の利用目的や利用環境への意識を強めていく必要性が高まり、社内の営業部門はもとよりカスタマーサクセスやサポート部門と協調してプロダクトに取り組むきっかけにもなったのです。
また、サーバーとして使ってきたAWSに対する知見をさらに高める必要性が生じたので、半年ほどかけて外部コンサルタントのサポートを受け、開発チームにナレッジを蓄積しました。
急拡大の時期は確かに大変でしたが、こうした「反省と改善の繰り返し」によって、当社は大規模なサービスを安定的に提供できる企業へと成長することができたのだと思います。
ーー良いプロダクトを作るためにはエンジニアの力が必要不可欠であると感じていらっしゃる様子が感じ取れるのですが、彼らのパフォーマンスやエンゲージメント向上のために、会社としてはどのような取り組みをしていますか?
エンジニアにとって「本当に働きやすい環境」づくりに力を入れています。
ーー「本当に」というと?
20年7月にフルリモートを導入し、当社では全社員が自宅からの作業が可能になりました。現在は本社への出社を前提としていない社員も15名ほど在籍しており、北海道から沖縄までさまざまな地域で働いています。
しかしフルリモートでは、ちょっとした疑問を解決するためにわざわざ時間を決めてオンラインミーティングを設定する必要があるなど、かえって時間が取られがちな側面もありました。また、新しいサービスを作るためのクリエーティブな発想が生まれにくくなってしまう点への懸念も挙がるようになっていったのです。
そこで、今年の5月にはオフィスの拡大移転を実施。以前の麹町オフィスから、西新宿駅直結のビルに拠点を移しました。部門ごとに定期的な出社日を定め、全国各地の社員も年に数回、可能な範囲で顔を合わせられるようにしていけたらと考えています。働きやすさだけでなく、メンバー同士のコミュニケーションの質もさらに充実させていきたいですね。
ーーなるほど。表面的な働きやすさではなく、業務への影響を考慮した上での最善策をとっているのですね。では、キャリアパスについては何か工夫をされていますか?
当社で働くエンジニアのほとんどはスペシャリスト志向ですが、スペシャリストであってもマネジメントに興味を持つことはあるでしょうし、その逆も然りです。
そのため当社では、「どちらかを選んだら戻れない」のではなく、いつでも路線変更が可能な複線型のキャリアを歩める環境を用意しています。業務を通じて、自分がどの道に進むのかをじっくり検討してもらえれば幸いです。
ーー開発チームの強化を経て、インヴェンティットではどんな展望を描いているのでしょうか。
『mobiconnect』は文教市場におけるMDM導入シェアが8年連続でトップです。MDMが社会的なインフラへと成長した今、市場そのものがなくなる可能性はほとんどないと言って良いでしょう。
しかしわれわれは、そこに安住してサービスの維持だけに努めるのではなく、今後はこのインフラや集まるデータを用いて、どのようなサービスを提供できるかをさらに考えていかなくてはなりません。
例えば、モバイル端末で何かトラブルがあったとき、ユーザー企業の情シス担当者や教育機関のIT担当者は、原因を突き止めて対処する必要があります。このハードルは現場の方々にとっては相当高いものです。私たちはそうした現場の悩みに寄り添い、ユーザーを丁寧にサポートするサービスを開発していきたいと思っています。
もうひとつはデータの利活用です。今や、企業部門においても教育機関においても、一人一台以上のデバイスを保持する世の中になった。それによりデバイスの利活用は進んでいますが、そこで発生するデータの利活用はまだまだこれからです。
『mobiconnect』では、今でも毎日3,000万件近くのデータを処理しています。このデータを使って、MDMベンダーとしてのサービス維持の為の利活用は進めていますが、これを、日々デバイスを管理している人たちや日々デバイスを触っている方々に、別の形でお返しすることでその方々の役に立つサービスを提供したい。
こうしたビジョンを実現する上で必要なのは、常にエンドユーザーのことを考えて開発ができるエンジニアです。ユーザーはわれわれのツールを用いて、どのような便益を得ようとしているのか。私たちはそれに応えられているのか。そんなことをエンジニアたちと一緒に考えながら、これからも社会の役に立つプロダクト開発を続けていきたいですね。
取材・文/一本麻衣 撮影/桑原美樹
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