太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの
総論|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー再生可能エネルギー(再エネ)とは? 種類やメリット・デメリット、ITとの関係を解説
近年「再生可能エネルギー」という言葉を耳にする機会が増えた、と感じている方は多いのではないでしょうか。
再生可能エネルギーとは、多くの国で主流のエネルギー源となっている化石エネルギーとは異なり、自然界に存在し、かつ繰り返し使用できるエネルギーのことを指します。環境やSDGsへの意識が高まる今、非常に注目を集めている分野です。
さまざまな国や企業で再生可能エネルギーの導入が進められており、環境に良い影響があるのはもちろん、ビジネスチャンスにもつながると考えられています。そして再生可能エネルギーは、IT業界にとっても大きなトレンドとなることが予想されているのです。
この記事では、再生可能エネルギーの特徴や種類、メリットなどに加え、ITとの関係性について詳しく紹介します。
再生可能エネルギー(再エネ)とは?
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱など、地球資源の一部として常に自然界に存在するエネルギーのことを指します。「再エネ」と略されることも多いです。
経済産業省資源エネルギー庁では、再生可能エネルギーについて次のように定義しています。
つまり、再生可能エネルギーは石油や石炭、天然ガスなど資源に限りのある化石エネルギーとは違い、短期間で再生することが可能で繰り返し使用できるエネルギーのことです。
再生可能エネルギーは自然界に存在するため、基本的にどこでもエネルギー源を調達できます。
また、化石エネルギーは発電する際に燃料を焼却するため、大量の温室効果ガスを発生させます。しかし再生可能エネルギーはエネルギー自身が持つ熱や動力によって発電するため、温室効果ガスを発生させないことも大きな特徴です。
再生可能エネルギーの必要性
再生可能エネルギーが求められる理由にはさまざまなものがありますが、大きく次の二つが挙げられます。
・日本のエネルギー自給率の低さ
日本ではエネルギー資源の約90%を海外からの輸入に頼っています。エネルギー自給率はOECD38カ国中37位と、他国と比較しても低い水準(出典)です。
この原因は、主流のエネルギー源である化石燃料が日本ではあまり採取できないことにあります。エネルギー資源の獲得を海外からの輸入に頼っていると、国際情勢の影響で国内のエネルギー供給が滞る恐れがある。そこで国内で調達できる再生可能エネルギーが、日本のエネルギー自給率向上のための解決策として期待されているのです。
・温室効果ガス排出の抑制目標
2015年に採択された「パリ協定」では、2020年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めが示されました。
日本でも2030年度の温室効果ガスの排出量を、2013年度の水準から26%削減することを中期目標としています。これは簡単にクリアできる数値ではないため、温室効果ガスを排出させない再生可能エネルギーの必要性が増しているのです。国際社会における日本の評価という観点でも、再生可能エネルギーの利用促進は欠かせない要素と言えます。
再生可能エネルギーの種類
では、具体的に再生可能エネルギーにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的な再生可能エネルギーの種類について紹介します。
太陽光発電
太陽光のエネルギーを太陽電池に当てることによって電力を生み出す方法です。日本の再生可能エネルギーのうちもっとも発電量が多く、実績では世界をリードしています。
太陽光があたる場所ならどこでも設置できるため、地域に制限がなく壁や屋根などの未利用スペースに設置できることがメリットです。災害時にも非常用電源として使うことができます。
一方で季節や天候によって発電量が左右されることや、夜間は発電ができないことなどが課題です。
風力発電
風のエネルギーで風車を回し、その力で電力を生み出す方法です。特に欧米諸国での発電量が多く、日本でも2000年以降導入件数が増えています。
風さえあれば昼夜を問わず発電できることがメリットです。陸上と洋上の両方で発電でき、大規模な運用も実現できます。
しかし気候条件に発電量が左右されやすく、台風などによる暴風時には設備をストップしなければならないこともあります。
バイオマス発電
バイオマスとは、動物や植物などから生まれた生物資源の総称です。このバイオマスを燃焼させたり、ガス化させたりすることにより発電します。
発電時にはCO2が排出されますが、バイオマス資源は光合成によりCO2を吸収して成長します。そのためカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)に分類され、再生可能エネルギーとして認められているのです。
家畜排泄物や生ゴミなど今まで廃棄していたものを資源として利用できるため、循環型社会の実現につながることがメリットです。また資源を確保できれば安定した発電量を確保できます。
一方で、資源がさまざまな地域に分散しているため小規模分散型の設備になることが多く、収集や管理にコストがかかることが課題となっています。
水力発電
水が高いところから低いところへ流れる力を利用して水車を回し、電力を生み出す方法です。日本は水資源に恵まれているため、比較的古くから利用されています。
エネルギー供給源が安定しており、一度設備を作れば長期間にわたり発電できる点がメリットです。ダムを用いた大規模なものだけでなく、河川の流水や農業用水、上下水道を利用した中小水力発電設備の建設も活発化しています。
デメリットとしては建設時に河川流況の長期的な調査が必要な点が挙げられます。またダムの建設により近隣の魚の収穫量が減るなど、周辺の自然環境に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
地熱発電
地中深くから取り出した蒸気や熱水でタービンを回し、電力を生み出す方法です。日本は火山帯に位置することから安定した資源を確保でき、現在は東北・九州を中心に展開しています。
気候や時間に左右されず継続的に発電できることや、発電に使った蒸気や熱水を農業や漁業、地域の暖房などに再利用できるメリットがあります。日本では資源が豊富なため、安定した純国産エネルギーとして期待されています。
一方で、設備の建設や調査に大きなコストがかかることが課題とされています。また立地地区には温泉や公園などの施設が存在する場合が多く、地元関係者との調整が必要です。
再生可能エネルギーのメリット
再生可能エネルギーを利用する主なメリットは次のとおりです。
エネルギー源が枯渇しない
現在主流のエネルギー源である化石燃料は、大昔に存在していた動物や植物の死骸が長い年月をかけて変化してできたものです。そのため量には限りがあり、現在のペースで消費を続けると約50年後には枯渇すると試算されています。一方で再生可能エネルギーは自然の力を資源とするため枯渇する心配がなく、半永久的に利用できることがメリットです。
環境にやさしい
先にも紹介しましたが、化石エネルギーと違い再生可能エネルギーはCO2などの温室効果ガスの排出を抑制できます。また、酸性雨の原因となる窒素酸化物の排出も抑制できるため、土壌汚染や河川の水質変化、森林破壊といった問題の防止にもつながります。
新たな雇用・地域活性化につながる
再生可能エネルギーは自然の力を利用するため基本的にどこでも調達でき、中小規模の施設でも発電可能です。そのため新たなビジネスチャンスを生み出しやすく、施設の建設や運用に携わる新たな雇用を創出することが期待されます。また自然資源が豊富な地方での導入を進めることにより、地域活性化にもつながるでしょう。
再生可能エネルギーのデメリット
再生可能エネルギーはメリットばかりではなく、デメリットも存在します。主なデメリットは次のとおりです。
導入・運用コストが高い
もっとも大きなデメリットは、発電するための設備の導入に時間とコストがかかることです。また大規模な運用が難しい場合が多く、運用コストも高くなりがちな傾向があります。しかし、再生可能エネルギーの普及が進んでいる他国では低コスト化に成功しているケースもあるため、日本でも低コスト化に向けた取り組みが期待されています。
安定的な供給が難しい
自然の力を資源とする再生可能エネルギーは、天候から受ける影響が大きいというデメリットがあります。特に太陽光発電や風力発電は、曇りや雨、風が吹かない日が続くと安定した供給を行うことが難しくなります。
エネルギー変換効率が悪い
エネルギーを電力に変換する割合を表す変換効率は、火力発電の場合約55%です。これに対し再生可能エネルギーは約80%と高い水力発電を除くと、それ以外は約10~30%に留まります。再生可能エネルギーを主流のエネルギー源とするためにこれは大きな課題であり、変換効率を向上させる技術革新が求められています。
再生可能エネルギーとITの関係
再生可能エネルギーの利用促進とIT技術は非常に相性が良いとされています。その理由を見ていきましょう。
スマートグリッド
スマートグリッドとは、IT技術を活用して電力の供給側と需要側で双方向に電力量を自動的にコントロールできる電力ネットワークシステムです。再生可能エネルギーは安定的な電力の供給が難しいことが課題となっていますが、スマートグリッドは需要と供給のバランスを調整する役割を担います。そのため、再生可能エネルギーを普及させるためにITを活用したスマートグリッドの導入は必要不可欠と言えるでしょう。
AIやIoT技術による再生エネルギーの活用
AIやIoTなどのIT技術は、再生可能エネルギーの活用の幅を広げます。たとえばスマートメーターは各家庭の電気使用量をネットワークを通じて管理できるIoT技術を活用した電力量計です。検針作業や電力使用状況の可視化を効率化するため、再生可能エネルギーの普及にも役立ちます。また、こうしたシステムにAIを用いてより精緻な需給調整を行うことも可能です。
エンジニアとしての再生エネルギーへの関わり方
再生可能エネルギーのトレンドによって、ITエンジニアに求められるものが変化する可能性も大いに考えられます。ここでは、エンジニアとして再生エネルギーへどう関わっていくべきか、今後の可能性について考えてみましょう。
スマートグリッドの知見を習得する
再生可能エネルギーを普及させるために、スマートグリッドが欠かせないことは先ほど説明しました。再生可能エネルギーの利用促進は今後さらに拡大すると予想されるため、同時にスマートグリッドの需要も高まりこのシステムを構築するエンジニアが求められるようになるでしょう。活躍の場がエネルギー業界に拡大することを想定して、スマートグリッドやエネルギー業界の知見を習得しておけば、エンジニアとしての市場価値が高まる可能性があります。
クリーンテックに注目する
クリーンテック(グリーンテック)とは、企業においてできる限り再生不可能資源を使わずにユーザーニーズに応える製品を開発することやそのプロセスを指します。世界中で環境保全に貢献する活動が重視されるなか、再生可能エネルギーの活用を含むクリーンテックは大きなビジネスチャンスにつながることも期待されているのです。クリーンテックへの各企業の取り組みやトレンドの情報を日々収集することにより、IT技術を活かして活躍の場を広げられる可能性があります。
ITスキルを活かして再生可能エネルギーのビジネスチャンスを切り開こう
再生可能エネルギーとは、地球資源の一部として常に自然界に存在するエネルギーです。現在主流である化石エネルギーの欠点を克服し、環境を保護する新たなエネルギー源として期待されています。しかし再生可能エネルギーには、安定した供給が難しいなどのデメリットもあります。そこで、解決策となるのがスマートグリッドなどのITを活用した技術です。
今後、再生可能エネルギーを普及させるために、エネルギー業界でのエンジニアの需要が高まることが予想されます。大きなビジネスチャンスも期待できるため、再生可能エネルギーの知見を習得して活躍の場を広げましょう。
文/江副杏菜
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