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評価と給与が連動しないとエンジニアは定着しない。レンタルEMが指南する「納得感」のつくり方【久松剛×ばんくし/聴くエンジニアtype Vol.42】

働き方

エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! さまざまな領域で活躍するエンジニアやCTO、テクノロジーに関わる人々へのインタビューを通じて、エンジニアとして成長していくための秘訣を探っていきます。
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売り手市場と言われて久しいエンジニア採用。自社エンジニアの定着やエンゲージメント向上に四苦八苦している企業は多いだろう。

エンジニアを引き留めるためには報酬を上げるしかないのでは……そんな悩みを抱える企業に、レンタルEMこと久松 剛さんがアドバイスをくれた。

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【ゲスト】
博士(慶應SFC、IT)/合同会社エンジニアリングマネージメント 社長
久松 剛さん(@makaibito⁠⁠⁠

2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。動画転送、P2Pなどの基礎研究や受託開発に取り組みつつ大学教員を目指す。12年に予算都合で高学歴ワーキングプアとなり、ネットマーケティングに入社し、Omiai SRE・リクルーター・情シス部長などを担当。18年レバレジーズ入社。開発部長、レバテック技術顧問としてキャリアアドバイザー・エージェント教育を担当する。20年、LIGに参画。プロジェクトマネージャー、フィリピン開発拠点エンジニアリングマネージャー、T&O(Talent & Organization、組織改善)コンサルタント、アカウントマネージャーなどを担当した後、22年2月より独立。レンタルEMとして複数企業の採用・組織づくり・制度づくりなどに関わる

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【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish

Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている

エンジニアの定着率を上げるキーワードは「評価の納得感」

ばんくし:前回登場した「利他的」というキーワードですが、これって手に入れるのが難しい要素ですよね。

久松:そうですね。仮に面接で事業貢献について語り、A社から内定をもらった人がいたとします。A社としても内定承諾して貰えると思うわけですが、横から全く異なる事業を営んでいるB社から1.25倍以上の年収を提示されるケースがあります。2022年までに良く見られたこうしたシチュエーションですが、候補者は手のひらを返してB社で内定承諾することが多く見られました。

ばんくし:そういうケースばかりだと、久松さんの仕事も大打撃ですよね。

久松:そうなんです。1.25倍以上の提示があると転職の軸などはどうでもよくなる人が多く見られます。そして2023年には入社者数を追う採用から、企業側が『採用を間違えたくない』と厳選採用するようになりました。個人的には転職が活発な方が仕事が多い……という本音はあります。しかし現在は採用だけだと結果を残しづらいところですので、評価制度の見直しや定着支援に注力するようにしています。

ばんくし:定着率を上げることこそEMの力の見せ所、ということですね。とはいえ、何をどうすれば成果が出るか分かりづらいのが難しいところです。

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久松:具体例でいうと、定着率が低い会社は評価制度と給与制度が結びついていないことが多いです。「評価ではAランクだったのに給料が上がらない」みたいな会社って意外と多いんですよ。

ばんくし:エンジニアが事業に貢献したい、成長したいと思っていても、その成果が組織の制度とかみ合っていない、と。

久松:そうです。エンジニアは合理的である人が多いので、何をしたらどう評価されるというのを言語化することが大事だと思います。

僕も評価される側だった時に、圧倒的な成果を上げているにもかかわらず「言葉遣いが悪い」という理由で評価が下がったことがあって。評価において「それっておかしくない?」ということが珍しくなかったんです。

そういったことがおこらないように、僕はクライアントに対して評価ランクごとに望ましい振る舞い・行動を明示したコンピテンシーディクショナリーを整理しています。評価制度を納得性のある形で言語化して、それを評価対象者に対して展開しています。さらに実際の事例とリンクさせていく……という動きを、全体で1年ぐらいかけてやっているんですよ。

ばんくし:行動と評価のサイクルがきちんと回ることを意識されているんですね。

久松:はい。評価制度には明確なゴールはないですが、それでも「言語化する」「奇抜じゃない」「企業側と被評価者の納得感」の三つが成立すればひとまず回る。なのでそこを成立させたうえで、行動評価や職能評価、事業利益を含む成果評価をかけ算してエンジニアの評価を算出することをフレームワークとしています。

ばんくし:ちなみに先ほど「言葉遣いが悪い」という理由で評価が下がったという話がありましたが、私はエンジニアの成長において反骨心や劣等感みたいなものが大切だと考えていて。素直で事業協力をしてくれる「お行儀の良いエンジニア」は今後技術的に成長していくのだろうか? と疑問に思うんです。

聴くエンジニアtype

久松:非常に良いポイントですね。たまに超保守的な開発部ってあるじゃないですか。失敗しないけど、冒険もしない……みたいな。僕のクライアントでもそういうお客さんがいて、事業成長に悩んでいました。

話を聞く前は「トップの人がSIer出身なのかな」と勝手に思っていたんですけど、実はみんな新卒からの生え抜きで。「失敗したくない」という気持ちが大きいあまり、「まずやってみて、ダメだったら辞めて別のことをやってみる」というトライアンドエラーをしないんです。

でも、現状に甘んじていたらどうしても保守的なサービスになるじゃないですか。事業を前進させるには、まだ見ぬ何かを求めて新しいサービスをリリースする気持ちや現状を変えようとする反骨心や劣等感が絶対に必要。それを生かすのが経営層やマネジャーの手腕だと思います。

次回も久松剛さんをお迎えし、お話を伺います。お楽しみに!

文/赤池沙希

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