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Meta Londonでレイオフ危機に? 松岡玲音の「運ゲー」なエンジニア人生【聴くエンジニアtype Vol.56】
東大薬学部、アメリカの大学院での宇宙工学を学び、マサチューセッツ工科大学へ進学……2022年にメルカリを退職し、現在はMeta Londonでエンジニアとして活躍する松岡玲音さん。
華やかに見えるキャリアだが、実際には「ギリギリで乗り越えてきた」とこれまでの道のりを振り返る。
エンジニア・松岡玲音はいかにして作られたのか。MCのばんくしさんが深掘りしていく。
【ゲスト】
松岡玲音さん(@lain_m21)
1992年生まれ。東京大学薬学部卒業後、アメリカの大学院で宇宙工学を専攻。その後、機械学習のロボットへの応用へ興味を持ち、マサチューセッツ工科大学(MIT)の航空宇宙工学専攻へ転学。ロボットAIなどについて研究を重ねた。その後中退し、18年10月よりメルカリでインターンシップを開始し、19年1月に同社へ入社。機械学習エンジニアとして「出品価格推定」のモデリングや「レコメンドエンジン」の基幹システム、「エッジコンピューティング」など、メルカリの事業の中核となる技術に携わる。テックリードとしてプロジェクトマネジメントも担った後、22年5月に退社。同年夏からロンドンのMetaにジョイン
【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている
Meta Londonにたどり着くまで「ギリギリの人生、まさに運ゲー」
ばんくし:今回は松岡玲音さんに来ていただきました。
松岡:日本のみなさん、お久しぶりです!
ばんくし:松岡さんはロンドンにいらっしゃるので、日本時間の早朝に収録しています。最近日本のメディアには登場していなかったと思うので、軽く自己紹介をしていただけますか?
松岡:東大の薬学部を首席で卒業後、院に進学したのですが、たまたま読んだ漫画『宇宙兄弟』がきっかけで航空宇宙に興味が湧いて、急遽アメリカに留学しました。そこでプログラミングに触れたのがきっかけで、今に至ります。
最初はMATLABで行列や数値計算をしていたのですが、その流れで当時流行っていた機械学習にも触れる機会があって。勉強してみたら面白くて、そのままマサチューセッツ工科大学(MIT)でPh.D.(博士号)まで進んじゃいました。ただ、そのうち論文を書くよりコードを書く方が楽しいなと感じるようになって、1年くらいで中退して帰国。エムスリーやSansanなど複数の企業でインターンをして、最終的にメルカリに就職しました。
インターン生として2週間だけエムスリーにいたんですが、ばんくしさんとはニアミスだったんですよね。エムスリーで西場(正浩)さんにしごかれたのはすごい良い思い出です。
メルカリ入社後は機械学習エンジニアだったのですが、気付けばバックエンドやデータ分析にも携わっていました。少しだけメルペイでも働いて、最終的にアメリカ版『メルカリ』アプリの開発に2年半ほど関わった後退職し、今はMeta Londonで働いています。
ただ、Metaではなかなか所属するチームが決まらなくて。昨年Metaでレイオフ騒ぎがあったじゃないですか。私も例外ではなく、最初に入れられるブートキャンプからずっと抜けられず、ポジションがない状態が1年ほど続きました。レイオフされかけて、いよいよ辞めるかという時に運良く今のマネジャーに拾ってもらえて、Metaに残ることになったんです。
ばんくし:すごいギリギリで生きてますね。
松岡:人生は運ゲーですよ。
ばんくし:興味の移り変わり具合もすごいですよね。薬学から航空宇宙、そして機械学習……。通常であればMATLABで心が折れてもおかしくないところから、今はMetaにいるという。
松岡:気付けばここまで来ていました。割とエンジニアリングが性に合ってたんですよね。「書いたコードの通りに動くのすげえ」という気持ちが強くて、最初からプログラミングに対しての抵抗感はなかったです。
ばんくし:エンジニアリングのどういうところが良かったんですか?
松岡:昔はパズルを解くみたいにパーツを組み合わせて、思った通りに動かすのが面白いと感じていました。いろいろ勉強をした今となっては、技術そのものというよりは個々の技術が組み合わさって巨大なエコシステムが動いていることや、ボトルネックを見つけた時にぐっとくるものがあります。
複雑なシステムを見ると、血湧き肉躍るみたいな気持ちになりますね。レガシーコードに踏み込んでいくのもわくわくします。
ばんくし:まさにサグラダ・ファミリアですね。
松岡:そうそう。まじでMetaはそんな感じです。
ばんくし:Metaクラスにもなると、超大規模システムの裏側が見られそうですね。
松岡:楽しいですよ。誰もやりたがらないけど、「このC++の部分、君にお願いするよ」と言われると「良いの?」って(笑)。仕組みを理解して急所を突くみたいなのが好きなんですよね。
ばんくし:たしかに玲音さんは昔から急所を突くのが得意な人だなというイメージがあります。機械学習エンジニアだった時も、ポイントを突いて重要なところをかっさらっていくタイプでしたよね。
松岡:今の戦い方としても、まさにそのやり方です。全てのコードをきれいに作り替えようとすると、時間がいくらあっても終わらないじゃないですか。3行だけ書き換えて想定した結果が出るならそれで良い。そのポイントを探るのが楽しいんです。
ばんくし:コードが想定通りに動くという技術的なところから、システム全体を俯瞰するところにエンジニアリングの面白さが移行していったのですね。そのように視野が広がったきっかけは何だったのですか?
松岡:やっぱり鉄火場に放り込まれたことだと思います。私はもともと機械学習しかやってこなかったので、メルカリに入った時に書けたのはPythonだけでした。
そんななか、検索結果のリランキング機能をバックエンドにつなぐプロジェクトを任されたんです。実はこれ、誰がやってもなかなか進まないプロジェクトで。私はバックエンドなんて触れたこともないし、PHPのコードもほとんど読んだことがない。だからとにかくコードを読みまくって、いろんな人に聞きまくって……。どうにか2~3週間くらいで終わらせました。
自分が触れたことがない技術に否応なしに向き合う機会を与えられて、ぐっと伸びた感じがありましたね。
ばんくし:そのプロジェクトを任されたとき、辛い気持ちにならなかったんですか?
松岡:ならなかったですね。むしろ「勉強するぞ」という気になりました。その考え方は今も昔も変わらないです。
「privateとかpublicとか書いてあるけどこれ何?」というレベルから、技術ブログを読んだり、会社の人に聞いたりして、「なるほど」と思いながら一つ一つできるようになったという感じでした。
ばんくし:鉄火場に放り込まれる経験は結構重要ですよね。そういう経験で自信がつくというのは分かる気がします。
松岡:私は技術書を読むのが好きなので、普段から何かしら読んではいるんですけど、結局身に付いているのは死ぬ気で触った技術だけのような気がします。
ばんくし:知識としては持っていても、いざ目の前にすると手や身体が動かないケースって多いですよね。
松岡:逆に趣味でずっと学び続けられる人は尊敬します。私はそれができないタイプなので。
ばんくし:松岡さんの趣味というと、ワインのイメージが強いです。
松岡:最近はそうでもないんですよ。イギリスでもワイン資格を取ろうと考えていたのですが、最近は仕事が楽しいのと、旅行ばかりしていてなかなか腰を据えて勉強する時間がなくて。
ばんくし:「仕事が楽しい」って良いですね。
文/赤池沙希
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