売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
「是が非でもiOSアプリ開発がしたかった」絶対外せない転職条件のかなえ方
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Hulu、TVer、WOWOWといった、国内大手動画配信プラットフォーム向けのシステムインテグレーションを手掛ける株式会社PLAY。最新の技術スタックとアジャイル手法を活用し、多数の同時視聴が発生する世界的スポーツイベントやライブ配信など、高負荷を伴う配信を数多く支えてきた。
動画配信のシステム構築というと特殊な世界のように思えるが、同社の開発チームで活躍しているのは、必ずしも動画技術に特化したエンジニアばかりではない。むしろWeb開発やアプリ開発のバックグラウンドを持つ方が大半とのことで、2023年に入社した鈴木さんもその内の一人だ。
文系出身ながら、独学で複数のiOSアプリを開発し、企業に譲渡。「もっとiOSアプリを開発したい」という思いから、PLAYに転職した鈴木さん。入社後はわずか1年で、リードエンジニアとしてプロジェクトを率いるまでになり、成長スピードは社内でも群を抜いている。
「やりたいことができて、自分も成長できる環境」と語る鈴木さんの転職成功の秘訣とは? 入社時に鈴木さんと面談した、スマホアプリ開発の責任者である上野裕平さんに話を聞いた。
【中途入社者】株式会社PLAY
鈴木登也さん
2023年6月PLAY入社。各種動画配信サービスのiOSアプリ開発を担当。リードエンジニアとして案件を率いる役割も担う
【採用担当】株式会社PLAY
上野裕平さん
学生時代からAndroidOSのアプリ開発を経験し、新卒として2013年にPLAY(旧株式会社ロジックロジック)に入社。動画配信サービスのAndroidOSアプリ開発に携わる。エンジニアの採用担当も務める
採用担当者の上野さんに聞いた「内定のポイント三つ」
●iOSアプリケーション開発がやりたいという熱意
●誠実で一貫性のあるコミュニケーション力
●学習意欲の高さ
趣味で作ったアプリが買収され「iOS開発極めたい欲」が加速
ーー鈴木さんは前職はエンジニアではなかったそうですが、転職活動を始めたきっかけはなんですか?
鈴木:私は2022年に新卒でWebアプリケーションを運営する会社に入社し、企画職として主にプロジェクトマネジメントなどを担当していました。
アプリケーション開発自体への興味はあったのですが、当時は「プログラミングは趣味の範囲内で楽しめれば良い」と思っていたんです。なので企画の仕事をする傍ら、学生時代に始めたiOSアプリケーションの開発を個人で続けていました。
ただ社会人になって丸一年経った頃、とある企業から「作ったアプリのいくつかを買い取りたい」という連絡が。文系出身だったのでプログラミングは完全独学だったのですが、自分のスキルが認められた気がして凄くうれしかったのを覚えています。
その出来事以降、「やっぱり本職で技術を極めたい」と強く感じるようになり、エンジニアになろうと決意しました。
ーーそうなんですね!では、技術力を磨ける会社を中心に探していたのでしょうか?
鈴木:もちろんその思いもありましたが、一番の条件として挙げていたのは「iOSのアプリケーション開発ができる」ことだけでした。自分には個人開発の経験しかなく、経歴上では実務未経験。それに社会人経験も浅かったので、とにかく一番やりたいことさえかなえられれば良いという心境でした。
その上で、電車の中でみんなが触っているような身近なサービスに携わりたいと思っていたので、toCサービスのiOSアプリケーション開発を手掛けている企業に絞りました。
――iOSアプリケーションの開発を手掛ける企業は多くありますが、その中でPLAYを選んだ決め手とは?
鈴木:まず第一印象として、これまで自分がやったことのない動画というジャンルのアプリケーション開発が、純粋におもしろそうだなと思いました。
加えて、一次面接で上野さんとiOS開発のチーフエンジニアと具体的な話をすることができ、業務内容を明確にイメージできたことも大きかったです。選考時のコミュニケーションがスムーズで、人間関係を含めた環境が自分に合っていそうだと思えたことも、好印象でした。
ーーなるほど。実務未経験からのチャレンジということで、書類選考や面接を通過するために行った工夫や努力はありますか?
鈴木:ヘタに背伸びして自分を良く見せるよりも、ありのままの自分を伝えることを心掛けました。見栄を張り始めたらキリがないですし、仮に運良く採用されても、入社後に自分の首を絞めるだけだなと思って(笑)
それこそ、他社の面接では「なんだ、実務の経験はないんだ」とそっけなく対応されることもあり、少しでも自分を良く見せたい気持ちにかられたこともありますが、PLAYの面接では最後まで正直に話すことを意識しました。
面接で技術的に分からない質問をされても、論点をずらした回答でごまかすようなことはせず、「分かりません」と率直に伝えました。
――ありのままを話すことを意識されたんですね。では逆に、鈴木さんの感じる不安や疑問点についても、ざっくばらんに質問されたのでしょうか?
鈴木:はい。自分のやりたいことと、実際の業務にギャップやズレが無いかどうか、使用している開発環境やチーム体制は事前にしっかり質問しました。
上野:iOSアプリと一言でいっても、使う技術は新旧いろいろ。システムの要件や機能によっては、最新の技術ではなく一昔前の技術を採用した方が良いケースもあります。
PLAYでもそのような技術選定をしているケースがあるので、「システムによっては結構古い技術を使っている部分もあるけど、そこは大丈夫?」と確認しました。
鈴木:そういう風に、企業側からも包み隠さず話してくれたことは、安心感につながりました。
また、新システムへの移行も検討しているという話があったのですが、自分の新しい技術知識を活かしたアプローチもできるのではないかと感じ、むしろ魅力的に感じました(笑)
――お互いが正直に伝え合う面接だったのですね。
鈴木:そうだと思います。面接の中で技術への不安も解消できましたし、最終的に「一人前になるための業務を提供できる環境はあるから大丈夫」とも言ってもらえたので、やってやろうという気持ちになっていました。
開発意欲や一貫性のある受け答えが採用の決め手に
ーー次に、上野さんに質問です。PLAYのエンジニア採用では、どのような点を重視しているのでしょうか。
上野:チームによって異なる部分はありますが、私たちのチームでは「スマホアプリをつくりたい」という熱意があることが第一ですね。
もちろん事業内容や業務内容に興味がある人は歓迎なのですが、やはりエンジニアは「開発が好き」という根本的な熱い思いがあることが大事だと思っています。それからエンジニアは常に技術のアップデートが必要なので、学習意欲も重視していますね。
また面接では、候補者の受け答えに一貫性があるかどうか、正直に話しているかどうかといった点を重要視しています。
というのも、PLAYのアプリケーション開発は複数のグループ企業と連動したプロジェクトが多く、少しのコミュニケーションエラーが何十万人、時に何百万人もが利用するサービスへ甚大な影響を及ぼしてしまうこともあるからです。
自分の部署や立場だけを考えた発言をしたりしないか、丁寧で誠実なコミュニケーションを取れるタイプかどうかをチェックしていますね。
――鈴木さんが面接時に大切に考えていた点と共通していますね。
上野:そうなんです。鈴木さんを採用したいと思った点は複数ありますが、なんと言っても、「iOSアプリケーションを開発したい」という明確かつ強い意志があったことが一番ですね。
それから、分からないことには「分からない」と正直に答えていたことにも好感が持てました。私が担当した面接はオンラインでしたが、ハキハキ話しながらも落ち着いていて。社会人経験も浅いのに、その落ち着きっぷりに驚いたくらいですよ(笑) その後のオファー面談で対面したときも、鈴木さんへの印象は変わりませんでした。
――ちなみに学習意欲の点はどうでしたか?
上野:面接で「どのViewを使っているか」「メモリはどう管理しているのか」など、技術に関してかなり細かく質問したのですが、どの質問にもしっかり回答していたので、技術力に対して一定の評価をしました。
正直、独学でここまで基礎ができているなら、この先実務を経験すればもっと伸びるだろうなと。「朝4時に起きて、3時間勉強している」という話を面接時に聞いたのですが、その言葉は嘘じゃないなと思いましたね。
誰もが使えるサービスの開発に携わる喜び
ーー鈴木さんが「転職で叶えたったこと」はPLAYで実現できていますか?
鈴木:はい。やりたかった「iOSアプリケーションの開発」を思う存分できていることに、とても満足しています。
これまでに、大手テレビ局の見逃し配信サービスやプロ野球球団のファン向け動画サービスなどのアプリケーション開発を手掛けてきましたが、個人開発とはユーザー数が桁違い。PLAYが開発しているアプリケーションの中には「ライブ配信同時接続50万人以上」を記録したものもあり、大勢の人に満足して使ってもらえるアプリの開発に携われることは、大きなモチベーションです。
同時に、求められるレベルの高さも感じています。個人開発なら「まあいいか」と流してしまうこともありますが、当然ながら甘さや妥協は許されません。1ピクセルのズレも指摘される厳しさに最初は苦労しましたが、難しいからこそやりがいも大きいです。
――転職して約1年、ご自身の成長を強く感じるのはどういった点でしょうか?
鈴木:一番成長を感じているのは、自身の開発スピードです。多くの関係者と協業しながら開発を円滑に進めていく中で、幅広い知識やスキルを身に付けられているからだと思います。
最初は動画の再生プレーヤーの仕組みすらも知りませんでしたが、先輩たちに教えてもらいながら理解を深め、最近は徐々に開発作業への自信も持てるようになってきました。
上野:鈴木さんのキャッチアップ力は、本当に想定以上のスピードでしたよ(笑)先日も一人でオフィスに残っていたので、何をしているのかと聞くと「(ユーザーが使いやすいように)ここのシステムのつくりを変えているんです」と。ホスピタリティも強く感じましたが、それ以上に本当に開発が好きなんだなと思いましたね。
また鈴木さんは、自分から動いて人をまとめていく力も高いですね。以前、忙しくてあまり業務がうまく回っていないプロジェクトに加わってもらったのですが、すぐに状況を整理して、周りに指示を出していました。入ったばかりの身で、年上の方にも作業をお願いするのは、勇気が必要だったと思うのですが、臆せず声をかけていて感心しました。
ーー最後に今後の目標をお聞かせいただけますか?
鈴木:開発は「短期間で良いものをつくる」のが一番の理想形だと思うので、今以上に開発スピードを加速させたいです。そのためには、技術力やコミュニケーション力をさらに磨かないといけない。よりスピーディーな開発サイクルを実現できたら、そのノウハウを組織内で横展開していきたいですね。
ちなみにもっと未来の話でいうと、いつか無人島を買うのが夢です(笑) 一からインフラを整備して街をつくりたいんですよ。スクラッチ開発のような感じですね。その力を養う上でも、まずiOSエンジニアとしてサービスをゼロから生み出せるように努力していきます。
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取材・文/古屋 江美子 撮影/桑原美樹 編集/今中康達(編集部)
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