■PMO……プロジェクトが円滑に進むようサポートする組織
■PM……プロジェクトの責任者としてさまざまな意思決定をするポジションです
PMOとは? 役割や必要なスキル、PMとの違いなどを徹底解説
プロジェクトの管理体制の強化や成功率向上を目指す企業の多くが導入している「PMO」。
PMOは開発業務そのものに関わることは少ないため、「何をしているの?」と疑問に思っている人もいるかもしれません。
そこでこの記事では、PMOについて徹底解説。PMOの役割や必要なスキル・知識など、あらゆる角度から説明します。
目次
PMOとは
PMOとは「Project Management Office」の略で、組織内におけるプロジェクトマネジメントを横断的にサポートする組織や体制、その役割やポジションのことを指します。
一口に「サポート」と言っても、組織やプロジェクトごとに求められる役割はさまざま。業界や技術に対する知識はもちろん、コミュニケーション力やマルチタスクなど幅広いスキルが必要です。
PMOとPMの違い
名前が似ているポジションに「PM(Project Manager)」があります。混同されることが多いPMOとPMですが、明確に役割の違いがあります。
つまりPMOのメインミッションは、PMの業務をサポートするためのさまざまな取組みを行うことです。
PMOの三つの役割
PMOの仕事は多岐にわたるため、プロジェクトによってはPMOが役割分担して業務にあたることがあります。役割分担の代表例が以下の三つです。
PMOアドミニストレーター(PMO事務)
PMOアドミニストレーターはPMO事務とも呼ばれ、プロジェクトに関する社内プロセスを円滑に進める役割を持ちます。
主な業務内容例
・プロジェクトデータの収集・更新
・プロジェクトの情報共有・リマインド
・会議のコーディネート
・ドキュメント作成
・経理処理
・プロジェクトメンバーの勤怠管理 など
PMOエキスパート
PMOエキスパートは、プロジェクトの環境整備やルールの策定、標準化など、PMOアドミニストレータ―よりも専門性の高い業務を担当します。
主な業務内容例
・プロジェクトや社内プロセスの策定・改善・標準化
・情報収集・各種分析
・プロジェクトツール類の開発・改善・標準化
・ステークホルダーとの連携
・ステークホルダーの満足度向上および維持
・人材開発 など
PMOマネージャー
PMOマネージャーは、PMOのマネジメント業務全般を担当します。
主な業務内容例
・PMOの戦略および計画の策定
・PMOメンバーの勤怠管理
・PMOメンバーの教育
・PMOの予算管理
・プロジェクトパフォーマンスの安定化 など
PMO導入によるメリット
PMOを導入することによるメリットを具体的に解説します。
客観的な立場でプロジェクト運営をサポートできる
PMOは実際に開発業務に関わることがあまりないため、客観的な立場でプロジェクト全体を俯瞰できます。クライアント、PM、開発メンバーなど各ステークホルダーの調整役として機能するため、円滑なコミュニケーションをサポートし、満足度の向上や維持にも貢献します。
またPMOの活躍により、PMの意思決定が迅速かつ正確に行えるようになり、より利益を追求したプロジェクト運営が実現するメリットもあります。
現場の負担を軽減する
PMOはこれまで開発メンバーやPMが行っていたドキュメント作成や情報収集、人材開発業務をサポートします。また、PMOは技術的な知識を保有していることがほとんどですので、技術に詳しくないクライアントや経営陣とのコミュニケーションを請け負うことが可能です。PMOの活躍により、現場の負担が著しく軽減するため、本来の業務に集中でき、プロジェクトの質や成功率の向上に役立ちます。
PMO導入によるデメリット
本来求められている力を発揮できれば、PMO導入のデメリットはありません。しかし、PMOがうまく機能していないプロジェクトにおいては以下のようなデメリットが考えられます。
導入コストがかかる
PMOを導入するということは、当然ながら人件費としてコストが上乗せされます。PMOが正しく機能していないプロジェクトを経験した人は、「PMOは必要ないのでは?」「PMOに人件費を割くのは無駄」といった認識になってしまいかねません。
チームが萎縮・依存してしまう可能性がある
本来、PMOとプロジェクトメンバーに上下関係はありません。しかし、PMOにはプロジェクト経験が豊富な人材が多いため、プロジェクトメンバーがPMOに対して萎縮してしまったり、逆に依存しすぎてしまったりするケースがあるようです。このような事態を防ぐためには、あくまでもPMOは「プロジェクトのサポート役」となり、P主導権を握りすぎないようにうまくコントロールすることが必要です。
PMOに必要なスキル・知識
PMOにはプロジェクトに応じてさまざまなスキルや経験が求められます。主な必要スキルを以下で解説します。
コミュニケーションスキル
プロジェクトを円滑に進めるには、メンバーとのコミュニケーションが必要不可欠です。さらにスケジュールの管理やメンタリング、会議のコーディネートやステークホルダーとの打ち合わせなど、さまざまなポジションの人との対話も求められるため、PMOにはコミュニケーションスキルが欠かせません。
ITやプロジェクト管理に関する知識
PMOが直接開発に関わることはあまりありませんが、メンバーへのタスク振り分けやモニタリングなどを行うため、プロジェクト内容や開発の流れを理解している必要があります。そのためPMOは開発職種やヘルプデスクなどからキャリアチェンジ・キャリアアップするケースが多く見られます。
臨機応変さ・柔軟性
プロジェクトにはトラブルがつきものです。スケジュールが押しそう、体調不良者がいて人材が足りない、データが不足していた……など、あらゆるトラブルに対して臨機応変に対応する柔軟性が必要です。また、トラブルが起きないように常に状況を把握し、仮にトラブルが起きても被害が最小限に済むよう事前にリスクヘッジしておくことも大切です。
事務スキル
PMOは資料や議事録を作成する機会が多くあります。特にPMOアドミニストレータ―はメンバー間の情報共有に必要な資料を作成することが多いため、ツールの使い方を熟知しているのはもちろん、高い理解力や文章力などが求められます。
語学力
近年では国内と海外の2拠点で開発を行うプロジェクトも増えており、英語力があるPMOは非常に重宝されます。専門的なコミュニケーションが必要となるため、ビジネスレベル以上の英語力が求められます。
PMOになるために有利な資格
PMOとして働く上で資格は必須ではありません。しかし、資格を取得しておくとスキルレベルや適性がアピールできるため、転職時に有利になります。
PMOに関連する代表的な資格を紹介します。
プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格(NPMO認定PJM-A)
プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格は、一般社団法人日本PMO協会が運営する資格。プロジェクトの現場業務における基本的な知識や技術レベルを問われる試験です。
幅広い知識が求められるため、転職市場で有利になる資格ともいえそうです。他の難関資格を受験する際の必須資格になることもあるので、これからPMOを目指す人はぜひ取得を目指したい資格の一つです。
PMOスペシャリスト認定資格(NPMO認定PMO-S)
PMOスペシャリスト認定資格も一般社団法人日本PMO協会が運営する資格です。受験するにはプロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格などの関連資格の取得が必須です。
PMOスペシャリスト認定資格は、プロジェクトマネジメントの基礎を携えていることが前提で、さらに実践的な知識が求められます。この資格にはランクアップ制度があり、2024年7月現在では「PMOスペシャリスト(★)」「PMOスペシャリスト(★★)」の二つのランクが存在します。また、「PMOスペシャリスト(★★★)」が現在策定中のようです。
PMP®資格(Project Management Professional)
PMP資格は、Project Management Institute(PMI)が運営する国際資格です。試験は、予測型プロジェクトマネジメント・アプローチに関するものと、アジャイル・アプローチまたはハイブリッド・アプローチに関するもので構成されています。
受験する上では、学歴やプロジェクトマネジメントの実務経験といった要件があります。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、独立行政法人情報処理推進機構IPAが運営する国家資格です。その名の通りプロジェクトマネジメントに関するスキルが問われます。
2022年度の試験では合格率14.1%であり、情報処理技術者試験制度の中では高難度です。ゆくゆくはPMにもチャレンジしたいと考えている人におすすめです。
P2M資格
P2M資格は、特定非営利活動法人日本プロジェクトマネジメント協会が運営する資格です。P2Mは「Project & Program Management」の略で、プロジェクトマネジメントやプロジェクトマネジメントの知識・スキルを問われる試験です。
難易度や試験範囲に応じてPMC、PMS、PMR、PMAの4つのレベルに分かれています。PMSの難易度は、経済産業省が策定するIT人材のスキル体系「ITSS(ITスキル標準)」の7段階においてプロジェクトマネージャ試験と同等のレベル4に該当します。
良いPMOとは
良いPMOとは、最新の技術トレンドやプロジェクト進行に関する知識を持ち合わせているのはもちろん、プロジェクトにおける潤滑油として各ステークホルダーとのコミュニケーションが行える人材のことを指します。そのためには、客観的な立場でプロジェクトに関わりつつ、当事者意識を持つことも大切です。
つまり、ITの専門性とヒューマンスキルの両軸で高いレベルが求められます。広い視野でプロジェクトを支えることが必要となり、それができる人材は非常に市場価値が高いといえるでしょう。
PMOの需要と将来性
PMOは近年需要が高まっているポジションの一つです。その理由は、IoTやAIの進化に加えてDX推進のためのプロジェクトが多く発生しているから。特にDX関連のプロジェクトは比較的複雑かつ多様なケースが多く、プロジェクトの成功率を上げるべくPMOに期待が寄せられています。
また2012年に大手外資ベンダーと銀行間で行われた裁判では、「PM義務違反があった」と74億円の巨額賠償を命じる判決が出ました。このことからベンダー側・ユーザー側共にプロジェクトマネジメントにおける知識やスキルを保持した人材が必要だという認識が浸透したこともPMOのニーズ向上を後押ししたといえます。
もともと日本のプロジェクト成功率はかなり低く、2003年ごろはわずか26.7%でした。この成功率の低さを改善する取り組みの中で、PMOの重要性が認識されるようになり、PMOのニーズは高止まりとなっています。
PMOの導入が進まない理由
PMOのニーズが高まる一方で、「自社には必要ない」「興味はあるがメリットが分からない」などと導入を渋る企業も一定数存在します。その理由は、「PMO導入によるデメリット」でも述べたように、PMOが本来の役割を発揮していないケースに遭遇したり、「自社でもそうなってしまうのでは」という懸念があったりするからです。
また世の中にさまざまなプロジェクト管理ツールが流通していることも、PMOの導入が進まない要因の一つ。「これらのツール上手く使えば、PMOを導入するまでもないのでは?」と思われるケースがあるようです。
まとめ:PMOはプロジェクト成功のキーパーソン
IoTやAIの進化やDX推進により、プロジェクトのスタイルは多様化かつ複雑化しています。プロジェクトメンバーにかかる負担が増大する中、その負担を軽減するキーパーソンとして期待されるのがPMOの存在です。
技術力・ヒューマンスキルの両方が求められるため、誰もが簡単になれるわけではありませんが、需要は年々高まっており、将来性は抜群。ぜひ今後のキャリアの選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
文/赤池沙希
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