「プロジェクトの途中でトラブルがよく起こる」「自分の説明が伝わっていない気がする」そんな“技術以外”の課題の背景にあるのは、ひょっとして「コミュニケーション」の問題かもしれない。プレゼンの神・澤円が自身の経験やノウハウをもとに、仕事がスムーズに進むコミュニケーションのヒントを伝授!
ITオンチな経営層に「技術者の意見」をどう伝える?【澤円「コミュ力おばけ」への道】
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)/『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム社)/『「やめる」という選択』(日経BP社) Voicyチャンネル:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
皆さんこんにちは、澤です。
「エンジニア不足」はもはや国民の常識となっていますね。
ボクからすれば、「今まで散々経営サイドがエンジニアたちを雑に扱ってきたツケだろう」と冷たい気持ちになってしまうわけですが・・・・・・。
ただ今更そんなことドヤったところで何も解決しないので、今回は「そういう経営ボードの連中とうまくやっていく方法」について考えてみたいと思います。
「ITを分かる経営者」は、まだまだ少ないのが現実
ボクが日本のIT業界について説明するときに、よく引き合いに出すデータがあります。
【1】米国のIT人材の在籍先は65%が事業会社、35%がITベンダー。
そして、ITベンダーの多くがプラットフォーマー。
【2】日本のIT人材の在籍先は75%がITベンダー、25%が事業会社。
そして、ITベンダーのほぼ全てがシステムインテグレーター。
これ、何を意味するのでしょう?
日本の場合、事業会社の中には限られたITリソースしかなく、開発運用は基本的に外注。そのため、社内にITにまつわるノウハウが溜まりにくい構造になっている。さらに社内のIT部門は、「いかにコストをかけずに、ITにまつわる仕事を進めるか」に意識が集中しがち。結果として、低スペックのPCを社員に配ったり、既存システムの延命でどうにかコストを抑えたりしようとします。
これは、あくまでも構造的欠陥について指摘しているだけで、IT部門が全部悪いというわけではありません。むしろ、そんな構造を野放しにしている経営陣の罪が重いといえるでしょう。
またボクの経験値から言えば、経営層の中にITに詳しい人が存在することは極めて稀です。「私ITオンチなんです」と公言する経営者にも、しばしば出くわします。
そんな経営者の下でITにまつわる仕事をするのは、本当にしんどいものです。何せコストとしか見てもらえず、その上で「生産性を上げるためにどうにかしろ」とかいうわけですから。
そもそも日本にはプラットフォーマーがいないが故に、外資系ITベンダーのプラットフォームを使うか、システムインテグレーターに発注してシステムを手作りするかのどちらかになることがほとんどです。
ただ外資系ITベンダーは容赦無く値上げをしてくることもあり、対応する側はコストを抑えるのが大変。とはいえシステムインテグレーターに丸投げしてしまうと、そのベンダーへの依存度が高くなりすぎる。場合によっては運用が属人的になって、「特定の人物が退職してしまうと運用ができなくなる」といったリスクを抱えることもあります。
最近少しずつ、日本にもSaaS企業が増えてきたのは喜ばしいことです。日本国内でシステムにまつわるあれこれが全て完結できれば、IT部門の負担はかなり軽減されます。
しかしながら、そのSaaSを使うにも「業務に合わせる」という名目で、やたらとカスタマイズをしたがってコストの増大を招いたり、運用負荷が上がったりします。
……なんだか絶望的なことばかり書いてる気がしてきました。
でも、これって概ね事実なんじゃないかな?
個別には違う事例があるのは承知してますし、そういう企業がだんだんに増えてきつつあるのも知っています。とはいえ、圧倒的マジョリティは上記のような状況ではないでしょうか。
自社のビジネスに興味を持ち、売上やコストを知ろう
この状況、実はエンジニアにとってはキャリアとして大きなチャンスだと思っています。
なぜならこのご時世ともあらば、経営陣はITの重要性をもっと理解しなきゃいけないのは、分かりきったことだからです。特に生成AIが世の中を席巻している昨今、多くの経営者は焦っているのではないでしょうか。
そんな経営者にとって、ITに詳しい社員やパートナーの人たちは、極めて重要なプレイヤーとなり得ます。エンジニアは、「経営者の懐刀」になる絶好のチャンスです。
そのために必要なことは、「経営にITがどう効くのか」を語れるようになることです。
まず、自分が所属している企業や契約している企業の、本業のことに興味を持ちましょう。何をどれくらい売って、どれくらい利益があって、どれくらい費用があるのかを知る。決算報告を見れば全て書いてあります。そこで語られている数字に興味を持ちましょう。
次に、「こうやったら売り上げアップできるのでは?」「このコストは自動化でカットできるのでは?」という仮説を立てる練習をしましょう。そこで、どんなテクノロジーを使えるかのアイデアを出せれば、「この人は経営にテクノロジーを当てはめられる人材だな」という認識を持ってもらえます。そのような人材は極めて稀少なので、どんな業界でも活躍できるようになるでしょう。
とはいえ、なかなか経営陣と会話をする機会もないかもしれません。「話す機会が来るかどうかも分からないのに、モチベーションが湧かないなぁ」と思う方もいますよね。
でも、チャンスはいつ巡ってくるか分かりません。いざというときに「準備しておけばよかった」と思っても遅いのです。そのためには、あらかじめ備えるしかありません。
取り急ぎ準備しておくといいのは、「クイックデモ」です。ほんの2〜3分でできるデモを用意しておくといいでしょう。
会社で実際に使われているフォーマットをベースに、請求書のデモデータを複数作成する。それをChatGPTに読み込ませて「請求金額を教えて」と入力して計算させるデモなどは、ITに強くない経営陣にとってもイメージを持ちやすいようです。
特に自然言語でやりとりするイメージがまだできていない経営陣には、比較的シンプルなデモで理解を促すことが効果的です。
ぜひとも今から備えましょう!
2023年10月19日に澤の新著が出版されました!
自分自身をメタ認知するための考え方について書いた本です。
ぜひ手に取ってみてください。
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