株式会社システム・リノベイト
取締役 兼 常務執行役員
中村将成さん
大阪府生まれ。1999年に神戸学院大学 経済学部を卒業後、大阪のSI企業に就職。DXソリューション事業のプログラマ、システムエンジニア業務に携わる。その後、大手一部上場のSI企業へ転籍となり、SI事業部で活躍。2013年に退社後、システム・リノベイトに入社。同年6月、取締役 兼 常務執行役員に就任
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技術の著しい進歩や顧客ニーズの多様化、業界の枠を超えた企業間競争の激化など、ビジネスの不確実性が増す現代。多くの企業にとって、生き残りをかけた経営戦略の策定が急務となっている。
このような環境の中、IT業界では「SES」という業態自体の衰退を叫ぶ声が少なくない。オフショア開発の普及や多重下請け構造、そして慢性的な人材不足など、背景には多くの課題がある。今、SES企業にはどのような「生存戦略」が必要なのだろうか。
そのヒントをくれるのが、企業のDX導入支援やWebシステム開発をメイン事業とする株式会社システム・リノベイトだ。同社取締役の中村将成さんは「多くのSES企業にとって、生き残るためには事業の多角化が不可欠」と語る。その詳細を聞いた。
株式会社システム・リノベイト
取締役 兼 常務執行役員
中村将成さん
大阪府生まれ。1999年に神戸学院大学 経済学部を卒業後、大阪のSI企業に就職。DXソリューション事業のプログラマ、システムエンジニア業務に携わる。その後、大手一部上場のSI企業へ転籍となり、SI事業部で活躍。2013年に退社後、システム・リノベイトに入社。同年6月、取締役 兼 常務執行役員に就任
ーーまずは、現在SES企業が直面している経営上の課題に関して、代表的なものを教えてください。
IT業界全体で「エンジニアの人手不足」は長年の課題となっていますが、特にSES業界はその影響を強く受けています。まだまだ売り手市場が続いていますし、「仕事はあるけれど人が集まらない」「人材を確保できても雇用し続けることが難しい」という印象がありますね。
SESはエンジニアがいてこそ成り立つビジネスモデルですから、競合との競争が激化していく中で、計画的に人材を確保していく戦略が重要です。
ーー現在、安定して人材を確保できているSES企業には、どのような特徴があるのでしょう。
「還元率が他社に比べて高い」「フルリモートやフルフレックスで働ける」といった、待遇面で強みを持っていることだと思います。
前提として、SESの働き方というのはコロナ禍前後で変わりつつあります。従来のSESはプロジェクト先に常駐する形が主流でしたが、現在はSESでもフルリモートで稼働できる現場が増えました。SESを希望するエンジニアの多くは、「フルリモート」「フルフレックス」など、働き方に融通を利かせられるかどうかを重視しています。
その上、自分自身の収入アップを軸に転職する方も多く、「高単価の案件に入ってできるだけ収入を増やしたい」と考えるエンジニアが多数派です。SESビジネスをやっていくのであれば、他社の追随を許さないくらいの好待遇を確立しないと、生き残っていくことは難しいのではないかと感じますね。
ただ個人的には、これからの時代に「SESだけ手掛ける会社」は淘汰されていくのではないかと考えています。
ーーそれはなぜですか?
オフショア開発の普及やAIの進化により、システム開発で「人の手」に頼る部分が少しずつ変化しているからです。
今後のシステム開発では、AIや自動化技術をどれだけ効果的に活用できるかが重要な鍵になっていきます。単なるプログラミングスキルを持つ人材ではなく、さまざまなツールや技術を効率良く活用できる人材をいかに確保するかが、企業の命運を分けるでしょう。
そのような人材はどの企業からも引く手あまたなので、簡単には採用できません。そのため、エンジニアを未経験から育てるというスタイルを取ることが、現実的だと思います。
しかし、育成コストをかけて人材を育てても、「高還元率」「フルリモート」といった好待遇のSES企業に人材を青田買いされてしまうリスクは非常に高い。
このように、従来のような「人出しビジネス」だけを手掛けているSES企業には、厳しい時代が訪れるだろうと感じています。
ーーただ現状では、SESだけを手掛ける企業はまだまだ多い印象です。この要因とは一体何だと考えますか?
企業の経営方針として、人材を育てて長く定着させていこうといった考えがあるかどうかですね。言い換えると、社員育成にも前向きな会社であれば、自ずと受託開発や自社サービス開発に着手しているともいえます。
実際に当社はSESに限らず受託開発も手掛けていますが、これは在籍しているエンジニアに少しでも長く当社の環境で活躍して欲しいという姿勢があるからこそ。ちなみにシステム・リノベイトが手掛けるプロジェクトは、基本的にチームで進めていくものばかりなので、採用では「チーム全体の成長を促進できる人材」かどうかを注視しています。
こうしたマインドの人は「会社の風通しの良さ」を重視する傾向にあるので、当社は少しでも「人間関係の良い会社」を目指しています。その結果今では、新卒入社3年間の定着率約9割という数字も記録することができました。
ーーなるほど。「人手不足」がより深刻になっていく今、人ありきのビジネスだけでは立ち行かなくなる可能性が高いと感じました。
はい。それこそ近年では、今までSES企業や受託開発企業に頼っていた部分を内製化する企業も増えています。SESというビジネスモデルが完全に無くなるとは思いませんが、ニーズは減少していくのではないかとも予想します。
「今のうちにある程度利益を生み出せればいいや」と考えるのであれば話は別です。ただ今後も長くIT業界で生き残っていきたいならば、SES企業が必要とされない未来が来たとしても生き残れるような「収益基盤」を、新たに生み出しておく必要があります。
ーー人ありきのビジネスモデルから脱却するために、システム・リノベイトではどのような経営戦略を取っているのでしょうか。
先述した通り、当社はSES事業に加えて受託開発も手掛けていますので、今後はこの受託開発の規模をさらに拡大していく方針です。具体的には「一次請け」の案件を増やしていくことで、一つのクライアントと長期的で深い関係を築き、より広範囲にわたるビジネス展開を目指しています。
そして、今年の7月からは新たに「自社サービス開発事業部」を立ち上げ、自社プロダクトの内製化に向けて動き出しています。
ーー受託開発の拡大に加えて、自社サービス開発にも乗り出す決断をされた理由とは?
会社としてさらなる成長を遂げるためには、企業としてのブランド力が不可欠だと考えています。ネームバリューが向上しなければ、優秀な人材を引き寄せることも難しくなるでしょう。
その点、自社サービス開発への挑戦は「企業ブランド力を高めるための重要な投資」として、大きな価値があると考えています。また、外部に向けたアピール効果が期待できるだけでなく、社員のモチベーション向上にもつながります。もちろん、自社サービスに過度なコストをかけて経営を揺るがすようなことは避けたいですが、当社はSESと受託開発という二つの事業基盤を既に確立しています。
ーー複数の事業柱を確立できれば、安定的な収益にもつながりそうです。
そうですね。受託開発や自社サービス開発に注力していく予定ですが、従来のSES事業も規模を維持していけるように努めています。あくまでも、SES・受託・自社サービス開発の三つをバランス良く組み合わせ、市場の変化に適応していくことが大切だと思います。
理想的な形としては、受託開発や自社サービス開発によって若手エンジニアの技術力を底上げしつつ、会社全体に培ったノウハウやリソースを武器に、SESでも利益を生み出せるような構造を確立したいです。
ーー今回開発した自社サービスは具体的にどのようなものなのでしょうか?
当社はサイボウズ社の『kintone (キントーン)』の導入支援を行っているので、kintone で使用できるプラグインサービス(*)を開発しました。
(*)プラグインサービスとは
kintone の基本機能に加えて、業務プロセスを効率化するための機能を簡単に拡張できるツール。プラグインをインストールするだけで、コーディング不要で新しい機能を追加可能。例えば、グラフ表示やレポート作成、外部システムとの連携などが可能となる。さらに、サードパーティ提供のプラグインも利用でき、自社で独自に開発することもできるため、柔軟なカスタマイズを実現できる。
プラグインサービスを持つ競合企業は他にもありますが、今回当社が開発したのは、まだ市場に出回っていない全く新しい機能です。
具体的には「kintone でレコードを閲覧しながら添付ファイルも同時に確認したい」「レコードのリンクのURLを同時に確認したい」「レコードに、住所よりも地図を表示したい」といった利用者ニーズに答える機能が挙げられます。
日常的にkintone を利用しているユーザーには、「かゆいところに手が届いてうれしい」と感じていただけるようなサービスになったと自負しています。
ーー今後はどのようなサービス開発に着手していきたいと考えていますか?
もともと自社サービスで実現したい明確なビジョンがあります。それは、弊社がこれまでの社員育成に注力してきた背景を活かし、その中で培った人材育成ノウハウやリソースを最大限に活用した『教育サービス』を展開することです。弊社の代表もかつて教師を志していた経緯があり、教育分野に対する強いこだわりを持っています。
そのためにも、まずは今回のkintone プラグインサービス開発でしっかりとした実績を残したいです。自社サービス開発体制を確立するための足掛かりを築き、次第に弊社ならではのオリジナリティーを発揮した独自のサービス開発へとつなげていく計画です。
ーーこれまでSESや受託開発をメインに手掛けてきた企業が、新たに自社サービス開発に手を出すのは簡単なことではないと思います。気を付けた方が良いポイントなどはありますか?
よくあるケースで回避したいのが、「SES事業の“空きリソース”で自社サービス開発を手掛ける」ことです。片手間で始めてしまうと思うように進んでいかないですし、どこかでおざなりになって空中分解してしまう可能性が高いですね。
当社の場合、覚悟を持って自社サービス開発に着手することを社内に示すため、まず代表が社員全員に向けて経営方針を宣言しました。その上で専門部署を立ち上げて事業部長を据え、開発全体の流れやサービスローンチ後の運用に至るまで、あらゆるスケジュールを明確に設定して進めていったんです。
こうした取り組みは、経営陣の本気度をエンジニアたちに伝えられるかどうかがポイントだと感じています。在籍しているエンジニアたちにすれば、手掛ける業務の負担が増えるという見方もできますからね。
ーー企業として今後生き残っていくために必要なビジネスだからこそ、エネルギーをかけて進めていく必要があるわけですね。
はい。「時間があるときにやろう」という考えでゴールを曖昧にしてしまうと、結果的に現場のエンジニアたちに負担のしわ寄せがくる結果となります。多少遠い目標であっても、明確なビジョンを掲げて進めることが何よりも大切です。
ーー実際に自社サービス開発をスタートさせて、在籍しているエンジニアにポジティブな変化はありましたか?
そこは大いにありますね。SESや受託開発は、すでにクライアントが求めるものがあって、それに応えるための要件を考えてシステムを開発していく流れですが、自社サービス開発は全く違います。
「●●といったニーズがあるかもしれない」「●●な部分で困っているかもしれない」といった仮説検証から進めていく必要があるので、エンジニアたちの積極性が高まり主体的な発言が増えました。
ただ言われたことだけを解決するのではなく、より良い価値を提供するための思考プロセスが養われていくので、SESや受託開発といった既存ビジネスにも良い影響が及ぼされるのではないかと思います。
エンジニアの成長という意味でも、「自社サービス開発」を確固たる事業柱にできるようにしていきたいです。
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撮影/桑原美樹 取材・編集/エンジニアtype編集部
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