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“世界初”の環境プロダクトを産んだPMに聞く、チームビルディングの心構え

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各国で削減が強く求められているCO2排出量。どのように削減していくべきか試行錯誤される中で、“世界初”となる画期的なシステムの企画開発をリードしたのが横河デジタルの澤田圭介さんだ。

プロセス製造業において、リアルタイムでのCO2計測を可能にした『OpreX Carbon Footprint Tracer』の開発プロジェクトでPMを務め、2024年4月に無事リリースに至った。

前例のないアプローチで開発する道のりでは「どんなチームでも一度ではうまくいかない時期があります。その時にチームビルディングを怠らないことが大事」と語る澤田さんに、PMとして持つべき視野や心構えを聞いた。

プロフィール画像

横河デジタル株式会社
DX/ITコンサルティング事業本部
SXコンサルティング部
シニアマネージャー
澤田圭介さん

工学修士修了後、横河電機に入社。生産制御システムのオペレーションやエンジニアリング機能の開発にアーキテクト・チームリーダーとして従事しつつ、シンガポール開発拠点の設立に参画。その後、横河子会社であるアムニモ社にて、無線エッジコンピュータを活用した映像ソリューションのシステム提案・導入に従事。現職では、これまでの開発・SE経験を活かし、顧客の課題を解決するDXソリューションの開発と提案活動に従事している

CO2削減策の見直しサイクルを1年から1カ月に短縮

ーー澤田さんが開発をリードされた、世界初のプロダクト『OpreX Carbon Footprint Tracer』(以下、Carbon Footprint Tracer)とは、一体どんなサービスですか?

世界初_Product Carbon Footprintについて語る横河デジタル澤田さん

製造業における製品単位でのCO2の排出量を算出するソリューションです。

今までは電力会社からの請求書情報や製品の生産情報から、担当者の方が手計算で、各製品の製品単位でのCO2排出量 (PCF: Product Carbon Footprint)を算出していました。

それに対し、Carbon Footprint Tracerは工場においたセンサーから1次データとして消費エネルギーを収集し、SFMと連携することで、生産情報も含めた、製品単位でのCO2排出量を算出できるシステムを構築しました。
このようなシステムにより、CO2排出量をリアルタイムで自動算出できるようにしたのは
私たちが初めて*です。

*欧州標準規格に基づいた、SAP Sustainability Footprint Managementサービスと連携してプロセス製造業におけるPCFの把握と管理を可能にしたサービスは世界初

ーーCO2排出量をリアルタイムで計測できるようになると、その削減策もスピーディーに講じられるようになりそうですね。

その通りです。今までは半年や一年のスパンで見直しを行っていたのが、一週間や1カ月でできるようになり、「電力を減らす→CO2を減らす→コストが下がる」というサイクルをどんどん回せるようになるんです。

「CO2排出量のリアルタイム算出」を実現したOpreX Carbon Footprint Tracer

工場の一次データを用いた「CO2排出量のリアルタイム算出」を実現したOpreX Carbon Footprint Tracer

【プレスリリース】OpreX Carbon Footprint Tracerサービスを発売 https://www.yokogawa.co.jp/news/press-releases/2024/2024-02-26-ja/
【プレスリリース】OpreX Carbon Footprint Tracerサービスを発売

今最もCO2規制が厳しいのはEUなので、まずはEUへの輸出やEUでの製造を行っている企業を中心に導入を考えており、すでに相談をいただいている企業も出てきています。

ただ、最近は環境への関心が高い消費者を意識して、製造プロセスにおけるCO2排出量を商品パッケージに記載するメーカーも増えていますよね。環境問題に対する規制や消費者の関心は世界的に高まっていますから、将来的にはあらゆる製造業のお客様が対象になると思います。

製造業のあり方が変化。「ITとOTの融合」に挑む

ーーそもそもなぜこのサービスを開発することになったのでしょうか。

実は今、製造業全体で「製造プロセスのあり方」を見直す企業が増えてきているんです。

そのきっかけになった出来事がコロナでした。多くの企業でサプライチェーンが崩壊し、お客さまから「いつ納品できるのか?」と聞かれても答えられなくなってしまった。その反省から「完成品や仕掛かり品の数などの工場の情報をERPと連携させて可視化し、経営者も工場も把握できるようにしなければならない」というニーズが生まれました。

製造に関する情報が可視化されるようになると、リードタイムの短縮や利益率の向上を実現しやすくなる上に、いざというときに調達先を切り替える判断もしやすくなります。

つまり、製造プロセスの柔軟性が高まり、急な環境変化への対応力も向上する。今多くの製造業が、この方向性で製造プロセスを改善しようとしています。

そうした状況下、私たち横河デジタルは「ITとOTの融合」を掲げたソリューション開発に取り組んでおり、今回開発したCarbon Footprint Tracer もその一つです。

横河デジタル目指す「ITとOTの融合」について語る澤田さん

ーー「ITとOTの融合」とは?

この場合「IT」とは、ERPなどの基幹業務系システムのデータや情報を指します。

一方「OT」とは、現場を動かす「オペレーショナルテクノロジー」の略で、工場側のデータや技術を意味します。

これらの情報を組み合わせると、製造業の製造プロセスに新たな付加価値をもたらすことができると私たちは考えています。

今回のCarbon Footprint Tracerは、まさに「ITとOTの融合」です。工場から消費エネルギーに関する情報を集めて、そこにERPが持つ生産情報を合わせた結果、CO2排出量のリアルタイムな算出が可能になりました。

このように経営と現場の情報を合わせることによって、新しい価値を生み出す「ITとOTの融合」は、横河デジタルだからこそできることだと言えます。

ーーなぜ「ITとOTの融合」は他社には難しいのでしょうか?

これをやろうとすると、フルスタックの技術力が必要になります。例えばCarbon Footprint Tracerのプロジェクトでは、工場側でデータを集める機能を作るチーム、真ん中のクラウド部分を構築するチーム、可視化の機能を担うUIチームで役割を分担しながらスクラムを組んで作りました。つまりPMは、これらの機能に必要な技術を横断的に理解していなくてはなりません。

幸いにも、私自身が横河デジタルの中で、複数の領域を横断しながら作るプロダクトを多く手がけているので、我々エンジニアは業務を通じて幅広い技術領域に知見を広げることができます。

さらに「OT」部分の知見は、当社のように国内外で多数の現場実績があり、かつグループ内に工場を持つ企業でなければ簡単には得られません。

今回のプロジェクトでも自社工場に試験導入を行なっていますが、現場で得た知見を実際の商品開発に生かすことができるようなDX会社は、非常に少ないと思います。

必ず訪れる「混乱期」で逃げないPMになるために

ーーCarbon Footprint Tracerの開発で一番苦労した点は?

合計10人のエンジニアで開発したのですが、スキルレベルも国籍もばらばらだったことですかね。ビギナーレベルのエンジニアもいれば、インド人のエンジニアもいる中でうまく意思統一を図り、進めていくのには苦労しました。

開発チームのチームビルディングで最も苦労した点を話す澤田さん

例えば、アジャイル開発を行なっていたので、後の変化に耐えうる設計をしてほしかったのですが、それを理解してもらうのにはかなり苦戦しました。

まずはやってみて、その結果を見てアドバイスするという繰り返しの中で、徐々に習得していってもらいました。

ーー澤田さんはこれまでもさまざまなプロジェクトでPMを務めて来られましたが、PMとして良いモノづくりをする上で大切なことは何でしょうか?

一人一人が自分の力を十分に発揮できる「いいチーム」を作り上げることだと思います。

チームビルディングの手法としては「タックマンモデル」が有名ですよね。そのモデルによると、チームには形成期、混乱期、統一期……といった複数のステージがあります。

実際の開発現場もこの通りに進んでいくので、最初の「形成期」では仲良く意気投合するのですが、個々のエンジニアの背景・スキル・価値観が明らかになる、その後の「混乱期」に入ると必ず揉めるんです。

このときPMは、決して逃げてはいけません。しっかりとメンバーの話を聞き、議論をする。ここでなし崩し的にフタをしてしまうと、その後のプロジェクトは決してうまくいきません。

「混乱期」で逃げずにメンバーと向き合った結果、最高のパフォーマンスが出せたプロジェクトは未だに記憶に残っています。

10年も前のプロジェクトですが、あのときはオランダ人のエンジニアと意見が合わなくて苦労しました。しかし最終的には、日本人対オランダ人で腕相撲大会をするぐらい仲良くなりました(笑)

開発メンバーと仲良くなったエピソードを話す_笑顔の澤田さん

ーー「混乱期」できちんとメンバーに向き合い、充実した議論をするためには、何に気をつけると良いですか?

それぞれの意見から属人性を切り離すことです。PMは「Aさんの意見はいい意見に違いない」「Bさんの意見は聞く価値がない」というような考え方を絶対にしてはいけません。

誰の意見であっても、それはオプションA、B、Cでしかない。出てきた意見を人から切り離してメンバーの目の前に並べ、目的や状況に照らして最適なものを選ぼうとすれば、自然と意見はまとまります。

このように、「混乱期」に何をするべきかというのは、実はかなりテクニカルな話なんです。私自身は周りを巻き込むような議論が昔から自然とできたわけではなく、PMに必要なスキルだと意識して早期から身につけようとしてきました。

いらない基礎なんてない。全てがPMとしての土台になる

ーー“世界初”のプロダクトを作れるようなPMを目指す上で、意識するべきことは何でしょうか?

私自身は組み込みエンジニアからキャリアが始まり、サーバーエンジニアを経てリーダー経験を積んで、エンジニアとして一周回った感覚があります。振り返って思うのは、オブジェクト指向やネットワークの基礎といった基本的な技術や知識は、とても大切だということです。

もし基礎が不十分だと、PMになってから自分のプロジェクトで何か問題が発生したときに、その原因の検討がつきません。特にクラウドのように、目に見えないプロダクトの問題の原因を特定する場合は、PMが自分の知識で当たりをつけなくてはならないのですが、それができない状況では、問題解決にかなり長い時間を要してしまうでしょう。

若手のうちは、今自分が使っている技術が将来どう活かせるのかイメージが湧かないこともあるかもしれません。しかし、エンジニアの知識は土台の上に積み重なっていくものですから、一つも無駄がないものとして学んでいくのが良いのではないかと思います。常に好奇心を持ち、新しいものを吸収する姿勢が大切ですね。

今回のプロジェクトでは、CO2排出量の算出にデータレイクハウスを構築しました。これはITとOTの融合を進める上でもコアとなる技術やデータであり、今後もさまざまな分野に生かすことができる可能性があります。

今後はこれを活用した新たなソリューションの開発に挑戦し、製造業のお客様へのさらなる価値提供を目指していきたいと思います。

横河デジタルでの仕事の展望を語る澤田さん
【check】横河デジタルの中途採用情報はこちらから https://js02.jposting.net/yokogawa-digital/u/job.phtml
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文/一本麻衣 撮影/桑原美樹 編集/玉城智子(編集部)

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