『DX時代の最強PMOになる方法』著者・甲州潤が教える
エンジニア時代に知りたかった「開発現場の難所」突破のコツ「キャリアアップをしたいエンジニアはPMOという選択肢もアリ」と著書『DX時代の最強PMOになる方法』で伝える甲州潤さん。エンジニアからキャリアをスタートし、現在ではPMOとして多くのIT利活用や経営相談をこなす甲州さんが「今だから言える、エンジニア時代こうしていればよかった」と思うスキルや考え方、プロジェクトの進め方を実体験をもとに紹介していきます!
NEW! 「開発現場の難所」突破のコツ
『DX時代の最強PMOになる方法』著者・甲州潤が教える
エンジニア時代に知りたかった「開発現場の難所」突破のコツ「キャリアアップをしたいエンジニアはPMOという選択肢もアリ」と著書『DX時代の最強PMOになる方法』で伝える甲州潤さん。エンジニアからキャリアをスタートし、現在ではPMOとして多くのIT利活用や経営相談をこなす甲州さんが「今だから言える、エンジニア時代こうしていればよかった」と思うスキルや考え方、プロジェクトの進め方を実体験をもとに紹介していきます!
先日、簡単なWebサイトをつくる機会があり、画像が必要となったので生成AIを使ってあれこれ画像を作成しました。何パターンもの画像を瞬時に作成できる。AIの進化は画像だけにとどまりません。ライティングやプログラミングの領域にまで及んでいます。
これらは数年前までは考えられなかったこと。本連載を読んでくださっている方の中には「いずれ、PMOすらAIにとって代わられるのでは……」と思っている方もいるかもしれません。しかし私は、「むしろAIに仕事をお任せできるなんて最高だ」とすら思っています。
本記事では、AIとPMOとの関係性を踏まえながら、今後PMOとして働きたい場合はAIをどう捉え、どう付き合っていけばよいのか、お伝えしていきたいと思います。
株式会社office Root(オフィスルート)
代表取締役社長
甲州 潤(こうしゅうじゅん)
国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画し、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動を開始し、多数プロジェクトを成功へ導く。企業との協業も増加し、2020年に法人化。さまざまな企業課題と向き合う日々。著書『DX時代の最強PMOになる方法』(ビジネス教育出版社)
目次
まず、次の図を見てください。
PMOの仕事とひとくちに言っても、実はその仕事内容は四種類に分けられます。
最も下部にある仕事がオペレーターです。例えば、プロジェクトの進行上、Aさんに「〇月〇日までに返事をもらわないといけないタスク」があるとしましょう。その内容を見て、「〇日までにこちらの返信をください」というリマインドを行う。これがオペレーターの代表的な仕事です。Aさんから回答が返ってきたら、今度はそれを適切に処理する。いわば機械的にできる事務作業が該当します。
この仕事は、今後AIの仕事に置き換わっていくでしょう。つまり、AIが担当者にタスクの完了を確認し、必要であればリマインドを送る。担当者が「何をしていいかわからない」ことになっても、生成AIに質問すれば必要な答えを深掘りして教えてくれる。AIは、とても優秀なリマインダーになるはずです。
決まったプロセスに従って「次はこのタスクをお願いします」といった進行管理を行うのもPMOの仕事のひとつです。例えば、期日までにタスクが終わらないことがわかれば、プランB、プランCを提案します。簡単なことで言えば、ミーティングのゴールを設定し、実際のミーティングでそれが行われるかを管理するのもPMOの役目です。
今後、このサポーターの仕事もおそらくAIが担えると思います。例えばミーティングの進行の場合、話が脇道に反れてしまったら、同席しているAI botが「事前のアジェンダと違う話をしています」と警告音を鳴らすなど、参加者を管理してくれるはずです。ただしこの場合「AIが言っても無視する」ことも想定できるため、「参加者は、AIが言ったことをきちんと守れる」自律性が前提になければ成立しません。
現在抱えている課題や今後起こりそうなリスクなどを把握し、解決策を提案するのもPMOの重要な役割です。というより、むしろこの推進型や、次に紹介する参謀型が本来のPMOの仕事と言っていいでしょう。プロジェクトごとにそれぞれ異なる課題を、その時々の状況に合わせてフレキシブルに対応する。これは、いくらAIでも判断するのは難しいと言わざるを得ません。
先でお伝えした推進型の応用バージョンです。「このタスクは現在は着手できないが、半年先にはできる状態になる。なので、今からこのメンバーをアサインしておきましょう。そうすれば御社の人件費も○%削減できます」などと、現在だけでなく未来に何ができるか、どんなことがリスクになるのかを予測し判断していく。そんなコンサルタント的な仕事もPMOが担うことがあります。
ここまでくると、会社の事業やメンバーの特性、ビジョンなどを把握した上での、適切な助言が求められます。ファシリテーター同様、これもPMOの本来業務の一環であり、当面はAIが取って代わることは難しいでしょう。
PMOの四つの仕事をお伝えしてきました。総じて言えるのは、「やるべきことが決まっていること」「ゴールが見えているタスク」に関してはAIが代行してくれる、ということです。「本来、誰もができて当たり前のことは人が関わることでもない」というシビアな状況に変わっていくことでしょう。
私自身、これまでの経験を振り返ってみると、管理やオペレーターとして1〜2人のアシスタントをつけていた時期もありました。これらがAIに置き換わってくれれば、単純にその分の人件費がカットできます。
しかもAIは学習能力が高いので、人間と違って二度と同じ間違いをすることはありません。
例えば、会議の文字起こしを誰かに依頼するとしましょう。「ただ文字起こしするのではなく、要約もお願い」した場合、精度の高さは人により差異があります。また、毎回同じ指示出しをしないと要約までしてくれない場合もあります。
その点、AIは「要約までお願い」する指示を出すと、次からは忘れたり間違えたりすることなく実行してくれます。つまり、AIの方が言われたことを正確に行えるのです。精度が重要であれば、生成AIの発達によっておそらく誤字脱字のない、分かりやすい要約ができあがってくるはずです。
誤解を恐れずに言えば「AIの方が正確性という観点では優秀で、かつ学習能力にも優れている」ことになります。人間のように「○○さんに言われたことはやりたくないな」「やることを忘れていた」というミスも起こりません。言い方は悪いですが、「出来の悪い人間よりAIの方が重宝する」そんな逆転現象が起こる可能性も大いにあるのです。
さて、やや過激なことを伝えましたが、当然ながら「人間でなければできないこと」もあります。
例えば、管理型において「その人が何をするか考えていく」場合、今のAIは個人の能力をインプットしない限り適切な指示を与えることができません。さらに言えば、個人のスキルを完全にインプットすることは不可能なのです。それは、どういうことなのか。
ある会議の風景を考えてみましょう。
参加者は、甲州・Aさん・Bさん・Cさんだとします。あるタスクについてAさん、Bさん、Cさんにそれぞれ「期日までにできますか?」と甲州が質問しました。
Aさん「はい!できます」
Bさん「はい……まあできると思います」
Cさん「……はい」
さて、この三者の返事を聞いてみなさんはどう感じましたか?
おそらく「Aさんはできるが、Bさんはあやしい、Cさんはできないだろう」と判断したのではないでしょうか。実際に三者の様子を見れば、さらにそう感じたかもしれません。
しかし、「できますか?」という質問に対してみなさん「YES」の回答をしています。AIは良くも悪くも回答を額面通りにしか受け取れないので、これらはすべて「できる」と判断してしまうのです。
少し話は反れますが、人間は相手の発する言葉や声のトーン、しぐさ、態度などすべてを総合的に判断して「できるか、できないか」を理解しています。当たり前ですが人間ってすごいですよね。なので、管理型に関しては「現在のAIではできる部分とできない部分がある」というのが正解だと考えています。
さらに、AIは要約した結果が正しいのかどうか判断することができません。例えば会議で「車が空を飛んでいて……」という話が出た場合、人間は「それは現実に起こらないこと」だと判断し本題の話から除外できます。しかしAIは「議題からずれていないかどうか」に主眼が置かれているため、その話が除外できるのか正しく判断できない可能性があります。ただ、これは将来的にAIの精度がさらに高まることで解決していくでしょう。
今回はAIとPMOの関係について述べてきましたが、みなさんはどう感じましたか?
「意外とAIでできることは少ないんだな」と思われたかもしれません。しかし、AI技術は今後さらなる発展が予想されます。
そのため、特に若手のエンジニアが身に付けておくべきスキルは二つあります。
一つは、管理者視点を持った上で、適切なプロンプト(指示出し)を書けるようにしておくことです。AIはいわば、”優秀な部下”。現代の若い世代は、「1人のAI部下を持った状態で社会に出る」と言っても過言ではないでしょう。
実際AIを使ってみると、「プログラムを作ってください」といったあいまいな指示では期待通りの結果を得られないことがわかるはずです。どのように指示出しすれば正確に動くのか、あるいはどんな目標を設定すればAIは正しく動いてくれるのか。そうやって考えることは、いずれ求められる「人間の部下に指示出しをする」スキルにも大いに役立つはずです。
そしてもう一つは、AIが作り上げた成果物に対し、それが正しいのか論理的に添削できる力をつけることです。ただただできあがったものを「そうなんだ。AIが作っているから間違いないだろう」とノーチェックで通過させていては、意味がありません。お伝えしたようにAIにも弱点はあります。そうしたいわば「AI側の嘘」を見抜き、物事の本質や正しい情報にアクセスできる力も必要になるでしょう。
怖い話ばかりになりましたが、大切なのは「新しい技術を怖れず、むしろ仲間のように扱うこと」です。私も日ごろからAIに積極的に触れて、慣れ親しんでいるところです。少し大きな話になってしまいますが(笑)、AIと一緒に共存できるような社会を目指していきましょう! そうすれば、これまでに考えもしなかった新しいサービスや商品のアイデア、働き方や人生の歩み方のヒントが見つかるかもしれません。
『DX時代の最強PMOになる方法』
著:甲州潤
▼こんなエンジニアはぜひお読みください。
・今の仕事に不満を持っていて、現状を変えたいと思っている
・給料をアップしたい
・エンジニアとしての将来が不安だ
・キャリアアップをしたいが、何をしたらいいかわからない
・PMOに興味がある
・PMOとして仕事をしたい
【目次】
第1章 一番稼げるIT人材は誰か
第2章 これからはPMOが1プロジェクトに1人必要
第3章 SEとPMOの仕事は何が違うか
第4章 稼ぐPMOになる7つのステップ
第5章 優秀なPMOとダメなPMOの見抜き方
第6章 PMOが最低限押さえておきたいシステム知識とスキル
第7章 システムは言われた通りに作ってはいけない
第8章 どんな時代でも生き残れる実力をつけよう
>>>詳細はこちら
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