KIT虎ノ門大学院
イノベーションマネジメント専攻 MBA主任教授
三谷宏治さん
BCG、アクセンチュアを経て現職。アクセンチュアでは戦略グループ統括を務める。06年からは「教育」領域に専念。社会人の他、子ども・親・教員を対象に様々な教育活動中。著作多数。『経営戦略全史』はビジネス書大賞2014大賞、ダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位。『ビジネスモデル全史』は同2014第1位。放課後NPOアフタースクール、NPO法人3keys 理事。永平寺ふるさと大使
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エンジニアとしてのキャリアを盤石にするためには、もはや技術力だけでは足りない時代に突入している。
AIの急成長を背景に、ビジネスモデルが進化し続け、単なる専門技術に頼るだけでは、市場の変化に対応することが難しいのが現状だ。企業が求めるのは、技術力とビジネス知見を掛け合わせ、新たな価値を創造できる人材だろう。こうしたスキルセットの獲得が、これからのキャリアの鍵を握る。
しかし、多忙な業務と並行してリスキリングに挑むのは容易なことではない。時間の確保やモチベーションの維持といった壁に直面しがちで、中途半端な結果に終わってしまうことも少なくない。
そんな一筋縄ではいかないリスキリングの成功率を高める方法の一つに、「社会人大学院」に通うという選択がある。特に「KIT虎ノ門大学院(以下、KIT)」は、働きながらでも1年間でMBAを取得できるという点でビジネスパーソンの関心を集めており、これまでに700名以上、エンジニアに限定すると約200名のリスキリングを支援してきた実績を誇る。
そこで今回、KITで主任教授を務める三谷宏治さんのコメントを通して「社会人大学院がリスキリングに適している理由」を明らかにすると共に、KIT卒業生のエピソードから「リスキリング成功の鍵」とは何かを探った。
目次
金沢工業大学を母体に持つKITには、これまで多くのIT系人材が入学しており、直近3年間の入学者の約3割がエンジニア系職種だという。
エンジニアたちは、どのようなスキルを身に付けるべくKITを選んでいるのだろうか。エンジニアのキャリア形成における「リスキリングの重要性」を、KITの主任教授・三谷さんに聞いた。
KIT虎ノ門大学院
イノベーションマネジメント専攻 MBA主任教授
三谷宏治さん
BCG、アクセンチュアを経て現職。アクセンチュアでは戦略グループ統括を務める。06年からは「教育」領域に専念。社会人の他、子ども・親・教員を対象に様々な教育活動中。著作多数。『経営戦略全史』はビジネス書大賞2014大賞、ダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位。『ビジネスモデル全史』は同2014第1位。放課後NPOアフタースクール、NPO法人3keys 理事。永平寺ふるさと大使
ーーエンジニアにとって、リスキリングの重要性は以前よりも増していると思いますか?
はい。現代は新しい技術やツールが次々と登場していることで、顧客やビジネスのニーズが急速に変化し続けていっていますよね。ニーズにきちんと応えるためには、単に技術スキルを磨くだけでは不十分です。
例えば、エンジニアリングの知識が豊富でも、顧客の潜在的なニーズを見つけ出せないと、求められるソリューションを提供することは難しい。技術スキルに加えて、市場の動向や顧客の期待に柔軟に対応できる力を養うことが重要です。
ーー具体的には、どのようなスキルを身に付けていけばよいのでしょうか?
さまざまなスキルが挙げられますが、特に大切だと感じている「発見力」と「重要思考」の二つを紹介します。
まず「発見力」は、顧客や市場が本当に求めているものを見つけ出す能力です。多くのエンジニアの場合、技術的な問題を解決することは得意だと思います。一方で、ビジネス的な課題への提案は苦手としている人も多いのではないでしょうか。
市場の変化や顧客の潜在的なニーズを素早く見つけられる「発見力」のあるエンジニアは、これから先も必要とされていくと思います。
ーー続いて、「重要思考」について教えてください。
このスキルは、私が考案・実践してきた一種の論理思考です。物事をうまく進める上で何が最も大切なのかを見極め、正しく意思決定するための方法論です。
エンジニアは細部にこだわることが得意ですが、今後はビジネスの目的を見失わずに優先順位をつけて物事を進める力も必要とされていくでしょう。プロジェクトの成功率を高めるだけでなく、チームや組織全体に対しても大きな影響を与えられるはずですよ。
重要思考について
全ての主張を、相手に対する「重み」と「差」で捉えようとするもの。KITではワンテーマで議論し続ける中で、重要思考を習得することが重要視されている。三谷さんの著書『一瞬で大切なことを伝える技術』(三笠書房)で詳しく解説されている。
ーー技術の枠に収まらないスキルアップが重要ということですね。
リスキリングを通じて発見力や重要思考を身に付ければ、チーム内での存在感だけでなく、ビジネスへの影響力も自然と上がっていきます。そうなれば、キャリアの選択肢も広がるでしょう。
働きながらのリスキリングは簡単なことではないですが、社会人大学院であれば単に知識を得るだけでなく、実際の仕事で活かせるスキルを身に付けられます。KITには、多様なバックグラウンドを持つ受講生が集まっているので、自分一人では得られない新しい視点に触れる機会も豊富です。先ほど述べた「発見力」を身に付けるためには、うってつけの環境だと思います。
リスキリングを成功させるには、知識のインプットだけでなく、実際の課題に向き合いながら学びを定着させていくことが欠かせません。その環境が整っていることが、社会人大学院で学ぶ大きなメリットだと考えています。
続いては、実際にKITで学んだ3名の卒業生のエピソードから、リスキリングを成功させるためのコツを探った。
リスキリングを成功させるためには「なんのために学ぶのか」を明確にすることが重要。そう語るのは、KITで学びながらMBAを取得した30代男性・Aさん(製造業マーケティング担当)だ。
日々の業務に追われる中でもリスキリングに取り組み続けたAさんは、当時のことを次のように振り返る。
学ぶこと自体が目的だと錯覚することなく、将来的なキャリアの広がりを意識できたことが、リスキリングをやり遂げられた要因だと思います。何のために学ぶのか、目的をはっきりと設定したことで、自分の中での優先順位が明確になりました。
KITの講師陣は個々の目標に寄り添い、私のキャリアプランに合わせて学習計画を立ててくれたので、自分のペースで無理なく進められたのが良かったです。
明確な目標は計画的に学びを進める助けになることはもちろん、モチベーションアップにつながる。そして計画をきちんと実行するためには、進捗状況を定期的に確認し軌道修正を行うことも欠かせない。
そのためにも、目標に向かって伴走してくれる講師がいる社会人大学院やビジネススクールの活用は有用といえそうだ。
限られた時間をどうやって学びに充てるか。働きながらリスキリングに挑戦する上で、避けては通れない課題の一つだ。学びの時間を作ること自体が難しいと、この時点でリスキリングにつまずいてしまう。
では、その時間を確保するためには何を意識すれば良いのか。卒業生の40代男性・Bさん(IT営業マネージャー)のエピソードからは、「優先順位を見極める力」の重要性がうかがえた。
まずは自分の一日のスケジュールを細かく分析し、無駄な時間を削る努力をしました。そのためには、自分にとって本当に必要なタスクとそうでないタスクを、明確に線引きすることが大切です。メールチェックや会議の時間を減らすなどして、学びに集中できる時間をいかに捻出できるかが、リスキリングを成功させるために重要だと思います。
一人で学び続けていると、孤独感からモチベーションを失ってしまうこともあるだろう。そんな時、同じ目標を持つ仲間と学びを共有することは、スキルアップへの意欲を取り戻す上で効果的だ。
卒業生の40代女性・Cさん(組織人事コンサルタント)は、次のように話す。
自分とは異なるバックグラウンドを持つメンバーとのディスカッションやプロジェクト型学習からは、今まで気付けなかった新しい視点を得られます。これまでの固定観念が崩れ、物事に対して以前とは違ったアプローチを考えるきっかけになりましたね。
さらに共同作業を通じて学ぶことで、単なる知識の交換にとどまらず、実際の課題解決にも結びつける力を養えたと思います。
Cさんの動画では上記の他にもコミュニティーで学ぶことのメリットについて触れられている。その内容は、ぜひYouTube動画から確認してほしい。
「教育付加価値日本一」を目指す金沢工業大学のフラッグシップ拠点として、2004年に虎ノ門に開設された1年制の社会人大学院。MBA、知的財産、メディア&エンタメ、ビジネス法務、AIといった実務スキルを、トップマネジメント中心の実務家教員が少人数制教育で提供し、多くのビジネスパーソンに対して高い専門性と実践力を培い続けている。
2016年4月からはイノベーションマネジメント研究科としてスタートし、経営・マーケティング分野においては日本最高クラスの講義品質を実現。ビジネス系の科目を主として学ぶ学生は、MBA(経営管理)の学位を取得することができる。
またこれまでに約400名の知的財産専門人材を輩出し、弁理士資格等の国家資格にも対応するカリキュラムを採用している。知的財産系の科目を主として学ぶ学生は、MIPM(知的財産マネジメント)の学位を取得することが可能。
KITが運営しているYouTubeチャンネル「虎ノ門大学院ちゃんねる」では、本記事で紹介した3名の他、実際に働きながらリスキリングに成功したKIT卒業生のエピソードが複数掲載されている。
今後は、各領域の専門講師による「ビジネストレンド解説」など、社会人大学院ならではのユニークな企画を随時更新予定とのこと。興味がある方は、ぜひチェックしてほしい。
構成・編集/今中康達(編集部)
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