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LINEヤフー川邊代表「夢中になること”だけ”が価値になる」AI時代を生きる若手へ送る、後悔しないキャリアの築き方

働き方

転職先に求める条件は、当然ながら人によって異なる。ただ、いずれにせよ「どうせなら一番理想に近い会社で働きたい」と誰もが思うもの。

キャリアを描き始めたばかりの若手であれば、なおさら「少しでもいい会社へ」という気持ちは強いはずだ。「いい転職」をかなえるためには、何が必要なのだろうか。

今回その問いに答えてくれるのは、LINEヤフー代表取締役会長の川邊 健太郎さん。話を聞くと、条件を比較して会社を選ぶ前に、まずは「自分は人生で何を成し遂げたいのか」を考えることが欠かせないと語る。

果たしてその真意とは。川邊さんのインタビューから、理想の転職を実現するヒントを探ってみよう。

プロフィール画像

LINEヤフー株式会社
代表取締役会長
川邊 健太郎さん(@dennotai

大学在学中に電脳隊を起業。2000年、合併に伴いヤフーへ入社。『Yahoo!ニュース』責任者、GYAO代表取締役などを歴任し、19年にヤフー代表取締役社長CEOに就任。21年にZホールディングス代表取締役社長Co-CEOに就任、23年4月より現職

人類は「未体験ゾーン」に突入。だからこそ、何にでもなれる

これまでの日本は、「失われた30年」と言われながらもそれなりに安定し、「自分は人生で何を成し遂げたいのか」という問いを深く考えずとも生きていけました。終身雇用を前提としたメンバーシップ型の企業に入社して、定年まで勤め上げるのが一般的だったからです。人生のレールがあらかじめ敷かれていたので、就職の時点で将来のライフプランをある程度見通すことができました。

しかし今、私たちの社会は大きな変化に直面しています。今後はますます不確実性が高まり、先を全く見通せない時代になるでしょう。

51年間生きてきた私の感覚で言えば、現在はこの半世紀で3回目の大変動期です。第1期は冷戦による二極体制により、世界秩序がそれなりに安定を保っていた時代。第2期が、グローバル経済の出現と情報技術の発達によって世界が刷新されつつあった過渡期。そこへコロナショックや生成AIの登場が加わり、今まさに第3期と呼ぶべき社会変容が起こっています。

つまりこれからの社会は、人類にとって「未体験ゾーン」の始まりなのです。

LINEヤフー川邊氏 インタビューに答える様子

思い返せば、私が起業した1995年も同じような空気がありました。阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件が立て続けに起き、「人は思いがけず死んでしまうこともある。だったら、何かをやらなければいけないのではないか」という切迫感が社会全体を覆っていたのです。もし今、私が20代だったら、迷うことなく真っ先にこの変革の波に飛び込んでいったでしょう。

先が見通せず、決まったレールがなくなったことは、裏を返せば「何にでもなれる」ということ。ですから、やらない理由を10個探すより、やれる理由、やりたい理由を10個挙げるような生き方をしてほしいです。「こうあるべき」という答えがないからこそ、まずは人生を主体的にデザインした上で、「この生き方を実現するには、どの仕事や会社を選択すべきか」を考える必要があります。

「早く成長したいから、自分を鍛えられる会社に入ってハードに働きたい」「自分の力で勝負したいから、就職せずに起業する」という考え方もあれば、「仕事はあくまで人生の一部でしかないので、自分は人間らしい働き方ができる会社を選ぶ」という人もいるでしょう。

どんなライフプランを描くにせよ、大事なのは自分の意思で納得感を持ってその道を選択することです。

どれだけ努力を積み重ねようとも「夢中になれる人」には敵わない

私自身は大学3年の時に起業し、後に会社がヤフー(現・LINEヤフー)と合併して自分もそのまま籍を移しました。

起業した理由は、『Windows95』日本版の発売によって普及し始めたインターネットの世界に衝撃を受け、その面白さに夢中になったから。今も私はインターネットが大好きで、起業してからの30年をただただ夢中になって過ごしてきました。

とはいえ、大学卒業後も自分の会社を続けるかは不安もあり、企業に就職する道を考えたこともあります。それでも最終的に挑戦を続ける道を選択した結果、今の私に言えるのは「努力は夢中に勝てない」ということ。安定した会社に就職して努力を積み重ねる生き方も立派ですが、夢中になってサービス開発を続ける道を選んだことで、今のキャリアがあるのだと思います。

LINEヤフー川邊氏 インタビューに答える様子

さらに言えば、今後は「夢中になること」だけが人間の価値になる可能性が高い。大半の知的労働においては人間よりAIの方が優秀なので、「仕事ができる人」という概念はいずれなくなります。そのとき、AIにはない人間だけが持つ能力は何かといえば、夢中になれることではないでしょうか。

もし皆さんが将来のキャリアに迷っているなら、「気付くと時間がたつのも忘れて夢中になっているものは何か」を自分に問いかけてみてください。それが何であれ、今はいくらでも商業化できる時代です。ニッチな分野でも、SNSで発信すればその価値を求める世界中の人たちと出会えるのだから、事業化することは十分に可能です。

何にでもなれる時代には、夢中になれることが自分のキャリアの可能性を開く鍵になります。

常識や価値観を一度リセットすれば、おのずと好奇心が動き出す

私の人生のモットーは「オモロいことを、オモロい仲間と」やること。学生時代から心を動かすテーマを見つけては仲間と語り合い、「それって面白いね!」と笑い合っていました。

今はインターネットで世界中の人とつながれるので、「オモロい仲間」は探せばすぐに見つかります。ですから重要なのは、何かを「オモロい」と思える好奇心を養うこと。そのためには自分の「欲」に正直であるべきです。「見てみたい」「行ってみたい」と思ったら、自分の欲に素直に従って行動すればいいのですから。

ただ、日本人の多くは「人に迷惑を掛けるな」という教育を受け、同調圧力に満ちた社会で生きており、その制約が好奇心を減退させています。そのため好奇心を起点に面白いことや夢中になれることを見つけたいなら、好奇心が生まれる環境を自らつくり直す必要があります。

ですから、これまで20年余りの人生で受けてきた教育や身に付いた常識は、きれいさっぱり忘れてください。今のような時代の転換期に求められるのは、アンラーニング(学習棄却)の力です。

人間は誰しも、過去にとらわれる生き物。だから私も含め、上の世代の人はどうしても昔の経験や記憶を引きずってしまう。若手の皆さんは、古い常識にとらわれている人たちの言うことは聞かずに、自分たちの感覚を大事にやってみたらいいと思います。自分が夢中になれることを納得いくまで楽しんでください。

LINEヤフー川邊氏 インタビューに答える様子

もちろん「会社選びで後悔したくない」と考える人もいるでしょう。でもこれだけ世の中の変化が激しいと、会社選びで後悔してしまうのは致し方ない部分もあると思います。

だからこそ会社選びの前に、どう生きていきたいのかを考えること。自分が望む人生を歩んでいれば、たとえ転職先を間違えたとしても、「この程度の失敗はどうってことないし、会社選びはまたやり直せばいい」と悠然と構えていられる。

会社選びのレベルではなく、「どんな人生を送りたいのか」において後悔が無いようにすれば、きっと納得のいく生き方ができるはずです。

取材・文/塚田有香 写真提供/LINEヤフー 編集/今中康達(編集部)

本記事は2025年11月発売予定の雑誌『type就活』に掲載予定の内容を一部編集し、先行公開しております

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