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ヨドバシのデータアナリストが語る、AI時代の今、技術よりも大切な“現場で評価される”三つの力

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ChatGPTの登場から数年。AIはもはや「未来の話」ではなく、私たちの仕事や生活に深く入り込む存在となった。

ゴールドマン・サックスは「今後、仕事の約3割がAIに代替される」と予測し、米国の求人サイトIndeedでは、ソフトウエアエンジニアの求人数がピーク時の3分の1にまで減少したというデータもある。

「自分の仕事はなくなってしまうのか?」
「技術を追い続けるだけのレースに、終わりはあるのか?」

そんなエンジニアの不安に対し、国内屈指のECサイト『ヨドバシ・ドット・コム』を擁するヨドバシグループのIT戦略を牽引する泉水克之さんは、ある海外記事の表現を引きながら、こう語る。

「AIの進化はいわば“山火事”のようなもの。一度全てが焼き尽くされ、常識がリセットされる。でも、その激しい変化の後にこそ、本当に強いエンジニアが生き残り、再生する新しい時代がやってくるのだと思います」

全てがリセットされた先で、長く信頼され、現場で評価され続けるエンジニアとは、どんな存在なのか。

東京大学大学院で数学を修め、現在はヨドバシリテイルデザインで膨大なデータと現場を行き来しながらシステムづくりに向き合う泉水さんが語る、技術トレンドよりも大切な「三つの力」を聞いた。

プロフィール画像

ヨドバシリテイルデザイン アナリティクス事業部 事業部長 泉水 克之さん

東京大学大学院で数学を修めた後、外資系ソフトウエアベンダーにて、コンサルタントとして長年にわたり様々な業界のデータ分析を支援。現在はヨドバシグループの一員として、経営層と共にデータの利活用を推進し、国内有数のECサイトから得られる膨大なデータと日々向き合っている

※本記事は、2026年1月17日に開催された日本最大級のエンジニア転職イベント「typeエンジニア転職フェア」内の特別講演『これからのAI時代も通用するエンジニアの条件~ヨドバシが語る、現場で評価される3つのポイント~』の内容を抜粋・再構成したものです。

主役は「書く人」から「判断する人」へ
到来する“AI駆動開発”という前提条件

「2025年から、生成AIを含む今のAIブームは一度、“幻滅期”に入ると予測されています。ただしそれは、AIが終わるという意味ではありません」

泉水さんはそう前置きする。

「むしろ、電気やインターネットと同じように、“当たり前のインフラ”として定着していく。その過程に過ぎないんです。

私はバックボーンが数学で、現在はヨドバシが抱えるさまざまなデータを日々分析するという立場です。ピュアなエンジニアではないのですが、今のAIの本質や昨今の世の中の動きを客観的に見ていると、この“インフラ化”の先でエンジニアの仕事は根本から変わると確信しています」

ガートナーのハイプ・サイクル2025

ガートナーのハイプ・サイクルは、登場からメインストリームに至るイノベーションの成熟度、妥当性、採用率を図示したもの。2025年はAIエージェントは過度な期待のピーク期。LLMプラットサービスやRAGは幻滅期に突入したことが分かる。 参照

どんな技術もブームを経て、やがて「前提条件」になる。

そのとき、エンジニアの仕事はどう変わるのか。
泉水さんは、人間がコードを「書く人」から、AIのアウトプットを「判断する人」へと入れ替わる、「AI駆動開発」へシフトすると話す。

【Q.AI駆動開発とは?】

一言で言えば、「AIが最も効率的にアウトプットを出せるよう、人間側が開発プロセスを最適化する」という逆転の発想だ。

これまでの開発では、人間がロジックを考え、一文字ずつコードを打ち込んでいた。しかし、AI駆動開発では主役が入れ替わる。人間の役割は「書く人」から、「判断し、方向を決める人」へと変わるのだ。

具体的には、次の三点に集約される。

(1)仕様の徹底的な言語化
AIが迷わないよう、ビジネスロジックを曖昧さなく定義する。
(2)正常系・異常系を含めたテスト設計
AIのアウトプットを即座に評価する「物差し」を用意する。
(3)AIとの対話による反復改善
出力を評価し、修正指示を重ねて精度を高めていく。

「構築するシステムにもよりますが、これからはコーディングやデバッグをAIに任せるのが標準になります 。AI駆動開発とは、AIがやりやすいように人間側が合わせる開発スタイルとも言えます」

「AIに人間が合わせる」時代に、何が評価を分けるのか

AI駆動開発が前提となれば、「技術に詳しいだけ」で勝負することは難しくなる。コード生成や最適化は、AIが最も得意とする領域だからだ。

泉水さんは、米国シリコンバレーで活動するCEO向けの記事の見出しを引用する。

The AI Wildfire Is Coming. It’s Going to Be Very Painful and Incredibly Healthy.
(AIという山火事が来ている。大きな苦痛を伴うが、極めて健康的になる)

参照

また、ゴールドマン・サックスによる過去のレポートでも、コンピューター関連業務(Computer and Mathematical)の一定割合(29%)が自動化される可能性が指摘されている。

ゴールドマン・サックスレポート One-Fourth of Current Work Tasks Could Be Automated by AI in the US and Europe

参照

「単に知識を持っていることの優位性は薄れ、AIをいかに使いこなし、何を作り出すかという“コラボレーションの能力”に評価の軸が移っていくでしょう」

仕事のやり方が一度リセットされ、再構築される過渡期。
では、焼け野原のあとに生き残るエンジニアの「土台」とは何か。

泉水さんが挙げたのは、激しい技術トレンドの渦中にある今だからこそ改めて見直したい、普遍的な「三つの力」だった。

1. 学ぶ力:技術の寿命は早いが、「現場」への理解は裏切らない

一つ目の条件は「学ぶ力」だ。ただしこれは、新しい言語やフレームワークを追い続けることではない。

「技術の変化は激しく、今学んだことも3年後には使われなくなっているかもしれません。しかし、その技術の”背景”や“本質”を掴んでいれば、新しい技術が登場しても適応できるはず。変化に振り回されないためにも学ぶ力は重要です」

ヨドバシ アナリティクス事業部長 泉水さん 登壇の様子

泉水さんが特に強調するのは、システムの外側にある「業務(ドメイン)」を学ぶ姿勢だ。

ヨドバシでは、エンジニアが店舗や物流の現場に足を運ぶこともあるという。
現場を見て、触れて、体験することでしか得られない知見があるからだ。

AIが技術を補完してくれる時代だからこそ、「ビジネスが現場でどう回っているか」をどれだけ解像度高く理解しているかが、エンジニアの希少性を左右する。

「学び続ける姿勢と、本質を掴もうとする意識。それさえあれば、技術トレンドに振り回されずに済みます」

2. コミュニケーション力:AIによる「組織の中抜き」に備えよ

二つ目は「コミュニケーション力」だ。泉水さんは、AIによる自動化が進むことで、組織構造そのものが変わっていくと見る。

「従来は、図1のようにオーナー(経営層)の下にPMやリーダーがいて、その下に実作業を行うメンバーがいる多層的な階層構造でした。」

図1 AI時代で変わる組織構造の図解

(図1)

「しかし、AIによる自動化が進むと、図2のように、間のさまざまな業務が自動化・効率化され、作り手であるエンジニアがオーナーと直接対話しなければならない場面が確実に増えていきます」

図2 AI時代で変わる組織構造の図解

(図2)

図3 AI時代で変わる組織構造の図解

(図3)AIによる自動化が進むと、中間層の業務が減り、下位層のエンジニアが直接上の階層とやり取りをする必要が生じる

これは遠い未来の話ではない。ヨドバシカメラの開発現場では、すでにそれが日常となっている。

「ヨドバシでは、エンジニアがヨドバシカメラ社長の藤沢(和則)と直接顔を突き合わせ、議論し、合意形成を行うことが頻繁にあります 。若手エンジニアであっても、社長に直接提案を行い、その場で仕様を詰めることも珍しくありません」

そこで求められるのは、専門知識を“専門外の人にも伝わる言葉”に翻訳する力だ。

「経営トップに対しても、遠慮せずに提案を“差し込める”かどうか。こうした人を動かす力こそが、AIには代替できないエンジニアの価値となっていくでしょう」

3. 責任を持つ力:AIは平気で「毒キノコ」を勧めてくる

そして三つ目は「責任を持つ力」。泉水さんが最も強調したポイントだ。AIは確かに便利だが、時に「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」をつく 。

「最近、SNSでも少し話題になった象徴的な2コマ漫画があります。あるAIに、森で見つけたキノコの写真を見せて『これは食べられますか?』と尋ねた人がいました。するとAIは、最初は自信満々に『はい』と回答したのです。しかし、それを食べてしまった人が(毒にやられて)墓に入った後で、AIは回答を『すみません、そのキノコには毒がありました。有毒キノコについてもっと知りたいですか?』と訂正しました」

今のAIによくあるやり取りを漫画化した例え話ではあるが、一歩間違えれば、命に関わる事態だ。

「でも、毒キノコを食べた後に謝られても、手遅れですよね。人は救われません」

AIが出したコードや判断が間違っていたとき、責任を取るのはAIではなく、それを使った人間だ。

「システム開発も同じではないでしょうか。『AIがそう出力したから』『AIが大丈夫だと言ったから』は、プロの言い訳になりません。最後は自分が責任を負う。その覚悟を持ってAIのアウトプットを精査し、業務で使える品質にまで高められるか。そこに、プロとしての真価が問われるのだと思います」

時代は変われど、求められる「根源」は変わらない

今回挙げた「学ぶ力」「コミュニケーション力」「責任を持つ力」の3点について、実はAI時代になって突然現れた新スキルではない。

「実はこれらは、昔からずっとエンジニアに、いやエンジニアだけではなくて企業人に対して求められてきた本質なんです」

産業革命、電話、インターネット、スマートフォン――。歴史を振り返れば、技術革新によって仕事の形が変わることは何度もあった。そのたびに古い常識はリセットされてきたが、本質的な価値を提供できる人は、いつの時代も生き残ってきた。

「今は山火事のように、これまでの常識が燃え尽きる時期かもしれません。でもそのあとには、必ず新しい森が生まれます。変化を恐れるのではなく、楽しんでいくくらいの気持ちでいてほしいですね」

流行の技術スタックに一喜一憂するよりも、現場を知り、人と向き合い、最後まで責任を持つ。

そんなエンジニアこそが、AI時代においても現場で評価され続ける存在なのだ。

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