新世代通信「5G」がもたらすかもしれない、生活&サービス6つの変化
スマートフォンの普及とともに、一気に私たちの生活に身近なものとなった、4G(第4世代)と呼ばれる移動通信方式。だが、技術開発のレベルでは、話題はすでに次の世代へと移っている。
NTTドコモは2014年5月、東京オリンピックが開催される2020年のサービス導入を目標に、国内外の通信機器6社と、5G(第5世代移動通信方式)に関する実験で協力することに合意したと発表した。
ドコモが謳う5Gの通信速度は10Gビット/秒以上。通信容量も現行の4G LTEの約1000倍とされる大容量だ。額面通りに5Gが実現すれば、4G導入時以上の劇的な変化が起きることも予想される。
5G導入でどんなサービスが新たに生まれ、人々の生活や働き方のスタイルはどう変わるのだろうか。スマートフォンをはじめとするモバイルビジネスに詳しいジャーナリストの石川温氏(@iskw226)に、いち早く「5Gの世界」について聞いた。
石川氏が思い描く「5Gの世界」の6つの変化はこうだ。
【1】身の周りのあらゆるものが通信するようになる
通信の主役であるスマートフォンがなくなることはないが、将来的にはあらゆるものが通信するようになる。
『JINS MEME』のように、身に着けるものすべてにセンサが付き、あらゆる数値を常時計測。LINEで操作するLGの洗濯機『HomeChat』のように、家電や車も今以上に通信する。
【2】非IT系の大手参入でコンテンツ産業が競争激化する
現在はTV業界や小さな会社が担っているコンテンツ制作の分野に、異業種の大手が本格参戦してくる。その波はすでに来ていて、大手の本気を感じる機会が増えた。
『JR東日本アプリ』は、山手線の運行状況がリアルタイムで視覚的に分かったり、温度を基に車両ごとの混雑具合が分かったりと、情報量が膨大。将来的にはスポーツ中継でも、視聴者が自由にカメラアングルを選んで見られるようになるかもしれない。
【3】基地局の小型化で街中にあふれる
あらゆるものが通信するようになれば、今のWi-Fiスポット以上に基地局が必要になる。LINEのようなテキスト情報の1つ1つは小さいが、たくさん集まることで、ここ数年、通信障害のような事態も起きている。
小さいデータを大量にさばくためには、通信速度よりも分散させることが重要だ。サービスが多様化すれば、関連するセンサ、トラフィック、カメラもそれぞれ膨大な数となり、それらの間のデータ通信を支える基地局もその分増えるはずだ。
【4】仕事の種類は減る?
非IT系企業がIT業界に本格参入してくれば、どの業種でも同じような資質や技術が求められるようになり、既存の仕事の種類が減っていく可能性はある。一方で、データの扱いは今以上に重要になるので、分析する人、取捨選択して使う人など、新しい仕事が生まれる可能性も大いにある。
【5】BYODが一般レベルで現実味を帯びる
遠隔のコミュニケーションが増えることで、場所に拘束されずに働くことができるようになる。しかしその分、仕事量は増え、忙しくなる。人の移動も減ることはなく、むしろ増えるだろう。
電話やメールが生まれた時も、それがきっかけとなってコミュニケーションの総量が増え、実際に会う機会も増えたそうだ。ゆえに、移動中や出先でも仕事をこなすためのBYOD(私用デバイスの業務利用)にまつわるサービスは、ますます発展していくと考えられる。
【6】技術の重要性はいっそう増す
よく言われる話だが、アメリカのベンチャートップには圧倒的に技術者が多く、自らイノベーションを起こそうとしているのに対し、日本企業のトップは技術よりアイデアで勝負しようとする傾向が強い。
業種の壁を超えた競争が本格化すれば、生半可なアイデアでは、大企業の資本の前に駆逐されてしまう。技術の重要性はいっそう増していく。
実際には、5Gの通信規格はまだ決まっておらず、今回のドコモの発表も、マーケティング戦略の意味合いが強い。おおむね10年スパンとされる通信規格をめぐる世界的な競争は、ここから本格化していく。
取材・文/鈴木陸夫(編集部)
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