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音楽や美術を学ぶのと同じようにプログラミングを学ぶ――N高が挑む教育改革を支えるエンジニアたち

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    音楽や美術を学ぶのと同じようにプログラミングを学ぶ——N高が挑む教育改革を支えるエンジニアたち

    KADOKAWAドワンゴの経営統合によって誕生したカドカワ。そのカドカワが設立した学校法人角川ドワンゴ学園によって2016年に開校されたのがN高等学校、略称・N高だ。沖縄県うるま市に本校を構え、東京の代々木と大阪の心斎橋にもキャンパスを保有する同校だが、高校卒業資格を取得するための必修授業(Basic Program)は全てインターネットを活用した通信制カリキュラムで展開している。

    ホームルームや部活動、さらには生徒間のコミュニケーションツールとしてSlackのチャットルームをフル活用するなど、先進性や独自性も備え、教育の効率や質の最大化・最適化を目指しているのがN高の特徴の一つだ。そして、効率化によって生じる余剰時間を、「生徒自身が学びたいことを勉強するための課外授業(Advanced Program/大学受験対策、プログラミング、文芸創作・イラスト・ゲームなどのエンタメ・クリエイティブ授業、職業体験プログラムなどで構成される)」に充てることで、高校教育に新風を巻き起こしている。

    そんな中、エンジニアtypeが着目したのは「教える側」だ。N高が挑んでいるような通常教育における変革が浸透・拡大していけば、エンジニアたちのキャリア形成にも新たな選択肢が加わることになる。そこで、入学希望者急増の中で、「先生」の採用を強化しているN高の2人に話を聞いた。

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    学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校 拠点運営部 通学コース課
    佐藤 雄一氏

    長野高専を卒業後に大手ゲームメーカーに就職。退職後に韓国に渡った後、日韓 SI 企業に就職。開発リーダーおよびエンジニアのマネジメントと育成を担った。その後、フリーのエンジニアとして専門学校生の教育にも携わり、KLab株式会社に転職後はゲーム開発や受託システム開発等を担当。2015年、カドカワがN高等学校設立へ向け、人材募集を開始したのをきっかけに入社。現在は、17年よりスタートした通学コースのプログラミング関係全般を任されている

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    株式会社ドワンゴ 教育事業本部 コンテンツ開発部 セクションマネジャー
    吉村 総一郎氏

    大学時代に顕微鏡画像関連のプログラミングなどを経験した後、新卒入社した会社で製造業界を対象にした製品設計システムのSIに従事。ドワンゴに転職後は主に『ニコニコ生放送』の各種ミドルウエア開発リーダーを担当していたが、N高等学校設立へとつながる教育事業への挑戦がスタートすると、このプロジェクトの中心的存在として2015年から参画。現在はN高等学校のプログラミングコースの在り方を考えるとともに、具体的なカリキュラムおよびプログラムの開発を担っている

    教えながら学べるから、知的欲求に飽きがこない

    ――まずはエンジニアであるお二人が、教育界でのチャレンジに身を乗り出すまでの経緯を教えてください。
    学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校 拠点運営部 通学コース課 佐藤 雄一氏

    佐藤 私がN高に参画したきっかけはGitHubでの人材募集告知でした。講師候補の採用ということで、オブジェクト指向に関する問題と解答例を作問するお題が提示されていましたね。

    吉村 聞きましたよ。佐藤さんは作問をSmalltalkで書いたんでしょ? やるよなあ(笑)。

    佐藤 そうそう。一応説明しておきますと、Smalltalkというのは世界初のオブジェクト指向プログラミング言語でして、「あえてこれを全面的に使うようなエンジニアはそうそういないはずだけど、分かる人には分かる」という作戦でした。

    ――なるほど。そのあたりの事情通ぶりは、以前のご経験があればこそなんですよね?

    佐藤 そうですね。最初から「教える」という仕事にこだわっていたわけではないんですが、前職で韓国にいる学生にプログラミングを教え、彼らを日本へ連れて行ってエンジニアとして活躍してもらう、というような取り組みを任されたことがきっかけで、教育に興味や魅力を感じるようになったんです。

    ――一体何が「教える」ことの面白さなんでしょうか? セミナーやハッカソン等でも教える役割を担っているエンジニアは多数いますし、そういう場面で「教育者」がエンジニアのキャリアの選択肢の一つにはなっているとは思うのですが、N高はエンジニア養成学校ではありませんよね? 一般の高校生を対象にプログラミングを「教える」という点が大きな違いだと思うんですが。

    佐藤 そうですね。言語や新しいプラットフォームに関するセミナーや、プログラミングのハッカソンなどは、すでにエンジニアの仕事をしている人たちが主な受講者ですからね。エンジニア育成を目的にした専門学校でも、明快に「エンジニアになろうとして勉強を始めている生徒」が対象になりますよね。でもN高はそうじゃないんです。様々なものに挑戦できる環境があるので、教える側も、技術も人格面も含めて、多様な成長ができるんです。

    吉村 分かります。生徒たちの多様性を伸ばして、可能性を広げていこうというのがN高ですから、いわゆるエンジニア養成学校とかプログラミング塾みたいなものとは根本的に違いますよね。教える側が例えば「今日はiPhoneアプリの作り方を教えます」みたいには進めていかない。生徒が主体ですから、彼らにはどんどんやりたいことを言うように指導しているんです。この前もある生徒が「HoloLensのプログラミングを勉強したい」と言い出して、大慌てで私の方が勉強しましたよ。

    佐藤 そうそう。むしろ学ぶ側の生徒たちが、私たちの知らない世界へ橋渡しをしてくれる。おかげで新しい知見やスキルを手に入れられる。誤解を恐れず言ってしまいますけど、私の場合は「自分が一番成長できて得をするから、この仕事は面白い」なんですよ。

    プログラミングを教えるのはエンジニアを育てるためじゃない

    佐藤 人間形成の場に携われている喜び、というのも大きいんですよ。先ほど申し上げた前職での日韓両国での教育経験で、私は結構苦い思いもしました。せっかくエンジニアとしてやっていけるレベルまで技術を教えても、かなりの人数が仕事を辞めてしまったことがあったんです。

    ――なぜなんですか?

    佐藤 「働くってどういうこと?」みたいな部分の人格教育というのが不足していました。N高の何が面白いかといえば、未来のある子どもたちに、働くことや生きていくことを教えられること。プログラミングの勉強をする、という場を任されているのが私たちですが、もっと大きな人を育てるというステージの一環でそれをやっている。だから面白いんです。

    ――プログラミングやクリエーティブを学ぶ科目があるけれども、だからといって、それが「即戦力の職業人養成」のためなのかというと、そうではない、ということでしょうか?

    吉村 そうですね。それは本当に重要なポイントです。私はよく「プログラミングを高校で学ぶのは、音楽や美術を学ぶのと同じ」という言い方をします。これはポール・グレアムさんが『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』という本で書いていたことの受け売りなんですが、要するに高校で音楽を教えているのはミュージシャンを輩出するためではないし、美術を教えて画家を生み出そうとしているわけでもない。社会に出て生きていく上で、必ず触れることになるものとの出会いを提供することで、人生との向き合い方みたいなものにつながっていく。

    株式会社ドワンゴ 教育事業本部 コンテンツ開発部 セクションマネジャー 吉村 総一郎氏

    佐藤 結局、教育ってそこですよね。どうすれば幸せになれるか。人それぞれではあるけれども、幸せになるための根っこを多様に経験していくことで可能性が膨らんでいくと思うんですよ。

    吉村 音楽や美術が教えてくれる素養って、どんな仕事に就こうが、どんな生活をしようが付いて回るじゃないですか? サラリーマンになって企画書を作る時にデザインにこだわったりするのは、美術で学んだ何かが作用しているに違いないわけです。プログラミングもそれと同じ。コンピュータというモノを自在に使い倒すための命令作りがプログラミングだから、その原則を高校時代に肌身で感じておけば、仮にその生徒がエンジニアにならなくて、全く違う仕事に就いたとしても、発想の基礎として役立っていくはずなんです。

    高校生と一緒になってITの未来を創っていく

    佐藤 僕らエンジニアがこれを言うのは変かもしれないですけど、技術というものは遅かれ早かれ全てコモディティー化して、次世代の技術に取って代わられる。そうした変化のスピードがどんどん上がっていく世の中を、これからの世代は生きていきます。必要なのは「すでにある何かと何かを掛け算して新しい何かにする」という姿勢。そして、こういう姿勢こそがプログラミングの本質だと思うんです。そして「ここをこうすればうまくいくんじゃないか」という発想を生徒たちが持てるようになれば、それぞれが自分が幸せになる道筋を模索できるようになるはずなんです。

    吉村 音楽に置き換えれば、クラシックを学ぶ生徒の隣にヘビメタを学ぶ生徒がいて、そのまた隣に民族音楽を学ぶ生徒がいて、というのがN高です。Webアプリを学ぶ生徒、競技プログラミングを学ぶ生徒、ロボット制御に取り組む生徒……いろいろ共存している状態が理想ですね。当然、私にせよ佐藤にせよ、自分たちの専門性を大きく超えてくることになりますが、それだから面白いんです。これもどこかで聞いた受け売りですけれど、ティーチャーという英語はそもそも「共に学ぶ人」という意味だったそうです。そういう意味で、私たちはまさにティーチャーをやっています。

    佐藤 もちろん知っていることは教えますし、知りたがっていることを私が知らなければ、吉村も言っていたように、共に学んでいく。もっと言えば、誰か知っている生徒がいた場合には、その生徒に教える役目をしてもらって、エンジニア同士の学びの場がそうであるように、教える側も学ぶ側も共に成長する、という経験も提供します。「教えてもらうまで何もできない」という生徒が多いなら、「とにかく、自分でやっちゃいなよ」とけしかける役割をしていくのも私たちの務めです。

    吉村 私はよく「脱線しちゃいなよ」って言ってますね(笑)。佐藤さんが言った「掛け算」もプログラミングの本質だし、「本流から脱線した結果、思いもよらない新しいものに出会う」というのもプログラミングの面白さだと考えているんです。とにかくネット上の学びや、通学コースの学びを通じて、そういう場を提供するのがN高の先生の仕事。こういう仕事を面白い、と思う現役エンジニアがいたら、どんどん積極的に絡んできてほしいし、先生になってほしいですね。

    佐藤 技術との追いかけっこに疲弊して「取り残される恐怖」と戦っているエンジニアにも、是非知ってほしいです。未来を高校生たちと創っていく、という新しい使命の面白味に、関心を持ってほしいですね。自分自身の未来が広がる新しいキャリアだと私は思っています。

    取材・文/森川直樹 撮影/赤松洋太

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