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クラウド型手帳『Lifebear』開発でゼロから技術を身に付けた起業家が話す、3カ月で5つの技術を身に付ける秘けつ

スキル

    カレンダー、日記、タスク管理などの管理機能をオールインワンで解決できるクラウド型電子手帳『Lifebear』

    カレンダー、日記、タスク管理などの管理機能をオールインワンで解決できるクラウド型電子手帳『Lifebear』

    JR南浦和駅を降り、徒歩約20分。埼玉県さいたま市の平穏な住宅地にひっそりと拠点を構えるスタートアップがある。それが、クラウド型電子手帳『Lifebear』をリリースしたライフベアだ。

    2012年7月30日、満を持してリリースされた『Lifebear』。これまで、スマートフォンやタブレットなどでスケジュールやToDoを管理する際、複数のアプリやサービスを駆使しなければ管理できなかった。

    そこで、同社CEOの中西功一氏は「もっと、紙の手帳のようにすべてを一つのアプリで管理できるデジタル手帳がほしかった」という思いから、『Lifebear』を企画したと話す。そこで、COOの増山康宏氏とCTOの杉本裕樹氏に声を掛け、3人で創業を決意したそうだ。

    実は、今でこそ全員コードを書くことができるのだが、起業当時は杉本氏以外は技術素人だったという。彼らがいかにして技術力を身に付け、サービスを作っていったのだろうか。ライフベア結成当時の話とともに、創業メンバーの3人に話を聞いた。

    <>h23年越しに実現した、就活生の「約束」

    「学生時代から起業が目標だった」というCEO・中西氏

    「学生時代から起業が目標だった」というCEO・中西氏

    「2008年の就職活動中に偶然出会った」という中西氏と杉本氏は、話をするうちに意気投合。「将来一緒に起業しよう」と約束したまま、その時は解散した。そして、それぞれが別の企業に就職し、中西氏は就職先のITベンチャー企業で増山氏と出会うことになる。

    増山氏は、大学在学中に一度、いわゆる大手企業の内定を得ておきながらも、「本当に自分がここで働きたいのか」を疑問に思い、内定を辞退した経験を持つ。その後、ITベンチャー企業へと就職し、「これから何かやっていきたい」と思っていた矢先に、同僚の中西氏から起業のオファーを受けたそうだ。

    「中西から誘いを受けた時、不安がなかったと言えばウソになります。ただ、『この船に乗ったら楽しそう』と思えたし、『自分のスキルを磨いていきたい』と思っていたタイミングだったので、当時の自分に最適な選択肢だと思いジョインしました」(増山氏)

    そして、中西氏は就職活動中の約束を果たすために、杉本氏に連絡を取る。「ようやく来たか」という思いで誘いを受けた杉本氏は、「サービスとしても長く続けられそうだと思ったし、将来性も期待できる」(杉本氏)としてそのオファーを快諾。

    かくして、ライフベアは新たな一歩を踏み出した。

    技術力習得に必要なのは、「目的」と「先生」の存在

    サービス開発を始めた当初、中西氏と増山氏は「まったくと言っていいほど技術力はなかった」(増山氏)という。

    そのため、中西氏と増山氏が丁寧に仕様書を書き上げ、それを杉本氏が設計・開発していく、という流れで開発は進んでいった。その時から、「自分たちもちょっと開発を手伝えたら良いね」(中西氏・増山氏)という話は出ていたという。

    コードが書けない2人に転機が訪れたのは、2011年4月。「自分がデザインの勉強をして、サービスのモックアップを杉本に渡せたら良いなと思っていた」(中西氏)と、まずは中西氏がデザインの勉強をすることに。すると、HTMLやCSS、JavaScriptなど、「身に付けていた方が便利だ」という理由で少しずつ開発技術の習得に取り掛かる。

    増山氏がObjective-Cを学ぶために参考にしていたという3冊の技術書

    増山氏がObjective-Cを学ぶために参考にしていたという3冊の技術書

    続く8月には、iPhoneアプリの開発に着手するために、増山氏がObjective-Cを勉強することとなった。

    「もう、ひたすらに勉強するしかない」(増山氏)と思い、土日も休まずにコードを書き続け、メキメキと技術力を身に付ける。

    中西氏は、3カ月ほどでHTML、CSS、JavaScript、jQuery、Rubyなど、Webサイトを作る上で必要な一通りの技術を覚えたという。増山氏もObjective-Cをゼロから覚え、現在はAndroidアプリ開発のために必要な技術を学びながら従事している。

    両氏いわく、「とにかくコードを大量に書きまくるの大前提として必要ですが、『Lifebear』を作るという目的と、杉本の存在がなければ、3カ月でここまで技術力を磨くことはできなかった」という。

    これは余談だが、拠点をさいたま市にしているのも、「もともと浦和に住んでいた杉本が開発に集中できるよう、通勤に便利な場所にしたかった」(増山氏)そうだ。このエピソードを通しても、杉本氏の存在がライフベアにとってどれほど貴重なものかが伺える。

    サンプルより自サービス開発が、技術力向上の近道

    「勉強を始めたころは、何が分からないのかも分からないという状況がつらかった」(増山氏)という。

    「技術を勉強するためにサンプルで機能を開発するのって、なかなか身が入りません。それが自分のサービスだった場合、何を作らなければいけないか、必要な機能が明確なので、それを実現できる技術を学べば良い。勉強のためにサンプルを作るよりも、何でも良いから自サービスを作った方が圧倒的に技術を身に付けるスピードは早いと思います」(中西氏)

    あくまで目的は、「サービスを作り上げること」。単に「技術を学ぶ」という目的であれば、確かに学習スピードは低下するかもしれない。両氏は加えて、「杉本氏の存在」についてもこう言及する。

    「自分の仕事を進めながらも、わたしたちが相談すればすぐに乗ってくれるし、Objective-Cなど彼の専門外の技術に関しても、技術者的発想で一緒に考えてくれて、サポートしてくれる。杉本は、技術力がなかったわたしたちにとっては先生のような存在です」(増山氏)

    2人が”師”と仰ぐ杉本氏は、一方で2人の努力に舌を巻いたという。「1週間で一つの技術をある程度使えるようになっていたり、気付いたら管理画面を勝手に作っていたり、成長はものすごく早かった」(杉本氏)というのは、やはり「何を作るかが明確であった」ことと、杉本氏の存在があったからなのだろう。

    アナログじゃできない、「未来の行動を示してくれる」手帳を目指して…

    2階で中西氏と増山氏(写真中央)が寝泊りするという、さいたま市にあるオフィス。杉本氏(写真右)はここから徒歩1分のところに自宅があるそうだ

    2階で中西氏と増山氏(写真中央)が寝泊りするという、さいたま市にあるオフィス。杉本氏(写真右)はここから徒歩1分のところに自宅があるそうだ

    サービスリリース後、有名ブロガー・イケダハヤト氏のブログに取り上げられるなど、順調なスタートを切った『Lifebear』。特に競合は意識せず、「今後も自分たちのペースで理想のデジタル手帳に近付けるように機能改善を続けたい」(中西氏)と話す。

    そんな『Lifebear』が目指すのは、「『Lifebear』をより能動的な手帳にすること」(中西氏)だ。

    「今の『Lifebear』は、アナログの手帳をより便利にデジタルにした手帳なんですが、今はまだ受動的なサービスで、自分が書かないと何も起きません。もっと、未来の行動を提案してくれるような手帳にしていきたいと考えています。それは、自分の行動をログとして残せる手帳だからこそできることだと思っています」(中西氏)

    その第一弾として8月30日にリリースされたのが、『Meet』機能だ。「誰でもいいからちょっと飲みたい、そんな時に『Lifebear』を使ってみんなに通知をすると、その通知が友人にポップアップで知らせることができる。無視してもいいし、自分がイベントに参加したいと思ったら、『Lifebear』上でチャットができる」(中西氏)そうだ。

    理想の手帳を求めた、埼玉の一軒家に住む若者たちの挑戦は始まったばかりだ。

    取材・文・撮影/小禄卓也(編集部)

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