キャリアVol.39

非コミュプログラマーが独立するのに必要なたった2つの勇気【連載:村上福之①】

村上福之のキャラ立ちエンジニアへの道

村上福之ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ @fukuyuki

クレイジーワークスで代表取締役総裁をしている村上福之(@fukuyuki)と申します。日々、いろんなソフトウエアの開発にかかわっています。 おかげさまで、それなりに売り上げも立ちました。

『エンジニアtype』の連載のために写真を撮り下ろしてきてくれた村上氏。これから、どんなネタを書いてくれるのかが楽しみだ
『エンジニアtype』の連載のために写真を撮り下ろしてきてくれた村上氏。これから、どんなネタを書いてくれるのかが楽しみだ

『Gumroad』のパクりサイトが設立五日後に売却されたり、『Androbook』を事業譲渡したり、『AndroMusic』がサイバードさんによって事業化されたり、開発にほんの少しかかわっていた『NOTTV』が(カオスながらも)何とかスタートしたりで、そこそこご飯くらいは食べれるようになりました。

今日は、僕のような非コミュなプログラマーが独立するのに必要なたった2つスキルについて書きたいと思います。それは、スキルというより勇気だと思ってます。たった2つだけです。

(1) nullなり適当な値をつっこんでコンパイルする勇気
(2) プライドを捨てて、人に聞いたり、頼ったりする勇気

これだけです。

最近、時期が時期なので、多くのエンジニアやプログラマーからの「そろそろフリーになりたい」、「独立してノマドな生活がしたい」という相談が異常に増えています。「独立するには、どういうスキルや知識が必要か?」「独立するのに必要なコネは何ですか?」という「必要なパラメータに関する質問」が多いです。

僕は、すさまじく人とコミュニケーションを取るのが苦手ですし、頭も良くありません。プログラムも上手くないです。友達を作るのも苦手です。コネも何もなかったです。口も悪いです。無駄にプライドだけ高かったりします。何とか独立して、いろんな人に助けれられて、ゴハンが食べれるようになりました。何も持っていませんでした。使ったのは先ほどの2つの勇気だけです。

「人生とりあえずコンパイル」で会社設立

別に個人事業主でも会社でも良いのだけど、僕が独立した時は「何か転職とか面倒くさいし、リクナビの担当者が好きじゃないし、カッコイイから会社設立」と理由だけで設立しました。ただ、多くのアスペルガー系プログラマーと同じように、僕は事務処理という事務処理が苦手でした。そして、今でもまともに書類一つ書けません。

よくある、『7日で株式会社をつくる本』という本を買ってはきたのですが、アスペルガー系プログラマーな僕は紙の書類を作る根気がそもそもないです。会社を登記する書類というものは、つまらないです(今なら行政書士を使うのですが)。

そんな本を読んで家でごろごろしていたら、オカンに見つかって、怒られました。

「あんたが、会社なんか作って上手いこといくわけあらへんやろ! ええか! アメリカンドリームなんかあらへんで!」

オカンに怒られて機嫌が悪くなりました。当時28歳です。母親が言うのも無理ないくらい僕はだらしがない人です。バツイチだし、出戻り(?)だし、朝起きないで昼まで寝てるし、無職だし、夜中に独り言を言いながらアホなコード書いてますし、オンラインゲームですら会話が続きません。「社会に対応できない系プログラマー」の典型のような人間です。

僕が持っていた勇気は一つだけです。すべてのプログラマーが持っている勇気です。そう、すべてのプログラマーが、新しいAPIを使うときに、必ず使う勇気です。

nullなり適当な値を突っ込んで実行する勇気

そう、それだけです。

クレイジーワークスの登記資料一式は、現在『ameroad』にて売り出し中だ
クレイジーワークスの登記資料一式は、現在『ameroad』にて売り出し中だ

本に書いてある書類を作るのも面倒くさいので、法務省のWebページから会社登記のテンプレートをダウンロードして、面倒くさいところは空欄で法務局に出しました。

当然、作成例なので「事業開始年度○○」「決算期○月」「発行株式数○○株」となっているのですが、その「○○」のまんま出しました。やる気なさ過ぎです。事業年度とか、発行株式数とか、決算月とか当時の僕には分かりません。プログラマーにそんなもの分かるわけがありません。興味も無いのでググって調べることもしませんでした。nullつっこんで出せばいいや、人生とりあえずコンパイルだ、と思ってました。

当たり前ですが、後日、法務局に呼び出されました。法務局は大量のコンパイルエラーを返してくれました。僕がテンプレのまま出した登記書類には、付箋紙がびっしり貼ってありました。法務局の担当のおっちゃんは、僕を奥の部屋に連れて行き、一行一行、「ここにこれを書くんや」「発行株式数?100万の会社やったら100株でええやろ。」「ここに訂正印押すんや」「訂正文字数をここに書くんや」と1時間半くらいかけて、教えてくれました。

そんなわけで、僕がはじめて作った会社の定款や登記書類は訂正印だらけで、原型をとどめていません。登記簿は書き直すところが多すぎて、全部、おっちゃんの指導で書き直しました。非常にカッコ悪い船出です。何だか書類一つ作れない自分が情けなくなりました。

「あー、あの、すんません、僕、こういうのサッパリ分からないもんで」

法務局のおっちゃんは、割り印を押しながら、僕に言ってくれた。

「ええか、これからもな、分からんかったら、人に聞いたらええんや。誰でも何でも最初から、上手いこといくもんちゃうんや。人生、勉強やで」

法務局のおっちゃんの一言は、僕の心に残りました。

そんなわけで、僕は「プライドを捨てて、人に聞いたり、頼ったりする勇気」を手に入れたわけです。今までググった知識を聞きかじりして、知ったかぶりで、プライドだけが高かったプログラマーに一つのスキルが追加されました。

営業はmanであり、APIである

そもそもプログラマーなので営業が何か分かっていません。非コミュなので営業トークができません。今までケンケンガクガクの開発会議しか出たことがなかったです。「お前の仕様はクソだ!」とか「その実装いいね! 美しい!」とか「品質管理として、それは通せない」とか「**な理由で実装できません!」みたいな会議しかしたことがないです。協力会社もこっちも本音しか言わない会議はいくらでもあります。

しかし、営業が分からないのです。むしろ、カネをもらう方の打ち合わせすらしたことがない状況でした。

非コミュプログラマーなので、分からなければとりあえず、人に聞いてみる勇気だけで営業をしてました。法務局のおっちゃんの教えです。

「あのー、えー、あのー、」

クライアント 「はい」

「えー、あのー…普通、営業って、何話すんですかね? やったことないので」

クライアント 「あー……(多少の沈黙)……『何かないですかー?』とか、自社の概要とかですけど…」

「えー、あの、じゃあ、じゃあ、『何かないですかー?』」

クライアント 「えー」

営業が分からないので、「man営業」みたいな状態で、営業していた記憶があります。そういう頼りない営業をしていたら、なぜか大体仕事をくれました。

「コネや人脈がないと独立できない」と思っている人が多いと思います。しかし、僕の場合は、そんなものは何もなかったですし、適当に家の近くにあった会社のお問い合わせフォームで『何かないですかー?』とメールしていただけのように思います。

『ameroad』をSNSで売却したように、ソーシャルメディアが発達した今だからこそ、多くの人に起業のチャンスはあるという
『ameroad』をSNSで売却したように、ソーシャルメディアが発達した今だからこそ、多くの人に起業のチャンスはあるという

今だったら、Facebookもツイッターもあるので、人脈がなくても仕事はいくらでも取れるんじゃないかと思います。

いわゆる異業種交流会や起業家イベントもたくさん出席しましたが、あれで何か良いものが得られたという経験はありません。

そのうち、Web作成の仕事に手を回すようになりました。単に仕事がいっぱいありそうだったからです。もともと、家電メーカー系組込みエンジニアなので、Web業界の技術も相場も見積もりもさっぱり分からないまま仕事をしてました。

そんなわけで、こっちも値段が分かりません。そもそも、自分でコードを書いて、自分で納品しているので、原価ゼロです。こっちは好きで勉強させてもらって、コードを書いているだけですから、むしろお金もらって良いのかすら分かりませんでした。

「見積もりください」と言われても、何ともピンとこないわけです。最初なんて、見積もり、発注書、納品書、検収、請求書という流れすら知らないで起業してました。「nullなり適当な値をつっこんで実行する勇気」があれば何とかなりました。

クライアント 「**社のサイトで、こんな感じなんですけど、お見積もり出していただけませんかね」

僕 「あー、あのー、なんかー、そもそも相場分かんないので…3万円くらいですか?」

クライアント 「ちょっと それは…」

どうも雰囲気からすると、安かったようだ。

僕 「えー、あー、じゃあ、300万円くらいなものですかね?」

クライアント 「高過ぎです」

僕 「えー、あの、じゃ、じゃあ、50万円くらい?」

クライアント 「システム入ってるから、そのあたりより、もうちょっと高いかなぁ」

正直、僕の最初の見積もりは、見積もりというより「APIのパラメーターの当てもん」みたいな感じだったように思います。

もっと言うと、最初にもらった仕事では「見積もり書って何ですか?」「そもそも請求書ってどう書くの?」などとクライアントに聞いていました。ひどいもんです。僕が、あまりに事務処理能力が低くて、分かってきた会社では、事務のお姉さんが、「ああ!もう!」という感じで、見積もり書から発注書から請求書から納品書まで、一式作って持ってきてくれたりしました。

技術もよく分かってないけど、仕事を取ってきた気がします。「やりますやります!で、CSSって何ですか?」みたいな感じでした。分からん時は、分からんと言ってましたが、変な営業のように、うそだけはつかないように仕事していた気がします。

最初の法人税の納税も、分からなかったので、nullで出しました。つまり白紙で持っていったら、税務署のおじさんが、見かねて、鉛筆で薄い文字で数字を書いてくれました。税務代行業務は税理士の仕事なので、本当はやってはいけないので、鉛筆で書いたからなぞれとか言われて何とか納税もしました。基本的に役所は、nullでコールするとエラーは返ってくるもんだということが分かりました。

起業して4カ月くらい、そういうメチャクチャな仕事をしていたら、合わせて1200万円くらい仕事を取ってました。少し前まで、25万円くらいの給料しかもらえなかったエンジニアにとって、あまり見たことのない数字が振り込まれました。ごはんは食べれるようになりました。

「ちゃんとしたところに就職せな」、「寄らば大樹の下やで」と言っていたオカンも文句を言わなくなりました。

多くのエンジニアはお金の計算や契約から非常に遠い世界にあります。起業・独立は、お金や契約があって成り立つファクターが大きいです。しかし、それらの仕組みはありがたいことに、その辺のAPIやSDKドキュメントよりは分かりやすいです。

コードを書かなければ、エラーメッセージすら見えません。だから、僕らはmanやhelpを見て、nullをつっこんでコードを書いて、動かしてみるのです。それを現実世界で実装すれば良いのです。

「独立してフリーのプログラマーになりたいです」

そう思っているすべてのプログラマーへの答えは一つだけです。

「あなたが、多少のコンパイルエラーでへこたれないプログラマーならば、独立しても上手くいくと思います」

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