急成長GitHubの経営陣が明かす、プログラマーのクリエイティビティを最大限に引き出す方法
PJ トップダウンでやるべきプロジェクトを決めるのではなく、オープンソースプロジェクトのように自分が興味のあるプロジェクトを選べるのです。全員が自ら選んでプロジェクトにジョインしているので、皆とても情熱的になるし、だからこそクリエイティビティを最大化できているんだと思います。
PJ 僕たちはそうは思いません。今は数カ月に1回、皆で集まる機会があるのですが、そこで皆とGitHubのビジョンを共有しています。そこで、僕らのビジョンに対してどう思っているかが分かるんです。
PJ そうです。Gitがあればプロジェクトの進捗状況や生産性なども細かくチェックできるので、それを見ていれば、日々顔を合わせなくてもメンバーがどう感じながら働いているか大体分かりますしね。
上手く進んでいないプロジェクトがあったら、プロジェクトメンバーに集まってもらって少し軌道修正することもありますが、オープンソースだからこそ分かることもあるんですよ。
PJ なぜGitHubが存在するのか。僕たちがどう考え、どう方向性を決めているのか、といったことも含めて、すべてオープンにしています。また、新しいチームメンバーを採用する時点で「1人で働くより、皆でシェアしながら働いた方がいい」ということに共感してもらっている。そういうところも関係しているかもしれないですね。
「専門性」でチーム編成をすると、プロジェクトが失敗する理由
PJ 新しく入ってきたメンバーについては、その人の採用にかかわったすべての人に、「+1」、「-1」、「+100」の3つの評価のうちのどれかを投票してもらっているのですが、その中で「+100」の評価をした人が新メンバーのメンターになる仕組みを取り入れています。それが、今のところ上手く機能していますね。
Scott 加えて、GitHubの組織はプロジェクト単位で作られていて、どのプロジェクトも必ずクオリティの高さを保つためのメンテナーがいる。メンテナーはプロジェクトの管理だけでなく、メンバーが課題や不満を抱えた時に相談役としても一役買っているんだ。その人選は、僕ら経営陣が決めるのではなくチーム内で自発的に決まるものだから、プロセスはとてもダイナミックだよ。
PJ もちろん、何度もあります。一つ例を挙げると、一時期、プロジェクトチームをプログラマーそれぞれの専門性に合わせて構成していたのですが、うまく進まないプロジェクトが増えるようになったんです。だから、さきほど話したような、ダイナミックにプロジェクトメンバーが決まっていく体制にシフトしたんですよね。
PJ おそらく、プログラマーの仕事を左右するのは「技能」ではなく「情熱」だからだと思います。「技能」でやるべきことを決めると、次第に「義務」になってしまうケースがあるのだと感じました。
社員全員の考えを「インフォグラフィック」にして共有
Scott プログラマーだけでなく、人って自然に複数のプロジェクトにかかわっていることが多いでしょ。なぜそういう動き方になるのかといえば、「興味があるから」という一点に尽きるんだと思う。
そこで僕らは面白い取り組みをやっているんだ。社員全員が、「自分のビジョンをグラフ化」して、それを共有し合うんだよ。過去にどんなプロジェクトをやってきて、今はどんな開発に興味を持っていて……などという要素を、インフォグラフィックにするんだ。
そうすることで、どの社員とビジョンを共有できるのか、社員全員が一目で分かるようにしているよ。このグラフのおかげで、例えば「この人は今どのプロジェクトにかかわっていて、どんなビジョンを持っているか」みたいなことが全部分かるようになった。
PJ & Scott もちろん。
Scott 課題解決という点で付け加えると、日々いろいろと試したり、実際の作業の流れを観察したりしていて、非効率だなと思うところはできるだけソフトウエアで解決している。例えばワークフローの効率化とかね。大小問わず、そうしたトライアンドエラーを常に100~200個単位で行っているよ。
Scott オートメーション化、かな。何でもかんでも、経営陣やチームリーダーが方法を決め付けちゃいけない。自由度の高い開発をしなくちゃいけないと思うんだ。僕らは、プログラマー=すごく頭が良い人たちだと思っていて、課題があっても解決策を自分たちで導ける。だから、”More Freedom”にすることこそが重要なんだ。
PJ それと、毎日エキサイティングに働くことかな。
Scott 自分の意見を「指示」として人に伝えることと、相手の意見を否定すること。それは、プロジェクトメンバーの意見がどんなに良くなかったとしても、やってはいけないと思っているよ。僕ら経営陣も例外ではなく、このポリシーを共有しているんだ。
取材/伊藤健吾(編集部) 文/小禄卓也(編集部)
撮影/竹井俊晴、小禄卓也 (※イベント写真のみ)
通訳/前田紘典(Open Network Lab)
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