Vol.215

nanapi和田修一氏が約5年かけて「技術が正義」な企業文化を作るまで【連載:エンジニアの幸せな職場】

エンジニアにとって、本当に「働きやすい環境」ってどんなのだろう? という疑問を解消すべく、組織づくりや職場環境に秀でたTech企業にインタビューを敢行するこの企画。インタビュアーは、エンジニアのためのポートフォリオサイト『Forkwell』や、エンジニア目線の求人・転職サイト『Forkwell Jobs』を運営する株式会社grooves取締役おおかゆかさん。エンジニアが「幸せに働ける職場」のあり方を探る!

nanapi和田修一氏が約5年かけて「技術が正義」な企業文化を作るまで

株式会社grooves 取締役 Forkwellプロダクトマネージャー おおか ゆかさん関西学院大学経済学部を卒業後、独立系SIerを経てインフォシーク社に入社。楽天による買収後も含めて、インフォシークのログイン周辺機能や各種コミュニティサービスの開発を担当。その後フリーランスとして活動、業務委託で入ったgroovesで提案したエンジニアのスキルマッチングの企画が採用され、そのサービス『Forkwell』のプロダクトマネージャーとなり現在に至る。公式ブログ『表参道フォークウヱル別館』でエンジニア採用について辛辣に語る記事も評判

おおか 和田さんと私は、部署は違いましたが楽天で一緒に働いていた時期がありまして。和田さんはインフラ部門だったので、デプロイのたびにお願いに行ってました。ただ、新卒で楽天に入社するまではコーディングもネットワークもやったことがなかったとか。

和田 ええ、未経験でした。基本はすべて楽天に入ってから学びましたね。

おおか いろんなメディアで同じことを聞かれているかと思いますが、改めて、楽天を辞めてnanapiを創業した経緯を教えてください。

日本で「ライフレシピサイト」というジャンルを開拓した『<a href='https://nanapi.jp/' target='_blank'>nanapi</a>』
日本で「ライフレシピサイト」というジャンルを開拓した『nanapi

和田 もともと、楽天時代から趣味でサービス開発をしていまして。6人くらいで、サークル的なノリでやっていました。それを本格化しようというので、中学時代の同級生でもあるけんすう(古川健介氏・nanapi代表取締役)から声を掛けられたんです。

おおか 最初からnanapiみたいなサービスを作ろうと思って独立したんですか?

和田 いや、その時は、独立すること以外は何も決めていませんでしたね。最初は受託開発をしながら、何をするかを決めていった感じで。起業前からお世話になっている(現・ヤフー執行役員の)小澤隆生さんから、「これからはハウツー系のサービスが来るんじゃないかな」とアドバイスされて、nanapiの構想が生まれたんです。

おおか それから5年経って、CTOとしての自分は変わりましたか?

和田 どうでしょうね……。良い方向に変わったかどうか、自分では分からないですけど(笑)、最近になってCTOには3つのフェーズがあることに気が付きました。

おおか 興味ありますね。説明してもらえますか?

和田 最初のフェーズは、「自分ががんばる」。次は「みんなとがんばる」。それで最後が「みんなを支える」です。

CTOとしての「3つのフェーズ」について語る和田氏
CTOとしての「3つのフェーズ」について語る和田氏

おおか 何となく分かります。読者向けに、具体的にお話いただけますか?

和田 nanapiを立ち上げたばかりのころは、そもそも僕しか開発担当がいなかったので、自分が頑張るしかないじゃないですか。その後、エンジニアが増えていくわけですけど、自分もイチエンジニアとしてコードを書きながら、「みんなが倒れたとしても俺が頑張る」という感じでやってました。

で、最近になってやっと、僕が「みんなを支える」ことを意識しないと、チームの進歩が速まらないよなーと思うようになりまして。取締役としての仕事が増えてきた今となっては、「みんなとがんばる」のままでは破綻すると。

おおか 和田さんが“第3フェーズ”に入ったきっかけって何かあるのですか?

和田 特に何かがあって、急に変わったわけではないんですよ。最近、取締役研修を受けた影響もあると思いますし、僕より上の世代のCTOの方々といろんなお話をさせてもらったのも大きいと思います。

そういえば『エンジニアtype』さんの記事でも、グリーの藤本真樹さんとビズリーチ竹内真さんとの対談を読んで、「CTOがボトルネックになってはいけない」って話にいろいろと考えさせられました。

あとは、最近、nanapiのCTOとしていろいろな場所でお話させていただく機会が増えてきたので、考えがまとまってきたというのもあると思っています。

エンジニア以外の社員にも週1でプログラミング研修を行うワケ

イベントで和田氏が話していた「エンジニアが辞めない」理由について質問するおおかさん
イベントで和田氏が話していた「エンジニアが辞めない」理由について質問するおおかさん

おおか そういえば、コワーキングスペース茅場町Co-Edoで今年4月に開かれたエンジニア採用についてのトークイベントでも、パネラーとして参加していましたよね?

和田さんがお話していた内容で印象的だったのが、「まだ、会社と相性が合わずにnanapiを辞めていったエンジニアは1人もいない」ということでした。創業から5年経って、誰も辞めてないってすごいですよね。どうして辞めないんだと思います?

和田 たぶんですけど、ウチは「技術が正義」という企業文化づくりを意識しているからだと思います。その文化が、エンジニアにとって居心地の良いものになっているんじゃないかと。

おおか 「技術が正義」とは?

和田 会社には、サービス開発以外にもBizDevなどいろんな活動があって、それぞれに「正義」があるじゃないですか。ただ、いろんな正義が混在する中でも、最もリスペクトされるべきは技術だし、何だかんだ言っても技術がないと実現できないよね、という文化を作ってきたつもりです。大事なのは、「技術者が正義」ではなく、「技術が正義」って部分。

おおか でもそれって、トップが言い続けるだけでは根付かないですよね?

和田 そうですね、言うだけじゃ絶対根付かない。

おおか じゃあ、どうやってそういう文化を作ってきたんですか?

和田 例えば今年2月から始めたのは、エンジニア以外への啓蒙です。ウチは、エンジニア以外の全職種の社員に、週に1回プログラミング研修を行っているんですよ。講師は僕がやっています。

おおか 全員がコードを書けるように育てようと?

和田 いいえ、みんなが作れなくてもいいけど、少なくとも「技術」のことを分かっている人が社内に増えると、サービス開発に対するリスペクトが生まれるよなーと。「こんなの簡単でしょ、すぐやってよ」とは言えなくなると思うんですよ(笑)。

おおか そうですね。それ、ウチでもパクらせてもらおうかな(笑)。

和田 週1でやっていると、総務担当の社員でも、掲示板くらいは作れるようになりますよ。

おおか ただでさえ開発業務とマネジメントで忙しい和田さんが、週1で研修し続けるのはなかなか真似できるものではありません。ぶっちゃけ大変じゃないですか?

和田 でも、こういう啓蒙活動もCTOの大事な仕事だと思っています。それに、講師をやることが、僕自身いろんな技術に触れ続ける良い習慣にもなっていますし。

おおか そこが和田さんのすごいところだと思います。採用に関しても、すべての応募をご自身でチェックした上で誰と会うかを決め、一次面接もCTO自らが行っているそうですね。

Forkwell Jobsに掲載されているnanapiのエンジニア採用求人
Forkwell Jobsに掲載されているnanapiのエンジニア採用求人

和田 はい。エンジニアの採用はウチのような会社にとって生命線だと思っているので。CTOとしてのタスクの2割くらいを割いて行っています。

おおか なるほど。『Forkwell Jobs』でも、採用に成功している企業はCTO自らが採用活動に積極的にかかわって、柔軟かつ迅速に動けているところですね。逆に、人事に任せきりで、人事もCTOや現場に協力を求めるのを遠慮しがちな会社は、いろんな媒体に求人を出して応募者をかき集めているにもかかわらず、採用に苦労されています。

応募数だけは多いので、それをさばくために人事は常に多忙なんですが、一次フィルターに技術的なバックグラウンドがないため、優先して見るのは催促の多いエージェントからの紹介みたいな。

和田 そうなんですか。僕は採用を人任せにできないタイプなので。でも、エンジニアの採用を人事に任せっぱなしだと、やっぱりうまくいかないと思うんですよね。

おおか ですね。たまにふらっとやって来る有能な人材の応募を見極め、かつタイミングを逸して逃げられないように面倒な手続きを省略して対応できる権限のある人、つまりCTOが率先して動ける会社ほど採用はうまくいってます。その点でnanapiさんは理想的です。

「良い制度」を導入しても、文化がなければ根付かない

おおか 話を戻して、nanapiの企業文化づくりでは「やってみたけど失敗だった」っていう取り組みはありますか?

和田 めちゃくちゃいっぱいありますよ。他社さんのやっているエンジニア向けの制度を見聞きして、「ウチでもやってみよう」と取り組んでみるんですけど、結果うまくいかなかったり。

「良い制度」を導入しても、文化がなければ根付かない
「良い制度」を導入しても、文化がなければ根付かない

おおか Googleがやっていた20%ルールを導入したり?

和田 もちろんやってみました(笑)。でも、結局みんな忙しいからと、立ち消えになりましたね。長続きする制度、社内に根付く制度って、その会社の文化に合ったものだけなんですよ、きっと。

おおか nanapiさんの場合は、さっきお聞きした週1の社員研修以外に、どんな取り組みが続いていますか?

和田 月に一度、業務以外のことを話しながらランチを食べる「TechLunch」とか。あとは社外のエンジニアも参加OKな技術勉強会などですね。

おおか 続いている制度って、和田さんご自身が好きなものが多いんじゃないですか?

和田 自分でやりたいことじゃないと、長くはやれないですよ。それに、会社文化の根底には、必ず役員なり部門トップの考えがあると思うんです。ウチで言うと、「技術は正義」という企業文化を作りたいってことに関しては、役員全員が共通して思っていたことなので。

おおか じゃあ、今のnanapiの企業文化は、できるべくしてできたものだと?

和田 あー、でも、そうとも言い切れないかな。「これがnanapiの文化だ」って言語化できるまでは、けっこうフワフワしてましたから。しっかり言語化できるようになったのって、この半年~1年くらい。だから今は、ウチの企業文化にさえに合っていれば、他社さんの制度をコピーしても社内全体に根付くはずだと言い切れます。

おおか 逆に、文化に合わない場合は、どんなに良い制度だとしても根付かない?

和田 だと思います。

おおか その企業文化のベースになるであろう採用基準についても、nanapiさんの中で言語化されたものがあれば伺いたいです。和田さんは、どういう人と面接で会ってみたいですか?

和田 何でもいいので、自分で情報発信している人ですね。ブログ、GitHub、自作のWebアプリ、何でもいい。

和田氏もブログ『<a href='http://wadap.hatenablog.com/' target='_blank'>UNIX的なアレ</a>』で頻繁に情報発信をしている
和田氏もブログ『UNIX的なアレ』で頻繁に情報発信をしている

おおか GitHubやアプリは分かりますが、ブログだと、どの辺を見てエンジニアとしての力量を推し量るのでしょう?

和田 内容というよりも、「HTMLを意識して文章を書いている人」というか。文章って、論理構造の塊じゃないですか。コーディングで大事なのはデータをどうエレガントに持つかなので、シンプルで分かりやすい文章を書ける人はコードもきれいに書けると思うんですよ。

おおか なるほど。そういえば、nanapiは和田さんとけんすうさんお2人そろってアルファブロガーですね。きっと「HTMLを意識して書く」タイプなんでしょうね。ほかのエンジニアも、文章はよく書くんですか?

和田 社内ブログは全員に書いてもらっています。それも、ただ書いてもらうだけじゃなく、公開前にチャットでみんなに見せてから公開するようにしています。事前にいろいろ修正されて嫌かもしれませんが、さっきの理由で、エンジニアも文章力を磨くのは大切かなと。

おおか じゃあ、開発のドキュメントもしっかり残す文化ですか?

和田 ええ。『Qiita:Team』を使っているんですけど、けっこう残しますね。

「ダメにならないベンチャー」として、進化を続けるには

おおか ちなみに、面接で会う方々にはどんなことを聞くんですか?

和田 一番は、ネットが好きかどうかです。スキルがあるかどうかより、好きかどうか。だから、面接では必ずどんなサービスやアプリを使っているかを聞きます。

和田氏の考える「ネット好き」の定義とは?
和田氏の考える「ネット好き」の定義とは?

おおか ネットと一言で言っても、けっこう範囲が広いですよね。

和田 ええ。いろんな答えがあると思うし、それでいいんです。でも、自分なりに「最近の○○はここが好き」みたいなこだわりを持っている方って、何かしら作りたいモノを頭に描いていると思うんですよ。

おおか じゃあ、和田さんの考える「作りたいモノがなさそうな人」ってどんな人ですか?

和田 例えば、「受託じゃなくてWebサービスを作りたいです」とご応募くださるエンジニアがけっこういるんですが、何でWebサービスを作りたいのか、どんなモノを作りたいのかを聞いていくと、答えが返ってこないこともあるんです。それだと、やっぱりモノづくりを一緒にやっていくのは難しいかな、と。

おおか なるほど。他に、面接でエンジニアに聞いていることはありますか?

和田 自分の職種というか、エンジニアとしての担当領域が、5年後、10年後にどうなっていると思うかも聞きますね。

おおか あまり耳慣れない質問ですが、それを聞く理由は?

和田 きちんと技術動向を追っている人かどうかが分かるんです。最初は「5年後はどうなりたいか?」と聞いていたんですが、職種の将来を聞いた方が、その人の情報感度が分かると気付きました。

おおか そうやって、いろんな角度から見て「技術が正義」という文化に合う人を採用しているんですね。だから、研修を嫌がる人はいないし、辞めるエンジニアもいない。

和田 文化が固まると、合う・合わないも分かりやすくなりますからね。

おおか nanapiのような企業文化を作りたくても作れない、変えたくても変えられない開発トップってたくさんいると思うんですけど、きちんと有言実行できているのがすごい。

和田 たぶん、そこができなくて長続きできなかったベンチャーって、けっこうあると思うんですよね。じゃあnanapiはどうやって文化を作り、今後どういう会社としてサバイブしていくのかを考え、役員同士で議論していく中で、もっとしっかり「nanapiの文化」を言語化しようと。だから、さっきも言ったように、「技術が正義」と迷いなく言えるようになったのは最近の話なんです。

おおか では、そんなnanapiの行く末は?

和田 nanapiの他に、もっと新しい価値を生み出していく会社にしたいなと考えるようになってから、「コンテンツのプラットフォーム」から「プロダクトのプラットフォーム」に進化していかなければと思うようになりました。

おおか 去年リリースしたQAアプリの『アンサー』も、その決意の表れですか?

「無料チャットで即相談」というキャッチコピーで知られるQAアプリ『アンサー』
「無料チャットで即相談」というキャッチコピーで知られるQAアプリ『アンサー』

和田 そうですね。今は、他にも新規事業をいくつか仕込んでいます。もっとスピードを上げて新サービスを生み出すプラットフォームにするには、「モノを作るのが上手いチーム」を作らなきゃダメで。そう考えると、作り手であるエンジニアが居心地よく働ける会社にしていくのが、最も手っ取り早い方法なんです。だから、やっぱり「技術が正義」な文化が必要。

おおか 今後はどういうサービスを作るのか、聞いてもいいですか?

和田 大きく2つあって、コミュニケーション軸のものと、How to軸のものを進めています。

おおか 風土作りはもう完成ですか?

和田 まだまだですね。なので今、「nanapiの7箇条」みたいなのを決めようとしています。素案はできたので、それをみんなにチェックしてもらっています。

おおか トップダウンじゃなく、全員の意見を聞くんですね。

和田 もちろん最終的にはこっちで決めるんですけど、「全員にPull Requestを送る権利があるよ」という雰囲気にはしておきたいなぁと思って。僕らはハッカー集団でありたいし、オープンソース的にやっていきたいので。

おおか では改めて、和田さんの考える“エンジニアが幸せな職場”ってどんな職場ですか?

和田 まず、プロダクトについて、コードを書くだけでなく、コミットできる職場であること。それから、技術が正義だと認められている職場だと思います。

おおか 今日は、非常に参考になる話をありがとうございました! さっそく戻って、いくつかマネさせてもらおうと思います(笑)。

文/片瀬京子 撮影/竹井俊晴

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