キャリアVol.676

エンジニアが陥りがちな失敗プレゼンの原因と対策とは? 今すぐ押さえておきたい“伝わるプレゼン”の極意

クライアントや社内の他部門を相手に、または社外のイベントで、プレゼンテーションを任される機会はエンジニアにも多くあるだろう。しかし、自らの専門領域に関するプレゼンだったにも関わらず、相手から全く手応えが感じられず残念な思いをしたことはないだろうか。

そんな経験から、自らを「プレゼンが苦手」「話し下手」と決め付けたり、ましてや相手の技術知識の乏しさのせいと責任転嫁するなどはまったくもって間違いだと指摘するのは、2018年4月に『論理的にプレゼンする技術[改訂版]』を上梓したベテランエンジニアの平林純氏だ。平林氏が自身の経験に基づいて編み出した、誰にでも取り組める実践的な“伝わるプレゼン”の極意を聞く。

平林 純氏

平林 純氏

1968年、東京都生まれ。1992年、京都大学理学部地球物理学科卒業。1994年、京都大学大学院理学研究科修士課程修了。物理プロセス制御・設計エンジニアとして各種技術開発に携わる傍ら、講演や著書を通じてプレゼンテーション技術の重要性を伝える活動に取り組んでいる。主な著書に、『論理的にプレゼンする技術[改訂版] 聴き手の記憶に残る話し方の極意』(SBクリエイティブ)、『理系のためのプレゼンのアイデア』『史上最強 科学のムダ知識』(技術評論社)、『理系サラリーマン専門家11人に「経済学」を聞く!』(光文社)などがある

愛してやまない技術のプレゼンこそ、相手の立場に立って行うべき

長年、物理プロセス制御・設計エンジニアとして、さまざまな聴衆を前に技術的なプレゼンを経験してきた経験を持つ平林純氏。良いプレゼンの定義を聞くと、次のような答えが返ってきた。

「『相手が求めている情報を、相手の立場に立って加工し、手渡してあげること』ができれば、きっとそれは良いプレゼンです。しかし、ほとんどのエンジニアはこの基本を理解していません。それが“伝わらないプレゼン”の主な原因だと思います」

平林純氏

特に、エンジニアは“伝わらないプレゼン”をしてしまうケースが多いという。それはなぜか?

「エンジニアは誰よりもその技術に通じているからこそ、自らが考える正しさや論理に固執しがちだからではないでしょうか。自分が愛してやまない技術について話す機会があれば、その素晴らしさを1から100まで話したくなってしまうものです。でもそれは自分本位な話。聞く側の立場を理解していないので、その熱量が空回りしてしまうのです」

聞き手が一度に受け取れる情報量には限界がある。特に専門に疎い聴衆であればなおさらだ。話し手がプレゼンの構成や内容、話し方を工夫しなければ、聞き手は睡魔に襲われるか、全く内容が理解できず、無意味なプレゼンだったと失望してしまいかねない。平林氏は、こうした話し手と聞き手の間にあるギャップを解消するために、『論理的にプレゼンする技術[改訂版]』を執筆したのだという。

「私自身もエンジニアです。知っていることを全て伝えたくなる気持ちはよく分かります(笑)。でも、技術はバックグラウンドの異なる人々と交わることで初めて価値が生まれるもの。その第一歩となるのがプレゼンなのです。

せっかくの技術も価値を認めてもらい、正当な評価を下してもらえなければ、相手方やその先にいるエンドユーザーはもちろん、プレゼンを行ったエンジニア本人にとっても不利益しかもたらさない。そこで、プレゼンの基本を分かりやすく伝える本を書こうと思い立ちました」

執筆意図からも分かるように、メインの想定読者は専門外の人々を相手にプレゼンする機会があるエンジニアだ。本書では、伝わらないプレゼンに陥ってしまう「背景や原因」の解説に重きを置いている。その上で、具体的な対処法を解決手段として提示する「理論と実践」型のハウツー本のため、どんな職種のビジネスパーソンでももちろん取り入れやすい内容だが、ロジックを重視するエンジニアにとっては特に理解が深めやすい作りになっている。新書でありながら、カラーイラストが豊富に使われているのも、視覚的にプレゼン・テクニックを把握してもらうことを狙った仕掛けだという。

数々あるテクニックの詳細は本書に譲るが、すぐに使えるプレゼン力アップのための3つのポイントを平林氏はレクチャーしてくれた。

【ポイント①】相手を知り、誰に何を伝えるかを再確認する

「冒頭に『相手の立場に立ったプレゼンが大事』だと申しましたが、最初にやるべきことは、『誰に何を伝えるかをはっきりさせる』こと。単に“伝える”といっても、相手に合わせた伝え方が必要ですから、まずは相手方を知ることが欠かせません」

具体的にはプレゼンの事前打ち合わせ時に雑談などを通じて、プレゼン内容に該当する箇所のうち、どの部分に相手は関心を持っているのかをきちんと把握することが大事だという。例えば類似技術との比較に興味があるのか、それとも活用事例に関心があるのかによって、プレゼンの骨子は全く違ってくるからだ。

「また、伝える内容が自分のよく知っている事柄であっても、細かな数字など、改めて不明瞭な部分がないか事前準備と下調べを怠らないことも重要なポイントです」(平林氏)

プレゼンしている最中に曖昧さや迷いが垣間見えると、聞き手にも不安は伝染する。それがプレゼン内容全体への不信感に増幅してしまいかねない。相手のニーズを捉えて、必要な情報を過不足なく収集しておくのがキモだ。

【ポイント②】一言で言い表せる「キーフレーズ」を提供する

聞き手の全てが、「情報を受け取るメリットがある」とモチベーション高くプレゼンの場にやって来ると考えるのは早計だ。テーマに関心はあっても、求めている内容は話し手側の想定と同じとは限らない。

「だからこそ相手を知ることが大事なのですが、もう一つ、持っておいてほしい視点があります。それは、プレゼン終了後、聞き手がその内容を報告する相手は誰なのか、です。上司か、関連する他部門か、顧客か、いずれにしろプレゼン内容を誰かに伝える際、使いやすい“キーフレーズ”があると、そのプレゼンへの満足度も一気に高まるはずです」

キーフレーズがあれば、プレゼンの聞き手はその内容を第三者にぐっと説明しやすくなる。例えば、「〇〇%のコスト削減につながる」「認知度を上げるのに効果的」など、聞き手が理解しやすく、報告する相手にもプレゼン内容の最大の山場を端的に言い表せるフレーズを盛り込む。

「つまり、プレゼンの聴衆は、聞き手のそのまた向こう側にもいるということです。彼らの背後には大勢の関係者がいます。例えば、導入を検討してもらいたい技術についてのプレゼンであれば、その技術を利用すれば何ができるのか、導入すべきポイントがどこにあるか、短い言葉で説明してあげれば上司にも説明しやすくなるでしょう。プレゼンへの満足度が上がるのはもちろん、プレゼンの本来の目的も果たしやすくなります」

【ポイント③】自然な流れで聞き手を結論に導く

プレゼンの構想や事前準備に加えて、スライドづくりにも注意が必要だ。

「PowerPointで表を作るとき、数字を文字列と同様に右ぞろえにしてしまい、桁がそろわず数の大小が直感的につかみづらくなってしまうケースがよくあります。また、人間の視線がどのように流れるかを知らないがために、重要な要素を“重要に見えない場所”に配置してしまうのも、ありがちな失敗です。

こうした小さな配慮不足は、アプリケーションの設定や人間の心理を知っていれば避けられることです。本書ではこうした細かなテクニックについても詳しく言及しています」

プレゼンは自らの正しさをアピールする場ではない。内容が正しければ、見た目のちょっとした不備くらい看過すべきというのは誤った認識だ。逆に言えば、ほんの小さな配慮で聞き手の理解度をぐっと引き上げられるのだから、取り組まない手はない。聞き手の理解を阻害する要素を徹底的に排除しておくことは、ビジネスマナーの一つと言ってもいいだろう。

精神論では意味がない。どうすればいいかに徹底的にこだわる

前述した通り、本書は伝わらないプレゼンの背景や原因を徹底的に掘り下げている。これは、「『~するべき』という“べき論”に終始したくない」という平林氏の強い思いがあったからだ。

「プレゼンする時は、話し手は聴衆の目を見て話す“べき”ですし、分かりやすいストーリーを組み立てて話す“べき”なのは、誰でも知っていることです。それをただ『意識してやってください』で、できるようになるならこんな簡単なことはありません。大抵の場合は、するべきことをやっているつもり、もしくはやろうとしてもできず、結果としてうまくいっていないのです。

平林純氏

ですから私は、そんな精神論などではなく、具体的な解決方法を皆さんに提供したかった。プレゼンのさまざまなフェーズごとに、うまくいかない悪い例を具体的に挙げ、それが起こる理由は何で、どうすれば防げるのか、だからこのテクニックが効果的である、ということを分かりやすく簡潔に記述することにこだわりました。

それがこの本の中で私が実現したかったことですし、読者の方にも『本当に実践の場で役に立つ』と言っていただけたらこんなにうれしいことはありません」

プレゼンはビジネス・コミュニケーションの基本といえる。エンジニアには他者との対話を苦手とする人も少なくないが、本来エンジニアはプレゼンに向いているのではないかと平林氏は考えている。

「優秀なエンジニアは、目の前の課題に対して最短距離で解決策へと到達する力を持っています。シンプルに、本質を捉える能力に秀でている証拠です。この資質は、プレゼンにも大いに活かせる要素です。

プレゼン力は口のうまさで決まるわけではありません。仮に口下手であったとしても、相手が知りたい情報を、相手の理解しやすい形へ整えて受け渡すという基本さえきちんと押さえれば、プレゼン力は圧倒的に引き上げることができます。そしてこれは、誰でも身に付けられる“技術”なのです。苦手意識を持っているのは、単に正しいやり方を知らないせいです。学ぶことで、確実に克服できますよ」

日々の対人コミュニケーション力のアップにも、プレゼン・テクニックはきっと活きてくる。自らのスタイルを見直すきっかけとして、本書を一度手に取ってみてはいかがだろうか。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/小林 正(スポック)


論理的にプレゼンする技術[改訂版]  聴き手の記憶に残る話し方の極意』
平林 純・著(SBクリエイティブ)

論理的にプレゼンする技術[改訂版]

理系、文系を問わず、何かを提案するにはプレゼンを避けては通れない。分かりやすいプレゼン術は、全社会人の必須スキルといえる。本書では、「そもそも良いプレゼンとは何か?」といった基礎の基礎から、発表に臨む際の心構え、事前準備から発表シナリオの作り方、発表中の正しい振る舞い、パワーポイントの効果的な使い方、聞き手を飽きさせない技術、質疑応答の上手な方法までを一挙に解説する

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