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DeNAのデータサイエンティスト流「考えること」の習慣化が生むハイパフォーマンス

スキル

    テクノロジーの進歩に伴った変動の激しいIT領域に身を置くエンジニアにとって、継続的な学習はキャリアを築く上で必要不可欠。近年では、社会に出てからも学び続ける・学び直す「リカレント」にも注目が集まっています。しかし、日々の業務と平行してスキルを磨いたり、新たな知識を身につけたりするのは、決して簡単なことではありません。

    では、各企業で活躍する若手エンジニアの方はどのようにスキルを磨いているのでしょうか?その実態を探り、明日からマネできるノウハウを盗んできました!

    DeNA

    株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA) システム本部 AIシステム部 AI研究開発第二グループ 田中一樹さん(26歳)

    慶應義塾大学で電力に関する制御理論工学や数理計画法を学んだ後、同大学院理工学研究科を修了。2017年4月、新卒でDeNAに入社して以降、ゲームアプリ『逆転オセロニア』におけるAI研究開発を担当している。また、学部4年生時からKaggleやKDD Cupといったデータマイニング関連の大会に参加し、入賞。Kaggle Masterのランクを保持している

    【 毎週の勉強時間 】
    不定(決まった勉強時間は設けていない)
    ※しかし、思考を巡らせ続ける習慣づけを常に行っている(詳細は後述)

    【 勉強時間の作り方 】
    「無理をしない」をモットーに、できる時にできるだけ

    【私の勉強術はこれ!】
    1. 知りたい事柄に関連する論文を読む
    2. 仕事と親和性が高いプログラミング言語を実践学習
    3. Kaggle等、多様な人たちと競い合う場に参加する
    4. 上記の場で出会った人たちと意見交換をする
    5.「思考停止時間」を生活の中から徹底的になくしていく

    ※記事の最後では、田中さんオススメのコミュニティ・書籍情報もご紹介しています!

    【これまでのキャリア】好奇心のままに学び漁った中で出会った「データ分析」という天職

    DeNA

    学部生時代は主に建築やエネルギーといった工学を学んでいたのですが、4年生になった頃から「自分の引き出しを増やして、将来的な可能性の幅を広げたい」という欲求に駆られて、いくつもの異領域の学問にアプローチしていきました。制御工学、経済学、金融工学、計算機科学、非線形力学などを学びましたが、その中でも特に熱中したのが確率統計と機械学習。そして、これらを使ったデータ分析という領域に惹かれていったんです。

    大学院時代にはデータ分析のコンペティションに積極的に参加して、上位入賞を目指す日々。やがてKaggleの国際大会にも出場し、入賞することができました。「データ分析を通じて世の中に貢献できる場で働きたい」と考えるようになり、DeNAへの入社を決めました。

    DeNAにはハイレベルな技術者が集まっていましたし、その人たちとフラットに意見を交わせるカルチャーがありました。型にはまらずに多彩な新規事業を展開するDeNAなら、データ分析の価値を多方面で活かしていける、と確信していました。入社してからは、新設された部署であるAIシステム部の一員としてゲームアプリ『逆転オセロニア』のAI研究開発担当を務めています。試行錯誤を繰り返す日々です。

    ※田中さんのキャリアについてはこちらのインタビューでより詳しくご紹介しています!

    【私の勉強術】「思考停止時間」は一瞬たりとも作らない! 常に頭を回転させることが業務レベルUPに繋がる

    データ分析に関わる論文は、日々新しいものが発表されるので地道に読んでインプットするようにしています。特に分野を絞らず、理論的、実用的に面白そうな論文を読んでいます。また、AI開発やデータ分析に用いられるプログラミング言語、特にPythonやR言語の中身についても、解説書を片手に勉強しているところです。

    学生時代同様に、データ分析のコンペティションへの参加も続けています。「スキルアップして業務に活かそう」というよりも、ストレートに競い合うことが楽しい、という気持ちの方が強いですね。どこかアスリートに近い感覚かもしれません。

    Kaggleなどは世界中から参加者が集いますし、「私よりも年上でキャリアも長く、豊富な実績を持つ強者と出会い、競える」ことが楽しくてしょうがない。楽しいからこそ勉強もはかどりますし、入賞できるとモチベーションが上がって「次も頑張るぞ」という気分にもなる。Kaggle meetupという参加者同士のコミュニケーションの場もあるので、意見交換を通じて先輩方から学んだり、ヒントを得たりすることもできています。

    でも、私にとっての「最良の勉強」は別にあります。ちょっと曖昧な言い方かもしれませんが、いついかなるときも「何かを考えている状態」をキープすること。それが一番の勉強になっているんです。

    例えば、自室でテレビを見ていたとしても、番組中に何か気になる単語が出てきたら、すぐさまその単語をネットや本で調べて、「なるほど、こういう意味か。そういえば関連することであんなこともあったな。調べよう。そういえば…」と思考を連鎖させていく。それを意識的にやっています。「何も考えていない状態」を日常から徹底的に排除するように心がけているんです。

    きっかけは、ある広告会社の人が「生活の中にあるすべてのものに関心を向け、それを批判的に捉えた上で、改善策を練る習慣を続けている」という話を聞き、感銘を受けたからです。

    データ分析では「答えがわからない中から答えを導き出すこと」が求められます。考えて、考えて、考え抜いたとしても、まだ足りない仕事です。「考えること」を習慣化した結果、常識にとらわれずさまざまな角度から思考を繰り返す作業が自然とできるようになりましたし、深い考察がより短い時間でできるようになったような気がします。

    【おすすめ勉強ツール】書籍を通して基礎を固め、実践の場でスキルに磨きをかけていく

    1.機械学習の基本を学べる書籍
    パターン認識と機械学習』(C.M.ビショップ著/丸善出版)
    機械学習の基礎理論を学ぶのに最適な一冊。何度も読み直し、周辺知識の調査にも時間を費やしてきました。巷では賛否両論だったりもしますが、一度は読む価値があるかと思います。
    強化学習について学びたい場合は『強化学習』(Richard S.Sutton、Andrew G.Barto著/森北出版)や『速習 強化学習 ―基礎理論とアルゴリズム―』(C.Szepesvari著/共立出版)がおすすめです。

    2.プログラミング言語を学べる書籍
    Pythonによるデータ分析入門』(Wes McKinney著/オライリージャパン)
    Rによるデータサイエンス』(金明哲著/森北出版)
    AIの実装面にも関わっていきたい人ならば、PythonやR言語について理解を深めていくと良いでしょう。上記2冊には主要なライブラリが紹介されていますから、各ライブラリのドキュメントに目を通して実際にコードを書く練習をしていくと、今まで10行使って書いていたコードが1行で済み、実行速度が高速になったりすることもあります。
    専門的な書籍はハードルが高い、という方もいるかと思いますが、簡易的なテキストで学習しても、結局は追加でより深く学ぶ必要が出てくるものです。それならば、専門書でしっかり学んだ方が、結果的に効率的だったりしますよ。

    3.大会や関連コミュニティへの参加
    ライバルと競い合うことにやりがいを見出せる方であれば、Kaggleなどの分析コンペに参加してみると良いと思います。世界中のデータサイエンティストと出会い、機械学習モデル作成を競える機会を得ることもできますし、大会終了後にKaggle meetupに参加すれば、大会参加者とコミュニケーションを取りながら学びを深めていくことも可能です。いきなりKaggleに参加するのがこわい場合には、日本にも活発なコミュニティがSlackで展開されているのでチェックしてみてはいかがでしょうか。

    取材・文/森川直樹 撮影/赤松洋太

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