キャリアVol.731

「必要に駆られる状況が一番成長できる」エンジニアはスキルの掛け算で勝負する時代へ【dely CTO・大竹雅登】

【特集】CTO’s CAREER STRATEGY

「AIに仕事が奪われる」という意見が目立つ昨今。テクノロジーを扱う側のエンジニアであっても、「仕様書通りに開発する」だけでは生き残れない時代に差し掛かっています。時代が変われば求められるものが変わるのは当然のこと。問題は、いかにしてその変化に適応していくか、という点です。
そこで、注目企業のCTOに、「これまでどのようにキャリアを築いてきたか」「今後、エンジニアに求められるものは何か」など、未来を担う若手エンジニアに対するアドバイスをもらってきました。

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dely株式会社 執行役員/CTO 大竹雅登氏

高校時代からiPhoneアプリ制作を始め、2012年慶應義塾大学理工学部に入学。在学中にシリコンバレーやインドのバンガロールへ1カ月ずつ滞在し、世界で活躍する起業家に衝撃を受ける。14年、堀江裕介氏と出会いdelyを創業。16年2月にレシピ動画サービス『クラシル』をスタートし、5月にアプリ版をリリース。月間1億7千万回の再生回数を誇る世界最大級のレシピ動画サービスへと成長させた

「若いうちから実績を出したい」「将来のキャリアに向けて弾みをつけたい」……そうは思っても、目の前の業務に追われるうちに時間ばかりが過ぎていき、漠然とした焦りを感じている人は多いはず。では、若くして活躍しているエンジニアたちというのは、日々何を考え、人生の分岐点でどのような選択してきたのだろうか?

大人気レシピ動画サービス『クラシル』を手掛ける注目のスタートアップdelyのCTO大竹雅登氏は25歳。昨年、そうそうたる面々を差し置いて「CTOオブ・ザ・イヤー2017」を獲得した、今最も波に乗っている注目のエンジニアだ。

第一回の「CTO’s CAREER STRATEGY」では、未来を担う若手エンジニアと同世代である大竹氏が、ずば抜けた成長・活躍を実現できた理由に迫った。

iPhoneに魅せられた高校生は、シリコンバレーに飛んで起業の道へと踏み出した

大竹氏が初めてテクノロジーに興味を持ったのは、高校2年生のとき。発売したてのiPhone 4との出会いがきっかけだった。

「インターフェイス、操作性、利便性、どれをとっても衝撃でした。プロダクトとしての完成度の高さにしびれましたね。いろいろ調べていった結果、どうやらこの中に入っているアプリは自分でつくれるらしい、ということを知って、プログラミングの勉強を始めたんです」

以降、すっかりエンジニアリングに魅せられた大竹氏は、Objective-Cを勉強してiPhoneアプリ制作に没頭した。メッセージングサービスを開発したり、iPhoneアプリをつくるアルバイトをしてスキルを磨いたり。その後、大学2年生の時に訪れたシリコンバレーで「起業」という生き方に触れることとなる。

「テクノロジーの本場を知りたくて、シリコンバレーの日本人起業家たちに話を聞いてまわったんです。世界中で使われるプロダクトを作るのに熱中する彼らの姿がめちゃくちゃかっこ良く見えて、僕自身、帰国後すぐに会社を立ち上げました」

その時に立ち上げた会社は半年で解散してしまったが、翌年1月にdely代表の堀江裕介氏と出会い、フードデリバリーサービス『dely』をスタート。それも思うような成果に繋がらず、1年ほどで事業撤退を決断している。いずれも、まだ大学在学中のことだ。

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しかし、本当に困ったのはそこからだ。delyのサービス終了とともに、開発チームのメンバーが一人また一人と離脱してしまったのだ。

「それまで僕はiOSアプリの開発だけに特化していたのですが、人がどんどんいなくなって自分がやるしかない状況になりました。担当者が抜けるたび、サーバサイドもやるか、インフラもやるか、と未経験領域へと手を広げていきました」

「ひとりぼっちのエンジニア時代」は1年以上続き、試行錯誤の末、2016年2月にレシピ動画サービスの『クラシル』を開始。その後間もなくアプリ版もリリースし、爆発的にヒットへとつながった。

徐々にエンジニアも増え、現在はCTOとしてより良いサービスを作るための開発組織を作ることに注力しているところだ。

必要に駆られれば誰だって成長できる。まずは「やりたいこと」を見つけるところから始めればいい

密度の高いそのキャリアの中で、成長の鍵となったターニングポイントについて聞いてみた。

「フードデリバリーサービスをクローズして、エンジニアが僕だけになった時ですね。必要に迫られていろんなスキルを身に付けていったので、結果としてインフラ、Rails、デザインとスキルの幅が広がりました」

ひとりで開発の全てを担う。タフな状況だが、大竹氏はそれほど辛さを感じなかったという。なぜか? それは「これをやる!」と決め、自分に言い聞かせていたからだ。

「もともとエンジニアリングのスキルを身に付けたのも『iPhoneのアプリをつくる!』という目的があったからですし、サービスをクローズしてエンジニアが僕だけになったときも『会社を存続させる!』と決意してからは、そこまで辛くなかった。技術的なことは勉強さえすれば身に付きますしね。目の前にあるやるべきことを、その都度その都度勉強したり、詳しそうな人に聞きに行ったりすることで成長してきたように思います」

大竹氏の成長のキーワードは、いつだって「必要にかられて」だったという。まずやるべきことを決めて、そのために必要なことを一つずつ身に付けていく。そのくり返しが、爆速での成長へとつながっていったのだ。

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とはいえ、今は選択肢が多い。その「やるべきこと」「やりたいこと」はどう決めればよいのだろうか。大竹氏にアドバイスを求めたところ、「エンジニアによくあることなんですけど」と口を開いた。

「Railsを身に付けようとか、GO言語に挑戦しようとか、言語や技術ベースの発想だと、いつか行き詰まると思います。それは目的ではなく、あくまでもツールや手段だから。最初は『ビジネスになるか』まで考えなくてもいいんです。『こういうものがつくりたい』『だから、この技術を習得しよう』という順番が大事ではないでしょうか。

その上で、何を目的にしたら良いかというと……シンプルに『興味があること』でいいと思います。僕自身、最初はとにかくiPhoneが好きで『アプリをつくりたい!』と思っただけですから。それがビジネスになるとか、キャリアにつながるとかは考えていませんでした。熱中できる何かを見つけるのが一番だと思いますね」

一握りのスペシャリストを目指さなくていい。「エンジニアリング×何か」で希少性を上げていけ

最後に、同世代のエンジニアが「生涯エンジニアとして食っていく」ためのアドバイスを聞いてみた。

「技術はどんどん進歩するので、技術領域に関して『これさえ身につけておけば安心』っていうものはありません。むしろ、技術以外のスキルを広げていった方が良いと思います」

大竹氏が推薦するのは、エンジニアリングのスキルにデザインやビジネスの知識をかけ算することで可能となるハイブリッドなキャリアだという。

「ひとつの技術領域でスペシャリストになる道もあるにはありますが、それはかなり難しい。グローバルで勝負してナンバーワンになるしかありません。僕も含めて多くの人はそこまでの天才じゃないと思うので、とにかくいろんなことを身につけて、スキルをかけ算する。その方が希少性は上がりますよね」

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中でも大竹氏が注目しているのが、デザインの領域。今後、全ての業界でテクノロジーがコモディティ化していくことが予想される中で、「エンジニアこそデザインを学ぶべきだ」と力説する。

「あのiPhoneだって、スペックだけを見れば圧倒的なナンバーワンではないんです。それでも、デザイン性や操作感を含めてプロダクトとして洗練されているから、世界中で支持されている。他にも自動車などは、『いかに速く走れるか』というスペックの優劣で選ばれる時代は終わり、デザインの良し悪しで差別化される時代になっています。ある程度成熟した業界においてデザインの重要性はより高まっていくと思います。アプリやウェブの世界も成熟しつつあります。

そうなった時にエンジニアリングしかやっていないと、仕様通り動くシステムはつくれても、多くの人に選ばれるサービスはつくれないんですよね。これからの時代、エンジニアリングも、デザインも、ビジネスの意思決定もできる人材にならないと高い付加価値を発揮できなくなります」

新しいことを始めるのに、覚悟なんていらない。「なし崩し的に」くらいがちょうどいい

デザインなど、エンジニアリング以外のスキルを身に付けたいと思ったとして、会社に属している限り、目の前にはやらなければならない仕事がある。逆に言えば、やるべき仕事以外に手を出すのはなかなかにハードルが高く感じるがいかがなものだろうか。

「確かにそうですよね。でも、何も『ジョブローテーションでデザイナーをやらせてください!』だなんて会社に直談判する必要はないと思うんです。そこまで覚悟を決めなくたって、少し職場を見渡してみれば、『デザイン的な仕事』はすぐに見つかるはず。

フロントエンドに近いエンジニアであれば、日ごろから人の目に触れる部分を開発しているので、すでにデザイン的な仕事をしているわけですし、サーバサイドやインフラエンジニアなら、社内ツールやダッシュボードをつくってみるのもいいと思います。ダッシュボードのデザインって、データ分析をスムーズにするためにすごく重要なんですよ。

そうやって少しずつ、つまりはなし崩し的にでも良いのでスキルを広げていけばいいと思います。『ちょっとやってみますね』くらいライトな感じでいいんです」

大竹氏自身、クラシルのデザイン性向上のために、UIデザインについて学んでいるところだとか。エンジニアリングの未来を見据える若きCTOは、新たな目的を見つけて、まだまだものすごいスピードで成長を続けていこうとしている。

取材・文/石川香苗子 撮影/赤松洋太

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