この連載では、注目企業のCTOが考える「この先、エンジニアに求められるもの」を紹介。エンジニアが未来を生き抜くヒントをお届けします!
「視点を変えればエンジニアのキャリアは激変する」LIFULL CTO 長沢翼が一社で10年働いて気付いたこと
【PR】 働き方
転職市場が活発化し、多くのエンジニアが新天地を求め始めた。転職によるキャリアアップや新しいチャレンジは評価されるようになったものの、全てのケースで「転職=成長」とは限らない。1社で働くエンジニアだからこそ得られるものもあるはずだ。
そこで今回お話を伺ったのが、株式会社LIFULLに新卒入社し、勤続10年目にして同社のCTOに就任した長沢翼さん。「入社以来、転職は一度も考えたことがありません」と自信たっぷりの笑顔で言い切る。キャリアアップや労働環境改善のために転職を繰り返すエンジニアは多いが、彼はなぜ一社で働き続けることを選んだのだろうか。
「自分の技術を極められるか」ではなく「世の中の問題を解く」仕事かどうか
「私は大学時代、地域医療の問題をデザインシンキングやITを使って解決するというプロジェクトに参加していました。その時、痛感したんです。『ITを使って世の中を変えられること』って、まだまだたくさんあるじゃないか、と」
調査のために訪れた病院で長沢さんが目にしたのは、待合室で患者が長時間待たされていたり、施設内の広く複雑な通路で迷っている人の姿。それらは「ちょっとしたシステム一つで解決する問題」ばかりだった。その時、ITが世の中の問題を解決する手段になり得ることを実感した。当時の経験が、就職先を選ぶ軸になったと話す。
「新卒の就職説明会に行くと、多くの会社が、自社の業績が伸びている話や、事業や技術の話ばかりでピンとこなかったんです。でもLIFULLだけは全然違っていて、最初から最後までビジョンの話ばかり。 そんなにビジョンの話ばかりでいいのか?って学生ながらに驚きました(笑)」
LIFULLのビジョンは「あらゆるLIFEを、FULLに。(あらゆる人々の暮らし・人生を満たす)」。この目的を実現するためなら、どんな手法やアイデアを使ったって良い。その姿勢に、「この会社に入って、世の中が抱える“暮らし”の問題を解いてみたい」と直感したという。
エンジニアには「自分の技術を極められるかどうか」で職場を決めようとする人も多い。長沢さんにはそのような視点はなかったのかを問うと、あっけないくらい簡単に「全然」と答え、首を横に振った。
「決して変な人だと誤解しないで欲しいんですけど、私は昔『自分はこの地球という星で、何のために生きているんだろう』と自問自答していた時期がありました。壮大な話で中二病っぽいんですけど(笑)、結構真剣に考えたんですよ。その結果、『それは人類という種を存続させるためだろう。だったら人類の進化に役立ちたい』という結論に達しました。そんな自分の中の軸や大学時代の経験から、私の関心は‟世の中の問題を解くこと”にあるんです。ITやデザインはそのための手段に過ぎません」
「どうすれば問題が解けるか」に夢中になれば、技術の幅はいつの間にか広がる
LIFULLに入社した長沢さんが最初に担当したのは、中古マンションを売却したいユーザーのためのサイト構築だった。今や国内有数の不動産・住宅情報サイト『LIFULL HOME’S』の中でも、高い支持を得ているサービスだ。
その後、2年目にはiPhoneアプリの開発チームにジョインし、4年目にはAPI基盤の刷新に携わった。5年目からはAWSの導入プロジェクトに参画、その1年後にはLIFULL HOME’SのインフラをオンプレミスからAWSに移行するプロジェクトリーダーとして戦略を立て、主導した。
それらのプロジェクトは全て長沢さんにとって「未経験の領域」。iOS未体験でアプリ開発に取り組んだり、バックエンドやインフラに通じていたわけではないのにAPI刷新やクラウド移行にチャレンジしたという。
「こう話すと一見、何の関連性もないキャリアに思えますが、『問題を解決する仕事』というのは一貫しているんです。例えばサイトを作った時には、マンションを売りたい方々は匿名で物件を査定・比較したいというニーズがあるのに応えられていない、という課題がありました。サイト構築はあくまで、それを解決するための仕事です」
終始物静かな口調で語る長沢さんだが、一つ一つの言葉に熱を込める。
「iPhoneアプリ開発は当初、外注する話も出ていたんですが、取締役の山田が『面白そうだから自分たちでやろうぜ』と言い出したんです。そういう会社なんですよ、LIFULLって(笑)。とにかく、やりたいと思ったら『やりたい、やろうぜ』と言えちゃう会社なのが嬉しかったこともあり、『iOS知らないけど自分もやりたいです!』と手を挙げていました」
API刷新をした時も、自分で勉強し、調べながら必死にくらいついていった。
「LIFULLは暮らしを良くするための仕組みを提供するプラットフォーマーです。そのAPI基盤を刷新するということは、“プラットフォーム提供のためのプラットフォーム”を作るということなんですよ。それまでLIFULLのシステムはサイトを作る効率を意識して、言語はPHPで統一、フレームワークも基本的に同じものを利用していました。しかしAPIを刷新する際には、言語の選択肢を広げていくために『あえて新しい言語を』とRubyを採用したり、社内では利用実績のなかったWebサーバーを使ったり。自分で考えながら新しいチャレンジをしていくことに非常にプレッシャーはありましたが、それも楽しんでやっていましたね」
多彩なチャレンジに、ひたすら前向きに、面白がりながら挑む長沢さん。「触ったことのない技術でも、しっかり理由を説明し責任を持つ覚悟があれば、どんどん挑戦させてくれる」という同社のカルチャーも相まって、気が付けば技術の幅も短期間の内に広がっていた。「その気になって動けば、何でもやれる」という自信も確かなものになっていったという。
当事者“意識”、だけではなく“圧倒的な当事者”になることで、技術は血肉化する
入社7年目からは、マネジメント業務も担うようになった。その頃から「LIFULLのビジョンを形にするために、エンジニアはどうあるべきなのか」と、エンジニア組織や技術についての課題もより強く意識するようになる。
「LIFULLのエンジニアがどうあるべきか、ずっと考えてマネジメントを実践していたんです。そしたら入社10年目に入った時、当社代表の井上からCTOをやってみないか、と言われて。少し驚きました。150人ほどのエンジニアがいる組織に対して、経営に技術の視点を持ち込み、方向性を定めていかなければいけない。責任は重大だと思いましたが、自分もそこに危機感を感じていたし、誰かがやらなければいけないことなので、即諾しました」
CTOに就任してからは、「今後のLIFULLのエンジニア像」を頭に描きながら、数々の措置を取っていった。
「それまではオンプレミスだったということもあり、リソース効率を上げるために1つのサーバでできるだけ多くの種類のサイトを動かしていたり、開発効率を求めていく上で言語もPHPで統一していました。確かに短期で見た時には効率が良かったんですが、世の中の技術進化も早い中で、中長期に目を向けると問題が見えてきたんです。これでは、エンジニアが新しいことをやろうとした時に、手段として使える技術の幅が限定されてしまう。技術の選択の幅が狭いと、問題解決のために取りうる方法の選択肢が少なくなってしまい、最適解に近づくことが難しくなってしまいます。新しいチャレンジができないようでは、エンジニアとしてのレベルも上がっていきません。
なのでCTOとして、新しいことを始める時は全てクラウド上で行うこと、開発チームごとにクラウドのアカウントを分け、言語やインフラの選定を自由することを推進していったんです。今ではGoを使っている部署もありますよ。短期的に見た時には効率が下がっている部分もあるとは思いますが、エンジニアが自分で考え実践していくことができるようになるので、技術の幅が広がる。変化にも強くなるので、流れがより早くなっていくこれからの時代には、それに対応できるエンジニアがいることが武器になると信じています」
「全ては問題解決のため」を信条としてきた長沢さんだからこそ、「解決したいのに、選べる技術が固定」ではいけないと考えた。そして「問題解決に最適な技術をその都度自由に選択できる体制」を整えることで、LIFULLエンジニアの成長可能性を青天井にしたかったというわけだ。
「ビジョンを形にする担い手であるエンジニアには、制約を外して問題を解くレベルをどんどん上げてもらいたいと思ったんです。私自身がそうだったように、サイトや本で知識ばかり手に入れても、それを行動に移していかないと技術は血肉化しない。そう考えたんです」
最近では、インフラからフロントまで幅広く理解・実践できるエンジニアがLIFULLの中で続々と増えていることを、長沢さんは心から喜んでいるという。
ここまで充実した10年間を歩んできた長沢さん。今さら聞くまでもないとは思ったが、最後に「なぜ転職しようとは思わなかったのか」を改めて質問してみた。そこに、若手エンジニアに向けた、キャリアの金言があった。
「私は『当事者“意識”、だけではなく“圧倒的な当事者”になっていく』という主義で、何か課題を解きたいとかやってみたいと思ったら、その現場に飛び込んでもがきながら成長してきた人間です。世の中には転職することでステップアップしたり、新しいチャレンジをする人もいますが、私にとってその機会はこの会社の中にたくさんあった。そして、私のようなエンジニアに自由にチャレンジさせてくれる風土もありました。 これからも『あらゆるLIFEを、FULLに。』というビジョン実現のために、自分自身が成長したいと思っていますし、それ以上に、同志であるエンジニアやこの組織が成長する環境をつくって、皆で問題を解いていきたい。そう思っています」
常に現状に満足せず、現場に飛び込んで挑戦してみる。そうして一つ一つの問題解決にコミットしていくことが、長沢さんのキャリアを一つ上のものにしたのだ。
取材・文/森川直樹 撮影/赤松洋太
information
LIFULL Creators Blog:https://www.lifull.blog/
LIFULL Creators Blogは、株式会社LIFULLの社員が記事を共有するブログです。自分の役立つ経験や知識を広めることで世界をもっとFULLにしていきます。
RELATED関連記事
RANKING人気記事ランキング
NEW!
ITエンジニア転職2025予測!事業貢献しないならSESに行くべき?二者択一が迫られる一年に
NEW!
ドワンゴ川上量生は“人と競う”を避けてきた?「20代エンジニアは、自分が無双できる会社を選んだもん勝ち」
NEW!
ひろゆきが今20代なら「部下を悪者にする上司がいる会社は選ばない」
縦割り排除、役職者を半分に…激動の2年で「全く違う会社に生まれ変わった」日本初のエンジニア採用の裏にあった悲願
日本のエンジニアは甘すぎ? 「初学者への育成論」が米国からみると超不毛な理由
JOB BOARD編集部オススメ求人特集
タグ