キャリア Vol.796

「タダでやってよ問題」にエンジニアはどう対応すべきか?澤円からの答え

日々新たな技術が生まれるのと同じように、エンジニアの働き方やキャリア形成のあり方も刷新され、新たな潮流が出来つつある。しかし、トレンドをキャッチアップし、多様化する選択肢の中から自分の進むべき道を決めるのは難しい。そこで本連載では、外資系テクノロジー企業勤務/圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます

圓窓代表 澤 円立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
連載:リクナビNEXTジャーナル『澤円のプレゼン塾』/ダイヤモンド・オンライン『グローバル仕事人のコミュ力』

皆さんこんにちは、澤です。

2019年、そして平成最後の年になりましたね。
皆さんはどんなお正月を過ごされましたでしょうか?

私は、千葉の実家に元旦にかみさんと行って、恒例行事の麻雀三昧でした。
麻雀歴70数年の父親にコテンパンにされて、いい親孝行ができました(苦笑)

そして、もう一つの恒例行事が、実家のIT環境の更新作業です。

両親ともに80歳をとうに過ぎている年齢なのですが、二人とも iPhoneユーザーであり、私とはFacebookや LINEでやり取りをしています。
また、 PCも SSD搭載の Windows 10マシンで、毎日ネットサーフィンをしたりゲームに興じたりしています。

そういう意味では、かなり ITについては先進的な環境で暮らしているわけですが、やはり更新に関しては鬼門なようで、やっていいものかどうかの判断が簡単にはつきにくいようです。

特に、更新と見せかけてインストールさせようとするけしからんマルウェアや迷惑ソフトも数多く存在しているので、「とりあえず何でも入れとけ」とも言いにくいところがあります。

今回、両親の iPhoneや Windowsのアップデートをしていて思ったのですが、大型の更新があった後で「Apple IDを入れろ」とか「XXのサービスと連携させろ」とか「この機能をオンにするかどうか」メッセージがいちいち画面に出ると、どう対応していいのか分からないでしょう。

ということで、あれこれ処理をした上で「本人が知っておいた方がいい情報」と「知らなくても普段の利用には差し支えない情報」に整理して、とりあえず即席のユーザートレーニング的なことをしておしまいにしました。
それでも、自分たちの子供や孫と情報共有ができるとなれば、両親としては非常にうれしいことだったようで、大変に感謝をされる結果となりました。

このように、 UI/UXの大事さを改めて知るのは、 ITにそれほど詳しくない人たちのサポートをする時であり、会社や組織のフィルターを通さず、まともにこのような事態に出くわすと、エンジニアとしてあれこれ気付きを得ることになります。

自分たちの作っているサービスであったり、運用しているシステムがどのように非IT属性の人たちに見えているのかを知るいい機会になります。

とはいえ、せっかくの休みの日にITサポート的なことをするのはあまり気が進まない方もいますよね。

私の場合はもともと自分が実家でも一通りの作業ができるようにという意図でIT環境を整えた面もあるので、サポートする必然性がありまだよかったのですが、時々耳にするのは「コンピューターに詳しいならうちのパソコンもどうにかしてくれ」のようなノリで、地元の親戚や友人からサポートを強要される事案です。

これは実に由々しき問題であると私は思っています。

というのも、エンジニアの皆さんが多くの時間を投資し、身に付けたスキルの搾取になりかねないからです。

本来、パソコンのメンテナンスサポートは有償で行われるものです。
もちろん無償のものもありますが、それはハードウェアやソフトウェアの購入の特典として提供されるものであり、ボランティアベースで行われるものではありません。

この「タダでやってよ問題」は、コンピューターに限らずさまざまな場面で起きていますね。
ネット上の各種相談掲示板では、この「タダでやってよ問題」に苦しむ方々の声が数多く見受けられます。

ママ友系の掲示板で、こんなパターンを数多く見つけることができます。
洋裁が得意な人が「うちの娘のピアノの発表会の衣装作って!」と言われたり、イラストが得意な人が「今度転校するXXちゃんのお別れ会をやるから似顔絵を描いてあげて!」と頼まれたり。
それも「タダで!」とか「お友達価格で!」とか。

ちなみに、ボクのかみさんは造形作家をやっているのですが、思い当たる節がめちゃくちゃあるようで、この手の投稿を見るたびに投稿者に同情して、厚かましい連中に大変腹を立てています。

このように、形になるものに対しても「タダで」とか「お友達価格で」とか平気で言う人がたくさんいるのですから、パソコンのOSやソフトウェアのメンテナンスなどは、見た目にその違いが分かりにくいのもあって「あなたにとっては簡単なことだろうから無料で当然」という思考になりがちなようです。

ということで、とにかくエンジニアの皆さんにお伝えしたいのは、「エンジニアたるもの、うかつに無料で受けてはならない」ということです。

もちろん、本当に信頼できる家族の間であったり、お返しをしても足りないくらいにお世話になっている人であれば、時間とスキルで恩返しするのも大いに結構でしょう。
でも、ちょっとでもモヤモヤする感じがしたら、絶対に受けるべきではないというのが私の持論です。

というのも、このようにエンジニアのスキルが搾取されてきた結果が、今の日本の停滞を生んでいると私は考えているからです。

シリコンバレーを中心とする最先端技術を持つ企業や組織が集まる地域は、エンジニアの所得レベルは他の職種よりもはるかに高く設定されています。

インドも中国も、エンジニアになることこそ、成功の第一歩と考えている人がたくさんいます。
今の世界株式総額ランキングをみても、トップクラスにいるのはハイテク企業ばかり。エンジニアなくして成り立たない会社が高い評価を受けているのです。

翻って日本。

多くの企業において、IT部門は褒められることの極めて少ないコストセンターとして認識されており、「怒られないようにする」のが最重要課題だったりします。

また、国内のITエンジニアの75%が属しているといわれるSIベンダーは、多重下請け構造になっており、最終的な価格のしわ寄せを受けやすいポジションにいます。

どれもこれも、日本のエンジニアへのリスペクト不足こそが原因の一つだと思っています。
もっとエンジニアはリスペクトされる存在であり、その恩恵を享受していいと思っています。

そのためには、まずは声を上げないといけません。
エンジニアのスキルは搾取されるものではないのです。

サポートを頼まれたら、まずは「メーカーのサポート窓口に問い合わせて」と勇気をもって言いましょう。

「えー、今すぐ直してほしいんだけど」と食い下がられたら、スマホなどで「パソコン サポート 出張料金」で検索して、大体の相場感を見せて「これくらいは請求するよ」と言ってしまっていいでしょう。

ちょっとした設定作業でも、数千円の価格がついているはずです。
そこで不機嫌になるような人は、付き合う価値がない人です。

縁を切ってもいいと思います。
そのためのリトマス試験紙にもなりますね。

エンジニアのスキルは、買いたたかれていいものではありません。
もっともっとエンジニアは持っているスキルを高く評価されるべきであり、それをアピールしていく必要があると思っています。

もちろんこの論理は、「評価されるべきスキルを持っているエンジニア」に関してだけ言えることです。

なので、まずはスキルを磨くことは大前提ですね。
そして、磨きつつ「自分が得意なこと」や「自分が楽しくできること」を書き出してみてください。

この「書き出す」という行為は本当に大事です。
書き出せないと、脳の中で完全に言語化できてない可能性があります。

どういうことかというと、「バラ」や「レモン」あるいは「ゆううつ」という字が、読めるけれども書けないことと同じです。

書けないと、相手に書き方を説明できるわけがありません。
まずは自分が「書ける」「言葉で表現できる」ことが大事です。

そうすると、「自分はこれができる人」と自己紹介できる状態になり、そのまま自信につながってきます。自信がつくと、自分の時間を搾取する人たちに対して毅然とした態度で接することができるようになります。

今年は始まったばかりです。

自分のスキルを言語化して、さらにそのスキルを磨き上げる年にしてくださいね。


▼澤円氏 最新書籍『あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント』(セブン&アイ出版)

あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント

セブン&アイ出版さんから、私の三冊目となる本が発売されました。
「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。
本連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみてくださいね。

>>詳細はこちら

>>要約はこちら 澤円さんが教える働き方のヒント『あたりまえを疑え。』

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