全3回にわたって、エンジニアに人気の3社で技術部門の採用を担当する3人に、採用したいエンジニアとそうでないエンジニアの「境界線」について語ってもらった。
DeNA・メルカリ・CA人事が証言! スキルはあるのに“面接で落ちる”エンジニアに足りないもの
今、エンジニアにとっては転職しやすい、空前の売り手市場が続いている。とはいえ、人気企業に入れるエンジニアは一握り。では、人気企業は採用するエンジニアと落とすエンジニアを、どのように見極めているのだろうか。これまで、2回にわたって、DeNA・メルカリ・サイバーエージェントのエンジニア採用担当者にエンジニア採用の舞台裏について語ってもらった。最終回となる第3回のテーマは、本短期連載の総まとめ「人気企業の採用選考を突破するポイント」をお届けする。
面接は候補者と企業の協働作業
メルカリ渋谷さん(以下、渋谷) 人事担当者や現場の面接担当者は、事前に頂戴した応募者の情報を面接前に読むのはもちろん、「こういう質問をしたら、よりこの人のことが分かるかもしれない」と仮説を立て、準備して面接に臨みます。もちろん全員が当てはまるとは限りませんが、採用に至らないエンジニアの多くは、面接の準備にさほど時間を費やしていない印象があるのは確かです。
サイバーエージェント佐藤さん(以下、佐藤) 確かにそういう面はあるかもしれませんね。特に、事業やサービスに対する理解が今ひとつだと、採用には躊躇してしまいます。
渋谷 同感です。今は、インターネットで色々な情報が調べられますし、知人経由などで、その会社につながっている人が容易に見つかる時代です。あくまで、面接の場は人対人ですよね。手間を惜しまず調べて面接に臨まれる方には、気持ちが動かされますし、何よりもお互いにとって面接の場が充実します。
佐藤 基本的な企業情報などについて、説明する時間が短縮できますよね。面接の価値って、候補者と採用側の間で、どれほど有益な情報交換ができたかということにかかっていると思います。最悪なケースは、情報量が少なかったり、内容が薄かったりして、お互い釈然としないまま、面接の時間を使い切ってしまうこと。面接は企業が候補者をジャッジする場であり、候補者が企業をジャッジする場でもあります。面接の質は双方の努力によって担保されるということは、お互いに意識した方が良いですね。
DeNA立花さん(以下、立花) 面接でのコミュニケーションにおいて、双方の努力が欠かせないというのは、佐藤さんがおっしゃる通りです。それと併せて、こちらが求めている職務内容やスキルだけでなく、例えば候補者を受け入れるチームの状況や、受け入れ体制なども含めてジョブディスクリプション(職務記述書)にしっかり書いておくべきだとも感じました。チームの状況が見えると、ジュニア層を求めているのか、それともシニア層を必要としているのか、応募者に伝わりやすくなります。
渋谷 ジョブディスクリプションで、全ての職務内容を伝え切れているかというと、必ずしもそうではないと思うので、気を付けるポイントだと思います。情報発信ということでいえば、メルカリには『メルカン』というオウンドメディアがありますが、それで全ての情報を伝え切れるわけではありませんからね。
立花 確かに。DeNAもオウンドメディアの『フルスイング』や『DeNA Engineers’ Blog』などを通じて、開発エピソードや採用方針、マネジメントの考え方などを積極的に発信していますが、実際にエンジニアと話をしていると、思った以上に浸透していないと思うことがあります。面接前から、候補者とこちらの情報の量と深さの認識が揃っていること理想ですが、現実にはなかなか難しいですね。
佐藤 サイバーエージェントでも『FEATUReS』というオウンドメディアを通じて情報発信をしていますが、どうしても直接話せる面接に比重が置かれますよね。とはいえ、限られた時間で必要な情報を漏れなく交換するのは難しい課題です。
立花 そう思います。
佐藤 面接官の技量と言われれば、それまでなんですが、候補者にも歩み寄ってもらいたいというのも本音です。
渋谷 「面接」のようなフォーマルな場でいきなりお会いするより、その前段階で「面談」と称してお話する機会を設けたり、チャットのような軽いコミュニケーションで補ったりするというのもありかもしれないと思っています。
佐藤 そうですね。面接に苦手意識を持っているエンジニアもいますから、情報をやり取りする場が面接だけだと、その人の良さを見落としてしまっている可能性もありますよね。
立花 そういう意味では、エンジニアミートアップやハッカソンのようなイベントを企画して定期的に実施するのは、エンジニアと接点をつくる良い機会かもしれませんね。
エピソードトークに具体性はあるか確認しよう
佐藤 基本的には、今までの話の裏返しになってしまいますが、面接中に交換される情報密度が高い人が採用され、入社後もパフォーマンスを発揮していると思います。たまに面接担当者がエンジニアの場合だと、採用についての話はそっちのけで、技術の話が盛り上がることもありますが、それはそれで、その人のキャラクターや考えを知る良い機会だと思っています。
立花 以前、採用したエンジニアのなかで、専門性の高さはもちろん、自走力があって、社内外への情報発信力が物凄く高い人がいました。その方の面接を振り返ると、エピソードが具体的で、かつ、なぜそのとき、その決断を下したのかが、よく理解できる内容でした。もちろん意図して話してくれたのだと思いますが、採用後に活躍するエンジニアは、入社後のイメージを刺激するような話をしてくれる印象がありますね。
渋谷 同感です。メルカリでは最近、十分に体制が整っているように思われることがよくあります。実際には、まだまだ発展途上なので、自分からどんどん積極的に仕事の領域を広げていけるエンジニアが必要です。そういう人は、成功したエピソードも失敗したエピソードからもある程度うかがい知れるので、具体性のある話ができる人の方が、活躍している印象があるのは確かです。
佐藤 話し方が上手いか下手かという表面的な話ではなく、自分の考えや素の自分を出せる人の方がいいってことかもしれませんね。お互いに会社のカルチャーに合うかどうかを判断できるくらいのやり取りができれば、ミスマッチは大きく減るでしょうし、結果的にそういう人が活躍しているというのは頷ける話です。
渋谷 少しおこがましい言い方になってしまうかもしれませんが、エンジニアにとって売り手市場の今だからこそ、自身のキャリアについて今一度しっかり考えるべきだと思います。例えば、次の転職で高いところまでジャンプする必要があるのか、それとも一度しゃがみ込んで力を蓄えるべきときなのか、しっかり考えた上で動けば、後悔の無いキャリアを選択できるかと思います。
佐藤 選考に受かるために本音を隠したり、ウソをついたりしても、結局は長続きしません。やはり「これをやりたい」、「あれは苦手です」という話も含めて、率直に話した方がお互いのためになるのではないでしょうか。あえて、自分に合わないところで働く必要があるほど、仕事がない状況でもありません。率直に話してくださったら、仮に今回はダメでも別の機会に声を掛けるという選択が取れるかもしれません。腹の探り合いに時間を費やすよりも、お互い正直に語り合った方が、面接の中でも交換される情報量が増えるので、候補者にとってもメリットは大きいと思います。
立花 佐藤さんが仰ったように、率直さや正直さは重要なポイントになると思います。今は選択肢が多いだけに、何を基準に選べばいいのか分からなくなっている方がいるかもしれません。会社を選ぶポイントは人それぞれで構わないのですが、大事なのは、その仕事が「楽しいと感じられるか」、もう一つは、過去、周囲や会社が評価してくれたような「自分なりの強みが発揮できるか」を基準にすると、転職の成功率も上がるのではないでしょうか。
取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴
【DeNA・メルカリ・サイバーエージェント人事座談会連載の一覧】
・第1回 採用強者3社も獲得に苦戦!?人事が明かす「今すぐ欲しい」エンジニアの実態【メルカリ×DeNA×サイバーエージェント座談会】
・第2回 DeNA×メルカリ×サイバーエージェント人事担当が面接で必ずする質問とは?「技術力だけアピールしても内定は出ない」
・第3回 DeNA・メルカリ・CA人事が証言! スキルはあるのに“面接で落ちる”エンジニアに足りないもの
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