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オンライン会議「要件だけ」で終わらせてない?コロナ禍のリモート開発チームのマネジメントに“ザッソウ時間”が必要なワケ【倉貫義人】

スキル

    新型コロナウイルス感染拡大を受け、急遽リモートワークで開発を行うことになったエンジニアリングチームも多いだろう。

    通勤時間の削減などで仕事の効率化も狙えるが、チーム内でのコミュニケーション不足など、新たな問題も浮上している。特に、このコロナ禍では「孤立するメンバーをどうケアするか」に頭を抱えているマネジャーも少なくないはずだ。

    そこで今回も、前回の記事に引き続き、10年前からリモートワークを導入し、2016年からは全社員フルリモートを実現しているソフトウエア開発会社、ソニックガーデン代表取締役の倉貫義人さんに、リモート下でもエンジニアリングチームの「心理的安全性」を高めるにはどうすればいいかを教えてもらった。

    >>前回の記事:【ソニックガーデン倉貫義人】リモートワーク暦10年のエンジニア経営者が実践する“生産性を落とさない”働き方

    株式会社ソニックガーデン 代表取締役 倉貫義人さん

    株式会社ソニックガーデン
    代表取締役 倉貫義人さん(@kuranuki)

    1974年京都生まれ。99年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。05年に社内SNS『SKIP』の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。09年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。11年にTISからのMBOを行い、ソニックガーデンを創業。同社では「納品のない受託開発」を掲げ、アジャイル開発を原点としたサービス開発・コンサルティングなどを手掛ける。全社員リモートワーク、管理のない会社経営を目指し、「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。著書に『リモートチームでうまくいく』(日本実業出版社)『管理ゼロで成果は上がる』(技術評論社)、『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)他

    コロナ禍では特に“雑談”の重要度が増している

    ーー現在は、通常のリモートワークとは違い、「時々出社して同僚と会う」ということすらしづらい状況です。在宅ワーク期間が長引くにつれて、自宅で一人で働き続けることに孤独を感じる人がますます増えてくると思いますが、そんな中でマネジャーが気を付けるべきことは何でしょうか?

    僕は全社員リモートワークの会社を経営しているため、さまざまな社員がリモートワークに慣れるまでの様子を見てきました。

    その中で、一定のエンジニアは初めの頃は「仕事に集中できる」「会議も最小限に減って、割り込み作業もないから最高!」と喜んでいるのですが、そう言っていた人たちほど2週間経ったくらいで「リモートワークはさみしい」って言い出すんですよね。

    これはもう、コロナ禍に限らず、僕の中ではあるあるです。

    エンジニアの場合は一人でできる仕事も多いので、作業に没頭し過ぎてしまうと会話はおろか、チャットでのコミュニケーションすら疎かになってしまう人もいます。

    だから、最初に「この人は大丈夫だろう」と思っていた人であっても油断は禁物。メンバーのわずかな変化を読み取るための仕組みをつくってしまった方がいいでしょう。

    ーーその仕組みは、どうすればつくれるのでしょうか?

    フルリモートワークをする上で大切なのは、オフィスにいたときに偶然生まれていたような会話を、意図的に生み出すことです。

    オフィスに出勤していたときは気付かなかったかもしれませんが、ランチの時間に何気なく同僚としゃべったり、向かいの席の先輩にちょっと相談したりする雑談や相談の時間があって、実はそれが意外と大事なものだったんですよね。

    そういった時間を再現するためにも、朝会や会議の時に「雑談・相談タイム」を設ける、オンライン飲み会やランチを設定するなどして、意識的にメンバーが同僚や上司と雑談・相談できる「ザッソウ」の時間を増やしてみてください。

    ザッソウによるチームビルディングについては、書籍でも紹介していますのでこちらもぜひ参考に。

    >>ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談」(日本能率協会マネジメントセンター)

    新人には「テレビ会議つなぎっぱなし」もアリ

    ーーオンライン会議などを開催しても、そういう場では要件だけにフォーカスしがちですよね。雑談も意識しないと生まれない。

    その通りです。あと、場合によってはテレビ会議をつなぎっぱなしにするのもいいと思いますよ。特に、経験や入社歴の浅い新人エンジニアに対しては、それくらいのことをしてあげてもいいかもしれない。

    他の社員との関係性が確立されていない中でのリモートワークでは、困ったことが起きたときに、上司や先輩に気軽に相談ができませんからね。

    ーー今の時期は、新入社員をオンラインで育成するのに悩んでいるマネジャーも多そうです。

    ソニックガーデンにも今年の4月に新入社員が入ってきて、入社早々リモートワークに取り組んでいますよ。

    弊社では、新入社員1人につきメンターを1人付けて、就業時間中はメンターとテレビ会議を、ある程度の時間つなぎっぱなしにしています。

    ーーそれはそれで緊張してしまいそうですが、それがストレスにならないように工夫していることは?

    会話する必要のないときは、音声をミュートにしておき、困ったことがあれば音声をオンにして、「いつでも話し掛けられる状態」にだけしているんです。

    オフィスに出勤しているときと同じく、ずっと話したりはしていないけど、近くの席で働いている感覚と近いですよね。

    テレビ会議をつなぎっぱなしにすることに対して、プライベートを侵略されるような抵抗感を抱く人も中にはいるようですが、在宅勤務であっても勤務中ですから、そこは割り切りが必要ですね。やっているうちにだんだん慣れてくると思いますよ。

    ーーちなみに、作業に集中しているときに、話し掛けられるといやだというエンジニアの方はいませんか?

    もちろん、そういうこともあると思います。でも、それはオフィスにいるときだって一緒。マネジャーが、いつでも後輩や部下の相談に対応できるとは限りません。

    かといって、新人からすれば「今はダメ」と断られたら傷付いてしまったり、次に声を掛けるのをためらってしまったりする。

    そういうときのために、ソニックガーデンでは「話し掛けられたときに、断ってもいい」というルールをつくって全員に共有しています。

    「声を掛けられても、断っていい = 断ったからといって、その人を否定しているわけではない」という共通認識を定めておけば、断る側も、断られる側も気を使わずに済みますから。

    趣味や在宅Tipsの共有も効果的
    マネジャーの“オープンマインド”がカギに

    ーーなるほど。そういう取り決めがあるだけで、日々のちょっとしたストレスが減りそうです。

    そもそも、「今相談してもいいですか」と気軽に声を掛けられるか、「ごめん、今は厳しいので後でね」と答えられるか、といったことは、チームの“心理的安全性”に大きく左右されます。

    メンバーが安心して自分の意見を言い、不安や恐怖心を覚えることなく伸び伸びと働けるチームは、いわゆる「心理的安全性が高いチーム」といえますね。

    もしリモートワークに移行する前から、メンバー側から声が上がりにくく、コミュニケーションの希薄な「心理的安全性の低いチーム」だったのだとしたら、リモートワークの状況下ではなおさらコミュニケーションは難しくなってくるでしょう。

    ーーもともとコミュニケーションが希薄なチームだった場合、どうすれば?

    繰り返しにはなりますが、やっぱり「ザッソウ時間」が大事です。

    直接顔を合わせるわけではないからこそ、今からでも意識してコミュニケーションを増やす工夫が必要だと思います。その一つとしてソニックガーデンで行っているのは「朝会」です。

    すでにアジャイル開発で行っている人もいるでしょう。そのときに、業務の報告だけではなく、今日あったことや今ハマっていることなど、業務に関係のない雑談をする時間を確保してみてください。

    上司や先輩が率先してオープンマインドになり、チームメンバーの前で積極的に雑談や相談をするようになれば、若手メンバーも心を開いて話をしやすくなるはず。

    こうして同じ時間を共有し、コミュニケーションを重ねることで、徐々にチームの心理的安全性が高まっていくと思いますよ。

    ーーなるほど。部下の立場からすると、先輩や上司に気軽に雑談を持ち掛けられないということもあると思うので、そこはマネジャーから働き掛けたいところですよね。

    ええ、そう思います。あとは、チャットツールの中に「雑談部屋」を設けておき、「在宅勤務におすすめのイスとデスクは?」とか、「運動不足解消のためにランニングをしよう」といったトピックを立てておくのもいいでしょう。

    うちの会社には「ランニング部」があり、ランニングアプリでそれぞれの走行距離を競ったりしています。こういう何気ない会話の積み重ねが、今のような状況下では特に大事だと感じますね。

    皆さんもぜひ、今日から「ザッソウ時間」を意識してみてください。

    取材・文/石川香苗子 写真提供/株式会社ソニックガーデン

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