本連載では、圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
苦手なプレゼンを克服したいエンジニアへ。“正しいこと”を話すより大切なこととは?【連載:澤円】
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」 』(プレジデント社) Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
皆さんこんにちは、澤です。
今回は、澤の原点ともいうべき「プレゼンテーション」をテーマにお届けします。
先日、伊藤羊一さんとの共著で『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」 』(プレジデント社)という書籍を出版しました。
この本は、「プレゼン」と銘打っていますが、実際には「話し方」や「スライドの作り方」という実践的な内容はほとんどなく、考え方やマインドセット、そして「生き様」がテーマになっています。
ポンコツエンジニアだったからこそ磨けた、プレゼンテーションスキル
ボクのキャリアの基盤はエンジニアです。1993年に社会人になり、生命保険会社のIT子会社でCOBOLのプログラマーをしていました。
しかし、COBOLのプログラマーとしての腕前は本当にポンコツそのもので、とてもエンジニアと名乗れるレベルだったとは思っていません。なんでこんな向いてない仕事してるんだっけ? と毎日もがいていました。
そんな時、1995年にWindows95がリリースされ、インターネット時代が本格的に幕を開けました。
これはすなわち、全世界のエンジニアが一斉にスタートラインを引き直された状態であり、「一家に一台パソコン」という、未だかつてない大規模なテクノロジーショックが発生しました。
一般ユーザーからベテランエンジニアまで、あらゆるレイヤーの方が全員「インターネット初心者」になるという、前代未聞の事態になったのです。
その時、ボクはローンを組んで高いパソコンを購入し、家でネットサーフィンをしまくりました。ものすごく楽しかったですし、同時に「パソコンやインターネットの面白さをいろんな人に教えたい」と思いました。
また、ITに全く関わっていない友人もパソコンを購入し、設定などに行き詰まってはボクに電話をかけてきました。悪態を付きながらサポートをしていたのも、懐かしい思い出です。
ということで、いろんな人に「説明する」という行動をしていくうちに、ある事に気が付きました。
どうやら、ボクの説明は多くの人にとって分かりやすかったのです。
というのも、ボク自身があまりにもポンコツエンジニアなので、自分が分かるようになるために、あれこれ分解して考える癖が付いていたからです。ポンコツな自分に向けてひたすら続けていた言語化が、大いなる汎用性を持っていたのです。
そうすると、次々に「説明してほしい」という依頼が来るようになり、チーム内から部門内、あるいは顧客に向けてのプレゼンテーションの機会が増えていきました。
これが、今のボクのキャリアの基礎となっていったのでです。
その後、転職をしてITコンサルタントやプリセールスエンジニアを経験したわけですが、一貫してボクを助けてくれたのはプレゼンテーションのスキルでした。
「相手が喜んで持って帰るものは何か」を考える
エンジニアとしての能力は相変わらず低いままでしたが、説明能力の高さは十分な武器になりました。
ボクレベルのポンコツエンジニアはそうそういないと思います。しかし、どんなレベルのエンジニアであっても、フロントエンドやインフラなど、あらゆるテクノロジー領域のエンジニアにとっても、プレゼンテーションスキルは大いなる武器になり得ます。
絶対に持っておいて損のない、超汎用的スキルであり、もはや必須スキルと言ってもいいでしょう。
その一方で、最も苦手意識を持たれやすいのもプレゼンテーションだったりします。というのも、これは全人類にとって共通の課題なんですよね。
アメリカの恐怖症ランキング(こんなランキングがあるんですね!)では、高所恐怖症を抑えて堂々の一位が「パブリックスピーキング恐怖症」だそうです。パブリックスピーキング、つまり人前で話すのが怖いってことです。
アメリカ人って、皆さん話すのが得意そうな印象がありますけれど、そんなことはないんですよね。
裏を返せば、少しでも得意になるだけで大きなアドバンテージが得られるのもプレゼンテーションであると言えます。なので、磨いておかない手はありません。
その時に一番気にしなくちゃいけないことは何でしょうか。
立ち方? 話し方? 身振り手振り? スライドの作り方? 確かに、どれも磨けば加点されます。しかし、その効果は限定的です。
一番大事なのは「相手が喜んで持って帰るものは何か」を考えることです。
これは「相手が聞きたいことが何か」というのと似ていますが、ちょっと違います。そもそも、相手が「聞きたい」と思っているものを出すことは、平均的な満足度を得るための安全策にしかなりません。
チェーンの牛丼屋さんやハンバーガー屋さんを例に挙げると、メニューも味も共通化されていて、自分の期待値と合わせやすいのが魅力です。
ただ、驚きはそこにはありませんし、結果的に値段を大きく上げるようなアプローチにはなり得ないビジネスモデルです。
これが、「相手が聞きたいと思っている」ことだけを話すプレゼンです。
期待は裏切らないけれど、期待以上にはなりにくい。こうなってしまうメカニズムは、「正しいことを言わなくてはならない」と思いすぎるマインドセットに由来します。
相手が少しでも真似できるように教えてあげましょう
エンジニアは、正しいことを突き詰めたがる人が多いような印象があります。というのも、正しく設定しない限り、機械やソフトウエアは正しく動かないからです。
ただ、人は機械やソフトウエアとは違います。
言うまでもなく、「正しいことを話すのはダメ」というわけではないのですが、せっかくプレゼンで自分を磨くならもう少し欲張りたいところです。なので、もう少し考えを深めてみましょう。
良いプレゼンテーションの一つの要素は「他の人に言いたくなる」というものです。印象深い数字だったり、インパクトのあるエピソードだったり、驚くような失敗事例だったりします。
そういう話は、つい誰かに言いたくなるもの。なので、そういう話をぜひ織り交ぜてみてください。
ノンテクの人たちにとっては、エンジニアは魔法使いのように見えたりします。その魔法の一部を、少しでも真似できるように教えてあげるだけでも、とても喜ばれます。
たとえば、「PowerPointでプレゼンをしているときにBキーを押すと画面は真っ黒になり、Wキーを押すと真っ白になります」なんていうTipsは、非常に喜ばれます。
皆さんが普段使っているショートカットキーをちょこっと教えてあげるだけでも、「この人分かりやすい!」という印象を持ってもらえます。
プレゼンテーションは、奥が深いですが腕を磨く価値が十分にあります。ぜひ皆さんの持っている魔法を、ちょっと分けてあげてくださいね。
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