売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
自分の“コアスキル”生かす職場選びとは?DMM.com人事とエンジニアが明かす「ミスマッチのない転職」を実現する方法
規模もジャンルも関係なく、「領域とわず、なんでもやる」というDMM.comは、40を超える多種多様な事業を展開している。
同社CTO室の事業支援チームで働く菅原史法さんは、2019年9月にDMM.comに入社。過去には、自身が立ち上げた会社の経営や、スタートアップでの新規事業立ち上げなどを経験している。
そんな菅原さんが「とても面白い」と目を輝かせる現在の仕事へと転職を叶えられたのはなぜか? 菅原さんと、菅原さんの採用に携わった人事担当の本郷美歩さんに話を聞いた。
(1)新規事業のグロースに役立つ豊富な経験やスキルを持っていた
(2)仮定の課題に対して瞬時に詳細な説明で答えてくれて、課題解決能力の高さを感じた
(3)人柄がとても良く、職種に関係なくさまざまな立場の人と協業できそうだと思った
新規事業の企画ができる会社に的を絞り、転職活動を開始
菅原:CTO室の事業支援チームに所属し、新規事業の立ち上げや、M&Aでジョインした会社のグロースをお手伝いをすることが主な業務です。例えば、DMM.comにジョインした企業がスムーズに規模を拡大できるように、今までスプレッドシートで運用していた業務のシステム化を提案したりしています。
菅原:動画メディアを扱うスタートアップでサービス開発をしていて、AndroidやiOSのアプリ開発、フロントエンドからバックエンドまで幅広く携わっていました。
エンジニアとして手を動かす一方で、社長の描くイメージをサービスの形に具体化する役割も担っていました。例えば、「バリューチェーンのどこをシステム化すればやりたいことに一番近づくのか」を考えるために、会話をビジュアル化しながら議論を進めたりしていましたね。
前職で働く中で、自分は抽象と具体を行ったり来たりしながら、サービスを形にしていくような仕事に向いていると気付くことができました。
それで、エンジニアとして技術を追求するよりも、自分の得意なことをより生かせる職場で働きたいと考えるようになり、転職活動を始めたんです。
菅原:はい。実は過去に自分でスタートアップを立ち上げたことがあり、混沌としている中で物事を進めるのは楽しいと感じていたことも大きいです。
それに、今までいろんな技術を触ってきて、ある程度出来上がったものを大きくしていくフェーズよりも、ゼロイチで事業をつくるフェーズの仕事をする方が自分の経験を生かせるのではと思いました。
そこで、新規事業開発ができそうな事業会社とベンチャー企業を両方受けてみようと思い、転職エージェントに相談したところ、DMM.comを紹介してもらったというわけです。
その時から、ぜひDMM.comで働きたいと思うようになったのですが、特に魅力だと感じたのは、スタートアップとは比べ物にならないくらいの豊かな資金力でした。
どんどん新規サービスを立ち上げていけそうだと思ったことや、仮説検証しながら事業を成長させていけそうだと感じて、すごくワクワクしましたね。
入社後の「適切なポジション」はどこか、面接の中でクリアに
菅原:これといった対策はしていませんでした。なので、正直不安はありましたね。
最終的にはこうして採用いただいて、CTO室に配属されることになるのですが、実は最初はiOSエンジニアとしてDMMに応募したんです。
転職エージェントのキャリアアドバイザーの方に、何の職種で応募すべきか相談したら「とりあえず、iOSエンジニアでいいと思います」と言われたので、素直に従ったんですよ。
ところが、当社の一次面接で言われた言葉は、「あなたはiOSエンジニアではないですね」でした(笑)。言われてみればその通りで、iOSは自分の過去の経験上、「守備範囲」には含まれていますが、コアスキルはもっと別の、新規事業開発のスキルだったんだなと。
面接中の会話でそのズレに気付きましたし、それを瞬時に見抜かれたことにも驚きました。
本郷:当社では候補者が「応募職種の要件に合うか」も確認するとともに、職種関係なく今までどんなことを経験してきた方なのかをフラットに見るようにしているんです。
候補者の方の希望はもちろん重視した上でですが、他の可能性があるかどうかも同時に考えるようにしています。
本郷:菅原の面接の際にも、「この人が最も能力を発揮できる適切なポジションはどこなのか」を会話の中で見つけていこうというスタンスで臨んでいました。
菅原:お互いの認識を擦り合わせながら適切なポジションを考えてもらえたのは、当時の僕にとってはすごくありがたかったです。
菅原:一次面接の面接官はCTO室のメンバーで、「こんな課題があったと仮定したら、菅原さんならどう解決しますか?」と聞かれました。
「自分ならこんなアーキテクチャを使います。こういう障害ポイントが発生したら、このあたりをこうすれば~」という感じで、その場で考えた答えを話しました。
本郷:CTO室の面接では、どこまでシステムやITサービスの知見のある方なのかを見極めるために、よくクラス図を描いてもらっています。菅原はかなり詳細に説明してくれたので、知識の広さと深さが素晴らしいなと思いましたね。
本郷:そうかもしれないですね。あまり面接対策ができるようなものではないと思います。
そうですね、あえて言うなら、何が自分の強みで、それを当社でどう生かしていきたいのかについては、明確なイメージを事前に持っておいて、面接でお話しいただけるといいと思います。
菅原:私も先ほど面接対策は何もしていなかったと言いましたが、求人票を熟読し、自分の今持っているスキルで会社にどう貢献できるかは考えていました。
もともと自分で会社を経営していた経験もあったので、新規事業開発においては自ら課題を見つけて自走できる力が求められるはずだと思い、そこはしっかりアピールしました。
菅原:求人票の情報に加えて、当社のHPに掲載されている「DMM Tech Vision」をよく見ていましたね。そこでDMM.comのエンジニア組織の方向性と、自分の成長したい方向性が一致すると確認できたので、「面接で意気投合したらここに行こう」としっかり腹決めできました。
採用の“最後の決め手”は「めっちゃいい人」だったこと
本郷:CTO室はポジションが大きく二つに分かれています。一つは既存のシステムをグロースさせるポジション。もう一つは、新規事業の立ち上げを技術面で支援していくポジションです。菅原はずっと新規事業をやってきた人なので、後者のポジションに求める経験については十分だと判断しました。
そして、どの職種にも共通して求められる「課題解決力」を高い水準で持っていると感じられたことも大きかったです。課題に気付くのも大事ですし、気付いたことをどう解決するのかまでをちゃんと考えられる。そして実際に解決してきた経験もあったので、その点申し分ありませんでした。
本郷:これは面接官全員の意見が一致したのですが、「めっちゃいい人だな」というところですね(笑)
菅原:ありがとうございます。うれしいですね(笑)
本郷:ええ。人柄の良さが強みとなって、エンジニアともビジネスサイドとも分け隔てなくコミュニケーションを取れる方だなと思いました。
当社にM&Aでジョインするスタートアップは5~20名ほどの規模の会社が多いのですが、みんなでワイワイガヤガヤ話し合いながら事業を育てていく雰囲気にもすんなりフィットするイメージが湧いたんです。
菅原:応募から2週間ぐらいですね。面接はたったの2回。早過ぎて「本当に大丈夫?」と思ったくらいです(笑)。大企業なのに、こんなに短時間で決まるなんてすごいなと思って。
本郷:それぐらい当社のカルチャーにフィットしたということです! 内定承諾のお返事もかなり早かったですよね。内定の連絡をした次の日の朝に返事がきました(笑)
菅原:面接でCTO室の方々とお話ししたのがすごく楽しかったので、「ここで働きたい」という気持ちは応募した時よりさらに高まっていました。
最終面接で、当社CTOの松本が新規事業の立ち上げやグロースに対して熱意を持って語っていたところも非常に共感できたので、入社は即決でした。
「技術を追求する」より大事な「事業を伸ばす」視点
菅原:想像していた通り、すごく面白いです。今までと違って相談相手もたくさんいますし、新規事業の立ち上げに強い人たちと一緒に働けるのは楽しいですね。裁量も大きくて、こんなに任せてもらえていいの? と思いながらやっています(笑)
菅原:課題解決力ですね。どんなに良いアイデアがあっても、実現できなければ意味はないので。企画を実現させるために視座を上げて考え抜く力が付くと思います。
ただ、DMMは大きい会社だからこそ、自分の力不足にもどかしさを感じているのも事実です。
日々新たな課題が出てきますが、成長できる環境で働いている証拠だと思うので、前向きに受け止めています。
本郷:当社では“本気の失敗”を肯定する文化が根付いているので、さまざまな分野に失敗を恐れることなく挑戦できるのは大きな魅力だと思います。
しかも当社の場合、普通のベンチャーでは信じられないぐらいの売り上げインパクトを出すことができる。エンジニアの方のキャリア形成の観点からも、魅力的なポイントだと捉えています。
本郷:そう思います。ただ、エンジニアの方にお伝えしたいのは、当社はあくまで事業会社なので、「事業を伸ばしていくためにはどんなスキルが必要か?」「どうすれば事業を伸ばしていけるのか?」といった視点が重視されるということです。
事業会社に行きたいと考えているエンジニアの方の中には、扱う技術に関心を持っている方も少なくないと思うのですが、カルチャーフィットの観点から言うと、「自分の技術スキルの向上が最優先」という方はあまり当社には向いていないかもしれません。
会社そのものの価値観や方向性を知ることも大事にしながら転職先を探してみると、良い職場に出会えるのではないかと思います。
取材・文/一本麻衣 撮影/赤松洋太 編集/川松敬規
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