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「まだまだマイノリティ」な女性ITエンジニアが理想のキャリアを手にするには? 【Code Polaris(大平かづみ、ちょまど、松井菜穂子)/ECDWレポート】

働き方

IT エンジニアは、いまだに男女比率の偏りが顕著な職種。ロールモデルや気軽に相談できる同性がおらず、先々のキャリアに不安を感じている女性エンジニアも少なくないだろう。

そこで今回は、4月13日~17日にわたってエンジニアtypeが開催したオンラインカンファレンス『ENGINEERキャリアデザインウィーク』(ECDW)から、女性 IT エンジニア限定コミュニティー『Code Polaris』の代表・大平かづみさんと、コアメンバーである千代田まどか(ちょまど)さん、松井菜穂子さんの3人が登壇したセッションの模様を紹介する。

「Code Polaris座談会~女性エンジニアの悩みを語り合おう」と題したこのセッションでは、登壇者3人の実体験を交えつつ、女性エンジニアが理想のキャリアを築くためのヒントを探った。

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Code Polaris代表 大平かづみさん

フリーランスエンジニア。SIerに組込エンジニアとして新卒入社したのち、その後はウェブ、クラウドの世界へ。数度の転職を経て、2019年に独立。マイクロソフト社が優れた技術者を表彰する「Microsoft MVP for Microsoft Azure」の受賞実績を持つ
Twitter:@dz_

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千代田まどか(ちょまど)さん

ITエンジニア兼漫画家。大手外資系IT企業のインターナショナルチームでCloud Developer Advocateとして勤務。漫画家としての活動は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)や内閣サイバーセキュリティセンター『みんなで叶えるためのサイバーセキュリティパンフレット』の漫画部分など。ツイッターではインフルエンサーとしても活躍し、フォロワーは8万人を超える
Twitter:@chomado
ブログ:千代田まどか (ちょまど) のブログ『ちょまど帳』

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松井菜穂子さん

新卒でITコンサル系企業にエンジニアとして入社。その後、複数の企業でエンジニアリングに従事したのち独立し、Web制作を受託。2018年5月にZOZOテクノロジーズに入社してからは、フロントエンドをメインに活躍する。現在はkulala Inc. CTO
Twitter:@nahokomatsui

女性エンジニア限定コミュニティー『Code Polaris』とは

セッションのレポートに入る前に、女性 IT エンジニアコミュニティー『Code Polaris(コードポラリス)』について紹介したい。

『Code Polaris』は、女性 IT エンジニアが安心して学び、つながりを作れるコミュニティーとして、2020年に創設された。

「IT業界において、女性はまだまだマイノリティー。男性と比べて体力・体調面の悩みは大きいですし、女性であるがゆえの職場でのトラブルなどもあり、抱える負担が大きい。女性限定という安心できる環境をつくりたかったのです」(大平さん)

使用するプログラミング言語などの制約はなく、参加条件は「IT業界に興味のある/務める女性である」ということのみ。参加費は無料で、現役女性 IT エンジニアはもちろんのこと、IT エンジニアを目指す学生や、育児などで休職中の女性の参加も多いという。主にSlackでの情報交換や、オンラインでのミートアップなどが行われている。

Code Polaris座談会~女性エンジニアの悩みを語り合おう

ロールモデルが必要なら社外にも目を向けて

では、ここからセッションの内容をレポートしていく。

ひとつめのテーマは、エンジニア職には女性が少なく、ロールモデルがいないと言われるが、そもそもロールモデルは必要なのか。

数度の転職を経て、2019年からはフリーランスのエンジニアとして活動する大平さんは、自身の経験に照らして、「必ずしもロールモデルが必要ということはない」という。

「私の場合、自由に技術を追求した結果として今があると思っています。ロールモデルがいないからといって、先に進めないと不安に感じる必要はありません。とはいえ、ロールモデルがほしいのであれば、自分の周りだけでなく社外のコミュニティーにまで目を向けると、良い出会いがあるのではないでしょうか」(大平さん)

対して、IT エンジニア兼漫画家というユニークなキャリアを歩むちょまどさんは、「ロールモデルはいないよりはいた方がいい」と主張した。

「私は、ゲームをするときにも事前にプレイ動画や攻略本をひと通りチェックしてから始めるタイプ。その方が安心感があるし、スムーズに楽しめるので。それと同じで、キャリアのロールモデルもいるに越したことはないでしょう。私自身も、誰かのロールモデルになれたらいいと思っています」(ちょまどさん)

Code Polaris座談会~女性エンジニアの悩みを語り合おう

確たるロールモデルが見つからないのなら、必ずしも一人の人にすべてを求める必要はない。そうアドバイスするのは、ベンチャー企業でCTOを務める松井さんだ。

「ロールとひとことで言っても、さまざまな視点があります。『この人みたいになりたい』と思える人がいなかったとしても、いろいろな人からエッセンスを取り入れることはできますよね」(松井さん)

転職はトライアンドエラー。理想に近づくにはアウトプットが必要

続いてのテーマは、どうすれば理想の転職を実現できるのか。登壇者3人はいずれも複数回の転職を経験している。彼女たちは何を大切にして、環境を選んできたのか。

松井さんは、そもそも転職は「トライアンドエラーでいい」と語る。

「企業が求めることと自分のやりたいことのマッチングが大事。でも、転職を繰り返してきて思うのは、結局のところ、入ってみなければ分からないことも多いということです。慎重になりすぎず、でも違うと思ったら固執しすぎず、柔軟に探していけば、自ずと道は開けるのではないでしょうか」(松井さん)

ちょまどさんは、新卒で入社した大手SIerをわずか3カ月で退職した過去を持つ。「コードが書きたい」という希望に反して、業務はペーパーワーク中心で、ミスマッチを感じたことが理由だったという。

Code Polaris座談会~女性エンジニアの悩みを語り合おう

「私が会社選びで重視したポイントは二つ。“推せる会社”かどうか、そしてやりたいことができるか環境か。結果、大手企業からスタートアップへ転職しました。スタートアップって本当にスピード感がすごくて、みんなで一丸となって開発に取り組んでいて。毎日たくさんコードが書けるのがすごく楽しかったですね」(ちょまどさん)

ちょまどさんとは対象的に、大平さんは最初に入社した会社に約7年在籍した。そこから転職へと踏み切ったのは「さまざまなチームを転々としていたので、スキルが身に付いている実感がなく、将来への危機感を抱いたから」。だが、理想の環境を手にするまでに要した時間は、決して少なくはなかったようだ。

「最初の会社を退職した後も、何度か転職を重ねました。今はフリーランスになって、だいぶ理想に近づいてきたと感じます。当時と今の違いは、アウトプットの量。主に技術コミュニティーで、LTや記事の執筆などのアウトプットを重ねたことで、たくさんの方とつながり、仕事の機会にも恵まれるようになりました。もし理想とするものがあるのなら、そこに近づけるようにアウトプットをしていくといいのではないでしょうか」(大平さん)

純粋に「エンジニア」として評価される社会へ

セッションの後半では、参加者からの質問に3人が回答した。

同性からの相談が目立つなか、おそらく男性の参加者からの「女性エンジニアへのマネジメントのコツが知りたい」「チームにひとりしかいない女性エンジニアに対し気を使えばいいのか使わない方がいいのか迷ってしまいます」といった質問も。これに対しては、「特別扱いはしないほうが良い」と3人の意見がそろった。

「確かに体調面など女性特有の事柄もありますが、女性だからと気を使わないでほしいですね。性差なく、フラットに接してほしいです」(松井さん)

「チームに女性 IT エンジニアがひとりしかいない、という状況はよくあると思います。そこで何か気を回した方が良いのではと考えるお気持ちも分かりますし、質問さんは良いマネージャーさんなんだなと思います。ただ、パフォーマンスを見る上では、プロの IT エンジニアとしてチームに入っている以上、女性でも男性でも関係無く、フラットに、同じ『エンジニア』として接していただけたら良いと思います」(ちょまどさん)

Code Polaris座談会~女性エンジニアの悩みを語り合おう

「女性だから」というバイアスに苦しめられた経験のある女性エンジニアは少なくないのではないだろうか。このセッション自体「女性」をテーマにしたものではあるが、本来は性差なく、エンジニアの働き方や技術との付き合い方を語り合えることが理想だろう。

「男性・女性」という区別が必要な間は、誰もがその人らしく働き、活躍できる社会は遠い。理想の社会実現のためには、性別や職種、ポジションを問わず、自らの振る舞いを改めていく必要があるだろう。

現状がそうはなっていない理由は、もしかしたら、故意にバイアスを持った人によるものだけではないかもしれない。今回のセッション中も、主題とは関係のない登壇者の容姿に関するコメントが投稿されたが、本来評価されるべきではない部分に注目が集まることは「働き方について語っているのになぜ?」と違和感や不安を生んでしまうものだ。性別や職種、ポジションを問わず、自らの言動や振る舞いを見つめ直し、双方に歩み寄ることで、少しずつ状況は変わっていくに違いない。

大平さんは最後に「この先さらに女性エンジニアが増え、女性専用のコミュニティーがなくとも安心してキャリアを積める社会になれば」と展望を語った。

文/太田冴 編集/秋元祐香里

動画アーカイブ

動画でアーカイブを見ることができます。参加者からのQ&Aなど、セッションの全貌はぜひ動画をご覧ください。

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