採用担当者はどこを見ている?
エンジニア転職「成功の仕様書」売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
採用担当者はどこを見ている?
エンジニア転職「成功の仕様書」売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
『モンスターストライク』でおなじみのミクシィが提供するスマホアプリ『共闘ことばRPG コトダマン』。50音の「文字」を持ったコトダマンというキャラを集め、「ことば」の連鎖をつくることによって敵を倒す、新感覚のゲームだ。ユーザー数を順調に伸ばしており、まもなく配信4周年を迎える。
『コトダマン』開発チームでは、ゲーム開発エンジンにUnityを使用し、スクラム開発を採用している。それによって、ユーザーの声や要望をくみ取り、企画から開発までチーム一丸となって取り組むことができるメリットがあるという。
では、そんな同社の開発チームで必要とされるエンジニアとは、どんなスキル、マインドを持った人なのか。ミクシィ人事担当の卯木源一さん、同社に中途入社したエンジニアの川下拓哉さんに実際の転職・採用事例を聞いた。
採用担当者の卯木さんに聞いた「内定のポイント三つ」
・学生の頃から一貫する強い「Will(意志)」を持っていた
・「Will」を実現するための努力が見えた
・一定領域にとらわれない広い視野を備えていた
――川下さんは、前職でもUnityを使ってゲーム開発をされていたそうですね。
川下:小さいころからのゲーム好きがこうじて、ゲーム開発エンジニアになりました。Unityには学生時代に初めて触れたのですが、その時に「これは将来、必ずゲーム開発のメインになっていくだろう」と感じて。
それまでのゲーム開発は、ゲームごとに一からグラフィックを作り込んだり、プラットフォームごとにプログラミングをし直したりと、かなり膨大な工数が掛かっていたんです。でも、Unityのような汎用性のあるエンジンを使えば、それらが効率化されます。
だから、いずれゲーム業界に広まるだろうと思いましたし、開発スピードが上がれば、ゲームの面白さをとことん突き詰めることができるようになるとも思いました。
それで当時からUnityを用いたゲーム開発をしつつ、就職活動の際にも、Unityや新しい開発エンジンを採用しているところを探した結果、前職に入社することになりました。
――希望通りゲームエンジニアとして、Unityを使って仕事をしていたわけですね。そこからなぜ、ミクシィに転職しようと思ったのですか?
川下:前職で5年ほど同じゲームを開発してきて、もう少し経験を広げたいと思ったのが一つ。それから、コロナ禍で社内のコミュニケーションがあまりとれなくなってしまったのがもう一つの大きな理由です。自分の部屋で一人で黙々とコーディングを続ける毎日にだんだん孤独を感じるようになってしまって……。
そうして転職先を探す中で、ミクシィにいる知り合いのエンジニアから誘われるかたちでカジュアル面談を受けることになりました。
知人に話を聞いてみると、ゲームづくりに対する思いが熱く、一部リモートワークを採用しながらも社員同士で密にコミュニケーションを取っているという話も聞けて、魅力的だと感じました。
卯木:当社は、「友人や家族といった近しい人同士のコミュニケーションを豊かにする」ことを事業の目的としています。ですから、働いている僕ら自身がコミュニケーションを大事にすることは、強く意識しているんです。
特に、『コトダマン』の開発チームでは企画や改善の質・スピードを高めるためにスクラム開発を採用しているところがポイント。
ゲーム開発では珍しいと思うのですが、それによって開発チームが必然的に顔を合わせる機会が増えていますね。
――川下さんが、希望の会社に入社するために転職活動で工夫したことは?
川下:実はミクシィを受ける前に、2社ほど面接を受けていたんです。そこで自分の実力のなさを痛感したんですよね。これまでの業務経験については話せるものの、それ以外のことに関する知識がなかったことに気付いたんです。
「これではダメだ」と思い、言葉としては知っているけれど意味が分かっていなかった技術用語を調べたり、ミクシィの面接までにAWSやGCPなど近年流行していてゲームにも活用できる技術を触ってみたりして、知識の幅を広げました。
また、職務経歴書は単に今までの業務経験、例えば「〇〇ゲームの開発」というだけでなく、Unityでこういうことが得意だとか、Unreal Engineでこういうことができるといったことを具体的に書くことを意識しましたね。
――卯木さんに伺います。川下さんが担うポジションを募集していた当初、どのようなエンジニアを求めていたのでしょうか。
卯木:実は、川下さんにはもともと『コトダマン』ではなく、新規開発部門の募集ポジションの面接でお会いしたんです。
ただ、川下さんの経験面なども考慮し、「まずは『コトダマン』チームで経験を積んでもらい、会社のタイミングと川下さんの意向があったタイミングで新規事業にチャレンジしてほしい」とオファーを出しました。
それを踏まえて、『コトダマン』のエンジニアの募集要件としては、言語化されているものは「Unityでの実務経験」のみで、あとは候補者の方の指向性やポテンシャルを、面接を通して見極めようという方針でした。
ですから、最初にカジュアル面談でお話しして、その後は通常のフローと変わらず3回面接を行いました。
――川下さんの採用の決め手となったポイントは?
卯木:実を言うと、僕個人としてはカジュアル面談でお話しした時から「ビビッ」ときていたんですよね。
僕は面談の際などに、技術力だけでなく、その方の「Will(意志)」を重要視しています。受け身ではなく、やりたいという気持ちがちゃんとあるかどうか、ということです。
その点、川下さんは、学生の頃からゲーム開発をやりたいという強い意志が感じられ、かつそれを原動力として就職先選びや独学をされていたのが非常に好印象でした。
特に、面接で「『コトダマン』をプレーしてどう感じるか」と質問した時に、「マルチプレーで人を集める方法に改善の余地があるし、そこに自分の経験が活かせそうだ」という話をしてくれて。ゲーム好きならではのユーザー視点も踏まえて提案をしてくれたところも良かったですね。
また、ミクシィの組織は縦割りではないため、クライアント側だけ、あるいはサーバー側だけ、などいずれかの開発に集中するのではなく、多角的な視点で開発を行う姿勢が求められます。
川下さんからは、元々サーバー側からクライアント側の開発に転じていましたから、ゲーム開発の全体を見据えられる可能性を感じました。そこも、採用の決め手になったと思います。
――川下さんは「職務経歴書の書き方も意識した」と仰っていました。その点は目に留まりましたか?
卯木:たしかに、他の候補者さんと見比べても充実していて良い内容だったと思います。特に、「具体的に何ができるのか」「なぜこの取り組みをやったのか」といった点が言語化されていたので入社後に活躍してもらえるイメージが湧きやすかったです。
卯木:最近のエンジニア採用は売り手市場で、リファラル採用なども活発だからか、中には「レジュメは最低限で、面接の場でしっかり伝える」という方針の方も多い印象です。
もちろんレジュメの情報量が少ない人の中にも優秀な方はたくさんいますが、レジュメに過去の取り組みを具体的に書かれている方の方が、面接のときに期待値とズレるケースは少ないように思います。
また、充実した書類があればそれをもとに面接で話を深めることができるので、面接時間をお互いに有意義なものにするためにも、職務経歴書には相手に「自分がどういう人で、何ができる人なのか」伝わる情報をまとめておくに越したことはありません。
――川下さんがミクシィに入社して1年ほど経ちますが、実際に入社されてからのお仕事はいかがですか?
川下:現在は、『コトダマン』のクライアント側のエンジニアリングを担当しています。
ゲーム開発では多くの場合、企画部門で決まった仕様にしたがってエンジニアが開発する形が多いですが、『コトダマン』では、例えばバトルの概要だけ企画が上がってきて、それを実現するためにどういう遊び方やUIにしようかと一からスクラムチームで考える体制になっています。
チームには、企画、デザイナー、エンジニアといったさまざまな役割の人たちがいて、それぞれの領域にとどまらず全員で一つのものを作り上げる意識が強くあります。だから、エンジニアの僕も企画を出したり、メンバーと議論しながらより面白いゲームを作ることができる。
企画に費やす時間は増えますが、その分、自分たちが「良い」と思うものを作れることにやりがいを感じます。
それから、入社してからもコロナの影響でリモートワーク中心なのですが、週に1、2回は出社日を設けていて、そのときには会議や雑談をしたり、みんなで『コトダマン』をプレーしたりしているんです。コミュニケーションを大事にする開発環境はまさに理想的で、毎日とても充実していますね。
卯木:川下さんは、ユーザーにもっと面白いゲームを届けるために何をしたらいいか、という企画的な側面から積極的に参加して、まわりの人とコミュニケーションを取りながら進めており、非常にご活躍されている……と『コトダマン』の開発マネジャーからも「裏」が取れています(笑)
――最後に、川下さんの今後の目標を教えてください。
川下:今の『コトダマン』のチームに不満があるわけでは全くないのですが(笑)、いずれは新規プロジェクトの立ち上げに関わってみたいと考えています。そのためには、UnityやUnreal Engineなどの知識や技術力もまだまだなので、それらを勉強していきたいです。
卯木:ミクシィのゲームの新規開発は、サーバー側1人、クライアント側1人といったスモールスタートが多いので、川下さんのように両サイドの開発知識を持っている方は特に貴重です。
そういう意味で、いずれ川下さんには新規タイトルの立ち上げをリードしていただけるような立場になっていただけると期待しています。
取材・文/高田秀樹 撮影/赤松洋太 編集/河西ことみ(編集部)
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