フリーランスエンジニア だむは さん
大学卒業後、2016年に独立系SIerへ新卒入社し、VB.NETやC#での開発経験を積む。その後、18年に社員数2000人規模のSIerへ転職。20年8月にWeb業界に転職し、正社員として働く傍ら、女性エンジニア向け相談支援プラットフォーム『sister』を開発。21年5月にサービスを開始。同年11月、独立。TECH PLAY女子部ではオーガナイザーとして活動中 ■Twitter
※本記事は姉妹媒体『Woman type』の転載です。
エンジニアにとって必要不可欠である「技術力」と、それを磨き続けるための「勉強の継続」。しかし、技術力に「自信がある」と胸を張れるエンジニアは、決して多くないのではないだろうか。
サーバーサイドエンジニア・だむはさんも、かつては自分の技術力の低さに不安を感じていた一人。そんな彼女は現在、女性エンジニア向けの相談支援プラットフォーム『sister』の開発・運営を手掛けながら、フリーランスエンジニアとして活動している。
フリーランスエンジニア だむは さん
大学卒業後、2016年に独立系SIerへ新卒入社し、VB.NETやC#での開発経験を積む。その後、18年に社員数2000人規模のSIerへ転職。20年8月にWeb業界に転職し、正社員として働く傍ら、女性エンジニア向け相談支援プラットフォーム『sister』を開発。21年5月にサービスを開始。同年11月、独立。TECH PLAY女子部ではオーガナイザーとして活動中 ■Twitter
技術力が物を言うフリーランスエンジニアの世界。しかし、「以前感じていたような不安は、もうない」と話すだむはさんの表情は明るい。
彼女はどのように自身の技術力向上に取り組んでいったのか。そして、どのように自分らしいエンジニアライフを見つけていったのだろうか。
――まずは、だむはさんが開発・運営を手掛けている『sister』について教えてください。
『sister』は、仕事の悩みや将来のキャリアに対する不安を抱えている女性エンジニアと、相談相手となる「IT業界で働く女性」をつなぐプラットフォームです。
IT業界は、まだ女性比率の低い世界です。職場に同性がいない、という女性エンジニアも少なくありません。ささいなことから大きな悩みまで、気軽に相談できる相手がほしい。そんな、私自身も抱えていた課題を解消するサービスをつくりたいと思い、生まれたのが『sister』です。
『sister』は、サービス利用者も、「シスター」と呼ばれる相談相手も女性。オンラインでの1on1で、直接悩みの相談ができる仕組みになっています。
――『sister』には、主にどのような相談が寄せられているんですか?
やっぱり「女性が活躍しやすい企業の見分け方」や「出産後の働き方」など、女性ならではの質問は目立ちますね。また、「エンジニアとしての市場価値を上げる方法は?」「マネジャーとスペシャリスト、どちらに進むべきか?」などの相談も多い印象です。
これらは「女性」固有のものに限った悩みではありませんが、女性の場合、キャリアについて考えるのと同時に、ライフイベントとも向き合う必要が出てくることが多い。だからこそ「同性の方が安心して相談できる」という女性が多いのではないでしょうか。
今、IT業界は深刻な人材不足。この状況を変えていくためには、まだまだマイノリティーである女性を増やしていく必要があります。
『sister』では、一人一人の女性エンジニアが自分らしく働き続けられる環境づくりを通じて、業界の女性比率を上げるためのお手伝いができればと思っているところです。
――『sister』をリリースした当時は、まだ会社員でしたよね。現在はフリーランスとして活動していますが、独立した理由は?
理由は二つあります。
一つ目は、『sister』の開発や運営に本気で取り組みたくなったから。利用者の方からの反響も大きく、もっとこのサービスを成長させていきたいと考えるようになっていったんです。
そしてもう一つは、会社に依存せずに働きたいという思いが強かったから。実は、前職の会社に転職する前から「30歳までに独立しよう」と決めていたんですよ。
――それはなぜでしょう?
新卒で入社した会社の次に転職したSIerで、「ずっと会社で働く」ということに不安を感じるようになったんです。
その会社では、システムの保守チームに配属されました。トラブルもなく安定稼働しているシステムだったので、正直、やることがほとんどなくて……。残業がないどころか、午前中でその日の仕事が終わってしまうほどでした。
無理なく働けて、しかも給与も悪くない。そのまま働き続ける、という選択もできました。
ですが、当時の私はまだ20代前半。本来であればどんどん経験を積んでスキルアップしていく時期のはずなのに、成長している実感が全くないまま時間ばかりが過ぎていく状況に、焦りを感じるようになったのです。
不安が募っていくなかで、ふと「じゃあ私は将来どうなりたいんだろう?」と思って。そこで、自分のキャリアと向き合ってみました。
とはいえ、あまり長期的な目標を描きすぎても、何が起こるか分からない。なので、まずはひとつの区切りとして「30歳までの目標」を考えたんです。その時に立てた目標が、「独立して、自分のサービスで食べていく」ことでした。
当時は、「技術が身に付かないこと」「それによって、今の会社以外では通用しないエンジニアになってしまうこと」が不安で仕方がなかった。なので、まずは会社に依存せずに働ける状態を目指そうと思ったんです。
――30歳までの目標を決めてからは、どう行動していったんですか?
まずは、環境を変えようと思って転職活動を始めました。ただ、なかなか思うように進まなくて途方に暮れましたね。
当時はコロナ禍に突入して間もなくて、採用をストップしている企業もありました。かつ、それまで未経験だったWeb業界に多く応募していたためでもあるでしょう。書類選考だけのも含めると、なんと100社以上の選考に落ちたんです。
――100社も! 想像すると、心が折れてしまいそうです……。
そうですよね。ただ、結局のところ私の技術力が足りないことが最大の要因だったんです。改めて「やっぱり技術力を磨かなきゃ」と奮い立ち、必死に勉強するようになりました。
――具体的には、どうやって勉強を?
勉強って、いざやろうと思っても継続していくことが大変じゃないですか。私、転職活動前にスキルアップのために買ったMacBookを、ほとんど触らないまま3カ月も寝かせてしまったんですよ(笑)。
なので、今度は挫折しない環境を作ろうと思いました。
私は一人で閉じこもってテキストを読んだり課題をこなすよりも、人と一緒に取り組んだ方がやる気が出るタイプ。そこで、エンジニア同士が交流できるコミュニティーに入ったり、イベントプラットフォームの『connpass』で興味のあるイベントにどんどん参加したり、人とつながることから始めました。
何か作業をするときも、みんなで作業時間を共有する「もくもく会」に参加するようにして。とにかくスキルアップに対する意欲の高い人と同じ環境に身を置くようにしたんです。
おかげで、圧倒的なスキルを持つエンジニアをたくさん知りましたし、私と同じようにスキルアップに取り組んでいる人と出会う機会にもなりました。
そして、「仲間がいる」と感じると同時に、全員ライバルなんだ、とも思った。いろいろなエンジニアと触れ合うことで、自分のレベルの低さを痛感しましたが、その分「追い付こう」という必死さも生まれましたね。
――どう学ぶか、の他にも「何を学ぶか」も重要かと思うのですが、だむはさんは主に何を勉強していたんですか?
コミュニティーで得た情報を参考に、RubyやRailsから学び始めました。
転職活動を始めた当時は「Web業界とSIerでは必要とされる技術や知識が違う」ということすら理解できていなかったんですよ。ポートフォリオの作り方さえ分からないくらいだったのですが、コミュニティーのメンバーから「最初はRailsで作るといい」という情報を得る事ができました。
その頃は、プログラミングスクールが初心者に教えるフレームワークもRailsが主流でしたし、参考となるサイトも多く、エラーなどが出ても解決しやすいとされていたんです。
自分一人で情報収集を続けていたら、何を学んだらいいかも判断できなかったかもしれない。そういう意味でも、同じようにスキルアップを目指す人がたくさんいる環境に身をおいてよかったなと思います。
その後、RubyやRails、HTML/CSSの基礎を一通り学んでから、すぐにポートフォリオの設計をして、開発に取り掛かりました。テキストを何冊もこなしたり、復習を繰り返したりするより、実践で学ぼうと思って。要件定義、設計、開発、テスト、リリース……とさまざまな工程を手掛けることで、技術が身についていっている実感が得られました。
――技術力を磨いた結果、Web業界への転職に成功したんですね。
はい。2020年の夏に前職であるWeb系企業への入社が決まって、約1年半働きました。サービスの新規リリースにも携われましたし、良い経験ができましたね。
その後、会社員をしながら『sister』をリリース。転職前に立てた「30歳までの目標」を行動指針に、昨年の11月に独立しました。独立してからは、『sister』の開発や運営以外に、業務委託として女性のためのオンラインプログラミングスクール『Ms.Engineer』の開発チームにもジョインしています。
どちらも「IT業界で活躍する女性を増やしたい」という思いで運営しているサービスです。同じ目的を持つ人たちと一緒に、同じ熱量でつくりたいものをつくれるのは、エンジニアという仕事の醍醐味ですね。
――これから先のキャリアについては、どう考えていますか?
今年で29歳になるので、まずは「自分のサービスで食べていく」という30歳までの目標達成を目指して『sister』をスケールさせていきたいですね。その後のことは、これから考えていこうと思っていますが、今は「また企業で働くのもありかも」と思うんです。
以前は技術力に自信がなかったので、会社に依存しなければ働けなくなってしまうのでは、という不安から「独立」を目標の一つにしていました。
ですが、今では少しずつ自分のスキルに自信が持てるようになってきた。今なら、身を置く環境を自分で選べると思うので、働き方にこだわる必要もないのかな、って。
さらに言うと、今後は技術力はもちろん、それ以外のビジネススキルやサービス思考を養っていきたいと考えています。エンジニアにとって一番大切なのは技術力だとは思うものの、「技術だけ」だと単なる作業者になってしまいます。
技術は、あくまで何かをつくるための手段。大切なのは、何をつくるかです。
今後も良いサービスをつくっていくために、必要な技術やスキルを磨いていきたいですね。
取材・文/古屋 江美子 写真/横倉秀人 編集/秋元 祐香里・柴田捺美(ともに編集部)
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