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駆け出しエンジニアがいきなりフリーランスになるって実際どうなの? 実践者に聞く「案件獲得で困らない」ためのたった二つの方法

働き方

Web漫画『100日後にスマホアプリエンジニアになる営業マン』をTwitterで100日間連載し続けた「ヤマタク」こと山田卓さん。

全く成果が出せずに疲弊していた営業時代を抜け出して、エンジニア、起業家になるまでのストーリーをノンフィクションで描いている。

未経験からスマホアプリエンジニアに転身した山田さんは、駆け出しエンジニアながらいきなりフリーランスとして働き始め、日本初iOSエンジニア専門プログラミングスクール『iOSアカデミア』などを運営するinit株式会社を創業するなど、少し変わった経歴の持ち主だ。

いち早くエンジニアとして成長したいからこそ、フリーランスを選んだ」と話す山田さんに、駆け出しエンジニアがフリーランスとして働くことで得られるメリットや、案件を枯渇させず収入を安定させる方法について聞いた。

プロフィール画像

init株式会社 
代表取締役
山田卓さん

2015年、東北学院大学工学部卒業後、テモナ株式会社の営業部で法人営業を担当。16年よりRepro株式会社のCSチームに1年勤務した後、17年からフリーランスのiOS/Androidエンジニアとしての活動を開始。19年、init株式会社を創業し、日本初のiOSエンジニア専門プログラミングスクール『iOSアカデミア』などを運営する
Twitter:@yamataku_init

駆け出しエンジニアながらフリーランスを選んだ理由

――山田さんが営業職からエンジニアになった理由は?

新卒で入った会社で自社で開発したシステムをクライアントに提案する法人営業をしていましたが、なかなか成果をあげることができず、長らくうだつの上がらない日々を過ごしていました。

ちょうどその時期に、同僚のエンジニアと一緒に仕事をする機会があって。クライアントの要望をふまえてサービス改善を一緒にやっていくうちに、自社システムのことを勉強するのが楽しくなっていきました。

あと純粋に、ものづくりをするのって何だか楽しそうだし、作りたいものを自分で作れるなんてうらやましいな、と思ったんですよ。

そこで、「開発部門に転部したい」と部署異動の希望を出したんです。でも、結果はNO。「こんな営業成績のままで異動なんかさせられない」ということで、却下されてしまいまして。

じゃあ、思い切ってこの会社じゃないところでエンジニアになってみようか。そう考えて、転職することにしました。

でも、完全未経験だったので、いきなりエンジニアとして採用されるのは難しくて。カスタマーサポートエンジニアとして、顧客からの技術的な問い合わせに対応するポジションで働くことになりました。

――そこで経験を積んで約1年後に、フリーランスでエンジニアになっています。なぜいきなりフリーランスに?

前職ではCSエンジニアとして働きながら、iOSアプリ開発の勉強をしていました。それで、個人開発したアプリをリリースするところまでこぎつけることができて。そこから、本格的にエンジニアとしてやっていこうと思って再び転職活動を始めたんです。

でも、最終的には転職ではなく、フリーランスになることを選びました。

その理由は主に二つ。一つは、フリーランスの方が短期間でさまざまなプロジェクトに参画できるため、一つの会社にいるよりもスピーディーに成長できると思ったからです。

会社に入れば研修体制が整っていたり周囲の人が教育してくれたりする良さもあるとは思いますが、私自身は「休日も全部返上して勉強したい、仕事がしたい」と考えていたタイプだったので、好きなだけ勉強して好きなだけ働ける環境の方がいいかな、と。

二つ目は、正社員よりも単価を上げやすい点です。フリーランスで業務委託を受ける場合、高い成果を期待される分、単価も正社員に比べて高くなる傾向にあります。

当時は「がむしゃらに仕事をすれば必ず成果が出せる」と信じていたため、多少のリスクがあることは理解しつつも、未経験からいきなりフリーランスになることを決めました。

要求されるものが高ければ高いほど、自然と成長できるし、報酬もその分上がっていくと思ったんです。

――フリーランスになってからは、どんな仕事をしていましたか?

最初は『CAMPFIRE』というクラウドファンディングを運営している会社でiOS/Androidアプリの開発に携わりました。

当時、iOSエンジニアとしての参画を希望していたのですが、Android側のエンジニア不足で急きょAndroidアプリ開発の勉強もしなくてはならなくなって大変だった記憶があります。

ですが、こういう逆境があると、必要に迫られて成長もできますから、この体験は自分の中ですごく貴重なものとなっています。

その後も、上場企業からスタートアップまでさまざまなアプリ開発案件に参画してきました。マッチングアプリや語学学習アプリ、IoTアプリ、ヘルスケアアプリと、これまでに30以上のアプリ開発プロジェクトに関わっています。

駆け出しでも案件を枯渇させない方法は、至極シンプル

――駆け出しエンジニアでいきなりフリーランスになっても、案件獲得の難易度が高い気がするのですが、いかがでしたか?

中には「実務経験がないと業務委託は難しい」という企業もありましたが、個人でアプリ開発をした話などをすると、「独学する力」や「意欲」を認めてくれて、仕事を発注してくれる企業も多くありました。

また、フリーランスの駆け出しエンジニアが案件獲得をする方法はすごくシンプルで、たった二つの要素を意識するだけ。

一つはひたすら「行動量を多くする」こと。もう一つは、「複数の手法で営業活動をする」ことです。

前提としてフリーランスにおける案件獲得とは、「自分という商品を売り込むための営業活動」だと言えます。

営業活動ならば行動量を多くしなければ成果が出ないのは当然です。なのでまずは、企業へのアポイント獲得のための行動をとにかく多くこなしました。

――営業職としての経験が生かされていますね。

まさにそうですね。また、「複数の手法で営業活動をする」ということについては、「インバウンド営業」と「アウトバウンド営業」の両方を同時並行して行うことがとても重要です。

「インバウンド営業」には、例えば開発案件を受動的に紹介してもらえるSESエージェントへの登録などがあります。

もちろん中間マージンは抜かれてしまいますが、営業工数の大幅な削減もできますし、何より単価交渉もエージェントが代わりに行ってくれるのが魅力です。

「アウトバウンド営業」の場合は、自らが能動的に参画したいプロジェクトや企業へアポイントをとることで、希望する開発案件に参画することができるようになります。

これらの要素を全て満たせれば、案件が枯渇してしまうことはないと思いますね。

――とはいえ、順調なことばかりではなかったと思います。駆け出しエンジニアがフリーランスとしてやっていく上で、厳しさを感じたことは?

やはり、クライアントの高い期待に必ず応えなければいけない点は、フリーランスならではの厳しさだと思います。

言わずもがな、クライアントの期待する成果が出せなければ契約解消になってしまいますし、自分の実力次第で「明日の仕事がない」状態にもなり得ます。

逆に、期待する以上の成果が出せれば当然契約は更新されますし、報酬も上がる。「クライアントの期待にいかに応えるか」を意識しながら仕事をすることは、醍醐味でもあり難しさでもある、という感じですね。

「自分一人が成長しても意味がない」フリーランス→経営者になって変わったこと

――フリーランスとして約2年働いた後、initを創業していますが、起業家になることにした理由は?

フリーランスとして「もう出来ることはある程度やったな」と感じたので、次の挑戦ステージとして起業することにしました。

キャリアにおいて最も重要視しているのが、自分自身の成長なんです。なので、「やったことのないこと」にチャレンジして、できることの幅を広げたかった。目的が明確だったので、あまり悩まずに起業の道を選びました。

ーー経営者になった今、フリーランスのエンジニアをやっていた時に経験しておいてよかったと思うことは?

SES案件を数々経験しておけたことは良かったと思いますね。

さまざまなプロジェクトを経験できるのは、SESならではの良さ。あらゆる現場であらゆる開発手法やプロジェクトリーディングを学べるので、エンジニアとしてキャリアアップする基盤をつくる意味で非常に有効だったと感じています。

――フリーランスと経営者、働き方にはどのような違いがありますか?

起業後はほんとに苦労の連続ですね。フリーランスの頃は、いろいろな案件を経験して、自分自身が成長すればそれだけで市場価値がどんどん上がっていきました。

でも、起業して社員も迎えた今は、自分一人が成長したって何の意味もありません。

法人としての価値を高めていく必要があるため、クライアントだけでなく、社会に対してどのように価値を提供していく存在なのかをより強く意識しないといけなくなりました。

また、フリーランスの頃は開発業務を自分の手でまわしていましたが、今はコーディング業務などはほとんどしていません。

経営者になってからは、事業づくりやプロジェクトマネジメント、技術顧問など、プログラマーとは別のレイヤーの仕事をすることがほとんどです。

――エンジニアとしては、プログラミングができなくなってしまうことに物足りなさやフラストレーションを感じたりしませんか?

起業した当時は特にそう感じましたね。これまでは「自分がコードを書くこと」に対して評価をされてきたわけですから、それを今後一切行わないと決めるのは不安でした。

ですが、これは私に限った話ではなく、数年以上経験のあるエンジニアであれば誰もが感じることだと思います。

良くも悪くもエンジニアは市場価値が高いので、コードを書いているうちは市場価値はほぼ下がりません

ですが、それはあくまで「個人」としての市場価値に過ぎず、ある一定ライン(個人的には年収2000万円前後)を迎えたあたりからは、個人としての市場価値の成長は鈍化していきます。

自分は常に自己成長を求めていたいタイプなので、個人として成長が鈍化してしまうのであれば、多少リスクを負ってでも起業をして、法人としての市場価値をさらに高めていく選択をしました。

必ずしもこの決断が正しかったとは言えませんが、現時点では自分自身でとても納得した上で仕事をすることができています。

――「個人」としてある程度の評価を一定程度キープしていくか、多少リスクを負ってでもできることの範囲を広げてさらなる成長を求めるのかの違い、ということですね。

そうですね。どちらの道が正しい・正しくないという話ではなく、自分の価値観としてどちらをいいと思うか、という感じです。

ただ、この決断は多くのエンジニアにとって大きなキャリアの分岐点であることは間違いないと思います。

自分が仕事に何を望むのかをはっきりさせておくことで、フリーでやっていくにしろ、経営の道に進むにしろ、後悔しない選択ができるはずです。

取材・文/栗原千明(編集部)

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