「未来のCIOがここから生まれる」都政のDX担う東京都デジタルサービス局が民間人材の積極採用を開始
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東京都が今、デジタルの力で生まれ変わろうとしているーー。
2021年、東京都は民間企業出身のエンジニアやPMなど、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用し、デジタルサービス局を設置。デジタルの力を活用した行政を総合的に推進し、都政のQOS(Quality Of Service)を飛躍的に向上させることを狙う。
同局を率いるのは、元ヤフー(現・Zホールディングス)社長で現在、東京都副知事を務める宮坂学さん。デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出し、都民が質の高い生活を送ることができる「スマート東京」の実現に向け、副知事就任(2019年)以来、全力で走り抜いてきた。
また、デジタルサービス局では今年も新たに都政のDXを推進する高度デジタル人材の採用に力を入れる。
そこで、宮坂副知事と、現在デジタルサービス局で働くサービス開発担当部長の荻原聡さん、デジタルシフト推進担当課長の内田康雄さん、亀山鉄生さんの4人に都政のDX推進の現在地と今後のビジョン、デジタルサービス局で働くことで得られるやりがいや成長について聞いた。
ようやくできた「船」に乗組員を増やす
ーー デジタルサービス局ができて1年がたちました。これまでの成果と、現在の課題は何でしょうか?
現在は、都政のDXを本格的に進めていくための「船」がようやくできたところ。でも、船はあるけれどまだまだ乗組員が少ないことが課題です。
例えば、シンガポール政府には約2600人のデジタル専門人材がいます。その他、DXが進んでいる国だと数百人規模のデジタル専門人材が首都の行政機関に集まっていることが多い。でも、都庁はようやく120人くらいですから、この人数をもっと増やしていかなければいけません。
そのために、エンジニアをはじめ、多様なバックグラウンドを持った皆さんにわれわれの仕事に興味を持ってもらって、この船に乗ってもらいたいと思っています。
ーーデジタルサービス局の主な取り組みとは?
宮坂:東京都は現在、5Gを含む最先端のデジタル技術を活用して、都民の皆さんが暮らしやすいまちづくりを目指す「スマート東京」構想のもと、さまざまな取り組みを行っています。
宮坂:「スマート東京」の柱となるのは、「『電波の道』で『つながる東京』(TOKYO Data Highway)」、「公共施設や都民サービスのデジタルシフト(街のDX)」、「行政のデジタルシフト(行政のDX)」の三つです。
一つ目の「TOKYO Data Highway」はその名の通り、いつでもどこでもインターネットにつながる環境を実現するものです。
中でも重視しているのが5G基地局の整備で、民間事業者等との連携をスピーディーにすべく、ワンストップ窓口の設置や手続きの簡略化などを進めてきました。
その結果、5G基地局の数は増え続け、令和4年3月時点で設置完了が149個、進行中が316個となっています。
二つ目の「街のDX」は、分かりやすく言えば、都民サービスのDXです。
既存の行政サービスにデジタルテクノロジーを活用することによって、今までの行政サービスをアップデートし、都民のQOL向上を目指しています。
三つ目の「行政のDX」は、まさに本日この場に集まったメンバーが得意とする分野です。
都庁職員の働き方の道具を古いものからデジタル技術を活用したモダンなものに変え、デジタル空間上の都庁で全ての仕事や行政サービスを提供できるようにする、バーチャル都庁構想を進めています。
都庁は民間企業で言うところのホールディングス(持株会社)のようなもので、東京都という大きなグループの中に各部局がぶら下がる構造になっています。
各部局によって業務内容や課題が大きく異なるため、トップダウン式のDXは広がりづらい。そこで各部局からリクエストを募り、ボトムアップ式でDXを推進しています。
増え続けるDX事例。東京都は「自己改革できる組織」へ
——現在、デジタルサービス局で働くデジタルシフト推進担当課長はどのような体制になっていますか
荻原:デジタルシフト推進担当課長は、六つのチームで構成されていて、具体的には、「プロジェクトマネジメント(各局)」「プロジェクトマネジメント(区市町村)」「人材育成・採用」「エンジニアリング」「UI/UX」「セキュリティ」の6チームです。
前職でつちかった経験などからそれぞれの強みが最も生かせるチームに配属され、各局や区市町村からの支援依頼をもとに都のDXを推し進めていきます。
荻原:チーム制をとっている理由としては、エンジニアなど専門性を持った人たちが自分のスキルをより発揮しやすくなるようにと考えたからです。
デジタルシフト推進担当課長は、いわば“ICTの何でも屋さん”ですから、局を立ち上げた当初は、今日はアプリ設計、明日はデザイン、明後日はオンライン会議環境の整備……というふうに、一人一人が多種多様な業務を日替わりで行っていました。
「一人の人が何でもやる」環境は、さながらスタートアップそのもの。それはそれでやりがいがあったものの、少数精鋭でデジタル人材のパワーをさらに拡大していくためには、適材適所で仕事をして、それぞれの強みをもっと生かせる組織へと変えていく必要がありました。
そこで現在の6チーム制にたどりつき、各部局から依頼されるリクエストをスピーディーに解決する体制を整えました。
——デジタルサービス局ができてから、都庁内にはどのような変化が起きていますか?
荻原:デジタル関連の設備やツールの普及はかなり進みましたね。
例えば、都庁の中で当たり前のように無線LANが使えるようになりました。われわれからすると、これはすごい進歩です(笑)
つい数年前までは、インターネットは必ず有線を使っていて、閲覧できるWebサイトや使えるオンラインツールなども厳しく制限されていましたから。
宮坂:以前は会議の時に誰一人パソコンを持ってこなかったけれど、今ではみんな持ってきますからね。あと、会議室を予約するのも付箋でしたよね(笑)
荻原:そうでしたね。使いたい会議スペースを事前に、何時に使いますという付箋を貼って(笑)。すごくアナログでした。
でも、最近は日常の中で「庁内の空気が変わったな」と感じるタイミングは多いです。
例えば、一般の職員の方にもIT用語が通じるようになってきた。サービスを開発しながら「ユーザーテストをしたい」と言ったら、「何ですか、それは?」と言われた体験もはるか昔のことのようです。
亀山:職員の皆さんに「DXの必要性」をまずは感じてもらうことが第一歩でしたよね。
われわれがITエバンジェリストとなって、庁内でコミュニケーションをとっていくことで少しずつ変わってきたのかな、と思います。
ーー「DXの必要性」ですか?
亀山:はい。民間企業で働いているエンジニアが「会議室に無線LANがない」「オンライン会議ができない」と聞いたら「なんて不便そうなんだ」と感じるかもしれません。
でも、都庁の職員からすると、そんなものは「ないのが当たり前」だから、そこに必要性を感じていないケースも多かった。「なくても困っていない」のに、次から次へと「新しいものを導入しよう」とだけ言われても、みんな乗り気になれないわけです。
そこで大切になるのが、丁寧なコミュニケーション。結論だけを押し付けるのではなく、なぜDXしなければいけないのか、DXが進むと何が変わり、どう良くなるのか……理由と効果をていねいに説明し、まずはトライしてもらう。
そこで「使ってみたら便利だな」と感じてもらえれば、あとはスムーズに物事が進むことが多いですし、「こちらの業務もDXしたい」といった相談にもつながります。
宮坂:成功体験は大切ですよね。「この職場はこういうものだ」と諦めてしまわずに、「自分たちで職場をよりよく変えていこう」と思ってもらえるかどうか。
宮坂:デジタルサービス局は新しい組織なので、都庁の中での信頼貯金はゼロの状態。そこから信頼を集めていき、「あそこに相談すれば、何かしら良い方向に変わるはずだ」と感じてもらえるようになりたい。
そうしてDXの恩恵を職員一人一人に実感してもらい、ゆくゆくは「自分たちでも変えられる」という自信を身に付けてもらう。
つまり、「不便だけど、我慢しよう」じゃなくて、「不便だから変えよう」というマインドを身につけてもらうことこそが、真のDXだと思うんですよね。
亀山:まさにそうです。都庁の職員には優秀な人が多いですから、いざ動き出せば「こういうこともできるのでは」「ここも改善したい」と、次々と要望が上がってきます。大切なのは初めの一歩を踏み出すことなんです。
ーーこれまでに手掛けた仕事で、特に思い出に残っている事例は?
亀山:個人的に印象的だった仕事は、豊洲市場の衛生監視のDX推進です。
食品衛生法が改正され、2021年6月からはHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿った衛生管理が完全義務化されたのですが、それによって有毒魚等の排除をはじめとした従来業務に、HACCPに沿ったプロセスが新たに加わることとなりました。
しかしながらこれまで、豊洲市場の水産物等の衛生監視は紙とペンで行い、事務所に戻ってからデータを入力しているような状況で。「このままではHACCP対応が効率的に行えない。なんとかデジタル化できないか」それが、福祉保健局からの相談でした。
相談を受けた私は、「プロジェクト立ち上げから1週間でリリース」に向けて、他の支援で実績のある、ノーコード/ローコードツール『kintone』で衛生監視アプリを開発。ユーザーテストを繰り返し、アジャイル開発で品質を上げていきました。
ーーそのスピード感はすごいですね。裁量を持って柔軟に開発を進められるんですね。
亀山:はい。あと、驚くべきはその後です。このアプリは、現場の職員によって今も改良が続けられているのです。
亀山:外部ベンダー任せの体制では、ここまでの流れは作れなかったでしょう。デジタルサービス局設置の意義を再認識すると同時に、都庁DXの大きな可能性を感じた出来事でした。
宮坂:このような事例が増えていくにつれて、デジタルサービス局への支援のリクエストがますます増えていて、今では、年間数百に届くようなペースです。
「職場環境は自分たちで変えられる」と職員が思えるようになれば、DXに限らず、今後も時流に合わせてトランスフォーメーション(変革)していけます。それこそが、われわれが目指す「自己改革できる組織」なのです。
「自分たちで決める・つくる」を楽しみながら、東京を変えていく
ーーまだデジタルサービス局の活動は始まったばかり。今必要なのは、どのような素質を持った人ですか?
宮坂:強いて言うなら、立ち上げの混乱期を楽しめる人。何事も自分たちで決めて、つくっていくフェーズですから、未完成であることにワクワクする人が合っているでしょうね。
内田:まさにそうですね。デジタルのスキルや実経験があることは前提として、「自ら課題を設定し、クリアすることを楽しめる方」にとっては大きなやりがいを得られる職場です。
また個人的には、一緒に働いている皆さんのバックグラウンドがばらばらで、さまざまな経験・知見を持った人と仕事ができることでいい刺激をたくさんもらっています。
荻原:各局や区市町村にデジタル化の重要性を伝えるため、ネゴシエーションやプロジェクトマネジメントに強い方が活躍できる環境です。
都庁のDXはまだまだ始まったばかりなので、「最先端の技術に触れることが大事」という人には、あまり向かないかもしれないと思います。
内田:ITに馴染みの薄い職員の方から相談を受けたら、相手の意図を汲み取りながら専門的な知識を分かりやすく伝える。専門人材といえども、営業やプロデューサーに近いスキルも求められます。
こう話すと、地道な仕事が多いのかなと思われそうですが、その仕事の先にあるインパクトは非常に大きい。
デジタルサービス局で働くデジタル人材にとって最大の醍醐味は、「世界都市・東京を自分たちの手で動かしていく貢献者になれる」に尽きると思います。
荻原:どんなに優れた民間サービスだって、東京都すべてに影響を与えることはできませんからね。でも、ここならそれが実現できる。
「東京都のデジタル基盤を自分たちが作り上げた」と語れる経験も、今ここでしか得られないものです。
拡大するCIOマーケット。全国で活躍できる希少な人材へと成長
ーーデジタルサービス局で働くことで、今後どのようなキャリアが開けると思いますか?
宮坂:「行政のDX」は日本中で始まったばかり。これからますますそれが加速することは間違いありません。
日本には自治体が1718あります(2022年7月現在)が、全ての自治体がDXに本腰を入れるようになると、各自治体に一人ずつCIO(Chief Information Officer、最高情報責任者)が必要になる。
つまり、単純計算で1700人規模のCIOが近い未来に求められるようになるわけで、その周辺も含めると巨大な人材マーケットが形成されることが予想されます。
デジタルサービス局で都政のDXに携わった人たちは、全国の地方自治体のCIOとして引く手数多の存在になれると思います。
宮坂:行政DXの難しさは、現行のシステムを止めないまま改良していかなければならないところにあります。これを成し遂げるには、技術に精通しているだけでは不十分。
行政システムへの知識や、対人関係を構築する能力も求められます。それを踏まえると、都庁で働く経験は大きなアドバンテージになるはずです。
今回同席してもらった三人を含め、デジタルシフト推進担当課長には、「爪痕を残そう」と声を掛けています。東京都のDXにというだけでなく、各自のキャリアのアドバンテージにもなるような爪痕を。
いずれは都庁出身のエンジニアが日本各地で行政をDXし、デジタルの力で全国を盛り上げてくれれば、これほどうれしいことはありません。
そのためにもまずは、デジタルサービス局という船に乗り、ともに進路を考えてくれる仲間と一人でも多く出会えたらと考えています。
取材・文/夏野かおる 撮影/竹井俊晴 編集/栗原千明(編集部)
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