NG例
「最近、商談中にどんなことを質問されますか? お、Aさんから『言いたいオーラ』を感じますね。ちょっと話してもらっていいですか? 」
「はい。それはもう、山ほどありますよ。えーっと……。日報には、毎日たくさん書いて提出しているんですが、いざ話すとなると、出てこなくて。すみません」
OK例 「じゃあみんな今から5分間、商談中によく受ける質問を書き出してみてください。そのあと、Aさんから時計回りに順に発表しましょう」
「ダンマリ会議」を活性化するには? 健全な意見の衝突を生み出す会議の始め方&話し方
1週間の予定を見てみたら、会議、会議、会議だらけ……。エンジニアの中には、1日の大半を会議に費やしている人も多いかもしれない。
けれど、会議の場は放っておくと「イマイチ盛り上がらない」「誰も意見を出さない」「誰かが一人でしゃべっている」状況になりがちだ。
不要な会議なら減らせばいいけれど、必要な会議をより有意義な場にするためにできることは何なのか。
「心理的安全性」をキーワードに、会議の良い始め方や、会議参加者の発言を引き出す工夫について心理的安全性を軸にした組織づくりの実践家、原田将嗣さんの著書『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)から一部内容を抜粋して紹介したい。
会議を始めるとき、まずはゴールを示そう
「この会議のゴール(目標)は、ここです」とゴールを共有、確認してから会議を始めることで、参加者全員にとって話しやすい会議になります。
ここで言う「ゴール」とは、会議終了後に、どういう状態になっていたらいいのかを指し、下の表の5タイプがあります。
ゴールの種類として【①共有】【②発散】【③整理】【④意思決定】【⑤プロセス】と、5つ挙げましたが、例えば、週次の報告会議では【①共有】を中心に進められます。
時に何か重大な問題が起きたときは【②発散】で解決策のアイデアが出て、【③整理】で優先順位をつけたり、別部署との連携を検討したりして、【④意思決定】で解決策が承認され、【⑤プロセス】で、誰が何を担当するかに合意するといった、普段と異なるゴールの会議になることがあるでしょう。
例えば、「今日の会議のゴールはメールでも伝えましたが、『【①共有】【②発散】新しい販促方法の検討』と『【③整理】【④意思決定】新商品キャッチフレーズの決定』のふたつです」
このように、今日は【①共有】で各々が報告して状況の共通認識が持てればいいのか、それとも【④意思決定】の何かを決めるための会議なのかなど、ゴールがわかることで、それに応じてメンバーは参加しやすく、その観点から意見を言いやすくなります。
人数があまりに多い場合は難しいかもしれませんが、【①共有】は、メールやチャットで基本的に終わらせ、【②~⑤】に集中する、というチームもあります。
ゴールの共有に加えて、「大切なこと」を確認する
ここまで見た「会議ごとのゴールを確認」に加え、「会議の冒頭で“大切なこと”を確認」するのをオススメします。
「大切なこと」とは、例えば会社全体のミッション(使命・企業理念)やパーパス(目的)、それがあまりに壮大すぎる場合は、部署やチームとして大切にしたいことを確認すると役に立つでしょう。
営業部署なら「営業活動を通じて、お客さまが“仲間”に変わっていく」とか、コンプライアンス部署なら「法を守るだけでなく、“いい会社であること”を守る」などです。
チームには、さまざまな人がいます。若い人、定年間近な人、転職してきたばかりの人、ここのところ成果や業績がふるわず肩身の狭さを感じている人……。
まったく異なる属性、まったく異なる状況にあるメンバーが同じ方向を向くためにも、共通するミッション・意義の設定が大切です。
もし、まだ明確に言語化されていない場合は、このような「チームにとって大切なこと」を話し合う時間を別途設けてみてください。
チームの「大切なこと」が明確になって、メンバーに腹落ちすることは、「ゴールと大切なことのために意見を言ってみよう!」と、実は「話しやすさ」因子を向上させ、会議を活性化させる効果まであるのです。
アイデアが出ないときは「書き出す」時間をとろう
心理的安全性の見地からは、「参加した全員から、より多くの意見・アイデアを募る」ことが、会議の本質的な目的です。
なぜなら、そこで「健全な意見の衝突」が起こり、思わぬいい案が生まれることがあるからです。
つまり、最初から「完璧な正解」や「素晴らしいアイデア」を求めないこと。突拍子もない意見も含めて「全員が意見をまずはできるだけ数多く出す、だからこそ質の高いものも、いずれ出てくる」というアプローチが重要です。
とはいえ、心理的安全なチームに移行中だったり、難しい議題だったりする場合、「話しやすさ」因子がまだまだ低く、意見が飛び交う場になりにくいのはやむを得ないですよね。
そこで一人ひとり指名して話してもらう……となりがちですが、そうしたところで会議が活性化することは少ないのではないでしょうか。
その代わりが「いったん、各個人が手元で書き出してみる」という方策です。
「意見を持ち寄って参加しよう」と事前に課題を出しておくことも、もちろん有効です。
それに加えて、会議の進行中に意見を募りたい場面でも数分間の時間を確保し、「その場で手を動かしてアウトプットをしてもらう作業」は非常に有益です。
進行役が“お題”(質問)を出し、それに対して、手元のノートに箇条書きで考えをまとめてもらうのです。
スマホやノートパソコンなどの端末に入力するほうが早いという人は、その方法でもかまいません。とにかく、どんな考えであっても書き出してもらいましょう。
セルフブレストがチームも活性化する
要は、ひとりでやるブレスト(ブレインストーミング。アイデアの数を出す方法)。「セルフブレスト」と呼んでもいいでしょう。
この時間をとって数分後、各自がそれを「読み上げる」スタイルで発表すれば、会議の進行は各段にスムーズになります。
遠回りのように思えるかもしれません。また、会議の流れを止めてしまうように感じるかもしれません。
しかし「えーっと」をくり返す「考えながら発言法」より、「書き出し法」のほうが、同じ時間の中で共有される、メンバーのアウトプットやアイデアの総量は多くなるもの。
チームワークにおいても、個人で考えることは重要なのです。
この手法は、リモート会議でも便利です。
例えば「グーグルドキュメントを一斉に開いて書き込む」「アプリのチャット機能を活用する」などです。普段、積極的には発言しない人がチャット上なら多く書き込んでくれるということもよくあります。
書き込まれたことにリーダー(進行役、議長)が目を通して、「○○さんの書き込み、私は面白いと感じます」「いいですね。○○さん、書き込んでいただいてありがとうございます」などの「おかえし言葉」を使って返していければ最高です。
このように、発言の内容の良し悪しを順次回答していくのではなく、行動そのものへ「おかえし言葉」を伝え、うまく行動承認につなげていきましょう。
書籍情報
『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)
いつものひと言を変えることで……会話が増える、チャレンジが始まる、チームが変わる!心理的安全性のある職場づくりに役立つ言葉の言い換えを具体的な事例とともに紹介。
>>詳細を見る
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