採用担当者はどこを見ている?
エンジニア転職「成功の仕様書」売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
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採用担当者はどこを見ている?
エンジニア転職「成功の仕様書」売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
クライアント企業のDX実現に向けて、アプリケーション開発からインフラ設計構築、システム運用保守までワンストップで手掛ける株式会社トップヒルズ。
2020年10月に同社に転職したインフラエンジニアの山片彩子さんは、二人の子どもを育てる二児の母でもある。
派遣社員としてデータベース保守などを担っていたが、コロナ禍を機に安定雇用を求めて転職活動をスタートした。「転職をして正社員になるだけでなく、入社後にはチームを率いるリーダーにもなれました」と話す山片さん。転職活動スタート時には考えていなかった「キャリアップ」までかなったと振り返る山片さんの転職成功の秘訣とは?
入社時に山片さんと面談した取締役の五十嵐 麻子さんとともに、成功要因について振り返ってもらった。
※23年4月1日より、旧社名JCDソリューションからトップヒルズに社名変更しました。
採用担当者の五十嵐さんに聞いた「内定のポイント三つ」
・社内外の人と信頼関係を築けるコミュニケーション力
・面接で感じた仕事に対する誠実さや覚悟
・詳細な職務経歴書をベースに確認した技術領域の経験や知識
ーー山片さんは前職では派遣社員としてエンジニアの仕事をしていたそうですが、転職活動を始めたきっかけを教えてください。
山片:前職では大手重工業メーカーの基幹システムの保守運用をしていました。東証一部上場企業だったのですが、コロナ禍によって先行きが見通せなくなってしまい、派遣社員は一斉に任期終了を告げられてしまったんです。
8月に告げられ、9月末には終了となるスピード感で、いわゆる「派遣切り」でした。
2年半ほど勤務していた大手でしたが、緊急事態宣言以降は仕事がなくなってしまい、リモートで完全待機の状態が続いていたのでとても不安でしたね。景気の影響を受けやすい派遣の弱さを痛感しました。
派遣会社は次の派遣先を見つけようとすぐに動いてくれたのですが、今回の出来事を通じて安定した雇用形態で働きたいという気持ちが高まったため、正社員の仕事を探し始めました。
ーー正社員の仕事を探すにあたって、まず何から始めたのでしょうか?
山片:小学4年生と中学1年生の子どもを抱えていましたから、正社員になることに加えて「なるべく早く入社できること」も軸の一つでした。そのため、じっくり活動するというよりは効率的にたくさんの企業と出会える転職フェアに参加してみることにしたんです。
コロナ禍だったのでオンライン開催でしたが、Zoom上でたくさんの企業のブースを訪れ、直接企業担当者から話を聞くことができました。
トップヒルズのブースを訪れたきっかけは五十嵐さんでした。どのブースに行こうか検討している時に「あ、女性がいる」と目に止まり、同じ女性として何か転職活動やキャリア形成のヒントがもらえるかもしれないと思ったのが当社との出会いになりました。
そのフェアでは約4社ほど周り、後日改めて選考を重ね、複数社から内定をいただくことができました。
ーーその中でもなぜトップヒルズを選んだのでしょうか?
山片:絶対に叶えたかった正社員という雇用形態に加えて、「トップヒルズなら女性エンジニアとして活躍できそうだ」とはっきり思えたからです。
ーーそれはなぜ?
山片:五十嵐さん自身がシングルマザーでありながら、トップヒルズでキャリアを築いてこられた方だったからです。
面談では、トップヒルズに入ってからどんな業務を経験してきたのか、子ども二人を育てながらキャリアを築く上でどんな壁を乗り越えてきたのかなどを聞きました。
五十嵐さんの仕事に対する前向きな姿勢に感化され、「私も五十嵐さんのようになりたい」と新しい目標さえできたように感じたんです。子育てをしながらキャリアアップしていくことへの勇気をもらいました。
ーー五十嵐さんとの出会いによって、仕事を通じて成長したい気持ちが高まったのですね。転職活動の成功要因は何だったと思いますか?
山片:一つは、その会社で働く人と直接話す機会を設けたことです。私の場合は、オンラインで参加できる転職フェアに参加しました。
さまざまな会社と話をする中で偶然、五十嵐さんにお会いすることができ、自分の中に実はあった「キャリアアップしたい」という気持ちに気が付きました。
実は、トップヒルズよりも先に正社員で内定が出た会社もあったのですが、その会社は「男性中心の閉塞感がある職場」という雰囲気。もしその会社に入社をしていたら入社後にギャップを感じていたかもしれません。会社の雰囲気を事前に知り、入りたいと思う会社を見つけられたことが良かったのだと思っています。
もう一つは、職務経歴書をできるだけ具体的に書いたことです。
特に直近の仕事については、プロジェクトの全体像やチームの規模、管理していたサーバーの構成、自分はどんな役割を果たしたのかなどを詳細に記載しました。
その結果、面接では過去の業務内容をしっかりと伝えることができたと思います。面接官の方と業務特有の大変さについて分かち合う感覚を得られたときは嬉しかったです。
ーー次に、五十嵐さんに質問です。五十嵐さんは、トップヒルズの採用面談において何を最も重視していますか?
五十嵐:社内外の人と、気さくな雰囲気で言葉が交わせるコミュニケーション力です。仕事は複数の人と一緒に進めるものですから、お客さまとも社内のメンバーともきちんとコミュニケーションを取れる人かどうかは、スキル以上に重視しています。
そしてもう一つが仕事に対するスタンス。
実は、私がトップヒルズに入社したときの職種は営業事務でした。まさか自分が取締役になるとは思ってもみませんでしたが、今振り返れば、自分の責任範囲はここまでと線を引くことなく「できる仕事の範囲を広げたい」と無我夢中で目の前の仕事に向き合っていた点が評価されたのだと思います。成果につながるかどうかは関係なく、仕事への真摯で前向きな姿勢が、周囲の信頼を集めたのだろうと。
山片さんとお話する中でも、似たような考え方をされていたので、山片さんならチャレンジをいとわず仕事に向き合ってくれるのではないかと感じました。チャレンジには困難がつきものですが、そうした山を乗り越えなければエンジニアとしてのスキルやキャリアも得られませんからね。
ーー山片さんのコミュニケーション力はいかがでしたか?
五十嵐:とても高いコミュニケーション力に加えて、会話を通じて、信頼できそうな人だとも感じました。
私は面談ではあえて定型的な質問はせずに、日常会話をするようにしているんです。中には面接用の自分を作り込んでくる方もいるのですが、日常会話を続けていると、だんだんと嘘がつけなくなってきますから。
その点、山片さんは私が投げかける質問に対し、「自分はこう考える」とざっくばらんに答える姿が印象的でした。自分をよく見せようとした言葉ではなく、「こんな風に物事を捉える私はトップヒルズにマッチするのか。成果を出せそうか」と前のめりで判断をあおぐような話しぶりで、といったら大袈裟かもしれませんが(笑)
会話自体は特別なことを話したわけではなかったと思うのですが、自らオープンマインドになり、自分の言葉で丁寧に話す姿に誠実さや仕事に対する覚悟が滲み出ていました。
こうした高いコミュニケーション力と仕事への覚悟がある方であれば、成長する過程でぶつかる壁に負けず、周囲の人の協力を得ながら乗り越え、成長を手にしてくれるだろうと強く感じました。
ーー山片さんが念入りに準備をしてきたという「職務経歴書」はいかがでしたか?
五十嵐:とても分かりやすくまとまっていました。
細かく書かれていたので、経験やスキルをしっかり把握することができましたし、面接ではそれをベースに話すことができたのでより深い話を伺えました。
私自身は経歴を重視していませんが、書類に書かれていない点について丁寧にお話をしてくれたことも好印象でした。後の選考過程でもプラスに働いたのは間違いないと思います。
山片:そう言ってもらえて良かったです。職務経歴書に書ききれなかった部分は、口頭で話せるように自分の中であらかじめ整理をしていました。
120%の準備をしてきたからこそ、面接にも自信を持って望むことができたのだと思います。
ーー山片さんが「転職でかなえたかったこと」は、トップヒルズで実現できていますか?
山片:はい。正社員という安定した雇用形態だけでなく、女性エンジニアとしてキャリアアップしたいという希望は、トップヒルズで存分にかなえられています。
トップヒルズに入社するまではマネジメント業務を経験したことはなかったのですが、今は常駐先のインフラネットワークの保守運用プロジェクトでリーダーを任され、新卒社員を含めた6人のチームを任せてもらっています。
五十嵐:山片さんはチームにジョインして2年でリーダーになりましたよね。クライアントはじめ、持ち前のコミュニケーション力を生かし、次々に問題解決してくれるところが評価されたと聞いています。
実は山片さんが担当しているプロジェクトは、以前はあまりうまくいっていなかったのです。ところが山片さんがジョインし、クライアントはじめ、常駐先にいるほかの協力会社のエンジニアと密に意見を交わしてくれたおかげでコミュニケーションが円滑に進むようになりました。
当時のリーダーと一緒になって、複数混在していた問題を解消し、お客さまからの信頼を再び獲得してくれました。本当に期待以上の活躍をしていると思います。
ーーエンジニアとしてのマネジメント業務は初めてとのことですが、心掛けていることを教えてください。
山片:そうですね、今は本社や現場の皆さんに助けられつつ、自分の持てる力を可能な限り注ぎ込んでいる状態です。そんな中で大事にしているのは、メンバーの事情をきちんと知った上で、その人に一番適した環境を提供すること。
例えば、出勤が遅れがちのメンバーがいた場合、何か事情があるかもしれないのでさりげなく話を聞きます。その結果、朝の出勤が難しい事情があるのであれば、そのメンバーのシフトを遅めに調整するなどの対応をします。
型にはまったやり方を押し付けるのではなく、どのやり方がその人にとってベストかを常に考えるようにしていますね。
ーー採用時に評価されたコミュニケーション力がとても生かされているんですね! 最後に今後の目標をお聞かせいただけますか。
山片:今は運用側の業務を担当しているので、将来的にはインフラエンジニアとして構築の業務も経験してみたいです。トップヒルズにはクラウドシステムを構築する案件があるので、スキルを磨いた後に関われたら嬉しいです。
キャリアに関しては、やっぱりこれからも五十嵐さんを目標にしていきたいです。身近にロールモデルとなる方がいるのは本当に心強いです。母業との両立は大変ではありますが、1日24時間という限られた時間の中で「どうしたら私も周囲の人たちも楽しく暮らせるか」を考えながら、働き続けていきたいなと思います。
文/一本麻衣 撮影/赤松洋太 編集/玉城智子(編集部)
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