企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? エンジニアはどう関わる? 必要な人材やスキルを詳しく解説!
近年耳にする機会が増えたDX(デジタルトランスフォーメーション)。DXとは、データやIT技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革することを指します。
IT技術の発展により、業務プロセスの改善や新たな価値の創出が次々と実現しており、DXは今や企業にとって競争優位性を確保するために欠かせない取り組みと言えます。
エンジニアにはシステム開発スキルだけでなく、DX推進に必要とされるさまざまなスキルが求められることが増えています。この記事では、DXの概要や事例、DX推進に必要な人材やスキルについて詳しく解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用することで製品やサービスだけでなく、業務プロセスや組織文化まで変革することです。
経済産業省が発行している「デジタルガバナンス・コード2.0」では、DXについて以下のように定義されています。
DXのニーズが高まった理由
2020年から世界的に流行した新型コロナウイルス感染症などに代表されるように、予測のできない事態によって世の中の不確実性は高まっています。また、IT技術の進化によってユーザーの消費行動にも大きな変化が見られるようになりました。
そのため、企業にとっては従来のビジネスモデルのままでは対応しきれない場面が増えています。
企業間の競争を勝ち抜くには、社会情勢や顧客のニーズに柔軟かつ迅速に対応することが必須となり、既存サービスや業務プロセス、および組織体制をデジタル技術によって変革することが求められているのです。
DXとIT化の違いは?
DXと混同されやすい言葉として「IT化」が挙げられます。IT化とは、従来のアナログな手法からIT技術を活用した手法へ切り替えることにより、業務を効率化することです。
一方でDXは業務効率化だけでなく、組織文化やビジネスモデルまでを変革し、企業を成長へ導いたり新たな価値を生み出したりすることを目的とします。
つまり、DXはIT化よりも広範な取り組みを指し、IT化はDXを実現するための手段の一つであると言えます。
DXの事例
では、企業ではどのようなDXが行われているのでしょうか。ここではユニ・チャームの事例を紹介します。
ユニ・チャーム
ユニ・チャームは、新商品の開発・リニューアルや改良点の創造、新規のカテゴリー開発につなげるための顧客インサイトの発見を目的としてDXを推進しています。各種デジタル技術を駆使した新たなビジネスモデルの実装を積極的に行っており、一例として以下のようなものがあります。
・デジタルスクラムシステム
ペットなどの自宅での行動を遠隔地から観察できるシステム
・手ぶら登園
紙おむつの残り枚数をデータ等で管理し、保育園の紙おむつの在庫が減少した際には、自動で発注されるシステム
これらのシステムの開発は、コロナ禍などの社会情勢の変化への対応や、顧客体験価値の向上に貢献しています。
出典:ユニ・チャーム、経済産業省が定める「DX認定事業者」に選定-ユニ・チャーム
DXにエンジニアはどう携わる?
DXに取り組む企業が増える中で、施策を実行する役割としてエンジニアの需要が高まっています。
DXに携わるエンジニアには、システム開発スキルなどに加えて、企業が推進するDXに対応するスキルを持ち、DXの推進を主体的に行うことが求められます。
DXに必要な人材とは
では、DXに必要な人材とはどのような特徴があるのでしょうか? IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発行した「IT人材白書2020」では、DXに対応する人材として以下の七つが挙げられています。
プロダクトマネージャー
DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材です。管理職クラスや事業のエースなどの人材が適しています。
ビジネスデザイナー
DXやデジタルビジネス(マーケティング含む)の企画・立案・推進などを担う人材です。ビジネスと技術の両方に精通している人材が望ましいです。
テックリード
DXやデジタルビジネスに関するシステムの設計から実装ができる人材です。システム開発の技術・経験が豊富な人材が求められます。
データサイエンティスト
事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材です。データから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すスキルが求められます。
先端技術エンジニア
機械学習、ブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担う人材です。先端技術を活用した成長事業の創出をリードします。
UI/UXデザイナー
DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材です。顧客向けサービスを提供する企業では特に重要とされます。
エンジニア/プログラマ
システムの実装やインフラ構築・保守等を担う人材です。IT企業でDXに取り組んでいる企業に対して、DXに対応する人材の重要度を尋ねた調査では、「エンジニア/プログラマ」は、「非常に重要」「ある程度重要」との回答が7割以上であり、DXに欠かせない人材と捉えられていることが分かります。
出典:IPA「IT人材白書2020」
以上のように、DXに対応するには、従来のエンジニアの領分であるシステム開発業務だけでなく、ビジネス視点や先端技術など、より幅広い分野の知識・スキルを持つ人材が求められていることが分かります。
DXにおけるソフトウエアエンジニアの役割
同じくIPAが発行する「デジタルスキル標準」において、ソフトウエアエンジニアがより詳細に区分されており、具体的な職種とDX推進において担う責任が以下のように設定されています。
フロントエンドエンジニア
ソフトウエアの機能のうち、主にインターフェース(クライアントサイド)の機能の実現に主たる責任を持つ
バックエンドエンジニア
ソフトウエアの機能のうち、主にサーバサイドの機能の実現に主たる責任を持つ
クラウドエンジニア/SRE
ソフトウエアの開発・運用環境の最適化と信頼性の向上に責任を持つ
フィジカルコンピューティングエンジニア
ソフトウエアの実現において、現実世界(物理領域)のデジタル化を担い、デバイスを含めたソフトウエア機能の実現に責任を持つ
出典:IPA「デジタルスキル標準」
DXに携わるエンジニアに必要なスキル
DXに携わるエンジニアにはさまざまなスキルが求められますが、特に重要とされるスキルについて解説します。
システム開発スキル
エンジニアの基本スキルとされる、システム開発スキルは欠かせません。特にDXにおいてはビジネスモデルや企業の課題を理解した上で、適切な要件を定義してシステムに落とし込む知見やスキルが求められます。
データ活用スキル
DXの実現には、膨大なデータを収集・分析してビジネスへ活用することが求められます。従来は人の経験や勘で行っていたビジネス上の意思決定を、データを活用することでより精緻なものにすることができるからです。
エンジニアには自社の課題解決のために必要なデータの活用方法を提案するスキルや、データを収集・分析する基盤の設計・構築スキルが求められます。
戦略的視点
DXはただ単にアナログな作業をデジタル技術に置き換えるだけでなく、競争優位性を高めて利益を拡大することも大きな目的です。
そのため、エンジニアにも自社のビジネスに対する戦略的な視点が求められます。DXにおけるシステム開発に取り組む際には、技術面だけでなく経営戦略や業務フローなども考慮して行う必要があります。
パーソナルスキル
パーソナルスキルとは、「デジタルスキル水準」において定義されているスキルです。
プロジェクト内で多様な価値観を受け入れながらリードし、生産性を高めるヒューマンスキルと、的確なゴールを設定して創造的に問題を解決するコンセプチュアルスキルの二つが求められます。
セキュリティスキル
DXに取り組む際に必須となるのがセキュリティ対策です。サイバー攻撃の被害は年々深刻度を増しており、企業のシステムや保持する重要なデータをしっかりと保護しなければなりません。
エンジニアにはセキュリティに関する基本的な知識を持ち、リスクを最小限に抑えるための措置を行うことが求められます。
DXプロジェクトの注意点
最後に、DXプロジェクトを成功させるために特に注意すべきポイントを紹介します。
課題と目的を明確にする
DXに取り組む目的が曖昧なままだと、プロジェクトの完了後も思うような効果が得られない場合があります。まずは自社が置かれている状況を確認し、課題を正確に把握した上でプロジェクトの目的を明確に設定し、メンバー全員で共有しましょう。
例えば「各部署の情報共有がうまくできていない」という課題があれば、「全社的に情報共有がスムーズにできる仕組みを作り、業務フローを効率化して生産性向上につなげる」といった目的を設定して、それを実現する施策を検討します。
さらに、各メンバーの役割を明確にすることも大切です。DXでは抽象度の高い課題が発生するケースも多いため、スムーズに進行するには各メンバーのスキルを考慮して最適な役割を明確に割り振る必要があります。
システムの完成をゴールにしない
DXプロジェクトは単にシステムを完成させて導入することがゴールではなく、企業の課題を解決することが目的であることを意識しましょう。
リリースしたら終わりではなく、システムの導入によって利便性や生産性が向上したか、適切に運用できているかなどの確認が必要です。
評価・フィードバックをもとに改善を繰り返す
DXは全社的に取り組むものです。そのため、実際に開発したシステムを使用するユーザーや顧客の評価が重要になります。
せっかく開発しても、「操作が難しくて使いこなせない」「逆に生産性が落ちた」といった理由で使われなくなってしまうこともあるでしょう。
そのため、ユーザーの声やフィードバックをもとに改善を繰り返し、ユーザーにとって価値の高いシステムへ成長させていくことが重要です。
企業にとって必要不可欠なDXをリードするエンジニアを目指そう
DXは、不確実性の高い現在の社会や市場において、企業が競争優位性を確保するために欠かせない取り組みです。
DXの必要性は多くの企業に浸透してきており、実行する役割を担うエンジニアの需要は高まっています。
DXに携わるエンジニアには、システム開発スキル以外にもさまざまなスキルが求められます。
ぜひこの記事を参考に、求められる新たなスキルを身に付け、市場価値の高いエンジニアを目指してみてはいかがでしょうか。
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