type編集長が注目企業の人事にインタビュー
採用の裏側「エンジニアの代わりに聞いてきます!」総合転職サイト『type』編集長が、エンジニアの転職先として人気度・注目度が高い企業の人事に採用の裏側を取材。選考プロセスや「今」欲しいエンジニア像について、転職者が聞きにくいアレコレを代わりに聞いています!
type編集長が注目企業の人事にインタビュー
採用の裏側「エンジニアの代わりに聞いてきます!」総合転職サイト『type』編集長が、エンジニアの転職先として人気度・注目度が高い企業の人事に採用の裏側を取材。選考プロセスや「今」欲しいエンジニア像について、転職者が聞きにくいアレコレを代わりに聞いています!
デジタル庁。「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」とミッションを掲げ、2021年9月に発足した日本のデジタル社会実現の司令塔。
グリーの最高技術責任者である藤本真樹さんがCTOに就任し、IT業界からの注目を集めた発足期。これをフェーズ1としよう。その後フェーズ2としては、組織の早期立ち上げを目的に大規模な採用を実施した。
そして現在、22年8月の第2次岸田改造内閣発足以降、河野太郎デジタル大臣を筆頭に組織活動にドライブを掛けていこうという様子がうかがえる。今、デジタル庁はさらなる組織拡大をめざすフェーズ3へと差し掛かっていると言えるだろう。
一つの過渡期とも言える今、デジタル庁ではどのようなプロジェクトが動いているのか。現場ではどのようなエンジニアが求められているのか。
そのエンジニアを採用するための官公庁ならではの工夫とは。デジタル庁の採用を担当する斉藤正樹さんに話を聞いた。
デジタル庁 人事採用担当 斉藤正樹さん(@saito3_dx)
早稲田大学を卒業後、メーカー営業や人材紹介企業を経て、IT領域をはじめとする採用支援サービスや人事コンサルティングを提供する会社を設立。現在は同社の代表と並行してデジタル庁の人事採用担当リクルーターを兼務
【聞き手】type編集長 三ツ橋りさ
2006年4月、株式会社キャリアデザインセンターに入社。転職情報誌『Womantype』の編集を経て、転職サイト『女の転職@type(現・女の転職type)』のUI/UX改善やサイトリニューアルなどに従事。13年04月~15年12月まで『女の転職@type(現・女の転職type)』の編集長に就任。産育休を経て16年11月より転職サイト『@type(現・type)』の編集長として復職。19年10月より2度目の産育休を取得し、21年5月に復職。21年6月からtype編集長に就任し現在に至る
デジタル庁発足からまもなく2年が経とうとしていますね。現在はどのようなプロジェクトが進行中なのでしょうか?
代表例としては、政府共通のクラウドサービス利用環境であるガバメントクラウド(Gov-Cloud)の整備や、官公庁のDX化とも言えるガバメントソリューションサービスの推進が挙げられます。
現在、各省庁において数百のシステムが存在しているので、いきなり全てをクラウド化することは不可能です。当然リソースは有限ですし、重要度はそれぞれ異なります。
なので、「来年はこの省庁のここに着手しよう」「試しに今年はここに手を付けてみますか?」といった検討を各省庁のPMOとコミュニケーションを取りながら推進しているところです。
中にはレガシーなシステムも残っているので、アーキテクチャの見直しからやっていかなければいけないことも。もちろん、クラウド化が完了した後は安定した運用体制を作っていく必要があります。
ガバメントソリューションサービスについては、全省庁に向けた特定アプリケーションの標準導入が第一歩です。
省庁を横断して行うプロジェクトや業務も多いのですが、現在はアプリケーションが統一されていません。なので、まずは基本となるアプリケーションの見直しや仕組み作りから進めています。
デジタル庁と言うと、行政手続のオンライン窓口である『マイナポータル』や新型コロナウイルス接触確認アプリ『COCOA』といった国民に向けたサービスのイメージが強いかと思いますが、実は全国の自治体や各省庁向けのシステム開発プロジェクトの方が多い。
まだ調査・研究段階のものから、ベンダーと共に開発に入っているもの、システム導入後の利用推進段階のものや運用フェーズに入っているものまで、規模・内容ともに多様なプロジェクトが進行中です。
コスト面や安全性を考慮しつつ、プライオリティーの高いものから順に着手しています。
日本の成長戦略の柱とされているWeb3.0やAI活用については、デジタル庁はどのように関わっていく計画なのでしょうか?
Web3.0については、すでにデジタル庁内に検討チームが発足しています。今はガイドラインや制度作りを進めている最中です。
AI活用に関しても、今後間違いなく活発になっていくと考えています。
とくに大規模言語モデル(LLM)は直近のテックトレンドなので、デジタル庁の成長戦略の一つに含まれてくることが予想されますね。
さまざまなプロジェクトが同時に進行しているからこそ、幅広い職種で人材を採用していますよね。
ポジションによって必要な勤務日数が異なるようですが、複業でデジタル庁にジョインすることも可能なのでしょうか?
そうですね。ただ、デジタル庁発足当初と比べると、現在は各プロジェクトが実行フェーズに入っている状態です。
よって、軸足をデジタル庁に置いてコミットしていただける方の採用に注力するようになりました。
フェーズに合わせて求める人材は変わっていきているのですね。
スキル面はいかがでしょうか? 現在は大規模かつ難易度の高いプロジェクトが進行しているので、各分野のスペシャリストを求めているのでは……と推測しているのですが。
もちろん、技術力が高い方が参画してくださるのはうれしいです。
ですが、デジタル庁では多様なプロジェクトが稼働しているため、IT人材の方であれば「自分が活躍できるポジションがない」というケースはほとんどないと思いますよ。
仕様書の作成や設計といったいわゆる上流工程やベンダーコントロール、システム導入前の調査や、導入後のシステムサポートなど、さまざまな役割が必要。よって、中途入庁の方に求める経験もバリエーションが豊かです。
一つ、どのポジションにも共通して重要なのが「貢献意欲」があること。入庁した方を見ると、「日本の行政DXを牽引するために、自分がやれることをしたい」という意志を明確に持っている人が活躍している印象ですね。
実を言うと、デジタル庁は非常にカオスティックな環境でして。民間企業で経験を積んできたエンジニアもいれば、出向してきた役人や自治体から研修で来ている人材もいます。
まだ歴史の浅い組織なので、常に上司が隣にいて1から10まで手厚く指導してもらえる……という環境ではありません。ある意味「カオスな環境を楽しめる人」が向いている職場だと言えます。
また、開発の内製化を推進中ではあるものの、今はまだ「公共SI」的な要素が強いのが現状です。入庁後は調達仕様書を作成するなど、ベンダーと連携しながらプロジェクトを推進いただきたいと思っています。
求人詳細も拝見しました。どのポジションもコーディングテストは行っていないんですね。
そうですね。もちろん技術的要件は選考中にエンジニアが確認を行いますが、コーディングがメインのポジションが今はまだ多くないので。面接では「業務内容・カルチャーのすり合わせ」や「貢献意欲の有無」を確認することがメインとなることが多いです。
入庁後に「想定していた業務内容ではなかった」ということが発生しないように、リクルーター・人事はもちろん、部門面接でもかなり細かく説明しています。
国家規模のプロジェクトを手掛けるデジタル庁特有の仕事の進め方をしっかり理解していただき、お互いがマッチするかどうかを確認した上で採用可否を決定するため、入庁後のミスマッチはほとんど発生しません。
面接の過程で「別の部門のほうがマッチしそう」ということであれば、そちらの部門での選考を提案することもありますよ。
面接では、先程おっしゃっていた「貢献意欲の有無」が鍵になってくるのですね。
はい。「国の仕事」ということでお堅いイメージを持っていたり、「自分が携わるのは恐れ多い」と感じたりする人もいるかもしれません。ですが、「日本の行政DX」は未開拓の分野。言葉を選ばずに言えば「整っていない環境」なのです。
そんな泥臭くもある環境で「誰も成し遂げたことがない最難関な課題に挑みたい」「技術・スキル的に足りないかもしれないけど、熱意をアピールしたい」という冒険志向をお持ちの方にこそ、チャレンジしていただきたいですね。
文/赤池沙希 取材・編集/伊藤健吾、三ツ橋りさ(編集部)、秋元 祐香里(編集部)
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