エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! エンジニア読者が抱える仕事やキャリアのお悩みに、注目企業のCTOやさまざまな領域の第一線で活躍する技術者が回答します
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中二病的発想でスキルアップ? エンジニアとしての成長につながる習慣とは【澤 円・池澤あやか・小城 久美子・増井 雄一郎・ばんくし/聴くエンジニアtype Vol.32】
新人であれベテランであれ、エンジニアであれば「成長」について考える機会は多いだろう。目まぐるしく進化する技術の世界で生き抜くためには何を心がければよいのだろうか?
今回は、澤 円さん、池澤あやかさん、小城 久美子さん、増井 雄一郎さんが登場した『聴くエンジニアtype』初の公開収録より、一線で活躍する4名が語った「成長につながる習慣」について一部抜粋してお届けしよう。
※『聴くエンジニアtype』公開収録は、2023年6月に実施されたテックカンファレンス『ENGINEERキャリアデザインウィーク2023(ECDW2023)』の最終日に実施されました
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円さん(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)/『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム社)/『「やめる」という選択』(日経BP社) Voicyチャンネル:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
タレント・ソフトウェアエンジニア
池澤あやかさん(@ikeay)
1991年7月28日 大分県に生まれ、東京都で育つ。慶應義塾大学SFC環境情報学部卒業。 2006年、第6回東宝シンデレラで審査員特別賞を受賞し、芸能活動を開始。現在は、情報番組やバラエティ番組への出演やさまざまなメディア媒体への寄稿を行うほか、IT企業に勤め、ソフトウェアエンジニアとしてアプリケーションの開発に携わっている。 著書に『小学生から楽しむ Rubyプログラミング』(日経BP社)、『アイデアを実現させる最高のツール プログラミングをはじめよう』(大和書房)がある
プロダクトマネジメントコーチ 「プロダクト筋トレ」主催者
小城 久美子さん(@ozyozyo)
ソフトウエアエンジニア出身のプロダクトマネジャー。ミクシィ、LINEでソフトウエアエンジニア、スクラムマスターとして従事したのち、『LINE CLOVA』や『LUUP』などにプロダクトマネージャーとして携わる。そこでの学びを生かし、Tably社にてプロダクトマネジメント研修の講師、登壇などを実施。書籍『プロダクトマネジメントのすべて』(翔泳社)共著者
Product Founder & Engineer
増井 雄一郎さん(@masuidrive)
「風呂グラマー」の相性で呼ばれ、『トレタ』や『ミイル』をはじめとしたB2C、B2Bプロダクトの開発、業界著名人へのインタビューや年30回を超える講演、オープンソースへの関わりなど、外部へ向けた発信を積極的に行なっている。「ムダに動いて、面白い事を見つけて、自分で手を動かして、咀嚼して、他人を巻き込んで、新しい物を楽しんでつくる」を信条に日夜模索中。 日米で計4回の起業をした後、2018年10月に独立し'Product Founder'として広くプロダクトの開発に関わる。 19年7月より株式会社Bloom&Co.に所属。現在は、CTOを務める
成長のためにお金を使うか、時間を使うか
ばんくし:池澤さんは、エンジニアとしての成長につながった習慣や心掛けはありますか?
池澤:私が一番心掛けていたのは素直さですね。
特に駆け出しエンジニアの頃って、先輩エンジニアのコードレビューに耐え抜いたり、先人からおすすめされたものをひたすらやったり……と、修行に時間がかかるじゃないですか。その修行に耐え抜くためには「素直な心」が必要なんじゃないかなと思いますね。
増井:エンジニアってしきい値を超えないと役に立たないところがあるから、修業期間が長いですよね。
池澤:あと、先ほども話題に出たコミュニケーション能力も大事だと思います。特にチームで開発していると、書いたコードを改善してもらわないといけない瞬間がある。そこでコミュ力がないと、険悪な雰囲気になっちゃったり。
ばんくし:たしかに、そういう経験があるかないかで言われたらあります(笑)
ただ、素直さって結構難しいですよね。例えばすごくきついコメントがついた時に、つい反発してしまうことって多々あると思うんですよ。「素直さ」を習慣化するためのコツってありますか?
池澤:まずレビューは一回受け入れるようにしています。返信する時は自分がそのコードを書いた理由を述べて、そのうえで相手のレビュー内容を採用するかしないのかを伝えるようにしています。
増井:相手に悪意があるかどうかって、受け取り方の問題の場合もあると思うんですよね。「良いですね」という言葉が嫌味に聞こえることもあれば、本当に良いと思って言っていると感じることもあるし……。僕の場合、相手の言葉に「悪意があるな」と感じたら、それは受け取らないように心掛けています。
池澤:私は脳内で最後に「♪」をつけるように変換してます(笑)
ばんくし:お二人の話を聞いていると、やっぱりエンジニアの成長には人とのコミュニケーションが大切なんだなと思いますね。
澤さんは昔からエンジニアをされていますが、成長につながった習慣ってありますか?
澤:僕の場合は「とにかく課金する」ですね。
もともと経済学部出身なので、エンジニアのことなんて全然分からなくて。「アルゴリズム」のことを「アルゴ」っていうリズムだと思っていたくらいポンコツだったんですよ。
エンジニアになりたくてなったはずなんだけど知識がなさすぎて絶望していたところに、インターネット時代が勝手にやってきた。だから絶対この波に乗らなきゃと思って、当時50万円くらいするパソコンをローンで買い、とにかく一番早い回線を契約し続けたんです。
最初はアナログで、次はSDN、その次はADSL、そして光……。15秒広告を見たら無料で使えるサービスは今もあるけど、当時の僕はその15秒すら惜しかった。課金できるサービスはかたっぱしから課金することで、より多くの技術に触れていきました。
あと、お金を払うともとを取るために必死で学ぶから、それを30年続けてきた感じですね。
ばんくし:金銭感覚が麻痺しそうですね。
澤:若いころなんて給料が安いから、毎月カードの明細を見て「バイトしようかな」って思ってましたよ。でも僕はもともとポンコツなので、知識や腕前だけでエンジニアとして生きていくことができなかった。でも、課金することで知っていることが横にどんどん広がっていって、その知識を組み合わせることもできるようになって、結果的にキャリアが助けられた感じですね。
池澤:お金で買えるものって、既に体系化されているものが多いじゃないですか。何も知識がない状態だと体系化されたデータを集めることすら難しいので、課金した方がスタートダッシュが早いっていうのは私も感じます。
澤:この前適性検査をして分かったんだけど、僕にとってエンジニアは最も向いていない職業だったんですよ(笑)。だからそこをお金の力で解決したんですよね。
増井:僕の場合は逆ですね。コードを書いたり読んだりすることに圧倒的に時間を使ってきました。今でも週7でコードを書いていますし、基本的に何もしていない時間はないですね。コードを書くか、読むか、夜遊びするか……大体どれかです。
池澤:夜遊びしながらコードを書いてるという噂も聞いたことがありますけど(笑)
増井:クラブでコードを書いたりもしましたね。それくらいずっとコードに触れています。ChatGPTを使えば外を歩きながら音声入力で調べものができるので、家に帰ってそのログを見ながらコードを書いて……。
澤:たぶん増井さんはナチュラルボーンのエンジニアで、ノイズが少ないんですよね。学ぶにしても純度高く時間を使えるんだけど、僕は分からないことが多すぎるから、いちいち「は?」ってなって時間がもったいない。だったらもう課金して早く答えにたどり着ける道を選ぼう、という感じです。ChatGPTは絶対課金して使った方がいいですね。世界が変わるから。
ばんくし:自分の性格に合った突き詰め方があるんですね。
増井:たぶん澤さんと僕がやり方を交換してもうまくいかないと思います。
「筋肉は裏切らない」「中二病から入ったっていい」
ばんくし:小城さんはどうですか?
小城:「アウトプット」はおすすめですね。アウトプットすると、それを見た人から間違いや共感ポイントのフィードバックをもらえるんですよ。
池澤:アウトプットってどんな方法でするんですか?
小城:最近は登壇させていただくこともありますけど、お手軽なのはブログですかね。
澤:「アウトプット」で思い出したけど、僕は昔から「覚えたことをすぐ人に教える」ということをしていました。最初は「僕なんて」と思って遠慮していたんだけど、まず最初にパソコンを買って設定の仕方を覚えたら「やり方を教えてほしい」という人がいて。
「覚えたらすぐに教える」を繰り返していたら、今は「プレゼンテーション」というタグがついてキャリアにもつながるようになった。トップエンジニアになるのは難しい人でも、「人に伝える」という能力とエンジニアの能力をかけ合わせることで「エバンジェリスト」になる選択肢はあるよね。
ばんくし:私もエンジニアリングを20年ぐらいやってますが、トップの人って「技術を突き詰めること」と「コミュニケーション」をどっちもやってる気がします。この二つって同時にはできないことですけど、うまく切り替えながらどちらもやるということがエンジニアの成長に必要なのかな。
池澤:あとは「体力がすべてを解決する」という言葉もありますよね。
澤:それはあるな。
ばんくし:私は身体を鍛えるのが嫌いでパソコンと向き合ってたんですけど、やっぱりそこに行きつくんですね。
増井:みんな言いますよね。僕はあんまりやらないんだけど。
澤:ナチュラルボーン強い人はいいんですよ。そうじゃない人は鍛えることで自信がつくから。筋肉は裏切らないですよ。
僕は20歳からずっとスキーを続けてるし、30歳からは空手も始めました。当時すごく忙しい時期で、平均睡眠時間4時間とかの時代だったんですけど、夜8時から9時半まで稽古して、鼻血流しながらオフィスに戻って、2時くらいまで作業して帰って3~4時間寝て、また朝から仕事……みたいな。
ばんくし:それはもうお化けですね。
澤:でもそれが体力的な貯金になるんですよね。あと、二つ以上のことに打ち込んでいるとどっちかがうまくいかなくてももう片方で発散とかできたりもするし。
ばんくし:となると、エンジニアとしての成長に大事なのは「コミュニケーション」と「やりこむこと」と「体力」になるのかな。
増井:好奇心も大事だと思います。いろいろやることがある中で、どれを選択して、それをどれくらいの比重で取り組むか……というのを好奇心で決めるっていうのは成長に大きく影響するはず。
アメリカで起業したのも、高校生の時にある大学の研究室にインターネットを見せてもらいに行ったのも、好奇心がきっかけですから。
ばんくし:たしかに、エンジニアに向いている人って好奇心強めの人が多いですよね。逆に「好奇心がわかない」「やりたいことがよくわからない」という人も多いと思うのですが、そういう人にアドバイスをするとしたらどんなものがありますか?
増井:「あえてフォロワーにまわる」という方法もあると思うんですよね。全員が先頭を走る必要はなくて、リーダーに感想を伝えたり、同じことを真似してみたり……。フォローすることで学べることもたくさんあるので、うまくすみ分けできればいいと思います。
澤:好きなキャラクターを徹底的に分析してなりきるのもいいですよ。中二病みたいって感じるかもしれないけど、好きなアニメのキャラクターとか、映画の主人公とか何でもいいんです。それを突き詰めていくとキャリアにつながったりもするので。
池澤:まさに私が芸能界に入ったきっかけも中二病的なものでした。しかも本当に中学二年生の時に入りましたからね(笑)
自分が何に向いていて何に向いていないのかに気付くのには時間がかかるので、キャリアのスタートが早かったというのは結果的に良かったと思います。
増井:自分のことを早いタイミングで理解するというのは大事ですよね。自己分析できていないとどこで戦うのか決められないですし。
僕は高校生からフリーランスでいろいろやってたんですけど、会社員として求められるものがない中で何年も考える時間があったのはすごくよかったと思います。
「自分は〇〇ができて〇〇ができないけど、こんな価値があります」というのを自分で説明する力って、フリーランスだけじゃなくて会社員にも大事ですし。
澤:僕がそれに気付いたのは30代後半ですね。それまでは社畜としてどうにか生きていこうと思ってましたから。
あとから知ったんだけど、僕は発達障害だったんですよ。だから集中力がなかったりスケジュールを管理したりするのがすごく苦手で。30代半ばくらいで苦手なことは人にお願いして、得意なことは他の人の分までやろうと思ったらすごく楽になったんですよ。それを積み重ねていたら今は自分の得意なところだけで仕事ができるようになって、今はすっごい楽です。
ばんくし:結局自分探しなんですよね。自分が何をやりたいのかを探索し続けることが、エンジニアとして成長するにしても社会人として成長するにしても大切なんじゃないかなと思います。
次回も公開収録の続きをお届けします。お楽しみに!
文/赤池沙希
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