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ひろゆき「法人向けなんて到底無理」の真意とは? なぜ、話題の画像生成AIはビジネスとして成立しないのか

ITニュース

日々プロダクトに向き合うエンジニアのみなさんにヒントをお届けすべく、日本最大の電子掲示板『2ちゃんねる(現5ちゃんねる)』を立ち上げた、ひろゆきさんを迎えた本連載。国内外のプロダクトを、ひろゆきさんはどうみるのか? ひろゆきさんが開発者ならどこをブラッシュアップするのか?そんなことを、毎回話題のプロダクトを取り上げながらお届けすることでプロダクト開発で大切なことを探っていきます。

今、巷で注目を集めるプロダクトに対し、ひろゆきさんの見解を語ってもらいながら、「プロダクトづくりで大切な視点を学んでいこう」という本連載。

二回目となる今回取り上げるのは、誰でも簡単に画像が生成できる『Akuma.ai』です。

kinkaku akuma fukuyama profile

Akuma.ai:https://akuma.ai/
Kinkaku株式会社:https://www.kinkaku.com/

現在は個人向けに作られている同プロダクトだが、「いずれは企業がコンテンツ制作のために使ってくれるようなサービスに成長させたい」と目標を語る福山さん。

そんな言葉にワクワクが止まらないエンジニアtype編集部をしり目に、ひろゆきさんは「Stable Diffusion(以下、SD)にWebUIつけただけですよね。所詮は個人の面白ツール止まりっすね」とのコメント……。

うん、いつも通りのひろゆきさんだ。これでなくちゃ。

でもさ、あのさ、一体何がだめだっていうのさ!

その理由を、開発者の福山さんとともに聞いてきました。

画像生成AI『Akuma.ai』のスゴさとは?

エンジニアtype編集部

まずは福山さん、『Akuma.ai』はどんなプロダクトなのか改めて教えてください。

福山さん

はい。『Akuma.ai』は、ゲームや二次元コンテンツ制作のための画像生成AIサービスです。最大の特徴として、Stable Diffusionのモデルであれば、世の中にあるどんなモデルでもクラウド上にホスティングして画像生成ができます。

一昔前から、誰でもWebサイトを簡単に作ってホスティングできるサービスがありますが、そのAIモデル版とイメージしていただければ分かりやすいと思います。

ひろゆきさん

はいはい。

福山さん

現在は個人向けに作っていますが、いずれ企業向けに展開していきたいと思っています。

ひろゆきさん

個人の面白ツールとしてなら全然アリですけどね。ビジネス展開は難しいと思いますよ。

福山さん

おっしゃる通り、生成AIサービスで少し先を行く海外でも面白ツール止まりのプロダクトが多いですよね。そこからどう抜け出して、日本で継続的に使われるための価値を作れるかを模索していまして。

ひろゆきさん

X(旧Twitter)オーナーのイーロン・マスクが「この機能を廃止します」と言えば、各種ツールが突然使えなくなるように、生殺与奪は他社次第ですよね。

SDが止まったら『Akuma.ai』は使えません、っていうのはプロダクトとしてどうなんでしょう。

福山さん

そもそも、AIをクラウド上で動かしてwebのUIで操作できるようにするだけでも、とても意味のあることだと考えています。

実際、「世の中のどんな画像生成モデルでも動かせる」インフラ技術を作ることはそんなに簡単なものではありません。単にAIにUIをつけたものとは、大きな違いがあるんです!!!

エンジニアtype編集部

インフラ技術がミソなんですね?

福山さん

はい。通常、同じマシンでAIモデルの切り替えを行うとものすごい時間がかかってしまうのですが、ここをインフラ側で最適化して、多くのユーザーからのリクエストに応えられるスケーラビリティを実現しています。

Generative AI akuma.ai1
Generative AI akuma.ai2
福山さん

つまるところ、私たちは「ファインチューニング屋」になりたいんです。

現状、画像生成をしても、SNSでシェアするくらいしかやることがないんですよね。出力がランダムで、なんだかガチャを回している気分になります。

仕事で使えるようにするには、スタイル・キャラ・モノの一貫性や、出力のコントロールが必要になります。OpenAI、Metaなどの巨人がモデルレイヤーを作り、わたしたちがファインチューニングレイヤーでそれぞれの業界が必要としている一貫性とコントロールを提供する。そこに商機を見出しています。

なぜ「ビジネス展開は無理」なのか?

ひろゆきさん

マネタイズはどう考えているんですか?

福山さん

他のAIサービスと同じく、サブスクリプションがメインです。$10で300クレジット付与され、1枚の生成に約1クレジット消費するといった形です。

今後提供する画像生成AIのファインチューニングなどは別で追加課金が必要になります。

エンジニアtype編集部

SDを動かすためのインフラ代をKinkakuが支払っていると考えると、かなりのユーザー数を獲得しなければ利益が出なさそうですね…一方で、クリエイターが沢山いる業界であれば、一定の需要は見込めそうな気がします!

福山さん

かなりお金がかかります...そうですね。今後は画像以外にも、2Dアニメーションや3Dアセットなど、ゲーム・二次元コンテンツ制作に必要なメディアの生成に取り組んでいく予定ですし、どんどん認知を広げていきたいですね。

ひろゆきさん

たとえニーズが出てきたとしても、そのフェーズに差し掛かると雨後の筍のように似たようなサービスが次から次に出てくるので、差別化できないんですよね

エンジニアtype編集部

ニーズが出てもだめですか……

福山さん

ビジネス展開としては、例えば「画像生成サービスを作りたい」ニーズのある企業の裏側(GPU上で生成処理を行うためのAPI)を担うのもアリだと考えてます。実際、私たちが作ったインフラに対して、「APIとして提供してほしい」と複数の企業から言われたりすることもあるので!

例えば、ゴールドラッシュでつるはしを売る的な。そしたら似たようなサービスを作りたい人が増えることはむしろプラスになりませんかね?

お金を払う価値がないとプロダクトとして成立しない

ひろゆきさん

そもそもゴールドラッシュでつるはしを売るっていうのは、プロダクトづくりの本質とズレている気がします。

エンジニアtype編集部

というと?

ひろゆきさん

最初から言っていますが、他社の技術の上に乗っかっているだけですよね。

つまり「SDがうまく使えない」と嘆く人に対して、「SDが簡単に使えるようにしました」というだけの話。

エンジニアtype編集部

も、もしかして「技術オリエンテッド」(技術起点の発想には気をつけるべし)のような話ですか!? 昔、堀江貴文さんを取材したときの話が頭をよぎって。

ひろゆきさん

いや、別に技術の追求が悪いとは思ってないです。他社のサービスを使いやすくするモノなので、その会社に締め出されたら終わるってことを危惧してます。

Twitterのアプリを開発したら、全滅とかですね。

エンジニアtype編集部

うぐっ・・・

ひろゆきさん

百歩譲って、他社の技術に乗っかっていなかったとしましょう。そうだとしても使って面白いけど、お金を払うほどのものにはならない気がします。プロダクトを生み出す際に、課金する価値があるのかを吟味しなければ、プロダクトとして発展していかないと思うんです。

エンジニアtype編集部

なるほど......それでも!!!企業のユースケースに展開させるために「ココを直すといいかもね」という点はないでしょうか?

ひろゆきさん

まぁ、企業が使うとしたら企業ごとに細かな要望が出てくるでしょうから、その要望を受け止めてSIerのようにひたすらカスタマイズして毎回納品するとかならアリかもしれませんが......薄利多売になっちゃうだろうな。

あとは、実際に使ってみましたが「indian boys make curry dishes」とプロンプトを打つとこんな画像が出てきました。

akuma.ai capture
ひろゆきさん

企業がこのサービスを使うとしたら、基本的には「人のイラストを出したい」という需要が大きいと思うので、人が出てない画像を生成してクレジットがかかる点は見直してはどうでしょう。

あと、例えば「100点を連発するのび太」とか、既存のキャラがやらなそうなイラストが生成できれば面白いと思いますが、権利者が嫌がるので難しい気はしますね、、、

福山さん

うおお、触っていただき感激です!

仰るとおり、モデルを選ぶことやプロンプトによって出力したいものが出せないといった難しさは生成AIに残っている課題だと思います。

(上の例でいうと “indian boys make curry dishes” を “indian boys making curry dish” に正すと人が出る確率が高まります)

より楽に、より精度を高められるようなユーザー体験をこれから追求していきたいと思います!

ひろゆきさん

でもこういうサービスを使うのって結局、ネットで暇つぶしをするユーザーか、いらすとやを使う人たちくらいじゃないかな、、、

企業としては下手に投資するよりも、こうしたサービスを使ってユーザーに面白がってもらう場面をつくる=低コストで自社サービスを宣伝できるメリットを得るとかくらいでしょうね。

使って面白いけど、お金を払うほどのものにならないという点で個人の面白ツール止まりと思っています。

エンジニアtype編集部

最後まで一貫していますね……

福山さん

くうううう、ありがとうございます!

生成AIはオープンソースのモデルの発展も早いので、個人的には、プラットフォームへの依存リスクはTwitter上のツールほどの影響は受けないと思っています。ただ、逆に言うとAIだけを売っていたら差がなくなっていくので、まずは面白ツールでも良いので、第一想起を取れるようにサービスを広めていきたいと思います。

それに、「次の大きなものは、最初はおもちゃのように見える」ことでしばしば既存企業にスルーされがちなので、ひろゆきさんのご意見はポジティブに受け止めています。

こんな「面白ツール」がいつか価値を発揮するときが来ると信じて、開発していきます

ひろゆきさんに“あーだこーだ言われたい”プロダクト大募集

エンジニアtype編集部では、ひろゆきさんに「ダメ出しされたい!」、もとい「改善点をもらいたい!」というプロダクトを大募集しています。ご興味のある方はぜひ下記までご連絡ください。

連絡先:
エンジニアtype編集部
e-typemag@type.jp

プロフィール画像

ひろゆきさん(@hirox246

本名・西村博之。1976年生まれ。99年にインターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。東京プラス株式会社代表取締役、有限会社未来検索ブラジル取締役など、多くの企業に携わり、企画立案やサービス運営、プログラマーとしても活躍する。2005年に株式会社ニワンゴ取締役管理人に就任。06年、「ニコニコ動画」を開始し、大反響を呼ぶ。09年「2ちゃんねる」の譲渡を発表。15年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。フランス・パリ在住。著書に『働き方 完全無双』(大和書房)『論破力』(朝日新書)『プログラマーは世界をどう見ているのか』(SBクリエイティブ)『自分は自分、バカはバカ。 他人に振り回されない一人勝ちメンタル術』(SBクリエイティブ)『1%の努力』(ダイヤモンド社)など多数

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