デジタル庁CTO・藤本真樹が発足3年目の今思うこととは?
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国が総力をあげてIT活用に乗り出す。そんな機運とともに、2021年9月の設置以来注目を集めるデジタル庁。
しかし、どのようなプロジェクトが推進されているのか、どのようなエンジニアたちがどんな活躍しているのか、その実態に触れる機会はそう多くない。
そんな中、デジタル庁のCTO・藤本真樹さんへの取材が実現した。
「少しでも日本が良くなれば、というのはなんだかんだ言って一番大きいです。嘘っぽく聞こえるかもしれないですけど」と言って笑う藤本さん。発足からの2年間でデジタル庁が手掛けてきたプロジェクトの内容や、同庁で働くことの面白み、そして今後の展望について詳しく聞いた。
同時並行で進む大規模プロジェクト。時に自ら手を動かしながら挑んできた2年間
「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」。デジタル庁がそんなミッションを掲げて発足してから、早2年。CTOに就任してからのこの2年間は、私にとってもあっという間の月日でした。
急速に少子高齢化が進み、人口が減少傾向にある日本でデジタル化を推進することは、生産性を上げ、継続的な成長を実現できる国であるために重要な意味を持ちます。
しかし、国内全省庁のシステムを合計すると、ゆうに1000を超える。それほどの数のシステムに個別に対処していては、大きなインパクトを与えることは難しいのも事実です。
この2年、私自身エンジニアとしても試行錯誤しながらさまざまなアプローチをして学びが得られてきたので、全体を底上げしていく方法が少しずつ見えてきた、というところです。そういった視点から推進してきたプロジェクトがいくつもあります。
例えば、政府共通決済基盤プロジェクト。これは、自治体がオンライン決済サービスを展開するときに活用できる基盤を構築することを目的としたプロジェクトです。
ベンダーさんとチームを組み、一部はデジタル庁のエンジニアが内製をしています。すでに5~10の自治体でこの基盤の運用がスタートしており、徐々に活用を進めているところです。このプロジェクト発足当初は、私自身もプロジェクトメンバーとして参画していました。
こうした基盤となるシステムを作るには時間がかかりますが、実現すれば5年、10年先のデジタル化のスピードがまるで変わってくると思います。
どんなシステムであっても、新規で作っているときに「この組織共通のパーツがあればな」と思うことってありませんか? デジタル庁で、こういったインフラとなるような仕組みを一つずつ積み上げていくことで、その後が楽になると信じています。
国民全員がユーザーとなるシステム開発のシビアさ
日本のデジタル化を推進する上で欠かせないのが、言うまでもなくエンジニアたちの存在です。庁外の方にはあまり知られていませんが、デジタル庁には非常勤の国家公務員として現在数十名のエンジニアが所属してプロジェクトに携わっています。
エンジニアとして働く上での民間企業とデジタル庁の違いを挙げるとすれば、 やはり手掛けているシステムとユーザーの幅広さでしょう。それはやりがいでもあり、難しい点でもあります。
一般にサービスを提供する場合では、ターゲットとして設定したユーザーに対してサービス開発を進めることが大半であるのに対し、デジタル庁が開発しているシステムのユーザーは日本国民全員。恣意的なターゲットを選んでサービスを作ることはできません。
年齢等はもちろんのこと、視覚が不自由な方やキーボードの操作が難しい方など、さまざまな方に向けてサービスを提供する必要がある。アクセシビリティの考慮は際限がなく、非常に難しいミッションの一つです。
デジタル庁が関わっているプロジェクトは、ステークホルダーが多いことも特徴です。また、「売り上げ」というものを持たないので、開発費用は全て国のお金。つまりは税金です。だからこそ、決して無駄は許されない。「この費用は本当に必要か」を一つ一つ突き詰めて考えながら開発を進める必要があるのです。
制約の中で願う「日本を少しでも良くしたい」
ここまで聞いて、面倒だと感じた方もいるかもしれません。私も最初のころは驚きの連続でしたが、それと同時に新鮮な刺激でもありました。
私を含め、デジタル庁のエンジニアの多くが考えているのが「自分たちの仕事で日本が少しでも良くなってほしい」ということ。こう言うと少し嘘っぽく聞こえるかもしれませんが、「国」が提供する、というシステムを作る経験なんて、なかなかできることではありませんから。
それに、行政機関だからこそ実現できることもあるはずなんです。少しずつですが、自分たちの手で日本のデジタル化を推し進められていることが分かるのは、何にも代えがたい面白さ。だからこそ、さまざまな制約がある中でも一歩一歩前へ進んでいこうという胆力を持って取り組めるエンジニアが多く集まっています。
例えば、インターネットサービス関連の企業で働いていたソフトウエアエンジニア、エンタープライズ系の開発経験を持つ方、SIerで働いていた「ものづくりが好き」という方など、経歴は十人十色です。
エンジニアの関わり方はプロジェクトによりさまざまで、がっつりコーディングに携わっている場合もありますし、一方で、ベンダーのみなさまとの協働もとても大切です。
現在はWebフロントエンドやiOSやAndroidなどのアプリケーション開発などをデジタル庁のエンジニアが担うケースが多いですが、より多様な人材を仲間に迎え、キャパシティーを広げていければ、と考えています。
「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というミッションを実現するために何よりも防がなくてはならないのは、行政がボトルネックになること。各省庁や関係する民間企業のデジタル化が上手くいくように、できることから一つずつ、でも確実に前へと進めていく。そんなまたとない体験を、ぜひ多くのエンジニアにしてもらいたい。きっとここでの経験は、エンジニアとしての成長を後押しするものとなるはずです。
取材・文/久保佳那 撮影/竹井俊晴 編集/秋元 祐香里(編集部)
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