エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! さまざまな領域で活躍するエンジニアやCTO、テクノロジーに関わる人々へのインタビューを通じて、エンジニアとして成長していくための秘訣を探っていきます。
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「僕自身の性能が低いからメソッドに頼った」牛尾 剛の成長ストーリー【聴くエンジニアtype Vol.49】
エムスリーのVPoE・ばんくしさんとゲストのトークをお届けする聴くエンジニアtype。今回からのゲストは、『世界一流エンジニアの思考法』(文藝春秋)の著者・牛尾 剛さん。
「『牛尾 剛くん』は決して性能が高くない」と自身について語る牛尾さんがストレッチするきっかけとなったのは?
【ゲスト】
『世界一流エンジニアの思考法』著者
牛尾 剛さん(@sandayuu)
1971年、大阪府生まれ。米マイクロソフトAzure Functionsプロダクトチーム シニアソフトウェアエンジニア。シアトル在住。関西大学卒業後、日本電気株式会社でITエンジニアをはじめ、その後オブジェクト指向やアジャイル開発に傾倒し、株式会社豆蔵を経由し、独立。アジャイル、DevOpsのコンサルタントとして数多くのコンサルティングや講演を手掛けてきた。2015年、米国マイクロソフトに入社。エバンジェリストとしての活躍を経て、19年より米国本社でAzure Functionsの開発に従事する。ソフトウェア開発の最前線での学びを伝えるnoteが人気を博す
【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている
ダメな自分を変えた一冊の本との出会い
ばんくし:今回からのゲストは、『世界一流エンジニアの思考法』を書かれた牛尾さんです。まずは自己紹介をお願いします。
牛尾:普段はマイクロソフトの本社があるアメリカのレッドモンドで働いていて、Azure Functionsというサーバーレスのプラットフォーム開発をしています。
最近はFlexConsumptionという新しいskuのHTTPのスケーリングなどを担当しています。
ばんくし:HTTPのスケーリングというと、リクエストが大量にきたときに処理できるようにする仕組み作りということですか?
牛尾:そうですね。これまでは大量のリクエストが来た時に対応できなかったのですが、同時リクエストを爆速でさばけるようなFunctionsをリリースしたので、ぜひ皆さんに使ってもらいたいです。
ばんくし:チームの規模はどれくらいなんですか?
牛尾:スケーリングチームと言っていいのは3人くらいかも。実はすごく少ないんです。
ばんくし:世界的なサービスをその人数で開発しているんですね!
牛尾:スケーリングだけじゃなくさまざまな分野に分かれているので、Functionsチームとしては30人くらいいます。他のチームと協働したり、プラットフォームに乗ったりしながら開発することもありますよ。
ばんくし:牛尾さんは普段はアメリカでお仕事されているんですよね。日本にいらしたタイミングでお会いできて本当にうれしいです! さっそくいろいろと質問していきたいのですが、まずは牛尾さんが過去に一番ストレッチできた経験を教えてください。
牛尾:それはプログラマーとして?
ばんくし:今回は「人生において」という観点で聞きたいです。
牛尾:人生!? 難しいな……(笑)
『世界一流エンジニアの思考法』に書いたんですけど、僕はホンマにだめな奴だったんです。運動も勉強もできなかった。サボってたわけじゃないのに、真面目にやっても何一つうまくできなかったんですよ。
ばんくし:努力が実った経験がなかった、と?
牛尾:一番最初の成功体験は大学受験でしたね。和田秀樹さんの『受験は要領』という本を読んで衝撃を受けたんです。「これなら僕でもできるかもしれない」と思って愚直に実行したら、当時の自分の偏差値では難しいような大学に受かったんですよ。
ばんくし:その本が攻略本となったのですね。
牛尾:「数学は丸暗記しろ」と書いてあったことが一番衝撃でした。かなり強烈なノウハウだったんですけど、その通りにしたらちゃんと成績が上がっていったんです。それ以来、マニュアル本やメソッドが好きになりました。アジャイルやDevOpsが好きなのもそういう経緯ですね。
ばんくし:対談をするにあたって牛尾さんのnoteを読ませていただいたのですが、「攻略法が好きな人なんだな」と感じていました。大学受験での成功体験から来ていたのですね。
牛尾:本にも書いてあるのですが、元々の「牛尾 剛くん」の性能は本当に高くないんです。頭は良くないし、要領も悪いし。だからこの「牛尾 剛くん」はどうしたらなんとかなるかという観点で攻略しようとしたら、メソッドを使うしかなかったんです。
ばんくし:エンジニアって攻略好きな人が多いですよね。かく言う私も、攻略法を見つけてショートカットしていくのが好きな方です。
noteを読んでいて感じたのですが、牛尾さんって攻略法を自分のものにするのが得意ですよね。その力はどうやって身に付けたんですか?
牛尾:攻略本やマニュアルから作戦を考えるっていうのがクセになってるのかもしれないですね。努力したり工夫をしたりするよりも、そういうやり方が合ってたんです。
ばんくし:自然とアジャイルに行きついたということですね。
牛尾:そうそう。その中でエクストリームプログラミング(XP)に出会って、「僕がやってる開発と違うやん!」と衝撃を受けたんです。
ばんくし:『世界一流エンジニアの思考法』では、攻略法を見つけるという話の他にも「エンジニアとして手を動かしたい」という話も出てきますよね。それも牛尾さんのストレッチにつながっているのでは?
牛尾:間違いないですね。僕は戦略を考えるのが得意なので、アジャイルコーチやコンサルタント、PM、エバンジェリストに適性があって、自分が手を動かすのではなく人を動かす分野に強いんです。
一方で、自分が何かをするとなると失敗ばかりで。「牛尾 剛くん」の性能の問題ですね。だから周りの人からは「PMの才能があるのに、なんでプログラミングをやるんですか?」「プログラミングの才能ないですよ」って、さんざん言われてきました。自分でもそう思います。それでもコードを書きたいんですよ。
だから僕はPMとして「牛尾 剛くん」にプログラミングをアサインするという方法を編み出しました。
ばんくし:牛尾さんにとって、コードを書くことの魅力って何ですか?
牛尾:僕はIT業界で一番格好いいのはコードを書く人だと思っているんです。錬金術じゃないけど、何もないところからソフトウエアを生み出せるのって格好良くないですか?
ばんくし:プログラミングのクリエーティブなところが好きなんですね。
牛尾:そうです。IT業界でどんなに有名な人よりも、ソフトウエアの一番最初のバージョンを作った人が格好良いと思うなあ。
ばんくし:その気持ちってどこから生まれたんですかね。
牛尾:プログラミングが「自分が苦手なこと」だからかもしれないです。実は僕、子どものころからプログラミングをやっていたんですよ。そんなに長くやっているのに二流、三流の僕にとっては、それをやってのける人がスーパースターに見えるんです。
ばんくし:なかなか手が届かないからこそ、憧れも強く感じていると。その「向いていない分野」を攻略する方法が『世界一流エンジニアの思考法』に書いてあるということですね。
次回も牛尾 剛さんをゲストにお迎えし、お届けします。お楽しみに!
文/赤池沙希
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