「Business Process as a Service」の略。企業が社内で行っていたさまざまな業務を、一連の業務プロセスごと外部企業に委託するクラウドサービスのことを指す。

「ソフトウエアが欲しい企業はいない」累計100万人が使うラクラス代表に聞く、BPaaSとは?
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SaaS、PaaS、IaaS……と今や“アズ・ア・サービス”系は多彩にあるが、ここ約1年ほどの間に注目が高まっているのが「BPaaS(ビーパース)」だ。
ある調査によると企業の人事担当者の約半数はBPaaSを「すでに使っている」「導入を検討している」と答えている。「BPaaSなんて言葉が生まれる前からずっとBPaaSサービスを開発・提供してきた。いよいよ時代が追いついてきたかもしれない」と笑顔を見せるのが、人事労務BPaaSを提供するラクラスの代表・村田 一さんだ。
同社は設立から20年、BPaaS一筋。今や760社、累計100万人規模のユーザーを抱える老舗だ。BPaaSとは何か。注目を集め始めている理由は何なのか。村田さんに基本から教えてもらった。

ラクラス株式会社
代表取締役社長
村田一さん
ソフトバンクグループでグループ人事、シェアードサービス化の業務に従事後、ラクラスの設立に参画。クラウドサービス、BPOを活用した手法により100社以上の企業の支援をプロジェクト責任者として推進。2020年より現職
“ソフトウエア”が欲しい企業なんてない
BPaaSとは何か。辞書的に説明すると
となるが、その本当の意味とメリットについて、村田さんは「SaaSと比較しながら考えると分かりやすい」と切り出した。
「SaaSが登場するずっと前から、企業が業務をシステム化する際は、ソフトウエア(製品)を購入し、自社内で構築・管理するのが一般的でした。その後、SaaSの登場により、オンライン上でソフトウエアが利用できるようになったわけですが、本質的に『ソフトウエアを買って→使う』という構図は変わりません。本質的に、ソフトウエア自体はサービスというより製品=物なんです」

「ただ、企業が欲しいのは決してソフトウエアという製品ではありません。人事労務でいえば給与計算、社会保険の手続き、勤怠管理。経理でいえば経費精算、財務諸表作成などの業務プロセスを効率的に回したい。そのためにソフトウエアを購入するわけです。
当たり前ですが、ソフトは買って終わりではない。その設定作業をはじめ、既存システムや既存業務とうまく接続するためにITに詳しい人材が不可欠です。社内トレーニングのコスト、持続可能な運用も……と難易度がまあまあ高い。ならば、その業務プロセスごとサービスとして利用してしまえばいいのではないか、という発想から生まれたのがBPaaSです」
SaaSを提供して終わりではなく、業務を丸ごと請け負うサービスといえば「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。
その点について、まさに「SaaSとBPOを同時に提供してしまうのがBPaaSです」と村田さん。今、BPaaSが多くの企業から注目されている理由もここにある。
「企業は少子高齢化に伴う労働力不足に直面しており、人事労務などの間接業務への割ける余力が減少しています。さらに、急速な時代の変化により、ビジネスモデルの陳腐化も加速していますよね。このような状況で、企業が競争優位性のある中核領域に人材を集中し、BPaaSを活用して周辺業務を効率的に運営することは、当然の帰結といえます」
事業の着想はソフトバンク時代
人手不足や時代の変化の加速は止まらない。BPaaSは今後ますますニーズ拡大していくと予想されるが、村田さん率いるラクラスの優位性は20年前から「いずれBPaaSが必要とされる時代がくる」と確信し、BPaaS事業を深めてきた点にある。
もちろん、当時はBPaaSという言葉はないわけだが、このビジネスを着想した経緯について村田さんはこう振り返る。
「ラクラスを立ち上げる前はソフトバンクグループで、グループ会社の人事・労務業務を一手に引き受ける子会社に所属していました。2000年頃はインターネットバブルの時代で、『インターネットで何でもビジネスになる』という雰囲気の中、『外販できるビジネスを考えよ』という命題が与えられていました。
人事労務の業務受託やサービス提供には必ずソフトウエアが必要でしたが、当時は給与計算ソフトはあっても、現在のような従業員とのオンラインでのやり取りができる仕組みがなかった。それで、インターネット上で従業員とやり取りできるシステムの開発を構想し、実現に向けて取り組み始めました」
BPaaS事業について、当初はソフトバンクグループでサービス展開する予定だったのだ。ところが、ソフトバンクが携帯電話事業に参入することになった2005年頃、その状況は一変。
「ソフトバンクが通信事業に集中を進める段階で、それまで構想していた人事労務の事業を継続することが難しくなりました」

ならばと、村田さんたちは共に働いていた子会社のメンバーとスピンアウト、ラクラスを設立した。
「事業を開始した2005年当時から、継続的にバージョンアップを重ねていますが、基本的なビジネスモデルは変わっていません。20年を経て、ようやく『BPaaS』という概念が生まれ、認知が広がってきた印象です」
利用者のスキルに依存せず、安定した成果が出せる
BPaaS市場は2024年から2036年にかけて年間平均8%の成長率で伸びると見込まれ、将来的には年間約11兆円の市場規模になると予測されている(SDKI調べ)。その利点を村田さんはこう続ける。
「通常のソフトウエア導入では、利用者のスキルによって効率化の効果が左右されます。しかしBPaaSでは、業務の運営自体を専門知識を持った業者に任せられるため、確実な成果を得られるという大きな利点があります。
一般的な開発では、お客さまの要望通りにソフトウエアを作成しても、それがビジネスプロセスとして成果を出せるかは別問題です。不要な機能を実装してしまうことも少なくありません。しかし、BPaaSならソフトウエアを開発する立場と、ユーザーとして使用する立場の両方を兼ね備えられる。必要な機能に絞ってソフトウエアを開発できるため、コスト面でも大きなメリットが生まれるんです」
つまり、ユーザーとしての知見が、使い勝手の良い機能を開発・発想する上でもいい役割を果たしてくれるわけだ。実際にサービスを利用するのはユーザーであり、彼らのニーズや課題を理解することが、本当に役立つ機能を生むことにつながる。
「年末調整を例にあげると、従来のシステムでは、保険料の控除証明書が届いた後の処理が非常に煩雑でした。入力作業が複雑で、保険の種類や金額など何をどこに入力すればよいのか判断が難しく、さらにハガキを提出して人事部がチェックするという手間のかかるプロセスが発生しました」
会社勤めの読者なら、その面倒さは容易に想像できるだろう。
「ラクラスのシステムの場合は、必要事項に答えていただくだけ。ハガキを送っていただくと、画像データに変換され、AIが保険会社を自動判別します。各保険会社の書類から金額を自動で読み取り、AIOCRでデータ化してお返しします。システムにアクセスすると、ハガキの画像とデータ化された情報が確認でき、申告額も自動計算されるんです。『これでよろしいですか?』という確認をするだけで完了です」

予想以上に簡単で、使いやすいシステムに、従業員の満足度は大きく向上するそうだ。
「とにかく『楽になった』という声が多く寄せられますね。特に人事労務部門は繁忙期と閑散期の波が大きいのですが、あるお客さまからは『11月、12月が年末調整でもっとも忙しい時期だったのに、他の月と変わらない程度になった』というお声をいただいています」
大手企業では、年末調整のために臨時の人材を確保する必要があり、派遣会社に依頼して経験者を何人も探さなければならないこともある。こうした人材確保の苦労がなくなることにも、大きなメリットを感じる企業が多い。
「1000人規模の企業では、通常5、6名で内製している人事労務業務を2名程度まで削減できた例があります。ただし、判断業務は残りますし、サービスプロバイダーとの窓口やベンダーコントロール、品質管理といった業務も必要なため、完全な無人化は難しいですね」
開発の醍醐味は、ユーザーを感じられること
BPaaSサービスの開発を手がけるエンジニアの醍醐味について村田さんは「ユーザーとの距離が近い」ことにあると話す。
「一般的な受託開発などの重層的な構造では、自分の作ったものが最終的にユーザーにどのように使われているのか見えづらく、時には開発した機能がどのシステムのどの部分に組み込まれているのかさえ把握できないことがあります。
一方、BPaaSサービスでは、お客様だけでなく、ビジネスプロセスを提供する自社社員もエンドユーザーとなるため、ユーザーとの距離が近く、システムの使いやすさや理解度について直接フィードバックを得られる環境です。自分が開発した機能が、お客さまにどう使われているのか、何人がアクセスしたのか、何件の利用があったのかまで把握できます」
良いフィードバックも厳しいフィードバックも含めて、自分の作ったものが実際に使われている様子を直接確認できることは、多くの開発者にとって大きなやりがいになる。
ラクラスの場合でみれば、人事労務部門向けベンダーとしてすでに20年の実績があり、マイナンバーの提出や年末調整など、さまざまな形でサービスを提供してきた。
「これまで、何かしらの形でラクラスのサービスに触れたお客さまは100万人を超えます。多くのお客さまにサービスをご利用いただいていることがエンジニアはもちろん、全社員のやりがいになっています」

熱視線を集めるBPaaSだが、一方で「SaaSより広がることはないだろう」と控えめな予測も立てている村田さん。その理由について次のように語った。
「BPaaSで代替するのが最適な業務はSaaSと比較するとずっと小さいパイです。BPassSが効果を発揮するのは、人事労務や経理会計、購買調達といった定型的な作業が行われがちな一方で高い専門性が必要とされる領域に限られるからです。
これらの業務は大前提、企業の本業とは関係のない業務です。だからこそ、どんな企業も人事労務に時間を割くべきではないし、手放すべき。私たちはそこを代替していける企業になっていきたいと思っています」
BPaaS市場で成功するために、今後の戦略を村田さんに問うと「これまでと変わらず、ソフトウエア開発者としての技術力、ユーザーとしての実践的知見、そして人事労務の専門性を融合させ、お客さまに最高の人事労務サービスを提供すること」だと語る。
さらに同社の強みは人事労務業務のインフラを完全なワンストップソリューションとして提供できる点にある。
「お客さまは社内に人事労務システム管理の専門スタッフを置く必要がなく、業務全体を安心して委託いただけます。この優位性こそ、まさにソフトバンクにいた頃から、サービスの作り込みや提供体制を構築してきた賜物。自社ブランド、自社開発、自社製品を自社リソースで保有するこの体制は、今から構築しようとしてもかなり難しいでしょう。
個々の機能の開発なら、技術的には可能かもしれませんが、業務知識とクラウド開発の専門性の両方がなければ、実用的なサービスは実現できません。また、そこまでの投資と労力を費やせる企業は今後も現れないと考えています」
今後はより製品開発のスピードアップに注力していく方針だと言う村田さん。使い勝手の細かな違いが製品の評価を大きく左右するため、地道な改善を積み重ねながら、きめ細やかな対応ができる範囲を拡充していく。
「もちろん、お客さまの重要な情報を預かるシステムとして、セキュリティーの確保も不可欠です。
社内の生産性向上も重要な課題ですが、何よりもお客さまの満足度を第一に考え、『いいね!』と評価いただけるサービスの提供を目指していきます」
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文/福永太郎 撮影/竹井俊晴 編集/玉城智子(編集部)
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