株式会社圓窓　代表取締役
澤 円(@madoka510)

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書：『外資系エリートのシンプルな伝え方』（中経出版）／『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』（ダイヤモンド社）／『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)／『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』（アスコム社）／『「やめる」という選択』（日経BP社）　Voicyチャンネル：澤円の深夜の福音ラジオ　オンラインサロン：自分コンテンツ化　プロジェクトルーム

皆さんこんにちは、澤です。

エンジニアという仕事は、なかなかに不思議な職種だなぁと思うことがあります。

何が不思議かというと、「他人からの評価」よりも「自分で納得できるかどうか」がパフォーマンスに大きく影響してくるところです。

もちろん、どんな仕事でも一定の評価指標はありますし、目に見える成果物があるかどうかで評価されるのは当たり前です。

でも、エンジニアの仕事って、仕様通りに動くものをつくればいいってだけじゃなくて、「自分の中で納得できるコード」が書けたかどうかとか、「この構成はオレ的に美しい」とか、そんな超・主観的な満足感が案外大事だったりしますよね。

で、ここで出てくるのが「気合」。

そう、「気合入れてこうぜ」ってやつです。

…いやいや、気合って何だよ。精神論かよ、って思いました？わかります。

ボクもかつてはそうでした。

「気合でどうにかなるなら誰も苦労しないでしょ」って、どこかで斜に構えてました。

でも、最近思うんですよね、エンジニアは「気合」も設計対象の一部だって。

自分で自分のエンジンを回す技術

プロジェクトの進行中、思った通りにコードが動かない。レビューでバチバチに指摘される。仕様変更がギリギリで入る。あー、もう全部投げ出してカフェでふて寝したい…。そんな瞬間、誰にでもあるはずです。

でも、そんな時、誰かが「よしよし、大丈夫。頑張ってるよね」なんて言ってくれるわけでもない。むしろ、「これ、今日中に直る？」ってクールに聞かれたりする。泣ける。

そういう状況で、「さぁ、自分で気合入れるしかねぇな…」ってなるんです。

いや、これができる人って、実はめちゃくちゃプロフェッショナルだと思うんですよ。

気合って、根性論でも精神論でもなくて、「自分で自分のエンジンを回す技術」なんじゃないかって、最近は思っています。

例えば、朝起きてPCに向かう時、「今日はここまでやるぞ！」って宣言して、コーヒー入れて、好きな音楽流して、エディタ開いて…っていう一連の流れ、あれ全部が気合入れの儀式なんですよね。

挨拶ひとつ取っても、「おはようございます！」を音階の「ソ」のあたりの高さの声で言うと、自分のテンションが少し変わる。

つまり、気合ってのは「外から与えられるもの」じゃなくて、「自分で設計して、自分でスイッチを入れる」もんなんです。

エンジニアって、自動化とか最適化にはめちゃくちゃ熱心じゃないですか。

だったら、自分の気合の入れ方も自動化・最適化してもいいじゃん、ってボクは思ってます。

まず「自分が“のってない”状態」と気付くこと

で、「どうやって気合入れてるの？」って話なんですけど、ボクの場合はこんな感じです。

これ、ちょっとしたことなんですけど、驚くほど効きます。

特に大事なのは、「自分がいま“ノってない”状態だってことに気付くこと」。

ここをスルーしてると、ずるずると一日が過ぎて、何も進んでないのに疲れてる、みたいな最悪な結果になっちゃう。

だからこそ、自分の状態を観察する力って、本当に大事なんです。

気合を入れる前に、「いま、自分は気合が足りてないな」って気づく。

これ、メタ認知なんですよね。

会社やプロジェクトのせいにしても、誰かが気合をくれるわけじゃない。

だから、エンジニアって、気合のスイッチも自分で持っておく必要がある。

これは技術スキルと同じくらい、大事な「自己管理力」だとボクは思います。

そして、周りの誰かがいま気合を切らしてるなって思ったら、そっとコーヒーを差し入れるくらいの気遣いができる人が、いいチームを作っていくんだと思います。

気合って、声を張り上げて叫ぶものじゃないんですよね。

むしろ静かに、内側で火を灯すようなものかもしれない。

その火を絶やさないように、自分で薪をくべること。

それが、エンジニアという仕事の本質のひとつじゃないかなと、ボクは思っています。

成果じゃなくて状態を見る

じゃあ、そんな「気合いの設計」をする上で、もう一つ付け加えておきたいのが、「成果じゃなくて状態を見る」という視点です。

「今日は〇〇を完成させられなかった…自分はダメだ」と思って気合が削がれること、ありませんか？

でも、それって「出力」だけに目を向けてる状態なんですよね。

実際には、途中で調べたこと、試したコード、思いついた別解…そういう「状態の変化」や「思考のログ」に目を向けることで、「自分は前に進んでる」と確認できる。

これが、「自分で自分の気合を守る技術」にもつながっていくんです。

結局のところ、自分のパフォーマンスを最大化するために、自分自身をどう扱うかが重要になってくる。

マシンのチューニングと同じで、自分の「やる気エンジン」も、温度管理や潤滑油の扱いが必要なんですよね。

自分にとっての“ノれる環境”は何か？

どういう時に「もうちょっとやってみるか」と思えるのか？

そういう設計図を一人ひとりが持っておくことが、これからの時代の「プロエンジニア」には必要なんじゃないかなと思っています。

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