AIがまだコードを書いていなかった時代──アメリカでは、プロダクトマネジャー(PM)は“エンジニアのその先”として、市場価値の高いキャリアとして見られていた。そのムーブメントは、もちろん日本にも広がった。
しかし、最近のビッグテックによる相次ぐレイオフが、その幻想を打ち砕いている。解雇されたのはエンジニアだけでなく、PMも含まれていた。“いつでも切られうる職種”として、安定神話が揺らいでいるのが現実だ。
AI時代におけるPMの市場価値や将来性は、実際のところ、いかがなものなのか。
シリコンバレー在住19年、ビッグテックとスタートアップの両方でPMとして活躍してきた曽根原 春樹さんに、PMを取り巻く市場環境や生成AIの登場がもたらしている変化について、現地の最新動向を交え、教えてもらった。
曽根原 春樹さん(@Haruki_Sonehara)
シリコンバレー在住19年目。現地のビックテックとスタートアップのプロダクトマネジャーとして、BtoB、BtoCの双方で実績を積む。現在はLinkedin米国本社のシニアプロダクトマネジャーとして、世界10億人に喜ばれるプロダクトづくりに従事。総受講者5万人以上のUdemyでのプロダクトマネジメント講座配信、共著『プロダクトマネジメントのすべて』(翔泳社)などを通じて、日本でもPMに関する啓蒙活動を展開。日本の大企業やスタートアップで顧問も務める
エンジニアだろうとPMだろうと、切られる時は切られる
ーー現在のシリコンバレーにおけるPMの採用動向や市場価値について教えてください。
世界全体で見ると、PMの需要は緩やかに上昇傾向にあります。直近ではグローバルで約6000件ほどのPM求人が確認されており、これは過去2〜3年で最も多い状況です。
そのうち20%~30%の求人がシリコンバレーに集中しており、中でもAIを活用したプロダクトに関する求人の数は、右肩上がりに増加しています。
シリコンバレーにおける報酬水準は依然として高く、PM経験3年未満のジュニアクラスでも年収は約2000万円(160万~170万ドル)を超えます。勢いのある会社のシニアクラスになると、報酬は3000万円を優に超えるケースも出てきます。そこにボーナスやストックオプション、RSU(譲渡制限付き株式。一定の条件を満たすと自社株を受け取れる制度)が加われば、実質的な年収はそれ以上になることもあります。
ただし、米国は日本と比べて物価が非常に高いので、相対的に給与も高いという事情があることは理解しておく必要があるでしょう。
ーー近年、米国のテック業界ではレイオフが頻発していますが、PM職の採用や雇用への影響はありますか。
もちろんです。先日もマイクロソフトで大規模なレイオフが実施されましたが、PMも解雇の対象となっていますし、Google、Metaなど他のビッグテックでも同様です。
レイオフの影響により、米国におけるPMの需給バランスは明らかに変化しています。かつての売り手市場から、今後は徐々に買い手市場へと傾いていくのではないでしょうか。
ーー日本では「PMは市場価値が高く、エンジニアより雇用面でも安定している」という印象があるのですが、米国ではどうでしょう?
その認識は、シリコンバレーでは全く通用しません。AIの進化が加速し、人の仕事がどんどん代替されていく時代には、どんな職種やポジションも安泰ではありません。エンジニアだろうと、PMだろうと、組織の上層部、管理職にいる人だろうと、切られる時は切られる。それがこの地での共通認識です。
日本人は「安心・安定」を求める傾向が根強いですが、これから先、テクノロジーの進化は加速することはあっても、遅くなることは絶対にありません。今後3~5年というスパンで、AIがさらに凄まじい発展を遂げると予測される中、もはや「職種」や「肩書き」は何の保障にもならないと考えるべきでしょう。大事なのは「あなたはどんな価値が出せるか?」であり、それを実現するスキルです。
職業・プロダクトマネジャーは消滅する!?
ーー生成AIの普及により、シリコンバレーで働くPMの役割や業務内容はどのように変化しましたか?
今シリコンバレーで起こっているのが、「より少ない人材で、より大きなアウトカムを」という構造転換です。これにより、PMも一人一人がこれまで以上の成果を出すことが求められるようになりました。
従来のテクノロジーと生成AIの決定的な違いは、「人間の能力を指数関数的に拡張できる可能性」を秘めていることです。
これまでのビジネスは、基本的に“足し算”の発想で成り立ってきました。一人の人間ができることの作業量には限界があり、それを10人、100人と増やして全体の生産力と効率を上げて行くスタイルです。
ところが生成AIを使えば、一人が生み出すアウトプットを2乗3乗と増やしていける。つまり“掛け算”の世界が現実になりつつあります。この変化により、チームの人数が少なくても大きな成果を出せる時代が到来しつつあり、それに伴ってビジネスの設計そのものが再定義されつつあるのです。
当然、PMの在り方も変わらざるを得ません。
ーーPMの仕事は、具体的にどう変わるのでしょう?
例えばLinkedinの社内で最近よく使われる言葉に「フルスタックビルダー」があります。これは「専門領域にとどまらず、幅広い分野やタスクをカバーして、ビジネスやプロダクトを作り出していく人材」という意味です。
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曽根原さんが教える、AIプロダクト戦略講座
AIが加速度的に進化する今、PMに求められるのは「単なる技術導入」ではなく、プロダクトと市場、組織をつなぐ戦略的視座です。
曽根原 春樹さんが新しく手掛ける「AIプロダクト戦略講座」では、以下の三本柱を通して、AIを活用した事業構築の全体像を体系的に習得できます。
「持続的競争優位を築く、実践的なAI事業構築戦略を体系的に学べます」(曽根原さん)
●市場戦略:勝てる市場を見極め、適切なユーザーに集中する
●プロダクト戦略:顧客にとって「高価値な課題」から逆算してプロダクトを設計する
●実行戦略:迅速に学習・適応するためのチーム・技術基盤を構築する
講師はもちろん、シリコンバレーでBtoB/BtoC双方のAIプロダクトを手がけてきた現役のビッグテック勤務PMこと、曽根原 春樹さん。世界最先端、最新の実例を交えて、現場で役立つ知見を余すことなく提供します。
生成AI時代に負けないPMになるために(もちろんPMでない方にも最適!)、興味をお持ちの方はぜひ公式サイトでご確認ください。
文/塚田有香 編集/玉城智子(編集部)